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★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇フランス・ブリュッヘンのモーツァルト:セレナーデ第10番「グラン・パルティータ」

2011-10-31 15:31:24 | 管弦楽曲

モーツァルト:セレナーデ第10番「グラン・パルティータ」

指揮:フランス・ブリュッヘン

演奏:18世紀オーケストラ団員

CD:ユニバーサルミュージック UCCD 4285

 セレナーデやディベルティメントさらにはカッサシオンなどと呼ばれるジャンルの一連の曲がある。これらは、1970年代から1980年代にかけて流行った(たった20年間!)管弦楽の楽曲形式のことを指している。要するの小曲を連ねた多楽章の管弦楽曲のことであり、特別に難しい定義があるわけでもなさそうだ。日本語では、セレナーデのことを小夜曲、ディベルティメントのことを喜遊曲と訳されているが、果たしてこの訳が適切であったどうか、何時も疑問に思ってきた。小夜曲と言われると、夜の情景しか連想できなくなるし、喜遊曲というとただ何となく楽しくしい曲としか考えが及ばなくなる。モーツァルトのディベルティメントなどには、憂いを含んだおおよそ喜遊などという言葉が思いつかない楽章を含んでいる曲があるからだ。カッサシオンなどに至っては、果たして日本語訳があるのかないのか、浅学の私は知らない。いずれにせよ、たった20年ほどの間に大流行した楽曲形式が、現代の今でも盛んに演奏される不思議さと幸運に感謝した方がよさそうだ。

 セレナーデ、ディベルティメント、カッサシオンには特別な定義があるわけではないようであるのだが、それでは区別が存在しないのか言われれば、そうでもないから、ややっこしい。セレナーデとカッサシオンは、屋外で演奏される曲を指し、ディベルティメントは屋内で演奏される曲をいうことが多い。貴族が食卓を囲んで楽しく語らいながら、その側で演奏されるのがディベルティメント、貴族の館の庭園などで式典が行われる際に演奏されたのがセレナーデやカッサシオンというわけだ。いずれも貴族の生活を演出するために考案された音楽なので、生活の厳しさや人生の悲しみなどの雰囲気を求めるのは、無い物ねだりというものである。しかし、モーツァルトの凄さといおうか偉大さと言おうか、決して貴族の手慰めとしての音楽に甘んじないぞ、といった心意気が曲から溢れ出てくるから凄いのだ。例えば、モーツァルトのディベルティメント第15番K.287を聴いてみるがいい。ディベルティメントの華やかな感じで始まるのであるが、聴き進むうちに、憂いを含んだ楽章が現れてきて、およそ喜遊曲とは思われない雰囲気を醸しだす。私は、これなどは、モーツァルトが当時の権力者が好む音楽に名を借りて、実は自分の人生の心情を吐露した、その次にくるロマン派の音楽を先取りした革新的な曲だと考えている。

 そんなわけで、今回のCDは、モーツァルト:セレナーデ第10番「グラン・パルティータ」である。1821年に書かれたこのセレナーデは「13管楽器のためのセレナーデ」とも名づけられいることでも分るように、管楽器主体のセレナーデであり、その意味では聴いていてちょっと他のセレナーデとは印象が違うので、一度聴くと耳に焼きつくこと請け合いの曲だ。この曲を演奏するに当っては、13人の優れた奏者を揃えることと、2本のバセットホルンを用いることが最低条件なのだそうである。オーボエ、クラリネット、バセットホルンが各2、ホルン4、ファゴット2それにコントラバス1という布陣だ。つまり正確に表現すると「13管楽器のためのセレナーデ」ではなく、「12管楽器とコントラバスのためのセレナーデ」とした方がよさそうだ。いずれにこんなに多くの優れた管楽器奏者を一堂に集めることは、そう簡単なことではなく、演奏会では滅多にお耳に掛かれない曲なのではなかろうか。そうなるとCDの出番であり、しかもフランス・ブリュッヘンの指揮で、手兵の古楽器演奏が専門の18世紀オーケストラ団員が演奏した録音が残されているので願ってもないことだ。

