★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

●クラシック音楽●新譜CD情報

2024-07-26 09:46:06 | 新譜CD情報



<新譜CD情報>



~ウィーン・フィル首席フルート奏者 ワルター・アウアーによる色とりどりの名品5篇~



プーランク:フルート・ソナタ FP 164
フォーレ:幻想曲 Op.79
エネスク:カンタービレとプレスト
タファネル:「魔弾の射手」による幻想曲
尾高尚忠:フルート協奏曲 Op.30b(尾高惇忠編曲)

フルート:ワルター・アウアー

ピアノ:沢木良子

CD:キングインターナショナル KKC-117

 このCDは、ウィーン・フィル首席フルート奏者のワルター・アウアーが、沢木良子のピアノ伴奏でキング関口台スタジオで収録したセッション録音盤。長い演奏キャリアの中で最も得意とし愛奏してきたレパートリーをアルバム「Colors」に収録。

 フルートのワルター・アウアー(1971年生まれ)は、オーストリア、フィラッハ出身。ケルンテン州立音楽院、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学、また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のオーケストラ・アカデミーの奨学生として学ぶ。ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、ハノーファーの北ドイツ放送交響楽団の首席フルート奏者を経て、2003年よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団およびウィーン国立歌劇場管弦楽団の首席フルート奏者を務める。録音は、ヨーロッパではBIS、Tudor、Paladino、Sonusから、日本ではカメラータ・トウキョウ、ナミ・レコード、マイスターミュージックからリリース。後進の育成にも力を注いでおり、世界各国でマスタークラスやワークショップを開催している。2012年から2018年までウィーン国立音楽大学にて教鞭を執り、また尚美学園大学、神戸女学院大学で客員教授を務めた。2019年、ウィーン国立音楽大学での指導を再開し、同大学の教授に就任している。2022年、オーストリア大統領よりオーストリア科学・芸術名誉十字章が授与。

 ピアノの沢木良子は、桐朋女子高等音楽学校音楽科卒業、同年渡仏。パリ国立高等音楽院ピアノ科を最優秀で、室内楽科を満場一致の最優秀で卒業。同時にエクリチュール科において高等ディプロム取得。2000年文化庁在外芸術家研修員となりさらに研鑽を積む。1989年、1994年「PTNAピアノコンペティション」金賞、サンマリノ音楽祭に招待。1999年「Forum de Normandie室内楽コンクール」3位、2002年「ブルガリア・アルベール・ルーセル国際コンクール」3位、翌年「ヴィットリオ・グイ国際室内楽コンクール」ファイナリスト。同年講習会先のイスラエルにて「最優秀ロマン派演奏賞」受賞。2006年帰国後はソロリサイタルを開催、またPMF(パシフィックミュージックフェスティバルin札幌)の公式ピアニストを務め、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団やウィーンフィルハーモニー管弦楽団のメンバーと共演するなど、現在多方面で活動を展開している。桐朋学園大学音楽学部非常勤講師。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2024-07-25 09:43:20 | コンサート情報



<コンサート情報>



~「ジュネーヴ国際音楽コンクール」優勝者 上野通明のオール・バッハ・プログラム~

バッハ:無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV 1009
    無伴奏チェロ組曲 第2番 二短調 BWV 1008
    無伴奏フルートのためのパルティータ BWV 1013(チェロ版、二短調)
    無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV 1010

会場:北九州市立響ホール

日時:2024年9月23日(月/休) 午後3時

 「ジュネーヴ国際音楽コンクール」「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際音楽コンクール」で日本人として初の優勝を果たし、現在、国際舞台で活躍する話題のチェリスト上野通明の演奏会。

 チェロの上野通明は、1995年パラグアイ生まれ。5歳よりチェロを始め、幼少期をスペインで過ごす。桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コース全額免除特待生。2009年、13歳で第6回「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際音楽コンクール」にて日本人初の優勝。2010年第6回「ルーマニア国際音楽コンクール」最年少第1位。2012年第10回「東京音楽コンクール」第2位。2014年第21回「ヨハネス・ブラームス国際コンクール」第1位。2015年第6回「岩谷時子賞・奨励賞」を受賞。同年秋よりデュッセルドルフ音楽大学に留学。2016年「青山音楽賞」新人賞を受賞。2018年第11回「ヴィトルト・ルトスワフスキ国際チェロコンクール」第2位。2021年「ジュネーブ国際音楽コンクール」チェロ部門で優勝(この部門で日本人が優勝するのは初めて)。2022年文化庁長官より表彰される。「出光音楽賞」「ホテルオークラ音楽賞」「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞。現在、ドイツ、ルーマニア、スロヴァキア等ヨーロッパ各地でも活発に演奏活動をしている。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2024-07-24 09:53:10 | コンサート情報



