ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

パーキンソン病、ヒトES細胞で改善・大学助手、動物実験成功=聖マリアンナ医科大学

2007年03月14日 | 脳、神経
 聖マリアンナ医科大学の千葉俊明助手は13日、横浜市で開催中の日本再生医療学会でヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使ってパーキンソン病の症状を改善する動物実験に成功したと発表した。人間に応用できれば、進行したパーキンソン病患者の手足のふるえなどを軽減する有望な治療法になる可能性がある。千葉助手が米コロラド州立大学に在籍していた時の研究成果。
 パーキンソン病は、何らかの理由で神経細胞が死滅し、脳のなかの情報伝達物質ドーパミンが不足して発症する。決め手となる治療法はない。

[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年03月14日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007031401012h1

コラーゲン:サケの皮から抽出し人工血管作成=北海道大学

2007年03月14日 | 再生医療
 北海道大などの研究チームが、サケの皮のコラーゲンから人工血管を作り、ラットの大動脈部分に移植したところ、2週間以上の生存が確認された。13日から横浜市内で始まる日本再生医療学会で発表する。海洋性動物のコラーゲンから人工血管を作成し、機能が確認されたのは世界初という。研究チームは、サケからヒトに感染するウイルスが報告されていないことなどから、安全性も高いとみている。【永山悦子】

 水産加工後に大量に廃棄される天然のサケの皮は北海道で年約2000トンに上る。ここからコラーゲンを抽出した場合、年約600トンを採取できるという。また、従来の人工組織は、牛やブタのコラーゲンを使っていたが、BSE(牛海綿状脳症)など感染症による危険性も懸念されている。

 このため、研究チームは廃棄量が大きく、安全性も高いサケの皮に注目し、再生医療への応用を目指した。

 課題はサケのコラーゲンが熱に弱く、19度で溶けてしまうことだった。そのままではヒトの体内に移植できないため、コラーゲンの構造を糸状の塊に変えたり、構成する分子間の結合を強めるなどの処理を行い、溶け始めの温度を55度まで上げることに成功した。

 耐熱性が上がったコラーゲンで内径1.6ミリ、厚さ0.6ミリのチューブを作り、今年2月下旬にラットの腹部の大動脈へ移植した。その結果、チューブは心臓の拍動に合わせて伸び縮みし、元の大動脈同様の強度と伸縮性が確認された。

 研究チームの永井展裕・北大創成科学共同研究機構特任助手(移植医療)は「今後イヌなどの大型動物で実験し、将来はヒトの心筋梗塞(こうそく)治療に使える細い口径の人工血管開発を目指したい」と話している。

[毎日新聞 / 2007年03月11日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070311k0000m040119000c.html

北大リサーチ&ビジネスパーク構想、移植医療・組織工学のページ
http://www.cris.hokudai.ac.jp/cris/rbp/create_03/create_03_2/index.html

アトピーに特定乳酸菌が有効、マウスで実験=フジッコ

2007年03月13日 | 食品・栄養
 食品メーカーのフジッコは13日、カスピ海ヨーグルトに含まれる特定の乳酸菌に、アトピー性皮膚炎の悪化を抑える作用があることがマウスによる実験で分かった、と発表した。28日から始まる日本薬学会の大会で発表する。

 背中に薬を塗ってアトピー性皮膚炎を起こしたマウスで実験。カスピ海ヨーグルトに含まれる乳酸菌「クレモリスFC株」を食べさせなかったマウスは、炎症部分の皮膚の厚みが正常のマウスの約1・8倍になった。一方、クレモリスFC株を餌に混ぜて与えたマウスは1・5倍以下に抑えられたという。

 フジッコは「今後、人体での反応も調べたい」と説明している。カスピ海ヨーグルトは独特の粘りで知られ、カスピ海と黒海に挟まれたカフカス地方の伝統的な食品。

[東京新聞=共同通信 / 2007年03月13日]
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007031301000690.html