 フランス・ブリュッヘンは、1934年にアムステルダムに生まれている。アムステル音楽院とアムステル大学に学び、ブロックフレーテ(リコーダー)やフラウト・トラヴェルソ(フルートの前身の古楽器)の演奏家として一世を風靡したことで知られている。1981年には、オリジナル楽器(古楽器)による演奏団体「18世紀オーケストラ」を設立し、自ら指揮を行う。要するにフランス・ブリュッヘンは、現在の古楽器ブームの火付け役となった人だ。このCDは、そんなフランス・ブリュッヘンが指揮し、18世紀オーケストラの団員が1988年6月にオランダでライヴ録音したもの。演奏内容は、実に伸び伸びと天才モーツァルトしかなし得なかったセレナーデの傑作の第10番「グラン・パルティータ」の真髄を心ゆくまで味わうことが出来る。例えば誰もが聴いたことのある第4楽章を聴いてみよう。管楽器の豊かな味わいが全面に溢れ、これはほんとに管楽器?とも思えるほど奥行きのある広がりに、思わず聞き惚れてしまう。これは単なる貴族のお遊びの音楽なんかではなく、モーツァルトの心の躍動であり、生きることの喜びを素直に表現した音楽なのだ、ということを実感できる。フランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラ団員の一体感は実に見事なもので、このため全部で7つある楽章もあっという間に終わってしまう。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-10-31 11:12:14 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~ロリン・マゼールが48年ぶりに振る、東京交響楽団創立65周年記念特別演奏会~

ベートーヴェン:交響曲第1番
マーラー:交響曲第1番「巨人」

指揮:ロリン・マゼール

管弦楽:東京交響楽団

会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ(昭和音楽大学)

日時:2011年11月12日(土) 午後6時

 指揮のロリン・マゼールは、1930年フランス生まれ、アメリカの国籍を持つ世界的指揮者。これまで、バイエルン放送交響楽団音楽監督、ピッツバーグ交響楽団音楽監督、ウィーン国立歌劇場総監督、クリーヴランド管弦楽団音楽監督、ベルリンドイツオペラ芸術監督などを歴任した。このロリン・マゼールが今から48年前、初めて指揮した日本のオーケストラが東京交響楽団であった。当時、まだ33歳の将来を嘱望された気鋭指揮者であった。それから約半世紀の時を経て、東京交響楽団創立65周年の節目の記念の年に再び登場することとなった。プログラムはマゼールのアイデアにより、1947年10月の東京交響楽団第1回定期演奏会から、ベートーヴェンの交響曲第1番。もう1曲は、マゼールが近年精力的に取り組んでいるマーラーより、交響曲第1番「巨人」。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2011-10-28 10:30:17 | 新譜CD情報

 

 

 <新譜CD情報>

 

~ルービンシュタイン、チャイコフスキーコンクールの覇者・トリフォノフ・プレイズ・ショパン(ライヴ録音)~

ショパン:マズルカ風ロンド
     華麗なる大円舞曲(ワルツ第1番)
     練習曲第8番
     アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
     マズルカ第33番/第34番/第35番
     ピアノ・ソナタ第3番

ピアノ:ダニール・トリフォノフ

録音:2010年5月、伊ヴェネツィア、フェニーチェ劇場、2010年11月、サチーレ、ファツィオリ・ホール(ライヴ録音)

CD:ユニバーサルミュージック(デッカ) UCCD-1306

 ピアノのダニール・トリフォノフは、1991年ロシアのニジニ・ノヴゴロド生まれ。まだ20歳になったばかりでありながら、2010年のショパン・コンクールで第3位、2011年のアルトゥーロ・ルービンシュタイン国際コンクールとチャイコフスキー・コンクールに相次いで優勝。チャイコフスキー・コンクールでは、すべての優勝者から選ばれるグランプリにも史上二人目として選ばれた。このデビュー・アルバムは、2010年イタリアで行われたショパン・リサイタルを収録したもの。彼が愛用するイタリアの名器ファツィオリ・ピアノが使用されている。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-10-27 10:28:34 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~アシュケナージ、シドニー響首席指揮者就任後初来日 庄司紗矢香とベートーヴェンで共演~

