★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

●クラシック音楽●コンサート情報

2023-07-31 09:40:11 | コンサート情報



<コンサート情報>



~大野和士指揮東京都交響楽団のヴォルザーク:スターバト・マーテル~

バッハ(マーラー編曲):管弦楽組曲より「序曲」/「エア(アリア)」
            (「エア(アリア)」:ダンス付き)
ドヴォルザーク:スターバト・マーテル op.58

指揮:大野和士

管弦楽:東京都交響楽団

ダンス:金森 穣、井関佐和子(Noism Company Niigata)

ソプラノ:小林厚子
メゾソプラノ:山下裕賀
テノール:村上公太
バス:妻屋秀和

合唱:新国立劇場合唱団

会場:東京芸術劇場 コンサートホール

日時:2023年8月6日 (日) 午後3時

 この演奏会は、「”サラダ音楽祭”(TOKYO MET SaLaD MUSIC FESSTIVAL 2023)」メインプログラムのフィナーレを飾る「音楽祭メインコンサート」。音楽監督大野和士指揮のもと“オーケストラ×歌×ダンス”が魅せる。バッハ:「エア(アリア)」では、金森穣、井関佐和子(Noism Company Niigata<ノイズム・カンパニー・ニイガタ>)による圧倒的なパフォーマンスが見られる。ドヴォルザークのスターバト・マーテルでは、豪華ソリスト陣、新国立劇場合唱団による歌唱で、人類への希望を込めたメッセージを伝える。

 ”サラダ音楽祭”は、サラダ=SaLaDの由来であるSing and Listen and Dance〜歌う!聴く!踊る!をコンセプトに、ファミリー・子ども向け音楽企画や、障害のある方も一緒に鑑賞できるコンサート等、誰もが楽しめる音楽祭を、都響と芸劇で連携して開催。そのほか、都響の楽員による子どもたちへの演奏指導等を実施し、多様性と調和(社会的包摂)の推進、次世代育成を目指す。また、地域コミュニティ等と連携し、多摩や島しょでも地域差なく音楽に触れられる機会を提供する。

 指揮の大野和士(1960年生れ)は、東京都出身。東京芸術大学指揮科に入学。大学卒業後、25歳の時欧州に渡る。1987年「アルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクール」で優勝。1988年ザグレブ・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者・音楽監督に就任。その後、カールスルーエ・バーデン州立歌劇場の音楽総監督、ベルギー王立歌劇場(モネ劇場)の音楽監督を務めた。2008年フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者、2012年アルトゥーロ・トスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者に就任。2015年東京都交響楽団の音楽監督、また同年バルセロナ交響楽団の音楽監督就任。2018年より新国立劇場のオペラ部門の芸術監督に就任。2010年「日本芸術院賞」恩賜賞受賞、「サントリー音楽賞」受賞、文化功労者に選ばれる。2017年フランス共和国より芸術文化勲章「オフィシエ」を受勲。同時にリヨン市からリヨン市特別メダル授与された。
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●クラシック音楽●新譜CD情報

2023-07-28 09:35:23 | 新譜CD情報



<新譜CD情報>



~ヴェロニカ・エーベルレのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61&ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 WoO 5~



ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
        ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 WoO 5~アレグロ・コン・ブリオ(断片)

ヴァイオリン:ヴェロニカ・エーベルレ

指揮:サー・サイモン・ラトル

管弦楽団:ロンドン交響楽団

CD:キングインターナショナル KKC-6695

 このCDは、ヴェロニカ・エーベルレが弾くベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61。カップリングはベートーヴェンが1790年頃に書いたヴァイオリン協奏曲ハ長調 WoO 5。この曲は、Allegro con brioの断片(259小節)が残っているだけの作品で、補完したかたちで演奏されることもあるが、ここではベートーヴェン筆による残された部分までを演奏している。