フジッコ株式会社ホームページ
http://www.fujicco.co.jp/index.html

脳出血による運動障害、ES細胞で回復=聖マリアンナ医科大学

2007年03月11日 | 脳、神経
 聖マリアンナ医科大学の鈴木登教授らの研究チームは、脳出血の後遺症で運動障害が残ったマウスの脳を、サルの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から作った神経細胞の移植によって機能を回復させることに成功した。人間でも同じことができれば、脳梗塞(こうそく)による体のマヒを細胞移植で治療可能になる。
 同医大のほか京都大学の中辻憲夫教授、田辺製薬などが研究に参加。研究チームは脳の運動機能をつかさどる部分に脳出血を起こし、右半身に運動障害があるマウスの脳にサルのES細胞から作製した神経細胞を移植した。


[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年03月11日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007031006929h1

DNA修復 助ける酵素を特定 がん治療応用期待=京都大学

2007年03月10日 | 遺伝子
 放射線などで切断、欠損したDNAの初期段階の修復に重要な役割を果たす酵素を、京都大医学研究科の武田俊一教授、園田英一朗助教授らのグループが確認した。がん治療の効率化につながる知見という。米科学誌「モレキュラーセル」で10日、発表した。

 ■初期段階で働き

 武田教授らは、酵母のDNA複製時に補助的に働く酵素「UBC13」の機能を、ニワトリのリンパ球を用いて調べた。

 UBC13がない細胞は、切断されたDNAの修復に2倍以上の時間がかかり、放射線照射で死滅する確率が高かった。修復するためのタンパク質が切断部に集まらなくなっており、修復の初期の段階で働いていることが分かった。人の細胞でもDNAの修復能力が低下することを確かめた。

 染色体は、DNAがタンパク質(ヒストン)に巻き付く構造になっている。UBC13は、修復作業を始めるために、ヒストンからDNAをほどく役割をしている可能性があるという。

 UBC13の働きを抑えることができれば、DNAの修復が遅くなり、細胞は死にやすくなる。がん細胞でUBC13の働きを抑えれば、抗がん剤や放射線治療の効率が上がるという。

 武田教授は「DNAの修復はいくつもの段階を経て行われるが、UBC13は、これまで知られていなかった初期の段階で働く酵素。品種改良や遺伝子治療の効率を上げることにも応用できる可能性がある」と話している。

[京都新聞 / 2007年03月10日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007031000024&genre=G1&area=K10



【遺伝子修復「要」のたんぱく質確認 京都大教授ら】

 遺伝情報を担うDNAは、放射線や活性酸素などでちょん切られたり傷ついたりし、病気を引き起こす。京都大大学院医学研究科の武田俊一教授(放射線遺伝学)らは、壊れたDNAを細胞が自力で直す仕組みの解明を進め、修復システムの引き金となる新たなたんぱく質を確認した。病気の予防治療にも役立ちそうだ。米科学誌「モレキュラーセル」9日号に発表した。

 DNAの損傷は一つの細胞で1日あたり5万~50万回に達するが、細胞は1分以内に損傷場所を探し、修復する。「ATM」というたんぱく質が損傷を感知し、修復システムの引き金を引いていることは分かっている。

 武田教授らは酵母に耐性をつけることで知られる「UBC13」という別のたんぱく質に着目。ニワトリのリンパ球細胞でUBC13を作る遺伝子の働きを止め、放射線を当てたときの細胞の反応を調べた。すると、正常の細胞に比べて生存率が10分の1前後になり、DNAを直す時間も2倍程度かかった。UBC13の方が、修復システムの要になっているとみている。

 武田教授は「がんの放射線治療で、患部でのUBC13の働きをじゃましてやれば、がん細胞をもっとよく殺せる可能性もある」と話している。

[朝日新聞/ 2007年03月10日]
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200703100059.html

京都大学 医学研究科 放射線遺伝学教室
http://rg4.rg.med.kyoto-u.ac.jp/

細胞死(アポトーシス)制御の酵素を特定 がん治療などへの応用も期待=東京医科歯科大学

2007年03月09日 | 癌、腫瘍
 DNAが傷ついた細胞が自発的に死ぬ「アポトーシス」(細胞死)の制御に関与している酵素を、東京医科歯科大の吉田清嗣助教授らの研究チームが特定した。

