★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇新譜DVD情報

2013-04-30 10:47:04 | 新譜DVD情報

 

<新譜DVD情報>

 

~大植英次スペシャル(ファイナル)コンサート ブルックナー 交響曲 第8番~

ブルックナー:交響曲 第8番 ハ短調(ハース版)

指揮:大植英次  

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

録音:2012年3月31日、ザ・シンフォニーホール(ライヴ録音)

DVD:フォンテック FOVD102

 9年の間、音楽監督として大阪フィルを牽引してきた大植英次。音楽監督としてのファイナルシーズンの掉尾を飾るコンサートが2012年3月31日、ザ・シンフォニーホールにおいて開催された。このCDは、その時のライヴ録音盤。曲目は、ファンからのアンケートを基に決めた「ブルックナー交響曲第8番」。当初「ファイナルコンサート」と謳ってきたが、大植音楽監督の“別れを告げるようで辛い”という想いから、コンサートタイトルを「大植英次スペシャルコンサート」に変更したもの。
 

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2013-04-29 10:23:20 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~「全ロシア音楽コンクール」2010年優勝者ガラ・コンサート  ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・女声部門の覇者を迎えて~

スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番
ラフマニノフ:「楽興の時」より第1番/エチュード「音の絵」

ピアノ:エレーナ・ローシ(ピアノ部門第1位) 

アルヴォ・ペルト:ヴァイオリンとピアノのためのフラトレス
チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ/「なつかしい土地の思い出」より瞑想曲

ヴァイオリン:ドミートリー・スミルノフ(ヴァイオリン部門第2位<1位なし>)

ガスパール・カサド:無伴奏チェロのための組曲
ラフマニノフ:チェロとピアノのためのソナタ ト短調作品19より第3楽章アンダンテ
ロストロポーヴィチ:ユモレスク

チェロ:アレクサンドル・ラム(チェロ部門第1位)

ヴェルディ:オペラ「椿姫」より 第1幕 ヴィオレッタのアリア"ああ、そはかの人か~花から花へ"
ベッリーニ:オペラ「夢遊病の女」より アミナのアリア"ああ、信じられない"
プッチーニ:オペラ「つばめ」より マグダのアリア"ドレッタの美しい夢"

ソプラノ:ナタリヤ・ドミトリエフスカヤ(独唱部門・女声第1位)

会場:日経ホール

日時:2013年5月17日(金) 午後6時

 「全ロシア音楽コンクール」は、才能ある若い音楽家たちを見いだし、支援することを目的として、2010年3月4日よりロシア連邦政府によって開催。クラシックと民族音楽の各ジャンルで4年のサイクルで行われる。2010年は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、声楽の4つの部門で開催。2011年は、交響楽および合唱の指揮、室内楽演奏の3つの部門、2012年は吹奏楽、パーカッション、ハープ、オルガンの4部門、2013年は民族楽器の部門で行われる。この4年間が今後繰り返され、ロシアのすべての連邦地区で開催される。主催はロシア連邦文化省。今回は、2010年度の主な優勝者と最高位受賞者を迎えガラ・コンサートを開催する。厳しい登竜門を突破した今、ロシアで注目されている若き才能の饗宴。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2013-04-26 11:17:14 | 新譜CD情報

 

<新譜CD情報>

 

~ピリスのシューベルト:ピアノソナタ第16番/第21番~

シューベルト:ピアノソナタ第16番/第21番

ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス

録音:2011年7月、ハンブルク=ハールブルク

CD:ユニバーサルミュージック(ドイツ・グラモフォン)UCCG-1613(国内盤のみSHM-CD)

 自然に音楽が語りだす・・・・・・、ピリスの指先が紡ぐシューベルト。大ベスト・セラーとなった1996&97年録音の即興曲集から15年、待望のピリスによるシューベルトのピアノソナタ・アルバムの登場。シューベルトのピアノ・ソナタでは初めて出版された第16番、そして最晩年亡くなる2カ月前に作曲された最高傑作である第21番という対照的な傑作を収録している。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2013-04-25 10:03:24 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~東京クヮルテット 44年間の活動に終止符 最後の日本ツアー~