 ヴァイオリンのヴェロニカ・エーベルレ(1988年生まれ)は、ドイツ南部のドナウヴェルト出身。6歳からヴァイオリンを始め、10歳でミュンヘンのリヒャルト・シュトラウス音楽院ジュニアクラスに入学。2001年からミュンヘン音楽大学でアナ・チュマチェンコに師事。同時にギムナジウムでも学び、2008年にアビトゥーアを取得している。10歳でミュンヘン交響楽団と共演してデビュー。2006年には17歳にしてサイモン・ラトル指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を共演し、国際的に注目されるようになる。その後も、突出したコンクール歴がないにもかかわらずニューヨーク・フィルハーモニック、ロサンジェルス・フィルハーモニック、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、hr交響楽団、北ドイツ放送交響楽団、バンベルク交響楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団といった一流オーケストラと共演。また2008/09年シーズンにはカーネギー・ホールでリサイタルを行っている。2008年11月に初来日。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-07-27 09:39:35 | コンサート情報



<コンサート情報>



~首席指揮者マティアス・バーメルト指揮札幌交響楽団の ”発掘!発見!オペラ名序曲集”〜

ロッシーニ:歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
レズニチェック:歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲
モーツァルト:歌劇「劇場支配人」序曲
フロトウ:歌劇「マルタ」序曲
ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
エロール:歌劇「ザンパ」序曲
ボアエルデュー:歌劇「バグダットの太守」序曲
ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲 

指揮:マティアス・バーメルト(札響首席指揮者)

管弦楽:札幌交響楽団

会場:札幌コンサートホール”Kitara”

日時:2023年9月16日(土) 午後2時

 指揮のマティアス・バーメルト(1942年生まれ)は、スイス、 ベルン州出身。母国で学んだ後、ダルムシュタットやパリでブーレーズとシュトックハウゼンに師事。1965年から1969年までザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の首席オーボエ奏者を務める。後に指揮者に転向。 アメリカにおいて指揮活動に入る。1977年から1983年までバーゼル放送交響楽団の音楽監督を務めた後、ヨーロッパ各地で幅広い名声を得る。1987年以降はロンドンに定住。ルツェルン音楽祭監督、西オーストラリア交響楽団首席指揮者、マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者などを歴任。2018年札幌交響楽団首席指揮者に就任。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-07-26 09:56:19 | コンサート情報



<コンサート情報>



~混声合唱団 スコラ カントールム ナゴヤ 創立25周年記念 第10回定期演奏会~

①プッチーニ作曲「四声のミサ曲」

   ~小編成オーケストラ編曲版~(編曲:岡田尚之)

②ソリストと管弦楽アンサンブルによるJ-POP(編曲:岡田尚之)
   
   サボテンの花(作詞・作曲:財津 和夫)、花(作詞・作曲:喜納昌吉)

③混声合唱とピアノのための「中島みゆき」(編曲:信長貴富)
   
   時代、地上の星、糸、宙船、誕生

合唱:混声合唱団 スコラ カントールム ナゴヤ

テノール:与儀 巧  
バリトン:与那城 敬  

ピアノ:重左恵里

指揮:岡田尚之  

管弦楽:セントラル愛知交響楽団メンバーによる特別編成オーケストラ

会場:三井住友海上しらかわホール
 
日時:2023年9月9日(土) 午後2時

 混声合唱団 スコラ カントールム ナゴヤの「スコラ カントールム (Schola Cantorum)」とは、ラテン語で「歌う仲間の集まり」という意味で、平成9年(1997年)4月に結成された。名古屋市及び近郊に住む幅広い年代のメンバーにより構成されている。練習は、オーソドックスな作品(美しい日本の歌、ヨーロッパの歌<主としてバロックからロマン派までの宗教音楽>)を正確に美しく歌うことを目指して、基礎を大切にし、緊張・真剣・集中をモットーに厳しい練習をしている。現在、「団員相互の親睦を大切にし、合唱する喜びを共に感じる」団づくりを目指して、新年会、暑気払い、忘年会のほか、合宿や日帰り旅行などを企画し実施。
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●クラシック音楽●<NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー>~トン・コープマン指揮カメラータ・ザルツブルクのモーツァルト演奏会~