 異常な細胞を狙って細胞死させられれば、がん治療などへの応用も期待できる。研究成果は9日付の米専門誌に発表された。

 紫外線や放射線などでDNAが傷つけられた場合、がん化などの悪影響を防ぐために細胞死が起きる。細胞死は、がん抑制遺伝子と呼ばれるp53遺伝子が働いて起きるが、同遺伝子を働かせるためのスイッチとなる酵素が見つかっていなかった。

[時事通信社 / 2007年03月09日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007030900045

東京医科歯科大学 プレスリリース
http://www.tmd.ac.jp/cmn/soumu/kouhou/news20070306.htm

東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 分子遺伝
(BGM音が鳴ります、注意ください)
http://www.tmd.ac.jp/mri/mgen/index_j.html

母乳たんぱく質に血中脂質抑制効果=ライオン

2007年03月09日 | 食品・栄養
 母乳に多く含まれるたんぱく質ラクトフェリンが、中高年に多い内臓脂肪症候群のひとつ、血中脂質の増加を抑えることを、ライオン(本社・東京)の研究チームが解明した。24日から都内で開かれる日本農芸化学会で発表する。

 同社の村越倫明(むらこしみちあき)主任研究員らは2年前、歯周病菌が出す毒素が体内で特殊な働きをして血中脂質を増やすことをマウスの実験で突き止めている。今回は、その毒素を抑えるラクトフェリンに着目。マウスにラクトフェリン水溶液を4週間飲ませた後で毒素を与えると、与えない場合より、血中脂質の増加が10~20%抑制された。

 さらに、高コレステロール食をマウスに8週間食べさせる実験でも、同時にラクトフェリンを与えると、与えなかった場合に比べて血中総コレステロールの増加が約60%抑えられた。

[読売新聞 / 2007年03月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070309ik04.htm

ライオン株式会社 プレスリリース
http://www.lion.co.jp/press/2007015.htm

授乳が排卵抑制するメカニズム解明、ラットで証明=名古屋大学

2007年03月09日 | 脳、神経
 乳児が母親の乳首を吸うことが刺激となって母親の脳に作用し、生殖機能を抑制するというメカニズムを、名古屋大生命農学研究科の束村博子助教授(47)と山田俊児大学院生(28)らのグループが解明した。米国・内分泌学会誌「エンドクリノロジー」(電子版)に論文が掲載された。

 束村助教授らは、子育て中の母親ラットについて、授乳をさせたものと、赤ちゃんラットと引き離したものとで、脳内を比較検討。その結果、授乳しているラットの方が「メタスチン」と呼ばれる神経伝達物質の量が少なく、乳首を吸われるという刺激によって「メタスチン」の合成が抑えられることが分かった。

 メタスチンは、2001年に日本の研究者の手によって、がん転移を抑える物質として発見された。その後の束村助教授らの研究や欧米の研究で、メタスチンが少ないと排卵しにくいことなどが分かり、哺乳(ほにゅう)類の生殖を制御する最も重要な神経伝達物質と考えられるようになっている。

 今回の研究結果は、不妊治療や家畜の繁殖力を増やす薬への応用が期待されるという。束村助教授は「授乳中の母親の生殖機能が抑制されるのは、次の子供を妊娠しないための摂理と思われるが、その脳内メカニズムは不明な点が多かった。今回の研究で、その中核部分を解明できた」と話す。

[中日新聞 / 2007年03月09日]
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070309/mng_____sya_____006.shtml

臓器移植:移植後「うつ」の原因、「免疫抑制剤の副作用」=自治医科大学

2007年03月06日 | 薬理
 臓器移植を受けた患者がうつ状態を起こすのは、免疫抑制剤による副作用の可能性が高いことが、自治医科大の小林英司教授(移植免疫)らの研究で明らかになった。臓器移植専門の米医学誌に発表される。

 研究チームは「移植後の免疫抑制剤の投与方法などを工夫すれば、うつ状態を効果的に解消できるかもしれない」と分析している。

 これまで移植後にうつ状態を起こしたり、落ち込む患者が目立つのは、移植による心理的な影響と考えられていた。

 研究チームは、臓器移植の普及につながった代表的な免疫抑制剤「シクロスポリン」を健康なマウスに投与し、様子を観察した。通常マウスは互いに体を寄せ合って眠るが、シクロスポリンを投与すると、互いに警戒し、1匹ずつ離れて眠った。また、高さ1メートルに設置した一部に壁のない通路を歩かせたところ、シクロスポリンを投与したマウスは、壁のないところを歩けなくなるなど、おびえた様子を見せた。

