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がん抑制遺伝子が発症関与 心不全、新たな治療に道=千葉大学

2007年03月05日 | 遺伝子組替マウス
 がんを抑制する働きを持つ遺伝子「p53」が、高血圧や動脈硬化などさまざまな原因で起こる心不全の発症に深くかかわっていることを、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らがマウスの実験で突き止め、英科学誌ネイチャー電子版に4日発表した。

 多くの心不全では心臓が肥大し、最後は心臓を動かす筋肉(心筋)が働かなくなる。p53は、心筋の周囲に新たな血管ができるのを抑え、心筋の酸欠状態を引き起こすらしい。遺伝子レベルで発症の仕組みが分かったのは初めて。

 小室教授は「心不全の予防には食事や生活習慣の改善が一番だが、心臓弁膜症などが原因となっている場合にはそれだけでは回復が望めない。p53の働きを心臓だけで弱めることができれば、新たな治療法につながる」としている。

 小室教授らは、マウスの動脈を糸で縛って高血圧に似た状態を作り、心臓が肥大して心不全を発症する過程を再現。さまざまな遺伝子の働きを解析した。

[北海道新聞 / 2007年03月05日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070305&j=0045&k=200703050209

 がんを抑制する遺伝子に心不全を促進する働きがあることが、千葉大などの研究チームのマウス実験で明らかになった。4日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表された。

 高血圧などで心臓に負荷がかかると心臓の壁が厚くなって「心肥大」になり、やがて心臓が動かなくなる「心不全」に至る。だが、なぜ心臓が動かなくなるかは解明されていなかった。

 マウスの心臓に負荷をかける研究チームの実験では、心臓は心肥大になったものの、最初は心筋細胞へ血液を送る血管が新たに作られ順調に拍動を続けた。だが、2週間を過ぎると心臓の血管の数が減り心臓の動きが落ちた。こうした操作で心不全を起こしたマウスでは、健康な心臓にはほとんど現れないがん抑制遺伝子「p53遺伝子」が多く発現していた。この遺伝子が、新たな血管を作るたんぱく質の働きを抑制し、結果として心臓の動きを悪くしたらしい。

 この遺伝子が働かないように遺伝子操作したマウスは、心臓に負荷をかけても、心肥大状態にはなるが心不全は起きなかった。一方、この遺伝子の働きを促進する操作をしたマウスは、2週間たたないうちに心臓の動きが悪くなった。

 p53遺伝子は、正常細胞ががん細胞に変化するのを抑制する遺伝子として知られ、がん患者にp53遺伝子を注射する治療も研究されている。

 研究チームの小室一成・千葉大教授(循環器内科)は「p53遺伝子の働きを抑える薬や血管を増やす薬が新たな心不全薬として効果を発揮する可能性がある。一方、p53を増やす治療は心不全に気をつける必要がある」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年3月5日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070305k0000m040107000c.html


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