ラットは今日も、きみのために。

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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

神経難病:原因たんぱく質の構造を発見=大阪大学

2007年03月19日 | 糖鎖
 ハンチントン病(舞踏病)や脊髄(せきずい)小脳変性症などの神経難病の原因となる異常なたんぱく質の構造を、大阪大大学院医学系研究科の永井義隆助手(神経病学)と戸田達史教授(遺伝医学)らが発見した。異常なたんぱく質が病気を引き起こす構造へと変化するのを防ぐ治療薬の開発につながる成果といい、米科学誌「ネイチャー・ストラクチュアル・アンド・モレキュラー・バイオロジー」(電子版)に19日、掲載される。

 ハンチントン病など神経難病の患者は国内に数万人いるとみられるが、有効な治療法はない。アミノ酸の一種のグルタミンの数が大変多い異常なたんぱく質が、その構造を変化させた後、脳内の細胞に蓄積して発症すると考えられているが、詳細は分からなかった。

 永井助手らは、グルタミンの数が多い異常なたんぱく質を溶液中で構造解析。異常たんぱく質が蛇腹のような「βシート」構造に変化し、異常たんぱく質を数多く結合させ固まりを作ることを突き止めた。βシート構造の異常たんぱく質が細胞に毒性を持つことも判明。「QBP1」と呼ばれる分子がβシート構造への変化を阻害することも確認した。

 永井助手らは「QBP1を応用すれば治療薬の開発が期待できる。アルツハイマー病やパーキンソン病などでも同様の構造変化が発症の原因と考えられ、新薬開発につながる可能性がある」と話している。【河内敏康】

[毎日新聞 / 2007年3月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070319k0000m040124000c.html

大阪大学21世紀COEプログラム「疾病関連糖鎖・タンパク質の統合的機能解析」
より戸田達史Dr.のページ
http://www.glycocoe.med.osaka-u.ac.jp/coe21/jp/mem_toda.html

大腸がん転移に骨髄が関与、促進たんぱく質を確認=京都大学

2007年03月19日 | 遺伝子組替マウス
 悪性化する大腸がん細胞は、“サイン”を出して骨髄細胞を呼び寄せ、増えたり転移したりするのに利用していることが、武藤(たけとう)誠・京都大大学院医学研究科教授(遺伝薬理学)らのグループによって明らかになった。

 骨髄への働きかけを止める物質を見つければ、がん治療薬の開発に応用できるかもしれない。米科学誌ネイチャー・ジェネティックス電子版に19日掲載される。

 グループは遺伝子操作したマウスを用いて、大腸がんの増殖などにかかわるたんぱく質の働きを分析。その結果、大腸がん細胞が「CCL9」と呼ばれるたんぱく質を大量に放出すると、骨髄細胞の一種が骨髄から血液に溶け出し、がん細胞の周囲を取り巻くように集まることがわかった。骨髄細胞は、がん細胞の増殖を促進する2種類のたんぱく質を出していた。

 CCL9がうまく働かないように改造したマウスでは、がん細胞の周りに骨髄細胞が集まらなくなり、悪性化しなかった。

 武藤教授は「がんは体内機能をうまく利用して生き延びている。この仕組みを逆に利用し、がんの増殖を抑える新たな治療法へつなげたい」と話している。

[読売新聞 / 2007年03月19日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070319i501.htm




 京都大大学院の武藤誠教授(遺伝薬理学)のグループは、大腸がんが周囲の組織に広がる「浸潤」の仕組みを解明した。がん細胞は「CCL9」というホルモンを使って血液中にある極少量の免疫細胞を引き寄せた後、免疫細胞が出す酵素を使って正常細胞の中に潜り込んでいた。武藤教授は「CCL9の受容体を阻害する薬剤ができれば、免疫細胞ががんに引き寄せられるのを防げる。浸潤を抑制し、がんの拡大を防ぐ新治療法につながる可能性がある」と指摘する。成果は19日、米科学誌「ネイチャー・ジェネティックス」(電子版)に掲載される。

 同グループは、人為的に大腸がんを発症させたマウスで、がん細胞の先端に免疫細胞の一種である未分化の骨髄球が集まり、がん細胞の浸潤を促進する酵素を作り出すことを確認した。骨髄球はCCL9の受容体を持っているため、がん細胞が出すCCL9に引き寄せられる。この骨髄球は骨髄内にあることが知られていたが、血液中にもわずかに存在していることが新たに分かった。また、人の大腸がんの一部でも同様の仕組みが働いていることも確認した。

 浸潤は、良性腫瘍(しゅよう)が悪性化する際の特徴で、転移の兆候でもある。このため以前、浸潤促進酵素の働きを直接阻害する薬剤の開発が進められたが、頭痛など強い副作用が出るため失敗していた。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年3月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070319k0000m040123000c.html

京都大学医学研究科 生体制御医学講座 遺伝薬理学教室のページ
http://www4.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/frameTOP(J).htm