<コンサート情報>



~アントニオ・パッパーノ指揮ロンドン交響楽団とユジャ・ワン 2024年来日公演~

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第1番 嬰へ短調 op.1
マーラー:交響曲 第1番 ニ長調「巨人」

指揮:アントニオ・パッパーノ

ピアノ:ユジャ・ワン

会場:アクロス福岡

日時:2024年9月24日(火) 午後7時

 22年にもわたり英国ロイヤル・オペラハウスの音楽監督を務め、英国女王よりナイトの称号も受けている指揮者のアントニオ・パッパーノは、シンフォニーの分野でもベルリン・フィルをはじめとする世界第一線のオーケストラを指揮するなど多方面で活躍。一方、ドイツ・グラモフォンとの独占契約で名盤も多く、クラシック界のスター・ピアニストのユジャ・ワンは、圧巻の技巧と彼女にしか表現できない世界観をもって魅了してやまない。

 指揮のアントニオ・パッパーノ(1959年生まれ)は、イタリア出身。アメリカに渡りピアノや作曲を学んだ後、各地の歌劇場で研鑽を積む。1987年にノルウェー歌劇場にデビューし、1990年からは音楽監督に就任。1992年ベルギー・ブリュッセルにあるベルギー王立歌劇場(モネ劇場)の音楽監督に就任。1999年バイロイト音楽祭に楽劇「ローエングリン」を振ってデビュー。2002年からイギリスのロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督、さらに2005年からはイタリアのローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団の音楽監督を務めている。そして、2023年サイモン・ラトルの後任としてロンドン交響楽団 (LSO) の首席指揮者に就任。イタリア共和国功労勲章を受章。エリザベス女王よりナイトに叙せられている。

 ピアノのユジャ・ワン (1987年生れ) は、中国、北京出身。北京の中央音楽学院で学ぶ。2003年ヨーロッパデビューに続き、2005年アメリカでズーカーマン指揮オタワ・ナショナル・アーツ・センター管弦楽団とメジャー・コンサート・デビューを果たす。以後”スター誕生”と注目され、2006年最も有望な21歳以下のピアニストに与えられる「ギルモア・ヤング・アーティスト賞」受賞。以降、シカゴ響、ニューヨーク・フィル、ボストン響、サンフランシスコ響、サンクトペテルブルク・フィル等の一流オーケストラへの客演およびリサイタルなどで高い評価を受けている。2024年第66回「グラミー賞」(最優秀クラシック器楽ソロ部門)受賞。


【アントニオ・パッパーノ指揮ロンドン交響楽団とユジャ・ワン 2024年来日公演】

福岡公演:2024年9月24日(火) アクロス福岡
大阪公演:2024年9月25日(水) ザ・シンフォニーホール
東京公演:2024年9月26日(木) サントリーホール
東京公演:2024年9月27日(金) サントリーホール
札幌公演:2024年9月29日(日) 札幌コンサートホールkitara
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●クラシック音楽●NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー(若い弦楽四重奏団のホープ クァルテット・インテグラ演奏会)

2024-07-23 09:39:34 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー



<NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー> 




~若い弦楽四重奏団のホープ クァルテット・インテグラ演奏会~



ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 作品10
バルトーク:弦楽四重奏曲 第5番
ベートーベン:弦楽四重奏曲 「ラズモフスキー」第3番 ハ長調 作品59-3

