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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇オーマンディのチャイコフスキー:交響曲第5番/弦楽セレナード

2009-10-29 09:14:13 | 交響曲(チャイコフスキー)

チャイコフスキー:交響曲第5番/弦楽セレナード

指揮:ユージン・オーマンディ

管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団

CD:ソニー・エンターテインメント(ジャパン) SRCR 8881

 チャイコフスキーの交響曲第5番も弦楽セレナードも、クラシック音楽の定番ともいえる名曲であり、これまで無数といっていいほどの録音が残されている。つまり、ある意味では、もうお腹いっぱいといった感じの名曲なのであるが、その芳醇で華麗な響きで“フィラデルフィア・サウンド”という名で親しまれてきた、ユージン・オーマンディ(1899年ー1985年)とフィラデルフィア管弦楽団のコンビの演奏となると、状況がまた違ってくる。私にとってお腹いっぱいどころか、空腹状態で、もっと食べたいという風に状況がたちどころに違ってくるのである。指揮者とオーケストラが、これほど密接な関係にある例を、私はほかに知らない。

 つまり、指揮者とオーケストラとが一体化し、極上の音楽を紡ぎだしているのである。オーケストラは、指揮者が次に何を要求するのかを知り尽くしており、決して指揮者に引っ張られて演奏しているという感じが全くしないので、聴いていて爽快な気分に浸れる。何よりも響きが豊かでまろやかなところがいい。しかも、いかにもアメリカの風土で培われた、明快で曖昧さのない、伸びやかな明るさが、ヨーロッパの伝統のあるオーケストラとは一線を画している。アメリカ独特の大衆性の重視といった姿勢に一貫として貫かれている。このため、主にヨーロッパのオーケストラの渋みのある響きを好む、音楽評論家の先生達には、必ずしも受けはいいとはいえないようなのだ。

 例えば、「新版 クラシックCDの名盤」(宇野功芳/中野雄/福島章恭共著、文春文庫)で、チャイコフスキーの交響曲第5番のところを見てみると・・・「ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル」「モントゥー/ロンドン響」はあっても、「ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管」が見当たらないのである。それなら私はあえて「ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管」を、意地になってもこの場で推そうと、心に決めた。

 このCDの録音データによると、交響曲第5番が1959年1月25日、弦楽セレナードが1960年4月10日で、フィラデルフィアのブロードウッド・ホテルでの録音だそうだ。ということはオーマンディが60歳くらいの録音であり、正に油の乗り切った、充実した演奏を披露してくれている。ユージン・オーマンディは、ハンガリーのブタペストに生まれている。そして、ブタペスト王立音楽院でヴァイオリンを学んだ。つまり、あの豊穣の音の響きの源泉は、東欧の弦の響きにあったわけである。1921年、オーマンディ22歳のとき米国に渡り、指揮者に転向、37歳のときに、レオポルド・ストコフスキーとともにフィラデルフィア管弦楽団の共同指揮者となっている。以後、音楽監督として実に42年にわたり同管弦楽団に在籍。要するに、東欧の弦の響きと米国の開放感とが一体化したところに“フィラデルフィア・サウンド”が生まれ、育ったのだ。(蔵 志津久)


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