2023-07-25 09:36:48 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー



<NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー>




~トン・コープマン指揮カメラータ・ザルツブルクのモーツァルト演奏会~



①モーツァルト:交響曲 第20番 ニ長調 K.133

  指揮:トン・コープマン

  管弦楽:カメラータ・ザルツブルク

②モーツァルト:ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191

  ファゴット:リッカルド・テルツォ

  指揮:トン・コープマン

  管弦楽:カメラータ・ザルツブルク

③モーツァルト(リッカルド・テルツォ:編曲):歌劇「フィガロの結婚」から「恋とはどんなものかしら」」(アンコール)

  ファゴット:リッカルド・テルツォ

  指揮:トン・コープマン

  管弦楽:カメラータ・ザルツブルク

④モーツァルト:フリーメーソンのための葬送の音楽 ハ短調  K.477(479a)

  指揮:トン・コープマン

  管弦楽:カメラータ・ザルツブルク

⑤モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622

  クラリネット:ダニエル・オッテンザマー

  指揮:トン・コープマン

  管弦楽:カメラータ・ザルツブルク

⑥モーツァルト:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」から「さわやかに風よ吹け(アンコール)

  クラリネット:ダニエル・オッテンザマー、ウォルフガング・クリンザー

  バス・クラリネット:モニカ・ヴィースターラー

収録:2023年1月30日、オーストリア、ザルツブルク、モーツァルテウム大ホール

放送:2023年7月14日 午後7:30~午後9:10

 今夜のNHK-FM「ベストオブクラシック」は、2023年1月30日、オーストリア、ザルツブルク、モーツァルテウム大ホールで行われたトン・コープマン指揮カメラータ・ザルツブルクによる演奏会の放送である。曲目は、オールモーツァルトプログラムで、若い頃の作品2曲(交響曲第20番とファゴット協奏曲)それに晩年の作品2曲(フリーメーソンのための葬送の音楽とクラリネット協奏曲)の合計4曲である。


 指揮のトン・コープマン(1944年生まれ)はオランダ出身。古典学を修めた後、アムステルダム音楽院でオルガンとチェンバロを学び、音楽学をアムステルダム大学で学ぶ。1979年にアムステルダム・バロック管弦楽団を創設。1992年にはアムステルダム・バロック合唱団を併設し、高い評価を受ける。わけてもバッハの宗教曲やモーツァルトの交響曲の演奏・録音を通じて、オリジナル楽器演奏運動の先駆けとなる。ノリントン、ガーディナー、インマゼールといった指揮者たちが古楽のアプローチでロマン派音楽にも進出したのに対し、コープマンは、ハイドンやモーツァルトの作品は古典派ピッチではなくバロック・ピッチで演奏・録音を行い、ベートーヴェン以降の音楽については、オリジナル楽器アンサンブルで演奏することはない。コープマンはバッハのカンタータ全曲録音を2005年に完了した他、バッハのオルガン作品全集の録音を3度目の挑戦で成し遂げた。ソリストや指揮者としての数々の録音によって、数多くの受賞歴を持つ。

 カメラータ・ザルツブルクは、オーストリアのザルツブルクを拠点とする室内オーケストラで、指揮者でありモーツァルテウム音楽院の院長でもあったベルンハルト・パウムガルトナー(1887年―1971年)により1952年に創立された。以前は、モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカ・ザルツブルクあるいはカメラータ・アカデミカ・ザルツブルクと呼ばれていた。メンバーはモーツァルテウム音楽院の教授と学生たち。①モーツァルトに最適な室内オーケストラの編成②パウムガルトナーという優れた指揮者③モーツァルトをよく理解している優秀なメンバー④ザルツブルクという好条件に恵まれたこと、などでカメラータ・ザルツブルクは急速にその活動を内外に広げた。特に、モーツァルトの初期の作品や全集など、数多くのレコーディングを行った。1971年のパウムガルトナーの死去以降は、ウルス・シュナイダー、アントニオ・ヤニグロ、シャーンドル・ヴェーグ、ロジャー・ノリントンが首席指揮者を務めた。


