★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

●クラシック音楽●コンサート情報

2023-05-31 09:44:29 | コンサート情報



<コンサート情報>



~牛田智大 ラフマニノフを弾く~

ボロディン:オペラ「イーゴリ公」より「ダッタン人の娘たちの踊り」~「ダッタン人の踊り」
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op. 43
       ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op. 30

ピアノ:牛田智大

指揮:飯森範親

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

会場:サントリーホール

日時:2023年6月6日(火)  午後7時

 ピアノの牛田智大(1999年生れ)は、福島県いわき市出身、名古屋市育ち。モスクワ音楽院で学ぶ。2008年から2012年にかけて開催された「ショパン国際ピアノコンクール in Asia」において、史上初となる5年間続けての第1位を受賞。2012年日本人クラシックピアニストとしては史上最年少の12歳でユニバーサルクラシックスより、デビューアルバム「愛の夢」を発表し人気を博す。同年東京オペラシティにおいてデビューリサイタルを行う。2018年「浜松国際ピアノコンクール」で日本人歴代最高位の2位となり、ワルシャワ市長賞と聴衆賞も受賞。2019年第29回「出光音楽賞」受賞。

 指揮の飯森範親(1963生まれ)は、1986年桐朋学園大学指揮科卒業後、ベルリンへ留学。1989年からバイエルン国立歌劇場でサヴァリッシュのもとで研鑚を積む。1994年東京交響楽団専属指揮者に就任。1994年CD録音での成功が高く評価され、モスクワ放送交響楽団特別客演指揮者(1994年~1998年)に就任。1995年~2002年広島交響楽団正指揮者。2001年バーデン=ヴュルテンベルク州のヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団音楽総監督(現首席客演指揮者)。2004年山形交響楽団常任指揮者、2007年より同楽団音楽監督に就任し、現在は同楽団芸術総監督。2006年度(平成18年度)「芸術選奨新人賞」を受賞。2014年日本センチュリー交響楽団首席指揮者。2020年中部フィルハーモニー交響楽団首席客演指揮者。2023年群馬交響楽団常任指揮者に就任。
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●クラシック音楽●新譜DVD情報

2023-05-30 09:37:52 | 新譜DVD情報



<新譜DVD情報>



~プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」 スペイン、バルセロナのリセウ大劇場がプロジェクションマッピングで近未来に~



プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」

演出・映像・マルチメディア:フランク・アルー

指揮:ジュゼップ・ポンス

管弦楽:リセウ大劇場管弦楽団

出演:イレーネ・テオリン(トゥーランドット)
   クリス・メリット(アルトゥーム皇帝)
   アレクサンドル・ヴィノグラードフ(ティムール)
   ホルヘ・デ・レオン(カラフ)
   エルモネラ・ヤオ(リュー)
   トニ・マルソル(ピン)
   フランシスコ・バス(パン)
   ミケルディ・アトクサンダバーソ(ポン)

合唱:リセウ大劇場合唱団(合唱指揮:コンチタ・ガルシア)

収録:2020年、リセウ大劇場(スペイン、バルセロナ)

DVD:キングインターナショナル KKC-9812

 このDVDは、スペインの舞台演出集団ラ・フラ・デルス・バウスの映像デザイナーであるフランク・アルーによる演出の「トゥーランドット」。スペイン、バルセロナのリセウ大劇場をプロジェクションマッピングで埋め尽くし、壮大な演出、エキサイティングな未来を描いている。タイトルロール(表題役)は、現代を代表するドラマティック・ソプラノの一人として活躍するスウェーデン出身のイレーネ・テオリン。そのトゥーランドットは当たり役として世界中の劇場で歌い、2008年新国立劇場でも同役を歌い喝采を浴びた。カラフにはカナリヤ諸島サンタ・クルス・デ・テネリフェ出身のテノール、ホルヘ・デ・レオン。そしてリューには、アルバニア出身のエルモネラ・ヤオ。ヤオは2023年パレルモ・マッシモ劇場の来日公演で「椿姫」ヴィオレッタで登場予定。

