喫茶 輪

コーヒーカップの耳

「木想」8号

2018-05-26 09:13:19 | 
ふたり誌「木想」8号を戴いた。

表紙絵は、同人のお一人、高橋冨美子さんのご子息、高橋俊仁氏の写真。
素晴らしいですね。「木想」にピッタリです。
この桂の古木は、冨美子さんのお便りによると「但馬高原植物園」にあるそうです。
樹齢はどれぐらいなのでしょうか?

先ずは山下寛氏による「あとがき」から。
←クリック
北川透の文章からの引用、「詩は、<ほんとのこと>とも<真実>とも関係がない。…詩は本質的に修辞的だ」が印象的。

「まえがき」は高橋冨美子さんが書いておられるが、二月に亡くなった石牟礼道子さんの『苦海浄土』が出てくる。
『苦海浄土』は、わたしも若い日に読んで感動した本だった。今もどこかにあるはず。

作品。
高橋さんは(夢泥棒連作)として、3作を書いておられる。
いずれも格調高く、詩境が進んでおられるのを感じるが、わたしはその11の「今から舟に」に大いに心動かされた。
←クリック。



この中の「見送りの人々」は、かつて見送られた人だったのでしょうか?
末行に「熊野参詣曼荼羅」とありますが、わたしには辛い記憶があります。7年前の台風12号によって熊野に住む友人の中村義明君が犠牲になったのでした。大雨の中、村の水道を復活させるために作業していて熊野川支流の篠尾川に転落し、流されたのでした。
その時わたしは、この熊野の宗教儀式「補陀洛渡海」を想い、中村君は熊野の海へ旅立ったのだと思うことにしたのでした。
この高橋さんの詩を読んで、また激しく彼のことを思い出してしまいました。

山下氏の小説はいつも視点が新鮮で楽しませていただいています。
今回の「仮想未来」も面白かったです。中に「さりげに」なんて、最近の若者言葉(?)が入っていたりして、おや?と思ったり。
着想が面白いです。「人間は二度生きれるか?」という言葉があって、ハッとさせられます。普段は深く考えることはないけれど、考えると深いことですね。
テーマは「記憶の再生による、もう一つの人生」でしょうか?浅読み、お許しを。
なんか自分を投影しているようで懐かしかったり、恥ずかしかったり。
こんな物語、自分でも作ってみたくなる気がします。
最後、「ハッハッハッ…、もういいですよ。知ることで救われるとは限りませんから…」
結論なのか、余韻なのか?

高橋さんの「変貌する詩」は、田村隆一の詩人論。
力作です。
興味深く読ませていただきました。というのもわたし最近、ねじめ正一さんの『荒地の恋』を読んだのです。
ここまで書いてもいいの?というほど、生々しい田村が書かれていて、凄いなあ!と思いましたので。

今回も楽しませていただきました。高橋さん、ありがとうございました。
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