①モーツァルト:交響曲 第20番 ニ長調 K.133

 モーツァルト:交響曲 第20番 ニ長調 K.133は、弦楽とオーボエ2、ホルン2、トランペット2の楽器編成で全4楽章で構成されている。演奏時間は約28分。1772年7月、16歳の頃に作曲された。何故モーツァルトがこの交響曲を作ろうとしたのかは分かっていないが、トランペット2本が加えられていることから何かの祝祭イベントのために作曲したのかと推測されている。

 今夜の、この曲でのトン・コープマン指揮カメラータ・ザルツブルクの演奏は、躍動感がひと際印象に残る演奏で、その華やかで生き生きとした演奏を聴いていると、「何かの祝祭イベントのために作曲されたのでは」とい話が真実味を持って聴こえてくる。コープマンの指揮ぶりは、歳を感じさせない実にキビキビとしたもので、晩年の作品とは異なる、モーツァルトの原点ともいうべき簡素な響きを我々リスナーに余すところなく届けてくれた。


②モーツァルト:ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191

 モーツァルト:ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191は、モーツァルトが18歳の時の作品で、古今のファゴット協奏曲の中で最もよく知られた作品。この協奏曲が作曲された事情や初演についてはわかっていないが、1774年6月4日にザルツブルクで完成しており、ザルツブルクの宮廷楽団員のために書かれたと考えられている。3楽章からなり、演奏時間は約17分。

 ファゴットのリッカルド・テルツォ(1990年生まれ)は、イタリアのパレルモ出身。7歳よりマウリッツィオ・バリジオーネの下でファゴットを学び始める。同時に作曲とピアノを学び、ピアノではディプロムを取得。その後、モーツァルテウム音楽大学においてマルコ・ポスティンゲル、ミュンヘン国立音楽大学においてダーク・イェンセンに師事。2009年よりグスタフ・マーラー・ユーゲントオーケストラに参加。2010年よりモーツァルテウム管弦楽団の首席奏者を務める。ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、チューリッヒ歌劇場等に首席奏者として客演。また「ロッシーニ国際ファゴットコンクール」、「IDRS国際ダブルリードコンクール」をはじめ、その他多くの国際コンクールで第1位。毎夏、オーストリアのバード・ゴイザーンやサルツブルク市内で行われるマスタークラスで講師を務める。2018年よりライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の第一首席奏者を務める。

 今夜の、この曲でのリッカルド・テルツォのファゴットは、一音一音を実に丁寧に、しかも明確に弾きこなし、ファゴットが持つ独特の音の奥深さをものの見事に表現し尽くしていた。完璧な技巧力に加え、どことなく、ほのぼのとした情感も巧みに醸し出すと同時に、何かユーモラスな一面も持ち合わせたその演奏能力の高さには感心させられた。


④モーツァルト:フリーメーソンのための葬送の音楽 ハ短調  K.477(479a)

 モーツァルト:フリーメーソンのための葬送の音楽 ハ短調  K.477(479a)は、1785年(29歳)にウィーンで作曲された。モーツァルト自身が作品目録に「同志メクレンブルクと同志エステルハージの死去に際してのフリーメイソンの葬送音楽」と書いている。モーツァルトはフリーメイソンのための音楽を多く作曲しているが、同作は最も有名な作品として広く知られ、後に作曲された「レクイエム」(1791年)に通じるものがある。

 今夜の、この曲でのトン・コープマン指揮カメラータ・ザルツブルクの演奏は、いたずらに悲壮感を強調するのでなく、この曲の持つ奥深さをさりげなく表現したことが、逆に鎮魂の思いを強く印象付ける結果になったようだ。曲は 69小節の短い曲で、3部で構成されている。教会作品でこそないが、宗教的な楽曲である。コープマンの指揮は、静かに深く深く沈潜し、モーツァルトの哀悼の思いを見事に描き切っていた。


