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ピロリ菌でがん発症、マウスで確認 「胃」以外も関係か=北海道大学

2008年01月08日 | 消化器
 ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんを発症させる仕組みを昨年世界で初めて解明した、北大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授(分子腫瘍(しゅよう)学)と同大学院生大西なおみさんらの研究グループが、ピロリ菌が作るタンパク質を用いて実際の動物(マウス)にがんを発症させることに初めて成功した。

 試験管内の実験で解明したがん化の仕組みが、複雑な生体内でも働いていることが分かり、胃がんの新たな予防法や治療法開発に一歩近づく研究と期待される。米科学アカデミー紀要の電子版で今週中にも発表される。

 研究グループは、ピロリ菌が作るタンパク質CagA(キャグ・エー)の設計図である遺伝子をマウスの受精卵に注入。生まれながらに全身の細胞でCagAを作り出すマウスを誕生させ、七十二週間、観察した。

 生後三カ月までに二百二十二匹の六-七割に、胃の上皮細胞が増殖し、胃壁が厚くなる異変が発生。その後、六匹に胃や小腸のがん、十七匹が白血病やリンパ腫など血液がんを発症した。

 研究グループは「マウスが自然状態で消化器がんになることはまずなく、生体に入ったCagAでがんが発症したにちがいない。また、CagAが消化器以外のがんとも関係がある可能性もでてきた」と指摘している。

 畠山教授らがこれまでに明らかにしてきた胃がん発症メカニズムは、《1》ピロリ菌がCagAを胃の上皮細胞に注入《2》CagAが細胞内のタンパク質(PAR1)と結合し、上皮細胞同士の密着構造を破壊、炎症やかいようを起こす《3》さらにCagAが細胞内の別のタンパク質(SHP2)と結合し、異常な細胞増殖が始まり、がんになる-という過程。

 畠山教授は「私たちが解明した細胞レベルのメカニズムが個体レベルで発展的に確かめられたのは大きなステップ。CagAが世界初の細菌に由来するがんタンパク質であることも最終的に実証できた。今後研究を進め、予防や治療開発につなげたい」と話している。

[北海道新聞 / 2008年01月08日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/69481.html


【ピロリ菌から発がんたんぱく質 北大、マウスで実証】

 人の胃にすみ着くピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)がつくるたんぱく質にがんを引き起こす働きのあることを、北海道大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授(分子腫瘍(しゅよう)学)らのグループがマウスの実験で明らかにした。今週の米科学アカデミー紀要電子版に発表する。胃がんなどを起こす仕組みの解明につながる成果だ。

 ピロリ菌が胃の粘膜の細胞にくっつくとCag(キャグ)Aというたんぱく質を細胞内に打ち込むことが知られている。

 畠山さんらはCagAを作るピロリ菌の遺伝子を取り出してマウスの受精卵に組み込み、全身の細胞にCagAが入るとどうなるかを調べた。すると、約200匹のマウスの半数以上は生後3カ月までに胃の粘膜の細胞が異常増殖して胃壁が厚くなり、その後約20匹で胃にポリープができた。さらに1年半以内に2匹が胃がん、4匹が小腸がんを発症。白血病になったマウスも17匹いた。

 これまでの細胞レベルでの研究で、CagAが細胞内で別のSHP―2というたんぱく質と結びつくと細胞のがん化が起きることを突き止めていたため、SHP―2と結合しないように細工したCagAをつくらせてみると、マウスはがんにならなかったという。

 畠山さんは「CagAががんを起こすことが、個体レベルで証明できた。将来、CagAとSHP―2との相互作用を妨げる薬の開発ができるかもしれない」という。

[朝日新聞 / 2008年01月08日]
http://www.asahi.com/science/update/0108/TKY200801080038.html