【歴史的名盤CD選集】
~アルトゥール・シュナーベルのシューベルト:ピアノ独奏曲集~
シューベルト:ピアノソナタ第17番 D.850
楽興の時 D.780
行進曲 ホ長調 D.606
ピアノソナタ第20番 D.959
ピアノソナタ第21番 D.960
ピアノ:アルトゥール・シュナーベル
録音:1937年&1939年、英ロンドン、No.3スタジオ、Abbey Road
CD:EMI RECORDS CHS 7 64259 2(2枚組)
このCDは、アルトゥル・シュナーベル(1882年―1951年)がシューベルトのピアノ独奏曲を収めた2枚組のアルバムである。シュナーベルというと世界で最初の「ベートーヴェン・ピアノソナタ全集」録音の完成者として著名であり、ベートーヴェンのピアノ協奏曲も全5曲を録音している。このほか、いくつかのモーツァルトのピアノ協奏曲やピアノソナタも遺しているが何と言っても“ベートーヴェン弾き”としての印象が強い。そんなシュナーベルがシューベルトのピアノ独奏曲に取り組んだのがこのCD2枚組のアルバム。選ばれた3つのシューベルトのピアノソナタは、どちらかというと、いずれもベートーヴェン的な雰囲気を持った曲であり、如何にもシュナーベルらしさを偲ばせる。ピアノソナタ第17番は、しっかりとした曲の骨格を十全なテクニックで鮮やかに表現する。ピアノソナタ第20番は、最後の3大ピアノソナタの2番目の曲でシューベルトの独自性が存分に発揮されている曲。シュナーベルはこのピアノソナタを陰影をはっきりとさせた雄弁な語り口で弾き切る。最後のピアノソナタ第21番でシュナーベルは、一音一音を確かめるかのようにシューベルトの世界を描き出す。そこには、薄っぺらな感傷なぞ微塵もない。心の奥底から絞り出すような息づかいが聴こえてくるだけだ。
(蔵 志津久)