⑤モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622

 モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622は、1791年(モーツァルトの死の年=35歳)に作曲された。モーツァルトが協奏曲のジャンルで遺した最後の作品であり、クラリネットのための唯一の協奏曲。当時、ウィーン宮廷楽団に仕えていたクラリネットとバセットホルンの名手のシュタードラーのために書かれた作品。当時まだ新参の楽器であったクラリネットの特性をモーツァルトはすでによく捉えており、特に最低音近くの音域を十分に鳴り響かせ、高音域との対照効果を巧みに引き出している。

 クラリネットのダニエル・オッテンザマー(1989年生まれ)は、オーストリア、ウィーン出身。ウィーン音楽演劇大学でヨナン・ヒントラーに学び、2006年にウィーン・フィルおよびウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団。2009年よりには両団の首席クラリネット奏者となり、ソリスト、室内楽の分野で幅広く活躍し、世界各国の主要なコンサートホールに出演。2009年「カール・ニールセン国際クラリネットコンクール」の入賞をはじめとする国際コンクールでの数々の輝かしい受賞歴を持つ。2010年ベルリン・ドイツ交響楽団の首席奏者に就任。そして2011年ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者オーディションに合格。2005年には、ともにウィーン・フィルの首席奏者である父親のエルンストと兄のダニエルとのトリオ“クラリノッッティ”を結成。このトリオのために多くの作品が作曲され、CDも発売されている。また2007年に創設された、ウィーン・フィル公認の室内アンサンブル「ザ・フィルハーモニクス」のメンバーであり、クラシック音楽のみならず、ジャンルを超えた音楽に幅広く取り上げている。

 今夜の、この曲でのダニエル・オッテンザマーの演奏は、輝かしくも伸び伸びとしたクラリネットの音色を自在に弾き分け、自己の世界を思う存分描き切っていた。第二楽章で披露した哀愁を含んだ巧みなクラリネット独特な表現も、リスナーにとって心地良いことこの上ない。今夜の演奏を聴くと、日本にも多くのダニエル・オッテンザマーのファンがいることが十分にうかがい知れる。


 今夜のNHK-FM「ベストオブクラシック」の放送は、モーツァルトの生涯に思いを馳せ、ヨーロッパの古を今に伝える優れた演奏の数々を聴くことができた。これが揺らがぬ”伝統の響き”というものなのであろう。(蔵 志津久)
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-07-24 09:40:59 | コンサート情報



<コンサート情報>



~ザハール・ブロン&服部百音 ヴァイオリン・デュオ・コンサート~

プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.80
シマノフスキ:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Op.9
シマノフスキ:神話 Op.30 より アレトゥーサの泉
ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ イ長調 Op.21
モーツァルト:コンチェルタンテ(原曲:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448)
ショスタコーヴィチ:2台のヴァイオリンのための5つの小品

ヴァイオリン:ザハール・ブロン
       服部百音

ピアノ:イリーナ・ヴィノグラードワ

会場:宗次ホール

日時:2023年8月26日(土) 午後2時

 ヴァイオリン:ザハール・ブロン(1947年生まれ)は、カザフスタン、ウラリスク出身。ロシアで育ち、 現在はスイス在住。オデッサの音楽学校に学んだ後、1960~1966年にグネーシン音楽大学でボリス・ゴールドシュタインに、1966~1971年にモスクワ音楽院でイーゴリ・オイストラフに、それぞれ師事。1971~1974年には同音楽院でオイストラフの助手を務めた後、ノヴォシビルスク音楽院で教鞭をとり、1989年にはリューベック音楽院の教授、以後、ロンドン王立音楽アカデミー、ロッテルダム音楽院、ソフィア王妃音楽大学(マドリード)などでもヴァイオリンを教えた。2002年には「チャイコフスキー国際コンクール」、2004年には「ジュネーヴ国際音楽コンクール」の審査員を務めた。特に指導者としての力量が国際的に著名で、現在は、ケルン音楽院、チューリッヒ音楽院教授を務めている。また、彼のスイスの私塾は「ザハール・ブロン・ヴァイオリン ・アカデミー」と呼ばれている。主な門下生には、ヴァディム・レーピン、マキシム・ヴェンゲーロフ、エルジャン・クリバエフら、日本人では樫本大進、庄司紗矢香、川久保賜紀、神尾真由子、木嶋真優、服部百音などがいる。