 人の社会性の低下や不安には、ドーパミンやセロトニンという神経伝達物質の働きの低下が関与しているとされるが、シクロスポリンを投与したマウスの脳内のドーパミンとセロトニンの分泌量は、投与しないマウスの半分以下だった。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年3月6日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070306ddm002100070000c.html

肝炎にベリーグッド ブルーベリーの葉=宮崎大学

2007年03月06日 | 食品・栄養
 ブルーベリーの一種「ラビットアイブルーベリー」の葉に、C型肝炎ウイルスや脂肪肝などに対する抑制効果があることがわかったと、宮崎大の河南洋医学部長ら産官学連携の研究チームが発表した。すでに6件の特許を申請。効率的な栽培方法もほぼ確立し、商品化や医薬品開発に向けた研究を進めている。

 チームによると、試験管内の実験で、ラビットアイブルーベリーの葉の抽出物にC型肝炎ウイルスの増殖を抑える効果を確認した。抽出物の成分は分析中だが、濃度が1ミリリットル当たり1マイクログラム(マイクロは100万分の1)程度なら、健康な細胞に悪影響を及ぼさないこともわかった。

 脂肪肝のラット(ネズミ)に葉を食べさせたところ、肝臓中の中性脂肪やコレステロールが低下し、血圧の降下作用や肝がんの発症を抑える効果もあった。

 通常は3メートル間隔で植えるラビットアイブルーベリーの苗木を20~30センチ間隔に密集させるなど、効率的に大量栽培する方法を確立。茶などの製品化に向けた加工技術も開発した。

 この種は国内でほとんど生産されていないが、紫外線が多く温暖な宮崎県は栽培適地とわかり、商品化に向けた栽培も始まった。河南部長は「医農の連携による成果として極めて独創的だ」と成果を強調。宮崎大やチームに加わった宮崎県産業支援財団などは、ブルーベリーの葉の成分の抽出方法や新規用途などについて特許を出願している。

 チームには宮崎、鹿児島両大学の医学・農学の研究者や宮崎県の焼酎メーカー雲海酒造などの企業が参加し、04年1月から研究を始めた。科学技術振興機構から5年間で約13億円の支援を受けている。

[朝日新聞 / 2007年03月05日]
http://www.asahi.com/science/news/SEB200703050007.html

がん抑制遺伝子が発症関与 心不全、新たな治療に道=千葉大学

2007年03月05日 | 遺伝子組替マウス
 がんを抑制する働きを持つ遺伝子「p53」が、高血圧や動脈硬化などさまざまな原因で起こる心不全の発症に深くかかわっていることを、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らがマウスの実験で突き止め、英科学誌ネイチャー電子版に4日発表した。

 多くの心不全では心臓が肥大し、最後は心臓を動かす筋肉(心筋)が働かなくなる。p53は、心筋の周囲に新たな血管ができるのを抑え、心筋の酸欠状態を引き起こすらしい。遺伝子レベルで発症の仕組みが分かったのは初めて。

 小室教授は「心不全の予防には食事や生活習慣の改善が一番だが、心臓弁膜症などが原因となっている場合にはそれだけでは回復が望めない。p53の働きを心臓だけで弱めることができれば、新たな治療法につながる」としている。

 小室教授らは、マウスの動脈を糸で縛って高血圧に似た状態を作り、心臓が肥大して心不全を発症する過程を再現。さまざまな遺伝子の働きを解析した。

[北海道新聞 / 2007年03月05日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070305&j=0045&k=200703050209

 がんを抑制する遺伝子に心不全を促進する働きがあることが、千葉大などの研究チームのマウス実験で明らかになった。4日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表された。

 高血圧などで心臓に負荷がかかると心臓の壁が厚くなって「心肥大」になり、やがて心臓が動かなくなる「心不全」に至る。だが、なぜ心臓が動かなくなるかは解明されていなかった。

