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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇ムローヴァ&アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のヴィヴァルディ:「四季」

2017-01-10 08:14:52 | 古楽

ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」op.1-4

                          第1番「春」 RV269/第2番「夏」 RV315/第3番「秋」 RV293/第4番「冬」 RV297

           協奏曲ト短調「ドレスデンオーケストラのために」 RV577

ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ

指揮:クラウディオ・アバド

管弦楽:ヨーロッパ室内管弦楽団

CD:ユニバーサルミュージック(DECCA) PROC‐1808

 このCDは、ヴァイオリン独奏にヴィクトリア・ムローヴァを迎え、クラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団によるヴィヴァルディの協奏曲集「四季」と協奏曲ト短調「ドレスデンオーケストラのために」の2曲を収録してある。結論から言うと、数ある「四季」の録音の中でも傑出した一枚となっており、流麗で芳醇な響きに加え、ゆったりとしたリズム感が何とも心地いい。独奏者のヴィクトリア・ムローヴァ(1959年生れ)は、ロシア出身のヴァイオリニスト。モスクワ中央音楽学校、モスクワ音楽院で学ぶ。1980年「シベリウス国際ヴァイオリン・コンクール」、1982年「チャイコフスキー・コンクール」でそれぞれ優勝し、一躍世界的に注目を浴びる。以後、世界の主要なオーケストラと共演。小澤征爾の指揮するボストン交響楽団と共演した最初の録音(チャイコフスキーとシベリウスの協奏曲)は、モントルーのディスク大賞を受賞。1990年代半ばから「ムローヴァ・アンサンブル」を結成して、ヨーロッパで演奏活動を展開する。1990年代半ば頃からピリオド奏法やガット奏法を取り入れた新しい表現法を試み、さらに、ジャズやポップスにも挑戦している。現代の世界のヴァイオリン界を代表するひとり。

 指揮のクラウディオ・アバド(1933年―2014年)は、イタリア・ミラノ出身。ヴェルディ音楽院、ウィーン音楽院(現ウィーン国立音楽大学)で学ぶ。1959年に指揮者としてデビューを果たす。1958年クーセヴィッキー、1963年ミトロプーロスの両国際指揮者コンクールで優勝。1968年ミラノ・スカラ座の指揮者となり、1972年音楽監督、1977年芸術監督に就任。また、スカラ・フィルハーモニー管弦楽団を設立しオーケストラの質の向上を図る。1979年ロンドン交響楽団首席指揮者、1983年音楽監督に就任する。1986年ウィーン国立歌劇場音楽監督に就任。そして、1990年ベルリン・フィル芸術監督に就任し、名実共に世界最高の指揮者としての地位を確立。2000年に胃癌で倒れるが、再起し、2003年以降ルツェルン祝祭管弦楽団や自身が組織した若手中心のオーケストラ(マーラー室内管弦楽団やヨーロッパ室内管弦楽団など)との活動を中心に展開。

 ヨーロッパ室内管弦楽団は、英国ロンドンを本拠地とする室内オーケストラ。クラウディオ・アバドの提唱により、1981年ECユース管弦楽団(現EUユース管弦楽団)の出身者を中心として、ヨーロッパ12カ国の約45名の若い演奏家たちにより結成された。アバドをミュージカル・アドバイザーとして1982年にロンドンでデビューし、アバド指揮、ポリーニのピアノソロによるヨーロッパ・ツアーにより瞬くうちに名声を得る。音楽監督・首席指揮者などは置かず、これまでアーノンクール、ショルティ、マゼール、ベルグルンド、バルシャイなどの指揮者、ポリーニ、クレーメル、ゼルキン、ピリスなどのソリストたちと共演を重ねてきた。レパートリーもノーノやシュトックハウゼンなどの現代音楽に至るまで幅広くこなす。アバド指揮でロッシーニの歌劇「ランスへの旅」、シューベルトの交響曲全集やハイドンの交響曲集、ニコラウス・アーノンクール指揮でベートーヴェンの交響曲・協奏曲全集やバルトーク作品集、ゲオルク・ショルティ指揮でモーツァルトの交響曲や歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」など、これまで数多くの優れた録音を遺している。

 ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」は、独立した作品ではなく、1725年にアムステルダムのル・セーヌ社から出版された協奏曲集「調和と創意への試み」op.8の最初の4曲のことを指す。この「四季」は、特に日本において絶大な人気を誇っている。これは同曲の四季折々の風物を描くソネットを配した構成が、古来芸術と季節とを強く結びつけてきた日本人の精神にぴたりと合うからだと考えられている。このCDでの「四季」の演奏は、その響きが流麗な上に、芳醇な香りが濃厚にたちこめたものになっており、数ある「四季」の録音の中でも特筆すべきものに仕上がっている。テンポはややゆっくり目としたもので、これらがの要素一体となり、日本人が特に好む理想的な「四季」が、そこには現れてくるのである。ムローヴァのヴァイオリン独奏も詩的な雰囲気をたっぷりと含み、聴き応えは十分以上といってもよいほどだ。ヴァイオリン独奏者、指揮者、そしてオーケストラの三者の息がぴったりと合っていることが、この録音の魅力を倍増させている。このCDには、「四季」のほかヴィヴァルディの協奏曲ト短調「ドレスデンオーケストラのために」が収録されている。「ドレスデンオーケストラ」とはドレスデン宮廷管弦楽団のこと。この曲での演奏は、「四季」より一層重厚さが増したような感覚の演奏で、特に華やかな管楽器群の響きが一際印象に残る。(蔵 志津久)  


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