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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-05-29 09:58:20 | コンサート情報



<コンサート情報>



~滝 千春 ヴァイオリン・リサイタル~

R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18 Trv151
プロコフィエフ:ピーターと狼 Op.67

ヴァイオリン:滝 千春

ピアノ:沼沢淑音

会場:東京文化会館 小ホール

日時:2023年6月6日(火) 午後7時

 ヴァイオリンの滝 千春(1987年生まれ)は、東京都小金井市出身。2005年桐朋女子高等学校音楽科卒業後、チューリッヒ音楽大学でザハール・ブロンに師事。2001年「ノヴォシビルスク国際ヴァイオリン・コンクール」(ジュニア部門)第1位。2002年フランスにおいて開催された「若い音楽家のためのメニューイン国際バイオリンコンクール」(ジュニア部門)で第1位。同年9月桐朋学園音楽部門創立50周年記念演奏会にて小澤征爾指揮桐朋OBオーケストラと共演。2015、2016年スイスのダボス国際音楽祭に招かれる。2008年8東京の紀尾井ホールで清水和音との共演でデビュー・リサイタルを開催。2018年デビュー10周年記念で開催した「オール・プロコフィエフプログラム」は好評を博した。2019年フランスのル・テュケのムジカ・ニゲラ音楽祭に招かれる。同年ミュンヘン放送管弦楽団のコンサートミストレスに就任。

 ピアノの沼沢淑音は、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマを経て、ロームミュージックファンデーションの奨学生としてエリソ・ヴィルサラーゼ氏のもと2015年モスクワ音楽院を卒業。桐朋女子高等学校音楽科ピアノ科を首席で卒業、あわせて桐朋学園音楽部門より特別奨学金を授与される。「シュニトケ国際コンクール」優勝、「ポッツォーリ国際ピアノコンクール」優勝。また、浜松国際ピアノコンクールに参加し「ネルセシアン賞」「アルゲリッチ芸術振興財団賞 」を受賞し、アルゲリッチ氏より別府アルゲリッチ音楽祭に招待され演奏する。ラ・フォル・ジュルネ音楽祭等、日本国内各地はじめスペインやイタリア、ドイツ、ロシア、ベラルーシ、中国等の音楽祭に出演。2017年より桐朋学園非常勤講師。
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●クラシック音楽●新譜CD情報

2023-05-26 09:33:57 | 新譜CD情報



<新譜CD情報>




~エベーヌ弦楽四重奏団+タメスティ(ヴィオラ)のモーツァルト:弦楽五重奏曲第3番/第4番~



モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番/第4番

弦楽四重奏:エベーヌ弦楽四重奏団

        ピエール・コロンベ(ヴァイオリン)
        ガブリエル・ル・マガデュール(ヴァイオリン)
        マリー・シレム(ヴィオラ)
        ラファエル・メルラン(チェロ)

ヴィオラ:アントワン・タメスティ

CD:ワーナーミュージックジャパン WJ-5419.721332(日本語解説書付き)

 エベーヌ四重奏団は、フランスで1999年にブローニュ=ビヤンクール地方音楽院在学中の4人によって結成された。エベーヌとは黒檀を意味しており、弦楽器や、管楽器、民族楽器において、指板やフィッティングに使われている、クラシックのみならず広く音楽に関心を寄せる、という意味を込めて名乗っている。2004年に超難関で知られる「ミュンヘン国際音楽コンクール」で優勝し、併せて聴衆賞、2つのベスト・パフォーマンス賞、カール・クリンガー財団賞を受賞。その音楽に対する柔軟な姿勢が国際的な評価を得ている。幅広い音楽性で知られ、新しい発見や即興的な志向を持ち、洗練されたダイナミックな音楽性と冒険的で創造的なアプローチを特徴とする。それによって古典派音楽の作品、現代作品そしてジャズにまでも取り組む。中でも、モーツァルトの音楽に傾注しているという。これまでに数々の世界中の有名ホールで演奏をこなしており、2006年、2007年に「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」において来日した。