ハイドン:弦楽四重奏曲第81番「ロブコヴィッツ」
コダーイ:弦楽四重奏曲第2番
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番

弦楽四重奏:東京クヮルテット
   (第1ヴァイオリン:マーティン・ビーヴァー/第2ヴァイオリン:池田菊衛/ヴィオラ:磯村和英/チェロ:クライヴ・グリーンスミス)

会場:東京オペラシティ コンサートホール

日時:2013年5月16日(木) 午後7時

 44年にわたりニューヨークを拠点に世界を舞台に活躍してきた室内楽の至宝・東京クヮルテットが、2013年6月に活動を終止する。今回の5月の来日公演は、日本の聴衆にとって、彼らの演奏を体験できる、最後のチャンスとなる。東京クヮルテットは、故斎藤秀雄によって多大な影響を受けた日本人4人により、1969年ジュリアード音楽院で結成。1970年ミュンヘン国際コンクールで圧倒的優勝以来、楽壇の最高峰の弦楽四重奏団として、卓越した技巧と優美な演奏スタイルで聴衆を魅了し続けてきた。これまで、本拠地をニューヨークに置き、毎年欧米を中心に100以上のコンサートを行ってきた。2012年―2013年のシーズンでは、アメリカ、ウィーン、パリ、ロンドンなど、世界主要都市でのコンサートを予定しており、44年間の活動に終止符を打つ。なお、日本公演のスケジュールは次の通り。5月15日いずみホール(大阪)、5月16日東京オペラシティ(東京)、5月17日フィリアホール(横浜)、5月18日青山音楽記念館(京都)、5月20日武蔵野市民文化会館(東京)、5月21日王子ホール(東京)。

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◇クラシック音楽◇NHN‐FM 「ベスト・オブ・クラシック」 レビュー

2013-04-23 10:43:09 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

 

<NHN‐FM 「ベスト・オブ・クラシック」 レビュー>

 

―ギドン・クレーメル 室内楽演奏会― 

       
                              
フランク:ピアノ三重奏曲作品1第1から「第1楽章」  
                       
       バイオリン:ギドン・クレーメル
       チェロ:ギードレ・ディルヴァナウスカイテ
       ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ
                              
フランク:バイオリン・ソナタ 
            バイオリン:ギドン・クレーメル
       ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ
                              
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出」
                    
       バイオリン:ギドン・クレーメル
       チェロ:ギードレ・ディルヴァナウスカイテ
       ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ

収録:2012年11月4日、東京・サントリーホール

放送:2013年4月2日(火) 午後7:30~午後9:10

 ギドン・クレーメル(1947年生まれ)は、ラトビア出身のヴァイオリニスト。16歳で国内の音楽コンクールで優勝。モスクワ音楽院で学び、ダヴィッド・オイストラフに8年間師事。この間、1967年、エリザベート王妃国際音楽コンクールにて3位に入賞。1969年、パガニーニ国際コンクールで優勝。1970年、チャイコフスキー国際コンクールで優勝など、輝かしい受賞歴を誇っている。1975年にドイツ、さらに1977年にニューヨークへ進出し西側へ鮮烈なデビューを飾る。以後、ドイツを拠点に活動し、高い評価を得ている。そのギドン・クレーメルが若手のチェリストのギードレ・ディルヴァナウスカイテ、そしてピアニストのカティア・ブニアティシヴィリ引き連れて来日し、室内楽の醍醐味を思う存分に披露したコンサートを収録したのが、今回の放送内容である。ギドン・クレーメルは著名なヴァイオリニストなので、多くのリスナーが知っているが、若手の演奏家と室内楽を演奏するとどのような展開となるのか、私にとっては興味深い放送となった。