べ一トーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲
べ一トーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ブラームス:交響曲第1番

指揮:ウラディーミル・アシュケナージ

管弦楽:シドニー交響楽団

ヴァイオリン:庄司紗矢香

会場:都民劇場

日時:2011年11月7日(月) 午後7時

 アシュケナージは、ピアニストとして世界的に名を成したが、指揮者としても30年以上のキャリアの持ち主。フィルハーモニア管、ロイヤル・フィルなど名だたる楽団のポストを歴任し、N響の音楽監督としても腕をふるってきた(現在は桂冠指揮者)。そして2009年からは、シドニー交響楽団の首席指揮者を務めている。今回は、シドニー響首席指揮者就任後、日本において初の演奏会となる。

 シドニー交響楽団は、1932年、オーストラリア最大の都市シドニーに創設された。現在は有名なオペラハウスを本拠としている。これまで、1996年と2006年に来日を果たしているが、特に今回はアシュケナージとの初来日だけに、大きな期待が集まる。

 ヴァイオリンの庄司紗矢香は、1995年、イタリアのキジアーナ音楽院、ドイツのケルン音楽大学で学ぶ。1999年、第46回パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで同コンクール史上最年少、かつ日本人として初めて優勝。これまで、都民文化栄誉章、出光音楽賞、ホテルオークラ賞 、ワシントン賞、芸術選奨新人賞などを受賞し、わが国を代表するヴァイオリニストの一人。 

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◇クラシック音楽CD◇トスカニーニ&NBC交響楽団のレスピーギ:交響詩「ローマの松・噴水・祭り」

2011-10-25 10:40:08 | 管弦楽曲

レスピーギ:交響詩「ローマの松・噴水・祭り」

指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ

管弦楽:NBC交響楽団

CD:BMGビクター BVCC5135

 レスピーギの交響詩の3部作「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」は、色彩感覚に富んだ、聴いていて実に楽しい管弦楽曲である。ローマの風景が、あたかも目の前に見えてきそうにもなるほど、臨場感に富んでいるのではあるが、それが単なる風景描写に留まらないところが、並の曲ではないのである。奥行きのある、堂々とした風景画を見ているようでもあり、心が自然に休まるような思いがこみ上げてくる。巧みな管弦楽手法を駆使してレスピーギがつくり上げた作品だけあって、色彩豊かな音楽の伽藍ともいえる曲だ。そんな音楽なので、指揮者は、やはり地元イタリア出身者がいい。それに色彩豊かな音色を聴くには、最新の録音状態が好ましい。今回のCDは、イタリア出身の世紀の大指揮者、トスカニーニがNBC交響楽団を指揮したもので、その意味から申し分ないのであるが、録音されたのがそれぞれ1953年、1951年、1949年と今から60年ほど前で(場所はいずれもカーネギーホール)、現在の録音技術からすると不満が残るが、それでも、それを上回る圧倒的名演をトスカニーニが聴かせてくれている。

 ここでのトスカニーニーの指揮ぶりは、いつもの不要な要素は一切削ぎ落としたような演奏内容には違いないのであるが、その一方では、オペラの指揮を聴いているような、何ともドラマティックな味付け効果が利いているのである。そのため、だらだらした感覚は全く感じられない一方で、劇的な音楽効果は存分に発揮されており、この曲を代表する高い演奏内容を未だに保っている。これは、ある意味で奇跡的なことなのかもしれない。同時代の巨匠フルトヴェングラーも未だに越えられない何かを我々に録音として残しているが、同じように、トスカニーニもこの録音で、高い境地の演奏内容を現代の我々に残してくれているのである。「ローマの松」では、4ヶ所にある松の姿を実に生き生きと表現しており、生命力溢れた松の雄姿が目の前に現れるような演奏だ。「ローマの噴水」でも4ヶ所の噴水の情景が描かれているが、トスカニー&NBC交響楽団の演奏は、4つの噴水がそれぞれ個性を持っている生き物のように描かれ、深みのある演奏を繰り広げる。そして、「ローマの祭り」は、もうこれはイタリア人の血が騒ぐようなオーケストラによる舞踏の饗宴によって、4つの祭りのそれぞれを聴くものに強く印象付けることに、ものの見事に成功している。

