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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇上岡敏之指揮のチャイコフスキー“悲愴”

2008-05-24 08:28:46 | 交響曲(チャイコフスキー)

チャイコフスキー:交響曲第6番“悲愴”

上岡敏之指揮/ヴァッパータール交響楽団

CD:TDK-MA301

 マエストロ上岡敏之を初めて聴いたのは、07年12月のN響を指揮したベートーベンの“第9”のテレビ放送であった。全くの予備知識はなかったが、最初に頭をよぎったのは、これはなかなかいい指揮者だという印象だ。それもそのはず、ヴァッパータール交響楽団というのはドイツの中でも有力なオーケストラで、マエストロ上岡はその音楽監督に就任している。日本人がクラシック音楽の本場で、音楽監督に就任していること自体たいしたことだ。東京芸大を卒業後、ドイツのハンブルグ音楽大学に留学し、以後ヨーロッパの有力オーケストラを指揮し、名声を高めていった。音楽評論家・指揮者の宇野功芳氏は、ある雑誌に「指揮者で僕が注目するのは上岡敏之、ミッコ・フランク、プレトニョフの3人だ」と書いているほどである。

 このCDは実況録音盤である。曲づくりが緻密に構成され、その流れるような指揮ぶりの中に、内面から湧き出したように、躍動感溢れた表現にはっとさせられる。決して派手な演出はないが自然に溢れ出る感情の高まりに、充実感が感じられる。いわば玄人向けの指揮者であると言うことができよう。このことを宇野功芳氏は「未来のシューリヒトだ」とライナーノートに書いている。チャイコフスキーの“悲愴”は下手な指揮者がオーケストラを指揮すると、大時代がかったグロテスクな仕上がりになってしまうことが多いが、マエストロ上岡のこのCDは違う。あたかも今チャイコフスキーが作曲したかのような新鮮さが随所に溢れている。演奏の最後に拍手も収録されているが、ブラボーの掛け声が当日の演奏会の成功を偲ばせる。今後のマエストロ上岡の国際的活躍に期待したい。(蔵 志津久)


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