goo blog サービス終了のお知らせ 

喫茶 輪

コーヒーカップの耳

別冊・コーヒーカップの耳 32

2019-01-27 07:40:24 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
32「学校」

小学校の将棋クラブの指導に連れて行ってくれて うれしおました。わし 自分の子どもの参観にも行ったことおまへん。そやから学校行ったん久しぶりですわ。高校ンとき センコどついて退学して以来やから ほんま久しぶりや。そやけど わしみたいな風体の者(もん) よう連れて行ってくれよった。父兄にバレたら 校長困りよるんとちゃうやろか。小指千切れとるんは隠しといたけどな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 31

2019-01-26 13:02:56 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
31「墨」

  1
また入院します。背中のできもんが大っきなってしもて切ってもらいますねん。え?「せっかく背中切るんやったらイカの皮めくるみたいにめくってもらえ」てでっか?マスターまた無茶言いまんなあ。

  2
カラフルでっしゃろ。これ入れた時 パナカラーのコマーシャルようやってました。なんぼ隠してても 夏はチョロチョロ見えるし 時にはチラッと わざと見せたりしまんねん。すっかり足洗うたつもりでも 狡いとこおます。ホンマにケンカになりそうな時にはしまへんで。トラブル起こしても 今更警察に願うことできまへんよってにな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 29

2019-01-25 09:42:53 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
29「人生」

一ぺん 覆面してテレビに出たことがあって 上岡龍太郎が「ヤクザやめた今 どんな気持ちですか?」て訊きよった。向こうの狙いは分かっとる。やめて良かった 言わせたいんや。そやけどわしは 「死ぬときやないと分からん」言うてやった。こんなわしでも 自分の人生 他人さんに否定されとうはないんや。そやけど マスターやから言いますわ。
神戸で店してた時 カウンターの中にチャカ用意してましてん。扉がカタッというたんびに ビクッと身構えよりました。あの頃のこと思たら 今 こないしてゆっくりコーヒー飲んで マスターと話出来るんが幸せかな とも思います。そやけど やっぱりほんまのとこは 自分の人生良かったかどうか 死ぬ時やないと分からんのとちゃうやろか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 30

2019-01-25 07:50:33 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
30「入院」

今日 病院行って診てもろたら すぐ入院せえて言いよる。そやけど 正月過ぎまで待ってくれ ゆうて帰って来たんです。医者は詳しいこと言わんけど 足むくんどるから 心臓か腎臓が悪いんやと思う。
閉店時間 えらい過ぎてるけど もうちょっとおらせてなマスター。家に帰ってもだれもおらんし 一人で何もすることないし 女は週に一回しか来てくれへんし。
わし 今死んだら マスターぐらいは焼香に来てくれるかなあ。
すんまへん。尻 長うなってしもて。ここの椅子 接着剤ついてまんなあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 28

2019-01-24 08:23:24 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
28「ゴールデンバット」

このタバコでっか?ゴールデンバットいいまんねん。値段?ちょっと高こまっせ。20本入り百十円だ。これ スナックで喫うてたら 若い娘(こ)が 「おっちゃん カッコええのん喫うてるねえ」て言いよります。そやけど 昔の連れに会うたら 「なんちゅうタバコ喫うとるねん。ワレも落ちぶれたのう」て言いよります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 27

2019-01-24 08:06:06 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
27「後悔」

みんな一緒やろけど わしがおった世界は特にそうやった。銭のないのは首がないのと同じゆう世界です。あのころはよう遊びました。半端やない遊びしました。そやけど どんな世界におっても つけはきっちり返って来マ。親が苦労して残してくれた家 無くしました。嫁はんも逃げました。子ども三人連れて逃げました。腹の底では後悔してまっけど そんなもん人には言えまへん。人間 そう簡単に染みついたもんは抜けまへん。
あの世界から足洗て10年以上過ぎましたけど 世の中 捨てたもんやおまへんなあ。銭なしの病気持ちの こんな男にも ついて来てくれる女現れたし 将棋の仲間はみな優しいし たまにムカッとすることはあっても 今は意識して自分を殺してます。このまま年行って 死ぬとき「ええ人生やったなあ」て思えたらええけど そうはいかんか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 26

2019-01-23 09:36:40 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~

26「ちょうちょ」

最近入って来た新しい会員が わしの顔を なにもの?ゆう顔で探りを入れるように見よるんや。そやから 「コラッわれっ!人の顔じろじろ見やがって!わしの顔にチンチン電車でも走っとんかえ!それとも 鼻にちょうちょでもとまっとんかえ!」て怒鳴ろか思たけど 辛抱しました。またマスターに叱られますよってに。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 25