 巨匠トスカニーニは、1867年イタリアのパルマに生まれている。パルマ王立音楽学校で、チェロと作曲を学ぶ。1886年、カタラーニの歌劇「エドメア」を振ってイタリアデビューを果たす。その後、イタリアで様々なオペラを指揮をする。ヨーロッパの指揮者の多くが、オペラ指揮者としてのキャリアからスタートするが、トスカニーニもこのようなコースを歩んだことになる。このことが、今回のCDでレスピーギの交響詩の3部作「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」の演奏で遺憾なく発揮されていると言うことができよう。この辺は、コンサート出身の指揮者とは大きく違うようだ。さらに、1929年、ミラノ・スカラ座の音楽監督を辞任し、ニューヨーク・フィルの首席指揮者に就任することになる。1930-31年には、ドイツ人以外の指揮者として初めてバイロイト音楽祭を指揮する。そして、1937年、RCAの社長であるディヴィッド・サーノフによってトスカニーニのために創設されたNBC交響楽団の指揮者に就任する。要するにNBC交響楽団は、トスカニーニ専用のオーケストラなのである。これは、ワルターとコロンビア交響楽団との関係と同じことだ。以後、トスカニーニとNBC交響楽団は、世界各国を演奏旅行することになる。

 トスカニーニの指揮ぶりは、フルトヴェングラーとは正反対に、楽譜に忠実に、明確な演奏を行うところに大きな特徴がある。これは、現代に至るまで指揮者の潮流の源となるような画期的な“事件”と言ってもいいほどである。ワーグナーから以降、指揮の一つの流れは、ロマン的で形而上学的な抽象の世界を再現することにあった。その代表的な指揮者がフルトヴェングラーである。しかし、あまりに抽象的世界であるため、多くの場合一人の指揮者で完結してしまう。つまり、フルトヴェングラーは一代で終わりであって後継者は存在しない。それに対し、トスカニーニのような楽譜に忠実で即物的な指揮のスタイルは、現在に至るまで脈々と後継者を生み出し続け、大きな影響力を与えている。フリッツ・ライナー、ゲオルク・ショルティ、レオナード・バーンシュタインなど、数えきれば限りがないほどである。小澤征次爾も同じ系列に入れることができるかもしれない。そう考えると、トスカニーニが残した足跡がいかに偉大であったかが分かろう。そのトスカニーニが残したこのレスピーギ:交響詩「ローマの松・噴水・祭り」の録音は、録音こそ古くなったが、永遠に残すべき歴史的名盤と呼べるものである。
(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-10-24 10:32:50 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~ベルリン・バロック・ゾリステン with 樫本大進~

ピゼンデル:弦楽のためのソナタハ短調
バッハ:ヴァイオリン協奏曲イ短調 BWV1041(ヴァイオリン・ソロ: 樫本大進)
バッハ:「フーガの技法」より「対位法 1」「対位法 9」
バッハ:ヴァイオリン協奏曲ホ長調 BWV1042(ヴァイオリン・ソロ:樫本大進)
ハッセ:グラーヴェとフーガ
バッハ:「音楽の捧げ物」より 「6声のためのリチェルカーレ」
バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1043(ヴァイオリン・ソロ:ベルンハルト・フォンク、樫本大進)