 ヴァイオリンの服部百音(1999年生まれ)は、6歳で桐朋学園附属子供のための音楽教室に入室。8歳でオーケストラと初共演。桐朋学園大学ソリストディプロマコースおよびスイスの「ザハール・ブロン・ヴァイオリン・アカデミーで学ぶ。2015年「ボリス・ゴールドシュタイン国際ヴァイオリン・コンクール」(スイス)でグランプリを受賞。2016年デビューCD「ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、ワックスマン:カルメン幻想曲」をリリース。第27回(2017年)「新日鐵住金音楽賞」(フレッシュアーティスト賞)、第30回(2019年度)「出光音楽賞」、第21回(2019年度)「ホテルオークラ音楽賞」を受賞。

 ピアノのイリーナ・ヴィノグラードワは、モスクワ音楽院および同大学院卒業。レフ・ニコラーエヴィッチ・ナウーモフに師事。1973年「プラハ国際ピアノ・コンクール」入賞。大学院卒業後はナウーモフの助手として後進の指導に当たった。また同時に、リサイタル、オーケストラとの共演、アンサンブルなどの活発な活動を行ってきた。その後、世界的なヴァイオリン教授であるザハール・ブロンに認められ、ブロンや門下生との共演を重ねている。マキシム・ヴェンゲーロフ、ワディム・レーピン等とのレコーディングにも参加。リューベック音楽大学を経て、ケルン音楽大学教授。
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●クラシック音楽●新譜CD情報

2023-07-21 09:38:47 | 新譜CD情報



<新譜CD情報>



~グリモーのシューマン(クライスレリアーナ)とブラームス(3つの間奏曲と9つの歌曲)~



シューマン:クライスレリアーナ 作品16
ブラームス:3つの間奏曲 作品117
      9つの歌曲 作品32
        
        第1曲:夜なかにはね起きて
        第2曲:あなたの所へはもはや行くまいと
        第3曲:私は歩き廻る
        第4曲:私のそばで音立てた小川は
        第5曲:ああ、悲しいこと、お前はまたもや
        第6曲:私が思い違いをしていると
        第7曲:きびしいことを言おうと
        第8曲:私と恋人は一緒に
        第9曲:私の女王よ

ピアノ:エレーヌ・グリモー

バリトン:コンスタンティン・クリンメル

CD:ユニバーサルミュージック UCCG-45083

 ピアノのエレーヌ・グリモー(1969年生れ)は、フランス、エクサンプロヴァンス出身。1982年13歳でパリ国立高等音楽院に入学。1985年ラフマニノフのピアノソナタ第2番の録音により、「モントルーディスク大賞」を受賞。1987年よりプロのソリストとしてパリで活動。21歳でアメリカ合衆国に移住。ドイツ・ロマン派音楽を得意としていたが、その後は、フランスの作曲家の作品などにも取り組む。

 バリトンのコンスタンティン・クリンメル(1993年生まれ)は、ドイツ系ルーマニア人。2018年「ヘルムート・ドイチュ国際歌曲コンクール」優勝。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-07-20 09:44:18 | コンサート情報



<コンサート情報>



~尺八とマリンバによる世界最小オーケストラ 藤原道山×SINSKE  ”東方見聞録”~

冨田 勲:新日本紀行
伊福部 昭:「日本組曲」より
ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル:クープランの墓
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より“ある晴れた日に”
民謡メドレー ほか

