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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

利根川教授ら「ダイスケ」開発 神経回路をオン・オフ=理化学研究所、マサチューセッツ工科大学

2008年01月25日 | 遺伝子組替マウス
 複雑な脳のネットワークの働きを解明するために、マウスの特定の神経回路を一時的に遮断する技術を、理化学研究所・米マサチューセッツ工科大学脳科学センターの利根川進センター長らが開発した。25日、米科学誌サイエンス電子版に発表した。同センターのあるボストンが本拠地の大リーグ・レッドソックスの松坂大輔投手にちなみ、この技術を「DICE―K(ダイスケ)」と名付けた。

 利根川さんらはマウスの遺伝子を操作して、特定の神経回路で毒素を働かせ、回路を遮断することに成功した。薬をえさに混ぜて、回路を回復させることもできる。各回路のスイッチを自在にオン・オフすることで、その働きを調べられる。

 学習や記憶にかかわる海馬と呼ばれる脳の領域には、二つの重要な神経回路があることが知られている。その一方の回路をダイスケを使って遮断すると、新しい環境で素早く記憶する力が衰えることも突き止めた。

 「老化などで記憶力が衰えるときにも、この回路がかかわっている可能性がある」と利根川さん。ダイスケは学習や記憶の解明に威力を発揮しそうだ。

[朝日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.asahi.com/science/update/0125/TKY200801250033.html


【その名は「DICE―K」…利根川教授が遺伝子操作技術開発】

 ノーベル生理学・医学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大の利根川進教授が、脳の神経回路のスイッチを自在に「オン」「オフ」する遺伝子操作技術を世界で初めて開発することに成功した。

 脳の神経がどのように働いているかを調べるための研究に有用な技術で、利根川教授は、大学と同じマサチューセッツ州を本拠地とする米大リーグ、ボストン・レッドソックスの松坂大輔投手にちなんで、英文の頭文字をつなぎ、この手法を「DICE―K(ダイスケ)」と名付けた。25日の米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載される。

 これまでの方法では、実験動物の脳の一部を回復できないように人為的に壊して調べるため、広範に壊すことによる影響が出る。脳の機能を維持したまま、神経回路をピンポイントで操作できる今回の手法を使えば、状態がより正確に把握できるという。

 利根川教授は、マウスの実験で、3種類の遺伝子を組み換えて、記憶を担う脳の「海馬」という領域にある特定の神経細胞だけを操作した。この神経細胞は、「ドキシサイクリン」という抗生物質に反応して回復するようになっている。

[読売新聞 / 2008年01月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080125-OYT1T00003.htm


[理化学研究所 プレスリリース]
神経回路を遮断し回復する技術を世界で初めて開発
- 複雑な神経回路の仕組みを解く革新基盤技術の誕生 -
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2008/080125/index.html

細菌ゲノム、完全合成 米チーム「人工生命」に前進=クレイグ・ベンター研究所

2008年01月25日 | 遺伝子
 細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成することに、米クレイグ・ベンター研究所のチームが成功した。これまで、より原始的なウイルスでの成功例はあったが、自己増殖能力を備えた生物である細菌のゲノムを人工合成したのは初めて。人工合成ゲノムを実際に働かせることができれば、細菌の人工合成につながるだけに、「人工生命」づくりに向けた大きな前進だ。米科学誌サイエンス(電子版)に25日、発表する。

人工合成したのは「マイコプラズマ・ゲニタリウム」という細菌のゲノム。

 チームはまずゲノム全体の8分の1~4分の1の大きさの分子を試験管内で化学合成。これらの「部品」を大腸菌に入れ、遺伝子組み換えでくっつけ、大きな部品をつくった。さらに大きな部品を酵母の中で同様にくっつけ、完全なゲノムを合成した。

 生物の設計図であるゲノムの人工合成は、特定の能力を備えた「人工生命」づくりの前提となる技術。バイオ燃料を製造したり、有害廃棄物を分解したりするのに必要な人工微生物づくりなどへの応用が期待されている。

 人工生命づくりには、合成したゲノムをどうやって働かせるかなどの課題はあるが、チームは昨年、ある細菌のゲノムと別の細菌のゲノムを入れ替えることにも成功しており、こうした技術との組み合わせで「人工生命」が誕生するのも時間の問題、という見方も広まってきている。

 しかし、人工生命はテロへの悪用、自然界への悪影響などの懸念がつきまとう。

 国立遺伝学研究所の小原雄治所長は「生命のデザインを可能にする大きな一歩だ。ただ、人工微生物を人間が制御できなくなったときにどう対応するのかなど、二重、三重の安全対策を考えていく必要がある」と話す。

[朝日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.asahi.com/science/update/0124/TKY200801240478.html