弦楽合奏:ベルリン・バロック・ゾリステン
          
 (ヴァイオリン:ベルンハルト・フォンク、リューディガー・リーバーマン、ゾルタン・アルマジ、町田琴和、ライマー・オルロフスキー、レイチェル・シュミット、バーバラ・デユーベン/ヴィオラ:ヴァルター・キュッスナー、クリストフ・シュトロイリ/チェロ:シュテファン・コンツ/コントラバス:クラウス・シュトール/チェンバロ:ラファエル・アルパーマン)

会場:横浜みなとみらいホール

日時:2011年10月26日(水) 午後7時 

 樫本大進をゲストに、ベルリン・フィルのトップ・プレーヤー集結し、究極のバッハ演奏を行う。日本人として史上二人目のベルリン・フィルコンサートマスターに就任した樫本大進が、ベルリン・フィルのトップメンバーを中心としたバロック・アンサンブル「ベルリン・バロック・ゾリステン」のソリストとして横浜に登場する。ベルリン・フィルのメンバーの高い技術により裏付けられた古典奏法が、ドイツ・バロックの世界へ導く。

 ベルリン・バロック・ゾリステンは、1995年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者達を中心に、当時のベルリン・フィルのコンサートマスターの一人、ライナー・クスマウルを音楽監督として結成された。以来、17~18世紀に作曲された作品への独自のアプローチと解釈、確かなテクニック、高い芸術性により、名実とも世界をリードする古楽アンサンブルとしての地位を確立している。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2011-10-21 09:54:01 | 新譜CD情報

 

 

 

<新譜CD情報>

 

~聖チェチーリア音楽院管弦楽団音楽監督パッパーノのラフマニノフ:交響曲第2番他~

ラフマニノフ:交響曲第2番
リャードフ:「魔法にかけられた湖」

指揮:アントニオ・パッパーノ

管弦楽:サンタ・チェチーリア管弦楽団

CD:EMI‐TOCE90197

 指揮のアントニオ・パッパーノ(1959年生まれ)は、ロンドンでイタリア人を両親に生まれた。米国でピアノ、作曲、指揮法を学ぶ。1987年、オスロ国立歌劇場で「ラ・ボエーム」で指揮者デビューを果たし、1990年には音楽監督に就任。さらに32歳でベルギー・モネ劇場の音楽監督に就任。1999年、「ローエングリン」の指揮して、バイロイト音楽祭デビューを飾る。2002年、コヴェント・ガーデン王立歌劇場音楽監督に就任。2005年からは、チョン・ミュンフンの後を継ぎ、聖チェチーリア音楽院管弦楽団の音楽監督に就任している。

 

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-10-20 10:33:40 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~デビュー30周年記念 漆原啓子ヴァイオリン・リサイタル~

バッハ:無伴奏ソナタ第1番
    ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第5番
    無伴奏パルティータ第2番
    ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第4番
    無伴奏ソナタ第3番
    ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第3番
    
ヴァイオリン:漆原啓子

チェンバロ:小林道夫

会場:浜離宮朝日ホール

日時:2011年10月25日(火) 午後7時

 ヴァイオリンの漆原啓子は、1981年、東京藝術大学付属高校在学中、ヴェニャフスキ国際コンクールで、最年少18歳にして日本人初の優勝を果たす。帰国後の翌年、東京藝術大学入学と同時に本格的演奏活動を開始し、以後今日まで、ソリスト、室内楽奏者として第一線で活躍している。2011年5月、CD「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ」をリリースし好評を受ける。現在、ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタの全曲録音を進めており、2012年に完結予定。現在、国立音楽大学客員教授。

 チェンバロの小林道夫は、東京藝術大学を卒業後、ドイツのデトモルト音楽大学に留学。帰国後は、チェンバロ、ピアノ、室内楽指揮など多方面にわたり活躍。特に、バッハ、モーツァルト、シューベルトの解釈、演奏は高く評価されている。1970年鳥井音楽賞(現サントリー音楽賞)、1972年ザルツブルグ国際財団モーツァルテウム記念メダル、1979年モービル音楽賞を受賞。東京藝術大学客員教授などを歴任し、現在、大分県立藝術文化短期大学客員教授。
    

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◇クラシック音楽◇マゼール&ウィーン・フィルのマーラー:交響曲第4番

2011-10-18 10:29:59 | 交響曲

マーラー:交響曲第4番

指揮:ロリン・マゼール

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ソプラノ:キャスリーン・バトル

CD:ソニーミュージックジャパン SICC 246

 マーラーの交響曲は、何番から聴き始めるのが一番聴きやすいのか?といったことがしばしば話題に上る。大変叙情的なシンフォニーで第1楽章の出だし部分が印象的な第5番、あるいは、独唱部分が従来のシンフォニーの概念を一掃した感のある「大地の歌」、そして今回の明るく平明な第4番あたりがお奨めの作品と言えよう。マーラーの交響曲は長大で、エキセントリックな部分が多分に含まれ、形而上的であり、宗教的な側面や人生に対する肯定的と否定的な考えが相互に入れ交わり、ビギナーのリスナーにとっては少々重荷な曲と言えなくもない。そんな曲が多い中、この第4シンフォニーの明るく軽快な音づくりは、マーラーの曲に関わりたいリスナーにとっては、貴重極まりない曲なのである。しかし、この明るさも宇野功芳氏に言わせれば「(マーラーは)人の世を愛するあまり死がこわかっただけなのだ。『4番』の第2楽章には死神の踊りも出てくるが、それさえ愉しい」(「クラシックCDの名盤」文春新書)となるそうで、やっぱり、一筋縄ではいかないマーラー独特の世界の曲の一つなのだ。

 マーラーは、リヒアルト・シュトラウスと並びロマン派後期を代表する大作曲家であることは、紛れもない事実ではあるのだが、同時にクラシック音楽が行き着く、最後の地点を覗いてしてしまったのかもしれない作曲家なのだ。神が絶対的存在であったバロックや古典派の時代は、少なくとも未来への希望が存在し、ロマン派に至って神の存在は相対的に縮小されたが、代わって市民意識の台頭という新しいテーマへの挑戦があった。問題は、その後、ワグナーの登場で、以前のような絶対的な神の存在が揺らぎ始め、新しい秩序への模索が胎動し始めるのであるが、リヒアルト・シュトラウスもマーラーも我々に、その後に続く、明確な像を告げぬまま、筆を置いしまった。リヒアルト・シュトラウスに至っては古典回帰の姿勢さえみせたのだった。さすが、マーラーはそこまではしなかったが、オーケストレーションの肥大化へと向かい、言葉は悪いが、恐竜が肥大化のあまり絶滅したかのような印象すら、しないわけではない。

 そんな、苦悩に満ちたマーラーの作曲家人生の中にあって、この第4交響曲は、我々リスナーが聴いて、何かほっとするような安らぎに満ちた雰囲気を与えてくれている。あくまでこじんまりとした様式の中で、マーラーが存分に語りかけてかけているようでもある。もともとこの交響曲は、第3番の第7楽章として構想されたものが独立して交響曲となったのであり、このことが逆に巨大化にブレーキをかけるという結果を生み出したものと言えそうだ。第4楽章では、このCDでは、ソプラノのキャスリーン・バトルの美しいソプラノの歌を聴くことができる。いわゆる“角笛交響曲”の1曲がこの第4シンフォニーの特徴の一だ。“角笛交響曲”とは、交響曲第2番、第3番それにこの第4番に、マーラーが作曲した歌曲集「子供の不思議な角笛」が取り入れられているから、そうな名付けられたもの。「子供の不思議な角笛」とは、ドイツの民衆歌謡を収集した詩集のことであり、マーラーがこれを題材に歌曲集を作曲したということは、常に客観的なマーラーも心の奥底で民族的な熱い高まりがあったのかもしれない。交響曲に歌を取り入れた最初の曲は、ベートーヴェンの第九交響曲であるが、マーラーも常にこのことが頭にあり、一生を通してチャレンジし続けたのはご存知の通りだが、この第4番はその初期の作品の一つに当る。マーラーにとっても、ワグナーと同様、ベートーヴェンの存在は、越えねばならない巨大な目標だったのだ。

 このCDで演奏しているのは、ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、それに過去5回のグラミー賞を受賞している名ソプラノのキャスリーン・バトルである。録音は、1983年とあるからマゼール47歳のときで、脂の乗り切った時期の演奏だけに、実に聴き応えのある演奏を聴かせてくれている。マゼールは録音当時、カラヤンの後を継いで、ウィーン国立歌劇場の総監督という地位にあり、文字通り世界のクラシック音楽界の頂点に君臨していた(マゼールは、2012年から3年契約でミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任する予定だそうで、80歳過ぎてまだまだその健在ぶりを示している)。第1楽章は、誠に軽快な足取りで進んでいく。ウィーン・フィルの弦楽器の類稀な美しい響きに酔いしれる思いがする。マゼールの指揮も、そんなウィーン・フィルの潜在能力を引き出すことに専念しているようで、少しの押し付けがましいところがないことに好感が持てる。第2楽章は、スケルッツオで第1楽章とは違った軽快感が満ち溢れていて、聴いていてまことに心地良い。弦楽器と管楽器の掛け合いの何と見事なこと。第3楽章は、マーラーの抒情味溢れる世界を堪能することができる演奏となっている。マゼールの指揮は、見事なほどに繊細であり、その指揮をウィーン・フィルのメンバーが共感を持って演奏しているところは、おおいなる聴きどころ。こんな夢のような音の世界を演奏した例は、そう滅多に聴かれるものではないことだけは確かなようだ。この楽章の演奏だけでも、誰でもがマーラーファンになってしまいそうだ。そんな名演である。後半にかけて現れる全体の盛り上げも実に見事ではある。第4楽章は、キャスリーン・バトルの美しい声とマゼール&ウィーン・フィルの演奏とが、巧みに混ざり合い、マーラーが目指した新しいシンフォニーの世界へとリスナーを誘ってくれる。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-10-17 10:36:12 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


~キーシン・フェスティバル 2011~

リスト:超絶技巧練習曲集 第9番「回想」
    :ピアノ・ソナタ ロ短調
    :「詩的で宗教的な調べ」から第7曲「葬送」
    :巡礼の年 第1年「スイス」から第6曲「オーベルマンの谷」
    :巡礼の年 第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」全曲

ピアノ:エフゲニー・キーシン

会場:サントリーホール 

日時:2011年10月23日(日) 午後6時

 ピアノのエフゲニー・キーシンは、1971年モスクワ生まれ。6歳でモスクワのグネーシン音楽学校に入り、10歳で協奏曲デヴュー、そして翌年、モスクワにおいてリサイタル・デヴューを飾る。1988年、カラヤン指揮ベルリン・フィルと共演し、全世界に放映された。これまでロシア音楽界における最高の栄誉である「ショスタコービッチ賞」など数々の受賞に輝く。現在、世界を代表するピアニストとして各国での演奏活動を展開している。

 今回の演奏に際してのエフゲニー・キーシンからのメッセージ:

 「私が日本を初めて訪れたのは25年前のことになりますが、以来、私はこの素晴らしい、魅惑的な国と恋に落ち、そして長きにわたって日本の聴衆のみなさんとは、真に特別な関係を築いてきました。たまたま私は、初来日の折に15歳の誕生日を迎えました。そしてこの度、私の人生のハイライトのひとつとなるであろう記念すべき40歳の誕生日を、フェスティバルという形で、親愛なる日本の聴衆のみなさんと祝うことになりました。このフェスティバルの開催にご尽力くださったみなさん、参加してくださる素晴らしい音楽家の方々―そしてこれを聴くためにお越しくださったお客様お一人お一人に、心から感謝申し上げます」 

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