尺八:藤原道山

マリンバ:SINSKE

会場:ザ・フェニックスホール

日時:2023年10月5日(木) 午後1時30分

 尺八の藤原道山(1972年生まれ)は、東京都出身。箏曲家の祖母の影響を受けて10歳より尺八を始める。14歳から人間国宝山本邦山に師事、都山流師範となり以後、道山を名のる。東京芸術大学音楽学部邦楽科卒業。在学中に安宅賞を受賞。卒業の際、皇居にて上皇后美智子ほか皇族の前で演奏する。大学時代には作曲専攻生との実験的な音楽への製作や、オーケストラとの共演を行うなど様々な音楽活動を行うほか、雅楽、能楽、狂言、囃子、箏曲などのさまざまな邦楽器にも興味を持ち研鑽を積む。1997年同大学院音楽研究科修了。その後、同大学の非常勤講師を2年間務める。2012年よりマリンビストSINSKEとユニット結成。2021年令和二年度第71回「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞。2022年東京藝術大学音楽学部准教授に就任。

 マリンバのSINSKE(しんすけ、1975年生れ)は、東京都出身。桐朋学園大学音楽学部打楽器科を卒業後、単身留学しブリュッセル王立音楽院およびアントワープ音楽院の打楽器科を首席で卒業。ドイツ・シュトゥットガルトの第2回「世界マリンバコンクール」第2位。ベルギー「ヌゥート音楽コンクール」にてマリンバ奏者として初めて優勝。オランダ「トロンプコンクール」にて第3位。ヤマハはSINSKEのために世界で一台のEMP(Electric Mallet Percussion)と呼ばれるMIDIマリンバを開発。2003年に日本に帰国。アルバム「インフィニティ」でメジャーデビュー。デビュー10周年となる2013年には日本舞踊協会新作公演「創国紀」(国立劇場)の音楽・演奏を担当。近年は、ソロ活動と平行して尺八演奏家「藤原道山」や女性マリンバ奏者「三村奈々恵」とのデュオ活動にも精力的に取り組む。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-07-19 09:50:37 | コンサート情報



<コンサート情報>



~神尾真由子with Friends 協和する弦楽クインテットの魅力~

ボッケリーニ: 弦楽五重奏曲 op.11-5 G.275
シューベルト: 弦楽五重奏曲 ハ長調 op.163 D956

出演:神尾真由子with Friends
 
      ヴァイオリン:神尾真由子
               滝 千春
      ヴィオラ:横溝耕一
      チェロ:富岡廉太郎
          横坂 源
      
会場:住友生命いずみホール

日時:2023年8月4日(金) 午後7時

 ヴァイオインの神尾真由子(1986年生れ)は、大阪府豊中市出身。10歳でソリストとしてデビュー。2000年ニューヨークへ留学。「ヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディション」第1位。2002年日本に帰国し、桐朋女子高等学校初の特待生となる。2003年第13回「出光音楽賞」を受賞。2004年「ダヴィッド・オイストラフ国際ヴァイオリン・コンクール」第1位。2007年第13回「チャイコフスキー国際コンクール」ヴァイオリン部門で優勝(ヴァイオリン部門での日本人の優勝は1990年の諏訪内晶子以来2人目)。「大阪府知事賞」、「京都府知事賞」、第13回「出光音楽賞」、「文化庁長官表彰」、「ホテルオークラ音楽賞」はじめ数々の賞を受賞。近年室内楽にも力を入れ、「神尾真由子 室内楽プロジェクト」として様々な演奏家と共演。2020年からは桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)時代の同級生4人が神尾のもとに集結「神尾真由子 with Friends」を結成。メンバーは神尾真由子、滝千春(ヴァイオリン)、横溝耕一(ヴィオラ)、横坂源、富岡廉太郎(チェロ)。“元クラスメイト”の彼ら全員が現在、オーケストラのトップ奏者、ソリストとして活躍している名手達。信頼する仲間と室内楽を奏でること、室内楽の親密な関係でうまれる音、それぞれの音がひとつにまとまり美しいハーモニーとなる瞬間の魅力をお届けしたいと意気込む。
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●クラシック音楽●新刊情報

