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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

糖尿病治療に朗報か、インスリン分泌「幹細胞」発見=ベルギーなどの研究チーム

2008年01月26日 | 医療技術
 【ワシントン=増満浩志】血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のベータ細胞のもとになる幹細胞を、ベルギーなどの研究チームがマウスで見つけた。幹細胞が人間でも見つかれば、ベータ細胞の破壊で起こる1型糖尿病の治療の可能性も広がる。科学誌セル最新号に発表された。

 肝臓や血球など体の様々な細胞は、それぞれに特有の幹細胞から作られるが、ベータ細胞の幹細胞は見つかっていなかった。研究チームは成熟したマウスを使った実験で、傷ついた膵臓ではベータ細胞が増えることを発見。その仕組みを詳しく調べ、分泌物を運ぶ導管の近くに幹細胞を見つけた。ベータ細胞を含む「ランゲルハンス島」(膵島(すいとう))の様々な細胞を生み出すらしい。

 糖尿病の治療では、膵島移植が行われるが、膵島を培養して増やさなければならない。幹細胞の発見で膵島移植が効率よく実施できると期待される。

[読売新聞 / 2008年01月26日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080126-OYT1T00333.htm

アリ誘う種子のにおい、化学物質を特定 日本人研究員ら=ノースカロライナ州立大学

2008年01月26日 | 生きもの色々
 アマゾンの熱帯雨林で、アリがヤドリギの種を樹上に運んで「アントガーデン」と呼ばれる独特の巣を作るのは、種にアリを誘引するにおいがあるのが一因と分かった。米ノースカロライナ州立大の野島聡上席研究員らがにおいの化学物質を特定し、26日までに米科学アカデミー紀要の電子版に発表した。研究成果は謎が多い熱帯雨林の生態系の解明に役立つと期待される。(時事)

[朝日新聞(時事通信) / 2008年01月26日]
http://www.asahi.com/science/update/0126/JJT200801260006.html

がん防ぐ酵素を特定 DNAの傷すぐ察知=名古屋市立大学

2008年01月26日 | 遺伝子組替マウス
 細胞内にある特定の酵素が、がんの原因となるDNAの損傷をいち早く察知し、がんの発生・増殖を防いでいることを、名古屋市立大大学院医学研究科の中西真教授(細胞生物学)と島田緑研究員らのグループが世界で初めて解明した。がんを予防する治療法は現在ないが、がん発病を防止するメカニズムを解明したことで、がんを根源から絶つ治療法の確立につながる可能性がある。論文は25日の米有力科学誌セルに掲載される。

 がん細胞は、放射線やたばこなどの発がん性物質によりDNAにできた傷が修復されず、欠陥細胞が増殖していって発生する。人間などはDNAに傷ができると、DNAを読み取ってコピーすることを中断し、その細胞を増殖させない機能があるが、その具体的な仕組みはこれまで不明だった。

 中西教授らは、細胞の核内でDNAが巻き付くヒストンと呼ばれるタンパク質が、遺伝子を読み取る転写に関与していることに着目。これまで存在は分かっていたが、どんな作用を持つ酵素か不明だったChk1(チェック1)を調べた。

 ヒストンに付着するChk1を人工的に欠損させ、マウスで実験したところ、マウスが高い確率でがんになることを確認。Chk1が遺伝子の読み取りをつかさどるスイッチの働きをしていることを突き止めた。

 DNAに傷ができると、Chk1がヒストンから分離し、ヒストンを構成する一部のアミノ酸が化学変化することでスイッチがオフ状態となり、転写が起こらない。一方、何らかの理由でこの酵素が機能しなくなると、傷ついた遺伝情報を持った欠陥のある細胞が増殖し、がんが発生する。

 中西教授は「このメカニズムを念頭に置いた研究が進めば、酵素の機能を回復させてがんを予防する薬物の開発が将来、可能になる」と話している。

[中日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008012590103702.html

マウスiPS細胞で角膜再生へ=東北大学、京都大学

2008年01月26日 | 再生医療
 東北大の西田幸二教授(眼科)らのチームが、マウスの体細胞から作られた万能細胞(iPS細胞)を使い、角膜になる幹細胞にまで分化させて培養することに、京都大との共同研究で成功した。今後、人間のiPS細胞を使った実験を計画、すでに臨床応用されている角膜移植などと組み合わせることで拒絶反応のない再生治療の実現をめざすという。

 西田教授らは、京都大の山中伸弥教授からマウスのiPS細胞の提供を受けて、1年半前から研究を始めた。iPS細胞を1カ月ほどかけて増やした後、薬剤を使って分化を誘導し、角膜細胞の前の段階の細胞を取り出し、培養することに成功した。今後、角膜の細胞に完全に分化させる手法を確立し、臨床応用につながる細胞シートの作製につなげたい考えだ。

 角膜の治療は、他人の角膜や角膜の細胞を培養して作ったシートを移植する方法と、患者本人の角膜細胞から作ったシートを移植する方法の2種類がある。ただ、他人の角膜を使う方法では拒絶反応を避けられず、患者本人の角膜からシートを作る方法は病気のためにうまく細胞が増えないなどの問題がある。患者の健康な部位からiPS細胞ができれば、そうした課題を克服できる。

 今回はマウスでの成果だが、原理的には人も同じ手法で分化・誘導を実現できると考えられるという。西田教授は「ヒトのiPS細胞でも再現できれば、拒絶反応がなく、質が高い細胞シートを使った治療法を比較的早く実現できるのではないか」と話している。

[朝日新聞 / 2008年01月26日]
http://www.asahi.com/science/update/0125/TKY200801250329.html

骨髄移植併用で拒絶反応回避 免疫抑制剤なしで成功=ハーバード大学

2008年01月26日 | 医療技術
 腎臓移植の手術を受けた患者に、免疫抑制剤なしでも拒絶反応が起きないようにすることに米ハーバード大の研究チームが成功した。骨髄移植を併用する新しい治療法で、24日発行の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。

 臓器移植を受けると、患者の免疫系が移植臓器を攻撃するのを避けるため、患者は免疫抑制剤を一生飲み続けなければならない。だが、感染症にかかりやすくなるなどの副作用があった。

 チームの河合達郎・准教授らは、重い腎臓病の22~46歳の患者5人に親族から生体腎移植をする際、免疫系で働くリンパ球などになる幹細胞を含んだ骨髄も提供者から採り、同時に移植した。

 骨髄移植の併用は、提供者の身体的負担を増やすことになるが、患者5人のうち4人は手術の9~14カ月後から、免疫抑制剤なしでも拒絶反応が起きなくなり、手術後2~5年たっても腎機能は良好という。1人は手術から10日で拒絶反応が起こり、再移植を受けた。

 通常の骨髄移植と違い、患者の骨髄を放射線などで殺さずに提供者の骨髄を移植した。一時的に患者のリンパ球と提供者のリンパ球が混在した状態ができ、拒絶反応を抑えているらしい。

 河合准教授は「同じ手法が肺や心臓の移植に応用できるかどうかをサルで調べている」と話す。

[朝日新聞 / 2008年01月26日]
http://www.asahi.com/science/update/0126/TKY200801260242.html