2019-01-23 09:29:37 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
25「鼻の穴に」

両方の鼻の穴に こないして 両方の小指の根元突っ込んで 子どもらに見せてやったら ひっくり返りよった。
いや もうしまへん。すんまへん。将棋会ではもうしまへんよってに。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 Kさん

2019-01-22 20:16:50 | 別冊・コーヒーカップの耳
今、~塀のうちそと~と題してK谷A久氏のことをこのブログに書いているが、
もう16年前に、わたしがデイリースポーツの坂本昌昭記者に紹介し、大きな記事になったことがある。
しかも、3回に分けての連載だった。
しかし、写真は困るとの本人の申し出で、菅原洸人画伯に似顔絵を描いて頂き、それが紙上に載った。
その第一回目の絵。

うちの店「輪」のカウンター席でのK氏の横顔。
やはり名前も本名はマズイということで、わたしが仮名を考えて、加賀繁躬さんとした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 24

2019-01-22 14:49:57 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
24「前科」

また自転車盗られてしもた。中古でも買うたら高いなあ。わしも盗んできたろかな。いやいや 自転車泥棒で捕まったら わしの前科に傷がつく。銃刀法と賭博ちゅう 黒光りしとる前科に傷がつく。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 22

2019-01-22 13:46:27 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
22「小指」

小指 千切って放ってしもたら 真っすぐに走られしまへん。なんやしらん 自然に曲がってしまいますねん。え?それで両手の小指千切ったてか?マスター ええ加減にしなはれ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 17

2019-01-22 09:28:12 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
17「ゲンコツ」

俗にいう大阪戦争が起こる前やから 昭和50年ごろでしたやろな。うちの組長(オヤジ)が兄事していた通称「○○駅」で通る神戸の大親分の若頭補佐がおりましたんや。そこの組が 大阪のほかの組織と間違い起こしました。それがまた うちの事務所と目と鼻の先でした。その晩 うちのオヤジが幹部連中連れて○○駅に陣中見舞いに行きましたんや。そしたら 親分筆頭にハッピ姿に地下足袋履いた若衆30人ほどが 飯食うてたそうですわ。完全に昔のヤクザのケンカ姿です。その親分は△△が通ればぺんぺん草も生えんと言われた人の舎弟頭しとったくらいの人でっさかいに ケンカはお手のもんですわ。そこへうちのオヤジが入って行って 「大阪のことはうちでやりまっさかいに 兄貴は気楽にしとってください」と言うたそうです。大阪の事務所に帰って来て 幹部連中とマージャンしとったら ○○駅が撃ち込まれた ゆうて電話が入りましてん。それ聞いたとたん オヤジ 顔真っ赤にして「イケッイケッ!」言いました。そこでわしら 即招集ですわ。例の根性鉄板の頭(カシラ)登場です。「いわしてしまえ!」の一言で わしら兄弟五人が車に乗って 相手の事務所へカチコミに行ったんです。そしたら シャッター下りて 電気消えてて 誰もおらしまへん。そやから言うて 窓ガラス割ったぐらいで帰ったら どやしつけられますがな。五人で「どないしょう」ゆうて 頭寄せて相談した結果 そこの組はパンマ使うてしのいどるから 近所のホテル入って そこの女呼んで奴らの居所聞き出すことにしたんです。そやけど女ら 誰一人 奴らの居所知らしまへん。脅したりすかしたりしたんやけど ほんまに知らんみたいやった。金は二万五千円払うとるし もったいないから五人で 女 一発やりましてん。帰って頭に事情説明して「後日また自分ら行きます」言いました。そしたら「おう そうせいや」ゆうてくれるもんやとばっかり思てたら いきなりゲンコツ食らいました。「おのれら どのピストル撃ってきたんじゃ!」ゆうて。次の日には中に立つ人がおって○○駅の親分とこに
五千万円ほど詫び料が入ったらしいけど わしらに入ったんは ゲンコツだけですわ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 16

2019-01-21 13:41:02 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
16「犬」

うちの組長(おやじ)は犬飼うん嫌いでしてん。そやけどおやじの舎弟とこが土佐犬飼うてました。そこの姉(あね)さんがかわいがってました。若衆に散歩させたりして世話させてましてん。土佐犬 お粥さん食いまへんわな。そやから若衆にお粥食わして 犬に肉食わしよりました。その若衆 いっつもぼやいとりました。ある時 その舎弟とこで よその組ともめごとがあって ケンカになったんです。カチコミや!ゆう時 その若衆 言いよりました。「犬に行ってもらえや」て。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 15