弦楽四重奏:クァルテット・インテグラ

収録:2024年5月30日、トッパンホール

放送:2024年07月05日 午後7:30~午後9:10


 弦楽四重奏団のクァルテット・インテグラは、2015年桐朋学園に在学中のメンバーによりに結成された、メンバーの年齢が全員二十代という若いカルテットである。2021年「バルトーク国際コンクール」弦楽四重奏部門第1位。2022年「ARDミュンヘン国際音楽コンクール」弦楽四重奏部門第2位、併せて、聴衆賞を受賞。第8回「秋吉台音楽コンクール」弦楽四重奏部門第1位、併せて、ベートーヴェン賞、山口県知事賞を受賞。キジアーナ音楽院夏期マスタークラスにて最も優秀な弦楽四重奏団に贈られる「Banca Monte dei Paschi di Siena賞」を受賞。クライブ・グリーンスミス氏、ギュンター・ピヒラー氏の指導を受ける。第41回霧島国際音楽祭に出演し、「堤剛音楽監督賞」及びに「霧島国際音楽祭賞」を受賞。これまでに、磯村和英、堤剛、練木繁夫、山崎伸子各氏、クァルテット・エクセルシオと共演し好評を博す。NHK「クラシック倶楽部」、「リサイタル・パッシオ」、「ららら♪クラシック」等に出演。サントリーホール室内楽アカデミー第5,6期フェロー。磯村和英、山崎伸子、原田幸一郎、池田菊衛、花田和加子、堤剛、毛利伯郎、練木繁夫各氏に師事。公益財団法人松尾学術振興財団より助成を受ける。2022年秋よりロサンゼルスのコルバーンスクールにレジデンスアーティストとして在籍。現在、クライブ・グリーンスミス氏、マーティン・ビーヴァー氏に師事。

   三澤響果(第1ヴァイオリン)
   菊野凜太郎 (第2ヴァイオリン)
   山本一輝 (ヴィオラ)
   パク・イェウン(チェロ)


 ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 作品10は、1893年に作曲された。同年12月29日にパリの国民音楽協会にてイザイ四重奏団によって初演された。当初、ドビュッシーは、弦楽四重奏曲を2点を作曲する予定であったが、構想がまとまったのは同作のみであった。循環形式によって各楽章が関連付けられている点に、ドビュッシーが敬慕したセザール・フランクからの影響が看て取れる。全般的に旋法的であるうえに、ポリフォニックというよりホモフォニックな傾向ゆえに、しばしばグリーグの弦楽四重奏曲が刺戟になったと指摘されている。ほかにも、ボロディンやジャワのガムランからの影響を見る向きもある。

 今夜のクァルテット・インテグラのドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 作品10の演奏は、この曲の輪郭をくっきりと際立たせた明確な演奏内容がリスナーまで届き、聴いていて心地よい雰囲気に満ち溢れていた。この曲は、往々にして、曖昧模糊とした演奏内容が評価される傾向にあると思うのだが、クァルテット・インテグラはそんなことにはお構いなく、若々しく、エネルギッシュな演奏内容を前面に立て、曲全体の活力が何の屈託もなく表現できていた点が高く評価できる。このように書くと何かパワーが前面に出た演奏のような印象を与えると思うが、繊細で瑞々しく、ドビュッシーの心の琴線に触れる面も十分に披露できた演奏内容ではあった。


 バルトークの弦楽四重奏曲第5番Sz.102は、1934年に作曲された。1920年代のバルトークは急進的に無調へ突き進んでゆく作風の作品を書き上げ、弦楽四重奏曲第3番(1927年)、第4番(1928年)はその典型的な作例となっている。しかし1930年以降は、三和音による終止など伝統的な和声への回帰の傾向が見られるようになる。第5番は、全部で5つの楽章からなり、それまでの表現主義的な傾向を捨て去り、再びロマン派的な作風への回帰が見られる作品。調性感の明確さが際立つが、難解な曲であることには変わりはない。 独自の様式感に、より清澄な音響を盛り込んだ、いわゆる晩年様式を予言する作品とも言われている。