 ヴィオラのアントワン・タメスティは、フランス出身。2004年「ミュンヘン国際音楽コンクール」で優勝し、世界的な注目を集めた。現在はパリ国立高等音楽院教授を務める。今井信子によって「ヴィオラスペース」に招かれ、現在は、演奏だけでなく、共同ディレクターの一人としてプログラミングにも参加している。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-05-25 09:54:33 | コンサート情報



<コンサート情報>



~前田妃奈 2022年第16回「ヴィエニアフスキ 国際ヴァイオリンコンクール」 優勝記念リサイタル~

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第21番ホ短調K.304
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調Op.18
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 二短調 BWV.1004 より「シャコンヌ」
ヴィエニアフスキ:グノーの「ファウスト」の主題による華麗なる幻想曲Op.20
マスネ:タイスの瞑想曲
ヴィエニアフスキ:グノーの「ファウスト」の主題による 華麗なる幻想曲 op.20

ヴァイオリン:前田妃奈

ピアノ:グレッグ・スクロビンスキ

<東京公演>紀尾井ホール 2023年7月27日(木) 午後7時
<大阪公演>住友生命いずみホール 2023年7月28日(金) 午後7時

 ヴァイオリンの前田妃奈(2002年生まれ)は、大阪府出身。東京音楽大学付属高等学校を経て、 東京音楽大学に特別特待奨学生として在学。2019年第88回「日本音楽コンクール」第2位および岩谷賞(聴衆賞)、2020年第18回「東京音楽コンクール」弦楽部門第1位および聴衆賞受賞。このほか「クロスターシェーンタール国際ヴァイオリンコンクール」第1位、「クロンベルクアカデミースカラシップ賞」、「霧島国際音楽祭賞」、「松方ホール音楽奨励賞」など、国内外のコンクール、オーディション、マスタークラスでの受賞多数。そして、2022年第16回「ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクール」で優勝(前田妃奈の優勝は、第8回の漆原啓子以来41年ぶりの快挙)し、同時にヴィエニアフスキ・コンチェルト賞、カプリス賞、ソ ナタ賞、ベートーヴェン・ブラームス作品賞の4つの特別賞も受賞し、一躍世界の注目を浴びる。このほか11歳で関西フィルハーモニー管弦楽団と共演したのをはじめ、これまでに大阪フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団などと共演。さらに、リサイタル、室内楽やアウトリーチにも積極的に取り組んでいる。

 「ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール」は、ポーランドで開催される若手ヴァイオリン奏者のためのコンクール。1935年、ポーランドのヴァイオリニスト・作曲家ヘンリク・ヴィエニャフスキ(1835年―1880年)の生誕100年を記念し、甥であり作曲家のアダムス・ヴィエニャフスキが提唱してワルシャワで開始された。第二次世界大戦後、ワルシャワは深刻な打撃を受けたため、1952年から開催地をヴィエニャフスキ本人が好んでいたポズナンに移した。1935年第1回の優勝者は、フランスの伝説的ヴァイオリニストのジネット・ヌヴー(1919年―1949年)。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-05-24 09:35:53 | コンサート情報



<コンサート情報>



~山形交響楽団特別演奏会 さくらんぼコンサート2023 東京公演/大阪公演~

スメタナ:連作交響詩「わが祖国」第6曲 “ブラニーク”
モーツァルト:ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K. 447
ドニゼッティ:ホルン協奏曲 ヘ長調
ドヴォルザーク:交響曲 第8番 ト長調 作品88

指揮&ホルン:ラデク・バボラーク( 山形交響楽団“MUSIC PARTNER”)

