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脳:情報伝達物質が伝わる仕組み確認 物忘れの改善に期待=東京大学

2008年01月13日 | 脳、神経
 脳の神経細胞内で記憶や学習の情報伝達物質が伝わる仕組みを、東京大のローレント・ギョー研究員と広川信隆教授(ともに分子細胞生物学)の研究チームがマウス実験で解明した。将来、物忘れの謎を明らかにすることも期待できるという。

 情報伝達では、(1)伝達物質を受け取る「受容体」を運ぶ分子モーターに受容体を載せる渡し役(2)運転手役の分子モーター(3)分子モーターから受容体を取り出す降ろし役--の三つのたんぱく質がかかわっている。研究チームはこれまでに、渡し役と運転手役がどのように役割を果たしているかを解明したが、残りの降ろし役の仕組みは謎だった。

 チームは蛍光たんぱく質を使い細胞内で起きている変化を可視化する方法などで、分子モーターのたんぱく質「KIF17」の構造が受容体を降ろす段階で、どのように変化しているのかを調べた。

 その結果、KIF17を構成するアミノ酸の一つ「セリン」がリン酸化という化学反応を起こしていることを発見。人工的にリン酸化させたところ、受容体を切り離すことを確認した。

 広川教授は「これで記憶や学習に分子モーターがかかわる全段階の仕組みを解明できた。アルツハイマー病や高齢により記憶力が低下した場合に、三つのたんぱく質のどこが大きな影響を与えているのかを調べれば、物忘れの改善などに役立つだろう」と話す。

 英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」1月号に発表した。【田中泰義】

[毎日新聞 / 2008年01月13日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080113k0000e040022000c.html