 最初のフランク:ピアノ三重奏曲作品1第1は、演奏会でもあまり取り上げられない曲なので、曲自体に対しても、注目が高まる。出だしから、フランクらしからぬ浪々とした力強さに、一瞬あっという思いに捉われた。しかし、直ぐにフランク独特の情緒溢れるメロディーが一面を覆い、奥行きの深い室内楽の世界に誘われることになる。ギドン・クレーメルのヴァイオリンの存在感は、流石であるが、チェロのギードレ・ディルヴァナウスカイテ、ピアノのカティア・ブニアティシヴィリが、ギドン・クレーメルに臆することなく、伸び伸びと演奏していることに少々驚きをおぼえた。普通、巨匠クラスと演奏する若手演奏家は、どうも萎縮する傾向が出てしまう。ところが、この二人の若手演奏家には、このことが当て嵌まらないようであり、演奏家の名前を聴かないで聴いたなら、3人の息の合った同世代の演奏家達と思うかもしれないほど。この曲は、普段ほとんど聴かれないが、内容の濃い優れた室内楽である。コンサートでは全楽章が演奏されたのであろうか。残念ながら放送では第1楽章しか聴かれなかったのが惜しい。

 次のフランク:バイオリン・ソナタは、円熟の境にある、充実したギドン・クレーメルのヴァイオリン演奏がたっぷりと味わえ、至福の一時を持つことができた。伸びやかな弓使いから紡ぎ出される、豊かな音質と深みのある表現力は、現役のヴァイオリニストの最高峰に位置する一人であることを裏付ける。見事な完成度の演奏だ。演奏自体は中庸なものであるが、曲をドラマティックに演出しながら演奏する。しかし、リスナーにはそれが少しも嫌味に聴こえない。これは、本物の演奏家にしか表現できない至芸なのであろう。ピアノの伴奏のカティア・ブニアティシヴィリの演奏にも、いたく感じ入った。堂々とピアノが自己主張するのだが、伴奏者であることの一線は決して越えてはいない。そして、ピアノの音そのものが美しいし、響きがギドン・クレーメルのヴァイオリンにうまく結びつき、絶妙な伴奏を披露してくれた。今後、ピアノ独奏者としてのカティア・ブニアティシヴィリの活躍に要注意だ。そして、この日の最後の曲目であるチャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出」の演奏が始まった。ここでもカティア・ブニアティシヴィリのピアノ演奏が、その存在感を十二分に発揮して、この曲を一層スケールの大きなものにすることに成功したようだ。クレーメルのヴァイオリンも、リーダーシップがしっかりと取れており、ギードレ・ディルヴァナウスカイテのチェロの響きも、朗々としており、室内楽の楽しさを充分に伝えてくれた。

 ところで、私にとっては謎の演奏家である、今回の若き2人はどのような演奏家なのであろうか。チェロのギードレ・ディルヴァナウスカイテは、リトアニア音楽アカデミーで学ぶ。ロッケンハウス音楽祭に招かれ、主宰者であるクレーメルはもとよりゲリンガスやペルガメンシコフなどとアンサンブルを行う。その後リトアニア国立交響楽団、クレメラータ・バルティカなどでソリストとして活躍した後、クレメラータ・バルティカに入団し現在に至っている。また、クレーメル主宰の四重奏団であるクレメラティーニ弦楽四重奏団のメンバーでもある。一方、ピアノのカティア・ブニアティシヴィリは、グルジアのトビリシ国立音楽院で学ぶ。2003年ホロヴィッツ国際コンクールで特別賞受賞。2008年アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクール第3位ならびに最優秀ショパン演奏賞、聴衆賞を受賞。なるほど、カティア・ブニアティシヴィリは、今注目のピアニストだということが分る。そう言えば、クレーメルは、若手の育成には特別力を入れており、1981年には、ロッケンハウス音楽祭を自ら創設し、毎夏オーストリアにおいて室内楽の音楽フェスティバルを開催し、積極的に無名に近い演奏家やアンサンブルを出演させている。また、1997年には、バルト三国の若い演奏家20数名を集め、クレメラータ・バルティカを結成している。今回の室内楽演奏会は、長年に渡るこれらの若手演奏家の育成の成果発表会でもあったのだ。若手育成に力を入れるギドン・クレーメルに、ますます親しみが増してきた。(蔵 志津久)                             