 マウスの心臓に負荷をかける研究チームの実験では、心臓は心肥大になったものの、最初は心筋細胞へ血液を送る血管が新たに作られ順調に拍動を続けた。だが、2週間を過ぎると心臓の血管の数が減り心臓の動きが落ちた。こうした操作で心不全を起こしたマウスでは、健康な心臓にはほとんど現れないがん抑制遺伝子「p53遺伝子」が多く発現していた。この遺伝子が、新たな血管を作るたんぱく質の働きを抑制し、結果として心臓の動きを悪くしたらしい。

 この遺伝子が働かないように遺伝子操作したマウスは、心臓に負荷をかけても、心肥大状態にはなるが心不全は起きなかった。一方、この遺伝子の働きを促進する操作をしたマウスは、2週間たたないうちに心臓の動きが悪くなった。

 p53遺伝子は、正常細胞ががん細胞に変化するのを抑制する遺伝子として知られ、がん患者にp53遺伝子を注射する治療も研究されている。

 研究チームの小室一成・千葉大教授(循環器内科)は「p53遺伝子の働きを抑える薬や血管を増やす薬が新たな心不全薬として効果を発揮する可能性がある。一方、p53を増やす治療は心不全に気をつける必要がある」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年3月5日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070305k0000m040107000c.html

ヒト遺伝子導入米を承認、薬用成分生産で=米農務省

2007年03月03日 | 創薬
 【ワシントン2日共同】人間の遺伝子を組み込んだコメの商業規模での栽培を米農務省が基本的に認めたと、米紙ワシントン・ポストが2日報じた。カリフォルニア州のバイオ企業が申請していた計画で、下痢止めの薬効があるタンパク質を抽出するのが目的という。

 花粉が飛散してアレルギーの原因になったり、ほかの食用のコメに遺伝子が広がったりする可能性が市民団体などから指摘されている。

 計画しているのはベントリア・バイオサイエンス社。抗菌作用のあるタンパク質ラクトフェリンやリゾチームをつくる遺伝子をコメに組み込み、中部カンザス州で約1300ヘクタール栽培する。収穫したコメはその場ですりつぶして有用成分を抽出、ヨーグルトなどの健康食品への添加用や薬として利用する。

 申請を受けて環境影響評価をした農務省は「特に危険性はない」として基本的に承認、一般からの意見を聴く手続きに入った。

[共同通信47NEWS / 2007年03月03日]
http://www.47news.jp/CN/200703/CN2007030301000209.html

アメリカ農務省 ホームページ
スライド"Plant-made Pharmaceuticals & Industrials"
Ventria Bioscience社 ホームページ

蚕の病気のなぞを解明=京都工芸繊維大学

2007年03月01日 | 生きもの色々
 蚕に感染するウイルスが自らを守るシェルターとして作るタンパク質結晶の分子構造を、京都工芸繊維大昆虫バイオメディカル研究センターの森肇教授(昆虫ウイルス学)らのグループが明らかにし、1日に英科学誌「ネイチャー」で発表した。分子が強固に連結した結晶が蚕の体内に入ると、「連結器」が外れてばらばらになり、ウイルスが放出される巧みな仕掛けが明らかになった。

 ウイルスは自分が作った結晶内に潜み、蚕のエサとなる桑の葉に付着する。結晶は、水や酸にも溶けない強固な構造だが、蚕の体内では簡単に溶けてウイルスが放出され、蚕は感染すると死ぬ。

 エックス線解析で調べると、タンパク質分子24個が一辺約10ナノメートル(ナノは10億分の1)の小さなユニットを構成し、1億2500万個のユニットが集まって立方体の結晶を作っていた。

 ユニット内では、タンパク質分子が隣の分子の突起部分をつかむように連結。さらに、連結部分は強いアルカリの下ではマイナス電気を帯びる性質を持っていた。蚕の腹の中は強いアルカリなので、結晶が入ると、連結部分はマイナス電気で反発し合って緩み、結晶が壊れてウイルスが放出される仕組みという。

 森教授は「安全性が確かめられれば、体内の狙った場所に必要なタンパク質などを送り込むマイクロカプセルとして、医療に活用できるのではないか」と話している。

[京都新聞 / 2007年03月01日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007030100028&genre=G1&area=K10

京都工芸繊維大学 ホームページ