管弦楽:山形交響楽団

<東京公演>2023年6月22日(木) 午後7時 東京オペラシティ コンサートホール
<大阪公演>2023年6月23日(金) 午後7時 ザ・シンフォニーホール

 ホルンのラデク・バボラーク(1976年生れ)は、チェコ、パルドゥビツェ出身。プラハ音楽院で学ぶ。音楽院在学中の18歳でチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を務め、以来ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などの首席ホルン奏者を務めてきた。 2009年ベルリン・フィルの首席奏者の座を辞し退団。現在、世界中のオーケストラと共演している。1994年「ミュンヘン国際音楽コンクール」優勝、1995年「チェコグラミー賞」クラシック部門受賞、2001年「ダビドフ賞」受賞。日本デビューは、1995年に山形県酒田市で開催された「世界ホルンフェスティバル」。2016年に山形交響楽団と初共演。2018年から3年間、指揮者として山形交響楽団首席客演指揮者を務めた。2021年西ボヘミア交響楽団首席指揮者に就任。2023年”YAMAGATAと世界を結ぶHub” を推進するパートナーとして、山形交響楽団の “MUSIC PARTNER” に就任。

 山形交響楽団(山響)は、1972年に東北初のプロ・オーケストラとして誕生。山形テルサ・酒田・鶴岡での定期演奏会、東京・大阪での「さくらんぼコンサート」、山形県下で毎年3万人以上の青少年に“感動”を届けるスクールコンサートなど、年間150回に及ぶ多彩な演奏活動を展開している。2007年、飯森範親(2004年から常任指揮者・ミュージックアドヴァイザー)の音楽監督就任を機に、名実共に東北地方のみならず日本の音楽文化を代表するオーケストラとしての地位を確立。2006年、オーケストラの自主レーベルとしては日本初となるCDレーベル「YSO live」を立ち上げ、2007年から2015年まで8年半にわたる壮大なプロジェクト、「アマデウスへの旅」(モーツァルト交響曲全曲演奏会)を開催。2008年には、アカデミー賞映画「おくりびと」に出演。2017年「モーツァルト交響曲全集」を発売し、第55回「レコード・アカデミー賞」(特別部門 企画・制作)を受賞。2020年より、常任指揮者の阪哲朗とともに「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会」をスタート。全集DVD制作とインターネット配信を通じて、山響の新たな魅力を発信している。2022年、創立50周年を迎えた。
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◇NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー◇エフゲーニ・キーシンとミッコ・フランク指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の共演

2023-05-23 09:40:50 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー



<NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー>



~エフゲーニ・キーシンとミッコ・フランク指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の共演~



①モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488

   ピアノ:エフゲーニ・キーシン

   指揮:ミッコ・フランク

   管弦楽:フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

②モーツァルト:ピアノ・ソナタイ長調K.331「トルコ行進曲付き」から第3楽章(アンコール1)
③ショパン:ワルツ ホ短調 遺作(アンコール2)

   ピアノ:エフゲーニ・キーシン

④メシアン:「忘れられたささげもの」

   指揮:ミッコ・フランク

   管弦楽:フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

⑤ドビュッシー:交響詩「海」

   指揮:ミッコ・フランク

   管弦楽:フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、

収録:2022年10月7日、フランス、パリ、フィルハーモニー・ド・パリ

放送:2023年5月8日 午後7:30~午後9:10

 今夜のNHK-FM「ベストオブクラシック」の放送は、2022年10月7日にフランス、パリのフィルハーモニー・ド・パリで開催されたピアノ:エフゲーニ・キーシン、指揮:ミッコ・フランク、管弦楽:フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏会である。エフゲーニ・キーシンは、我々日本人にとっても身近な存在であり、その近況が聴ける演奏会とあって興味津々。


 ピアノのエフゲーニ・キーシン(1971年生れ)は、ロシア、モスクワ出身。モスクワ市立グネーシン記念音楽専門学校で学ぶ。10歳でモーツァルトのピアノ協奏曲第20番を弾いてデビュー、11歳で初リサイタルを開くなど、早くから神童ぶりを発揮。これまでコンクール入賞歴はほとんどないものの、国際的ピアニストとして世界が認めるピアニストであり、コンクール万能時代において、これはかなり珍しいことでもある。1986年初来日した後、1990年カーネギー・ホールにおいてアメリカ・デビューを果たす。旧ソ連生まれだが、2002年英国籍、2013年イスラエル国籍も取得している。レパートリーはショパン、リスト、チャイコフスキー、ラフマニノフ、ベートーヴェンなど幅広い。