2019-01-21 12:53:33 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
15「ケンカ」

昭和50年ごろでした。東京のある組織と うちの親父の系列下にあった東京の組織が 金のことで間違いがおましてん。博打の金や言うてましたけど ほんまはアンポンタン(シャブ)のことやと思います。相手方は その組織の中でも一、二の力持ってたそうですわ。そやけどうちの親父も 前の年に神戸の親分の盃戴いてたし 四十歳過ぎの男盛りです。元々 殺しの〇〇ゆうて 大阪では結構売れてましたよってに イモ引かれしまへん。え?イモ引くでっか?ビビるゆうこってすわ。頭(かしら)も根性鉄板やったから 親父に負けんぐらいイケイケドンドンですわ。わしも今では高血圧で 冬の冷たい家風呂は 頭パンクするゆうて びびりのおっさんになってしもてますけど 当時は三十歳前後で 親父を男にするゆうて張り切ってました。頭は 枝の兵隊五、六人連れて 道具持って東京に上って行きました。それもチャカだけやったらかわいいもんやけど ダイナマイトまで持たされて。その時の若い衆 みんなウロコイテ泣いてましたで。あんなもん破裂させたら 最低でも無期でっせ。それでも奴ら 一人も逃げんと東京で頑張りよりました。その時の若い衆とたまに会うたら 笑い話になってしもてますけど 今の幸せ感じます。わしら居残り組は道具持って事務所の近辺の旅館に分散して泊まり 事務所守る者は道具持たれへんから(抗争になったら警察の取り締まりが厳しくなるから)コーラの瓶にガソリン詰めて火炎瓶作って泊まりですわ。事務所がビルの三階にあったから 敵が来たら窓から投げるちゅう手ェですわ。今とちごて当時の旅館の経営者は粋でした。見て見んふりですわ。まあ 親父の顔が利いてましたよってに ヒネ(警察)に歌うちゅうような野暮はしまへんでした。ケンカであろうとなんであろうと 商売になったらええ ゆうことですかなあ。大阪商人ですな。すでにうちの連中が東京で相手方の事務所入って行って チャカ弾いてまっさかい こっちにも絶対返しに来るおもて 腹据えて待ってました。そんな時のことやけど 三日ほどして 一人の若衆が「キョウダイ ちょっと銀行行って来るわ」ゆうて出て行ったまんま帰って来なんだことがありました。また別のケンカの時のことやけど 頭(カシラ)から命令受けて 「まかしときなはれ」ゆうて道具持ってカッコよう出て行った者(もん)がおりました。そやけどそいつ 嫁はんに頼んで ヒネに通報させて わざとパクられるように細工しよりました。そら 人殺すよりチャカだけでパクられる方が 懲役 安(やす)おまっさかいになあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別冊・コーヒーカップの耳 あとがき(草稿)

2019-01-21 12:49:33 | 別冊・コーヒーカップの耳
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
「あとがき」(草稿)

「塀のうちそと」の語り部、K谷A久氏と知り合ったのは、わたしが主宰する将棋会に彼が入会してきたことによる。いわば棋友である。その後、私の店「喫茶・輪」の常連客となり、毎日のように顔を見せるようになった。
カウンターを挟んでの彼の話は、私にとって驚くことばかりであった。先ず、その言葉に驚く。その世界の専門用語というのだろうか、チャカ、ヒネ、アンポンタン、イモヒク、ドウグ、シゴト、カチコミ、ユビチギル等々。そしてその言葉の後ろには、わたしのうかがい知れない世界が、黒々と尾を引いているのである。それをユーモアたっぷりに語ってくれる。興味の湧かないわけがない。いつしか私は、彼が語る話のメモを取り始めていた。
スキンヘッドの上に体重は、優に90キロを超える。堂々たる体躯である。そして両の手の小指が途中から無い。胸のシャツの間からは、時にチョロッとマンガが覗く。会社(組)を辞めてから何年も経つというが、ただならぬ気配を辺りに漂わせていた。
しかし彼は、頭の良い人である。だからこそ、その世界で一応の地位にいたのであろう。腕力だけではない、いわゆるインテリヤクザである。読書と将棋が趣味だというのだ。しかし事情があって足を洗う。カタギに戻ったのである。そして自らを「やくざの落ちこぼれ」という。だからこそ私が興味を持つのかもしれない。やくざの勇ましくカッコいい話など、私は大して興味がない。人間の陰の弱い部分にこそ、興味が湧く。それを彼はユーモアを交えて語ってくれていたのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする