チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
ピアノ:エミール・ギレリス
指揮:ズービン・メータ
管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲
バイオリン:ダヴィッド・オイストラフ
指揮:ユージン・オーマンディ
管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団
CD:ソニー・ミュージック・エンターテインメント SRCR 8862
このCDにおけるギレリスの弾くチャイコフスキーのピアノ協奏曲の実況録音は、その緊張感といおうか迫力といおうか、その存在感の凄さに圧倒される。ズービンメータ指揮のニューヨークフィルの演奏もギレリスに負けず劣らず、緊張感がみなぎった好演を聴かせる。チャイコフスキーのピアノ協奏曲はクラシック音楽の代表的名曲であり、そのため少々耳たこのきらいがあるが、このCDだけはいささか違う。曲の出だしからしてまるっきり辺りの空気が違ってしまう感じがするくらい新鮮な雰囲気を醸し出す。ライブ録音の凄さを改めて認識させられる。ライナーノートを見るとこの録音は、1979年11月14日、エイヴリー・フィッシャー・ホール(ニューヨーク)とある。ギレリス(1916年10月ー1985年10年)はほんとに凄いピアニストだ。そのダイナミックなピアニズムは例えるもののない(敢えていえばリヒテルか)ほどの極みに達しており、しかもスケールも限りなく大きい。“鋼鉄のタッチ”と言われたのもむべなるかなといったところだ。しかも、その醸し出す雰囲気にどことなくノスタルジックなところがまたいい。クラシック音楽といっても時代により演奏に変遷があるものだ。ギレリスの演奏スタイルは昔の日本・・・今よりもずっと貧しかったが、誰もが平等に何か将来に希望のようなものが持てた時代を思い起こさせてくれて、何か胸に込み上げてくる。また、ズービン・メータの指揮も勇壮で魅力的だ。そういえば最近こういった男性的な演奏のコンサートにあまり出会わなくなってしまったように思う。
一方、ダヴィッド・オイストラフ(1908年ー1974年10月)の弾くチャイコフスキーのバイオリン協奏曲の方は、1959年12月12日のフィラデルフィアのブロードウッド・ホテルで録音されたもので、ライブ録音ではないようだ。ダヴィッド・オイストラフというとバイオリンのロシア楽派のドンとして、年配の方にとっては、数いるバイオリニストの中でも別格な存在として記憶に残っていると思う。1935年にヴィエニアフスキ国際バイオリン・コンクールでは、ジネット・ヌブーに次ぎ第2位、1937年エリザベート王妃国際コンクールで優勝し一躍その名を世界に轟かせた。オイストラフの演奏は若い時期と晩年では大きく違ったようである。我々は若いときの情熱的でエネルギッシュな演奏の録音を数多く聴いているので、オイストラフというとロシア的な迫力に満ちたバイオリニストという印象が耳に焼き付いている。しかし晩年に近づくと枯れた味わいが特徴になっていったようだ。このCDはどちらかというと枯れた味わいの横溢する演奏となっている。ただ、さすがオイストラフだけあって精緻な演奏技術に裏打ちされた、正統的な演奏には心を引き寄せられる何かが込められている。(蔵 志津久)
の放送の中に、ご紹介いただいているギレリスのチャイコフスキーの1番がありました。
生まれて初めて買ったLPレコードが、リヒテルのこの曲でした。
学生時代で、モノラルか擬似ステレオの古い録音が音源で、廉価版のレコードで、いわゆる千円レコードでした。
私にとっては、メータ、ニューヨークフィルを含め、とても懐かしい演奏でした。
演奏の最後の部分で、まだ終わる以前に万雷の拍手が始まっているのが、ライブ録音のため収録されています。
臨場感満点です。
この放送は、PCで録音しておりますので、
繰り返し聞きたくなる演奏かもしれません。