 指揮のミッコ・フランク(1979年生まれ)は、フィンランド出身。シベリウス音楽院でヴァイオリンを学び、1996年からは同音楽院でパヌラ教授の指揮の授業にも参加。フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン交響楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン国立歌劇場、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団のほか、北欧の主要なオーケストラにおいて次々に指揮デビューを果たす。2002年から2007年までベルギー国立管弦楽団の音楽監督・首席指揮者を務め、2006年から2013年までフィンランド国立歌劇場の芸術監督を務めた。2015年からは、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めている。

 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団(ラジオ・フランス・フィル)は、フランス、パリにある放送局「ラジオ・フランス」付属のオーケストラ。1976年に、フランス公共放送フィルハーモニー管弦楽団、リリック放送管弦楽団、フランス公共放送室内管弦楽団の3団体が合併し、フランス放送新フィルハーモニー管弦楽団として発足。1989年に、現楽団名に改称した。歴代の指揮者として、ジルベール・アミ、エマニュエル・クリヴィヌ、マレク・ヤノフスキ、チョン・ミョンフンらがおり、2015年よりミッコ・フランクが音楽監督に就任している。


 今夜、最初の曲のモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番は、モーツァルトが1786年に作曲したピアノ協奏曲であり、古典派のピアノ協奏曲の最高峰に位置する作品の一つ。同作は、第24番(K.491)とともに、1786年に3回開かれたモーツァルトの予約音楽会のために作曲された。モーツァルトはこの作品において、ピアノパート全体を最初から完全な形で書き記している。つまり、この作品では第1楽章のカデンツァについて完全に記されており、そして第2楽章にも第3楽章にもカデンツァは置かれていない。

 今夜のキーシンのモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番の演奏は、終始ゆっくりとしたテンポで弾き進められた。ここでのキーシンは、モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番に真正面から向き合い、正統的な演奏に終始した。若い頃からその才能を遺憾なく発揮してきたキーシンに対する我々のイメージは、才気煥発を絵にかいたような演奏を思い描いてしまいがちだが、キーシンもこの演奏の3日後に51歳を迎えたそうで(初来日は15歳の時)、大家の雰囲気を漂わせ始めたかのように、実に堂々とした演奏に終始したのには、まことにもって感心させられた。少しも、奇を衒ったところがなく、モーツァルトの奥深い音楽の世界をいかに聴衆に届けようかというキーシンの熱意のようなものが、その演奏の裏に感じとることができた。第2楽章などは、協奏曲というよりは、何か室内楽を聴いているような、しみじみとした雰囲気を感じさせる、他にはあまり聴かれぬ演奏を披露していた。第3楽章は、昔のキーシンの才気煥発ぶりが所々に顔を覗かせ、実に楽しい演奏を聴かせてくれた。そして、アンコールで弾いた2曲は、いずれも密度の濃い、輝きに満ちた演奏内容で、”キーシンいまだ健在なり”を強く印象付けられた演奏となった。


 今夜、次の曲のメシアン:「忘れられたささげもの」(「忘れられし捧げもの」とも称される)は、”管弦楽のための交響的瞑想”という副題を持っている。タイトルの「捧げもの」は、人類のために血を流したイエスの十字架を意味し、それを忘れて罪に走る人類、そして聖体の秘跡が描かれる。1930年(21歳)に作曲され、同年にピアノ用に編曲された。メシアンの管弦楽作品の中で実際に演奏された初めての作品で、この作品によって彼の才能が世に示されたデビュー作でもあった。

 今夜のミッコ・フランク指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団のメシアン:「忘れられたささげもの」の演奏は、イエスと罪深い人類とを対比させたこの曲の内容を、実に明確に描き分けることに長けていたと思う。欧米人の多くは、この曲の背後に横たわる物語を本能的に理解できるのだろうが、日本人であり、しかもキリスト教徒でもない私に、この曲が描く世界観を理解できるかと問われると、自信はないと、はなから答えざるをえない。しかし、この曲が持つ宗教的な深遠さや、人間の愚かさなどを表現しているだけは理解できる。それを前提に聴くと、今夜のミッコ・フランク指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏の巧みな表現力には、強く引き付けられるものがあった。この作品は、なかなか戦争から抜け出せない人類の愚かさを表現している曲なのかもしれない。この意味からすると、今夜の演奏内容は、このことを巧みに表現し得た演奏内容といえるのではなかろうか。