 今夜のクァルテット・インテグラのバルトーク:弦楽四重奏曲 第5番の演奏は、非常に安定感のある4つの弦の響きが美しく交差し、円熟味が加わったバルトークの弦楽四重奏曲の世界を巧みに描き切っていた。4つの弦がそれぞれの自己主張を十分に展開するのだが、最終的には、一つのまとまりのあるバルトークの世界観を描き切る。バルトークの6曲の弦楽四重奏曲は、ベートーヴェンの16曲の弦楽四重奏曲と並び称される弦楽四重奏曲の最高峰に位置付けられている作品だが、クァルテット・インテグラはいたずらに神聖化せず、一音一音を明確に演奏することによって、この曲の持つ内容を、時には若々しくダイナミックに表現し、全体として緊張感あるものに仕上げることに成功したようだ。この曲もバルトークの弦楽四重奏曲独特の晦渋さに覆われているが、それに挑戦するかのようなクァルテット・インテグラの情熱的演奏に思わず引き込まれ、聴き込むこととなった。


 ベートーベン:弦楽四重奏曲 「ラズモフスキー」第3番 ハ長調 作品59-3は、1806年に作曲された。ベートーヴェンはラズモフスキー伯爵によって弦楽四重奏曲の依頼を受け、作曲された3曲の弦楽四重奏曲はラズモフスキー四重奏曲作品59として出版された。これはその3曲目に当たるのでラズモフスキー第3番と呼ばれる。これらの3曲は作品18の6曲とは作風・スケールなどによって大きな隔たりを持つ。形式の拡大、徹底した主題労作や統一、またロシア民謡の採用もみられ、今までにない異例の長大さを示す。それはもはや室内楽の規模ではなく、交響的な音世界を表現している。特にこの第3番は、堂々とした構成と曲想を持ち、フーガ的な楽章によって全曲を締めくくる。

 今夜のクァルテット・インテグラのベートーベン:弦楽四重奏曲 「ラズモフスキー」第3番 ハ長調 作品59-3の演奏は、比較的軽快なテンポで弾き進む。少しの淀みもなく、この大曲をしっかりと自らの感覚で消化して、リスナーの前に提示する。このため、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲という高い峰が、いつもより身近なものに感じられた。要するに今夜の演奏は、新たに現代的な衣装を纏ったベートーヴェン像が生まれ出たような演奏にであったように感じられた。古色蒼然としたベートーヴェンでもなく、あるいは、ベートーヴェンをただ畏敬するだけでなく、ベートーヴェンの曲が根源的に持つパワーを素直に表現し得た演奏として評価したい。(蔵 志津久)
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●クラシック音楽●コンサート情報

2024-07-22 09:48:30 | コンサート情報



<コンサート情報>



~エレーヌ・グリモー 8年ぶりの来日公演 ピアノリサイタル~

ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109
ブラームス : 3つの間奏曲 Op.117
ブラームス : 7つの幻想曲集 Op.116
J.S.バッハ(ブゾーニ編曲): シャコンヌ~無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番BWV1004より

ピアノ:エレーヌ・グリモー

会場:浜離宮朝日ホール

日時:2024年9月25日(水) 午後7時

 エレーヌ・グリモー、2016年以来、8年ぶりとなる今回の来日リサイタル。1984年に15歳で衝撃的なデビューをして以来、数々の著名指揮者やオーケストラ、一流の音楽家と共演を重ねており、今もなお世界的ピアニストの一人として活躍を続けている。彼女は、絶滅危惧種のオオカミを保護する活動家や文筆家としての多才な一面ももっている。

 ピアノのエレーヌ・グリモー(1969年生れ)は、フランス、エクサンプロヴァンス出身。1982年13歳でパリ国立高等音楽院に入学。1985年ラフマニノフのピアノソナタ第2番の録音により、「モントルーディスク大賞」を受賞。1987年よりプロのソリストとしてパリで活動。21歳でアメリカ合衆国に移住。ドイツ・ロマン派音楽を得意としていたが、その後は、フランスの作曲家の作品などにも取り組む。

【エレーヌ・グリモー 2024年来日公演】

川崎公演:2024年9月28日(土) ミューザ川崎シンフォニーホール
名古屋公演:2024年9月29日(日) 愛知県芸術劇場・コンサートホール
NHK交響楽団との共演:2024年9月19日(木) サントリーホール
            2024年9月20日(金) サントリーホール
            2024年9月22日(日) あしかがフラワーパークプラザ(足利市民プラザ)
            2024年9月23日(月) 高崎芸術劇場
シンガポール交響楽団との共演:2024年10月19日(土) 京都コンサートホール
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