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2013-04-22 11:18:20 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~仏国立ボルドー・アキテーヌ弦楽楽団チェロ首席奏者 中木健二のチェロ・リサイタル~

チェロ:中木健二

ピアノ:エリック・ル・サージュ

シューマン:幻想小曲集 
      :アダージョとアレグロ 
      :民謡風の5つの小品
プーランク:チェロとピアノのためのソナタ 
ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ

会場:王子ホール

日時:2013年5月14日(火) 午後7時

 チェロの中木健二は、愛知県岡崎市出身。東京芸術大学卒業後、2003年渡仏。2007年パリ国立高等音楽院チェロ科をプルミエ・プリおよび審査員特別賞で卒業。2009年スイス・ベルン高等音楽院を首席で卒業。2005年ルトスワフスキ国際チェロコンクール第1位。同年第16回FLAME音楽コンクール(仏)優勝など受賞多数。2010年から仏国立ボルドー・アキテーヌ弦楽楽団チェロ首席奏者を務める。現在、ヨーロッパを拠点に、リサイタルのほか、主要オーケストラとの共演、サイトウ・キネン・フェスティバル、宮崎国際室内楽音楽祭などへの参加など、活発な演奏活動を展開している。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2013-04-19 11:00:22 | 新譜CD情報

 

<新譜CD情報>

 

~読売日本交響楽団の新コンサートマスター 日下紗矢子のバッハ~


バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV.1023
    :シャコンヌ~無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV.1004より
    :ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV.1042
    /ウィルヘルミ編:G線上のアリア
    :アリオーソ~チェンバロ協奏曲第5番 ヘ短調 BWV.1056 第2楽章
    /コダーイ編:リュートのための前奏曲 BWV.999

ヴァイオリン:日下紗矢子

ピアノ:オリヴァー・トリエンデル

管弦楽:ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ

録音:2012年7月19日、杜のホールはしもと/2012年10月2-3日、コンツェルトハウス、ベルリン

CD:日本コロムビア

 ヴァイオリンの日下紗矢子は、兵庫県出身。1997年、東京芸術大学に入学。同年、エリザベート王妃国際音楽コンクールで入賞。1998年、ミケランジェロ・アバド国際ヴァイオリン・コンクールで1位なしの第2位。1999年、大阪芸術祭に参加し、奨励賞受賞。2000年、第47回パガニーニ国際コンクールで第2位、第69回日本音楽コンクールで第1位、第8回シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで第3位。2001年、東京芸術大学を首席で卒業し、デビューリサイタルを開く。南メソジスト大学およびフライブルク音楽大学へ留学。2008年からベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(旧ベルリン交響楽団)の第1コンサートマスターを務める。2008年度出光音楽賞受賞。2009年、ベルリン・コンツェルトハウス室内管弦楽団のリーダーに就任。2013年4月より読売日本交響楽団コンサートマスターに就任。現在、ベルリン在住。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2013-04-18 10:38:27 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~宇野功芳企画第2弾 功芳を熱狂させた男 佐藤久成ヴァイオリン・リサイタル~

ノヴァーク:ヴァイオリン・ソナタ
フランク:ヴァイオリン・ソナタ
クライスラー:プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ
ドヴォルザーク:ユーモレスク
エルガー:愛のあいさつ
ブラームス:ハンガリー舞曲第17番
ボーム:カヴァティーナ
モシュコフスキ:ギターラ
クライスラー:愛の哀しみ
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