 今夜、最後の曲のドビュッシー:交響詩「海」は、ドビュッシーが1903年から1905年にかけて作曲した管弦楽曲。副題の付いた3つの楽章(第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」、第2楽章「波の戯れ」、第3楽章「風と海との対話」)で構成されている。1905年にフランスで出版された「海」初版のオーケストラスコア の表紙デザインには、ドビュッシー自身の希望により、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」の1つ「神奈川沖浪裏」が用いられた。

 今夜のミッコ・フランク指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団のドビュッシー:交響詩「海」の演奏は、メシアン:「忘れられたささげもの」の演奏とは異なり、開放的で伸び伸びとした演奏内容が特に印象に残った。オーケストラの各パートがそれぞれぞれ美しく響きあい、互いに競い合うように演奏が進む。ミッコ・フランクは、フィンランド出身の指揮者らしく、オーケストラから幻想的な雰囲気を引き出す術に長けているようだ。時折、同じフランスのオーケストラであるトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団のようなきらびやかな音の響きも聴こえてくる。今夜の演奏は、交響詩としてのドラマティックな曲の盛り上げ方に、特に引き付けられた。(蔵 志津久)
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-05-22 09:42:36 | コンサート情報



<コンサート情報>



~パリ・ノートルダム大聖堂のオルガン首席奏者 オリヴィエ・ラトリー オルガン演奏会~

クープラン:教区のためのミサ曲より「Offertoire sur les grands jeux(グラン・ジュによる奉献唱)」
バッハ:パストラーレヘ長調BWV590
サン・サーンス:動物の謝肉祭より(Shin-Young LEE編曲)水族館、大きな鳥籠、白鳥
フランク:オルガンのための3つの小品より第3曲「Piece heroique(英雄的小品)」
ヴィドール:オルガン交響曲 第5番より第1曲「Allegro vivace」
ワーグナー:歌劇「リエンツィ」より第5幕 リエンツィの祈り「全能の父よ、見守りたまえ」(オリヴィエ・ラトリー 編曲)
ワーグナー:歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲(エドウィン・ヘンリー・ルメア 編曲)
ラトリー:即興演奏

オルガン:オリヴィエ・ラトリー

会場:すみだトリニティホール

日時:2023年6月27日(火) 午後7時

 オルガンのオリヴィエ・ラトリーは、フランス出身。パリ国立高等音楽院で学ぶ。23歳にしてパリ・ノートルダム大聖堂の首席オルガニストに任命された。現在、コンサート・オルガニストとして活躍する世界屈指の卓越した演奏家で、レパートリーはバロックから現代まで網羅し、さらに即興演奏も得意とする。2012年よりモントリオール国立管弦楽団の名誉オルガニストを務め、現在、母校のパリ国立高等音楽院教授を務めている。2006年、ノース&ミッドランズ音楽学校と英国王立音楽院から名誉学位、2010年モントリオールのマギル大学より名誉音楽博士号を授与された。2009年アメリカ・オルガニスト協会の「国際演奏家年間賞」、「Prix de la Fondation Cino et Simone Del Duca賞」(フランス研究所)など、これまで国際的に著名な賞を数多く受賞。
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●クラシック音楽●新譜CD情報

2023-05-19 09:51:55 | 新譜CD情報



<新譜CD情報>



~ファビオ・ルイージ指揮デンマーク国立交響楽団のニールセン:交響曲全集~



<CD 1>

ニールセン:交響曲 第1番 ト短調 作品7
      交響曲 第2番 作品16《四つの気質》

<CD 2>

ニールセン:交響曲 第3番 作品27《広がり》
      交響曲 第4番 作品29《不滅》

<CD 3>

ニールセン:交響曲 第5番 作品50
      交響曲 第6番《素朴な交響曲》

ソプラノ:ファトマ・サイード(第3番)
バリトン:パレ・クヌーセン(第3番)

