御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

秋草 鶴次 「十七歳の硫黄島」

2007-10-28 16:25:34 | 書評
前にNHKスペシャルで取り上げられてそれを見て「硫黄島の生き残り兵」という記事をかいたが、これはその中で取り上げられていた秋草氏の著作。

いやはや、地下壕戦すさまじさに驚くばかりであった。そこで思うのは、栗林名将論への改めての疑問。2万人で5-6万人を足止めする強力な闘いをした、ということはすばらしいことだとは認めるが、多くの将兵に苦しい限りの生を強いた闘いでもあった。また、大勢が決したあとも数千人以上を犠牲にしてしまった。また、2ヶ月を稼いでも本土の防空体制の整備見込みなければ敢闘記録を残すためだけの犠牲であった。

他の玉砕の島の指揮管が栗林中将に比較して悪いという風にも思われなくなった。支援の全くない持久戦のいかに悲惨なことか。多少持久したところで体制は埒があかないと観念すれば、それは一気に出て行くのも情けある選択だったのかもしれないと思う。

なんにせよ栗林中将は部下の帝国軍人たちに最も厳しい生を求めた鬼将軍であったことは確かである。