ヴァイオリン:佐藤久成

ピアノ:小田裕之

会場:東京文化会館 小ホール

日時:5月3日(金/祝)  午後2時

 ヴァイオリンの佐藤久成は、東京藝術大学卒業後、渡欧。ブリュッセル王立音楽院、ベルリン芸術大学などで学ぶ。1994年、ベルリン交響楽団定期公演のソリストとして欧州デビュー。以後、欧米の主要オーケストラと共演。欧州各新聞紙上で絶賛される。また、ライフワークとして数万曲に及ぶ未知の絶版楽譜を世界中で収集、知られざる作曲家や忘れられた作品の発掘に力を注ぎ、紹介・初演・録音を積極的に行っていることでも知られる。

 ピアノの小田裕之は、1998年、桐朋学園大学ピアノ科を首席で卒業。プラハ芸術アカデミーポストグラデュエートにて研鑽を積む。古典か近現代までレパートリーは幅広く、ソロのみならず、器楽奏者との共演、合唱団との共演も多い。桐朋学園大学、洗足学園音楽大学の非常勤講師。

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◇クラシック音楽CD◇アバド&ボストン響のドビュッシー、ラヴェル、スクリャービン

2013-04-16 10:50:15 | 管弦楽曲

ドビュッシー:夜想曲
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
     :「亡き王女のためのパヴァーヌ」
スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」

指揮:クラウディオ・アバド

管弦楽:ボストン交響楽団

CD:ユニバーサル ミュージック PROC‐1190

 これは、ドビュッシー(1862年―1918年)、ラヴェル(1875年―1937年)、それにスクリャービン(1872年―1915年)のほぼ同世代を生きた3人の作曲家の作品を取り上げ、クラウディオ・アバドの指揮、ボストン交響楽団の演奏で録音したCDである。3人の作曲家は、フランスとロシアという国籍の違いはあるが、いずれも新しい音楽のあり方を模索し、来るべき現代音楽の最初の扉を開けた作曲家達である。指揮をしているクラウディオ・アバド(1933年生まれ)は、イタリア、ミラノ出身。1972年にミラノ・スカラ座の音楽監督。1979年、ロンドン交響楽団の首席指揮者に就任。1986年、ウィーン国立歌劇場音楽監督に就任。1990年には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任した。これらの経歴を見てもアバドは、イタリア系出身でありながら、オーストリア・ドイツ系の最高峰の楽団の指揮者を務め、その音楽性の広がりを印象付けられる。このCDでも、実に柔軟な指揮で、ドビュッシーとラヴェルの2人のフランスものの音楽を美しく歌い上げることに成功している。そして、ロシアの神秘主義の作曲家スクリャービンの音楽の勘所をぴたりと押え、誠に鮮やかな、しかも冴え渡った説得力ある棒さばきが印象的だ。

 ドビュッシー:夜想曲は、第1曲 雲、第2曲 祭り、第3曲 シレーヌの3曲からなる管弦楽曲であり、あたかも印象派の絵画を見ているような音の響きが心地良い。全てが、曖昧模糊とした幻想の雲に覆われたような音楽であり、そんな抽象的な表現でもアバドの棒さばきは、いささかの躊躇も無く、ぐいぐいとリスナーを引き込んで行く。第1曲 雲を聴いていると、知らずに天上の世界を彷徨しているような錯覚に捉われる。そんな世界をアバドは、オーケストラからこれ以上の繊細さはないと思われるほどの光り輝く音を紡ぎ出す。第2曲 祭りは、一転して活気のある祭りの世界が繰り広げられる。この辺のセンスは、アバドがミラノ・スカラ座で体得したイタリア・オペラのノウハウがふんだんに盛り込まれているかのようだ。第3曲 シレーヌ(海の精)には、女性合唱が加わり、第1曲 雲を上回る、幽玄の世界が繰り広げられる。アバドの指揮は、そんな優美な世界を描くことに長けている。

 ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」は、この古いギリシャの田園物語の上演を思い立ったロシアのバレエ興業師ディアギレフの依頼によってラヴェルが作曲した曲。ラヴェルはこの曲を作曲するに当たり、「音楽をかきながら私が目指したのは、古代の模倣を心掛けるよりも、私の夢想のうちにあるギリシャに忠実な、巨大なフレスコ画を作曲することであった」と述べたという。この曲も第1曲 夜明け、第2曲 無言劇、第3曲 全員の踊り、の3つの曲からなる。ドビュッシー:夜想曲のよく似た曲想を持つが、ラヴェルのこの曲の方が、より音の響きが鮮明になり色彩感に富む。ドビュッシー:夜想曲が水墨画のような幽玄さに特徴があるとすれば、ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」は、大きな壁面に描かれた極彩色のフレスコ画とでも言えようか。アバドの指揮もそんなことを意識してか、1音、1音が跳ね飛ぶかのように明確に表現しており、鮮明な表現力が印象に残る。そして、ラヴェル:「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、初期のピアノ曲を、ラヴェル自身が1910年に管弦楽曲に編曲したもの。パヴァーヌは、16世紀のイタリアに起源を持つ優雅な宮廷舞曲のこと。この曲は誰もが一度は聴いたことのある曲であるが、アバド&ボストン響の手に掛かると、そこには、雅で優雅な世界が一面に広がる。何度も聴いたことのある曲だが、このコンビの手にかかると、たちどころに新鮮な曲となって聴こえ、それが不思議なほどに感じられる。

 スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」は、通常、単に「法悦の詩」とだけ表記され、交響曲第4番は書かれない。これは、この曲が単一楽章の交響曲であり、しかも交響詩風の雰囲気を持つ曲だからだろう。この曲は、初演当時は、演奏禁止になったこともあるという。これは、原題が「ポエム・エクスタシー」といことから、聴衆に何か性的なものを連想させるからということが理由らしい。しかし、現代の我々は、例えば、マーラーの交響曲などでは、このスクリャービンの「法悦の詩」に似たの表現を聴くこともあり、この批判は、今となっては、ピンボケなものと考えて構わないと思う。スクリャービンは、初期のショパン的作風、中期のリスト、ワーグナー的作風、そして後期の神秘主義的作風と激しい変遷を辿るが、この「法悦の詩」は、神秘主義的作風の代表作とされる作品。しかし、そのような前知識を知ってから聴くよりも、スクリャービンのオーケストレーションの豊かさや、ムンクの名画「叫び」を見ているような、現代人が抱く、将来に対する漠然とした不安をこの曲から引き出した方が、前向きに聴くことができる。アバド&ボストン響の演奏は、オーケストラの持つ音色の表現の極限に挑戦しているかのようでもあり、このユニークな曲が持つ真髄を余すところ無く、リスナーに伝えてくれている。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2013-04-15 10:35:34 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
マーラー:交響曲第5番

指揮:大野和士

管弦楽:ウィーン交響楽団

ピアノ:インゴルフ・ヴンダー

会場:東京文化会館

日時:2013年5月14日(火) 午後7時

 ジュリーニ、カラヤン、サヴァリッシュらが首席指揮者を務めた名門ウィーン響が、フランス国立リヨン歌劇場をはじめミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場など世界を舞台に活躍する大野和士と共に来日。指揮の大野和士は、1987年トスカニーニ指揮者コンクール優勝後、サグレブ・フィル、東京フィルの常任指揮者、バーデン州立劇場、ベルギー王立モネ劇場の音楽監督を歴任し、2008年からはフランス国立リヨン歌劇場の首席指揮者を務めながら、メトロポリタン・オペラ、ミラノ・スカラ座,パリ・オペラ座、ボストン響、ゲヴァントハウス管、ロンドン・フィル、イスラエル・フィル等に客演。また、ピアノのヴンダーは、1985年オーストリアに生まれ、2010年ショパン・コンクールで2位を獲得した逸材。

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