指揮:ファビオ・ルイージ

管弦楽:デンマーク国立交響楽団(DR放送交響楽団)

CD:ユニバーサルミュージック 486-3471(ドイツグラモフォン)

 指揮のファビオ・ルイージ(1959年生れ)は、イタリア、ジェノヴァ出身。パガニーニ音楽院およびグラーツ音楽院で学ぶ。1984年グラーツ歌劇場で指揮活動を始め開始。1990年グラーツ交響楽団を創設し、1995年まで芸術監督を務めた。その後、ライプツィヒ放送交響楽団芸術監督、スイス・ロマンド管弦楽団首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、シュターツカペレ・ドレスデン音楽監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、チューリッヒ歌劇場音楽総監督、ダラス交響楽団音楽監督、デンマーク国立管弦楽団首席指揮者を歴任。 2013年メトロポリタン歌劇場とのワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の録音によりグラミー賞を受賞。 2017年デンマーク国立交響楽団首席指揮者、2019年フィレンツェ五月音楽祭音楽監督に就任。2022年9月NHK交響楽団首席指揮者に就任。

 デンマーク国立交響楽団(DR放送交響楽団)は、デンマークの首都コペンハーゲンに本拠を置く、デンマーク放送協会(DR)専属のオーケストラでデンマーク放送交響楽団としても知られる。設立は1925年。本拠地はDRコンサートホール。歴代の指揮者として、ニコライ・マルコ、フリッツ・ブッシュ、ヘルベルト・ブロムシュテット、ランベルト・ガルデルリ、レイフ・セーゲルスタム、ウルフ・シルマー、ゲルト・アルブレヒト、トーマス・ダウスゴーらが首席指揮者を務め、2012年からはラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスが首席指揮者を務めていたが、フリューベックの体調悪化にともなう引退により空席となり、2017年からファビオ・ルイージが首席指揮者に就任。
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●クラシック音楽●コンサート情報

2023-05-18 09:48:33 | コンサート情報



<コンサート情報>



~萩原麻未とミケーレ・マリオッティ(ローマ歌劇場音楽監督)指揮東京交響楽団の共演~

モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467
シューベルト:交響曲 第8番 ハ長調 D944 「ザ・グレイト」

ピアノ:萩原麻未

指揮:ミケーレ・マリオッティ(ローマ歌劇場音楽監督)

管弦楽:東京交響楽団

会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

日時:2023年6月25日(日) 午後2時

 ピアノの萩原麻未は、広島県出身。2005年広島音楽高等学校卒業後、文化庁海外新進芸術家派遣員として単身フランスに留学しジャック・ルヴィエに師事。2010年「ジュネーブ国際音楽コンクール」ピアノ部門で日本人として初優勝。同コンクールは、なかなか第1位を出さないことで知られるが、萩原麻未は、実に8年ぶりの優勝者となった。これまで、第13回「ホテルオークラ音楽賞」、第22回「新日鉄音楽賞」フレッシュアーティスト賞、第22回「出光音楽賞」、文化庁長官表彰(国際芸術部門)、第46回「東燃ゼネラル音楽賞」奨励賞を受賞。

 指揮のミケーレ・マリオッティ(1979年生まれ)は、イタリア、ペーザロ出身。ロッシーニ音楽院で作曲を学ぶ。2005年、サレルノ・ヴェルディ歌劇場でのロッシーニ「セビリアの理髪師』」で、オペラ指揮者としてデビューする。2007年11月、ボローニャ市立劇場でのヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」公演において成功を収める。2008年2月より、ボローニャ市立劇場の首席指揮者を務める。 2011年9月にボローニャ市立劇場の日本公演にて初来日を果たし、ベッリーニ「清教徒」、ビゼー「カルメン」を指揮した。2022年ローマ歌劇場音楽監督に就任。2023年9月に開催される「ローマ歌劇場日本公演」の指揮者を務めることになっている。
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