2023-07-18 09:36:00 | 新刊情報



<新刊情報>




書名:音楽と生命

著者:坂本 龍一、福岡 伸一

発行:集英社

 「教授」と「ハカセ」──長年親交のある二人による初の人生論。80年代、テクノミュージックで一世を風靡した「教授」こと坂本龍一。以来、常に第一線で活躍し続けてきたが、近年は電子音楽とは対照的な自然の「ノイズ」を取り入れたサウンドを次々と発表。一方、「ハカセ」こと福岡伸一も、分子生物学者としてDNA解析に象徴される要素還元主義的な科学を追求してきたが、その方法論に疑問を抱き、生命現象を一つの「流れ」として捉える独自の生命哲学、動的平衡論を確立。20年来の付き合いという両者が、さまざまな挫折を経験しながら現在に至るまでの道のりを語り合う。コロナ・パンデミック以降、死生観が劇的に変わる今だからこそ、私たちの生を輝かせることに目を向けたい。音楽、アート、哲学、科学など、多方面に造詣の深い二人が、対話を重ねた末にたどり着いたものとは──。


書名:モーツァルトは生きるちから~藤田真央の世界~

著者:伊熊 よし子

発行:ぶらあぼホールディングス

販売:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

 ソニー・クラシカルからモーツァルトのピアノ・ソナタ全集をリリースし話題となった藤田真央に、音楽ジャーナリストの伊熊よし子がロングインタビューを敢行。東京、そしてベルリンから届く藤田の生の声をもとに書き上げたライフストーリー。幼少期をはじめとした、藤田の貴重なプライベート写真なども多数掲載しているほか、共演アーティストからの特別寄稿も併載(牛田智大、佐藤晴真、高関健、服部百音、山田和樹)。


書名:ミュージック・ヒストリオグラフィー ~どうしてこうなった?音楽の歴史~

著者:松本直美

発行:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

 バロック時代のバッハ、古典派のモーツァルト、ロマン派の幕を開けたベートーヴェン・・・音楽史を少しでも習ったことがある人には馴染みのある時代区分や作曲家の名前。肖像画とセットで思い浮かべる人や、「伝記を読んだことがある!」という人も多いはず。けれど、 よく見ると“音楽史”には日本史や世界史ではありえない、おかしな点がたくさんある。どうしてこうなった?そして、音楽史はこれからどう書かれるのか?同書では過去から現在までの「音楽史の書かれ方」を振り返り、新たな視点でアップデートし続ける音楽史の最前線をご案内。【著者】松本 直美 Naomi Matsumoto
京都市生まれ。英国ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ音楽学部上級講師。専門は歴史的音楽学、特にオペラ研究。愛知県立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業、トリニティ音楽大学大学院声楽専攻修了、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ音楽学部大学院修士課程ならびに博士課程修了。17世紀及び19世紀のオペラの研究でこれまでにOverseas Research Scheme Award、British Federation of Women Graduates National Award、Gladys Krieble Delmas Foundation British Award、イタリア ルッカ市ロータリークラブ プッチーニ研究コンクール特別賞などを受賞。


書名:やっぱレコードもろオモロい~ヴィニジャンが知りたかった山ほどのこと~

著者:田中伊佐資

編者;stereo

発行:音楽之友社(ONTOMO MOOK)

 月刊誌「stereo」の人気連載「ヴィニジャン」をまとめたムック化の第3弾。“ヴィニジャン”とはヴィニール・ジャンキーズの略でレコード(Vinyl)を激しく愛するフリークたちのこと。著者の田中伊佐資氏自身のことであり、また著者の興味の先でもある。レコードのことなら何でも知りたい著者の行動を記した内容で、大きなテーマは「レコードを買って・聴いて・もっと音を良くする」こと。レコードショップ巡りをはじめ、カートリッジやケーブルなど再生の装置にまつわる話など、興味はあらゆる方向に向けられている。連載回数を重ねて話はディープになっていき、情報はマニア向けなのだが、田中氏独自の軽妙な文体は、レコード初心者であっても読みやすく笑いも誘い、エッセイとしても楽しく読める。「stereo」誌掲載時は1回あたりモノクロ4ページであったところをカラー6ページに組み直し、カラー化によりレコードの特徴であるジャケットデザインも映える。
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