海外生活をレポートしたメルマガを読んでいます。思わずウンウンっ!と頷いてしまったレポートを紹介します。
□■□■□出たっきり邦人・欧州編・2008・03・04・733 ■□■□■
のんきぃのんの回顧的ロンドン駐在妻らいふ その34
「ゴシップ紙における日英比較文化一考察(独断と偏見風)」
さて、イギリスに来て、やっぱり英語の勉強をしなきゃなぁと思ってまず取り
組んだのは、とりあえず新聞。日本と違って宅配制度がないので、新聞スタン
ドに行ってずらりと並ぶ新聞を手に取ることになります。
うーむ、その種類の多いこと。
日本では右か左か朝日か読売か(ごめん、毎日)くらいしか選択肢はありませ
んが、社会のクラスが暗然と分かれているらしいこの国では、やっぱり新聞も
それぞれのニーズに沿って分かれているらしい。
以前、イギリスでは、スポーツすらも社会のクラスを反映している、(ポロ=貴
族、ラグビー=上流階級、サッカー=庶民階級)と書いたことがありますが、
新聞はさらに細かい気がする。
そういえば、英会話学校で、イギリスの新聞の面白い定義を聞きました。正確
に覚えていないのが残念なのですが、ざっとこんな感じ。
「この国をかつて所有していたと思っている人々が読む新聞」 -タイムズ
「この国を所有していると思っている人々が読む新聞」-デイリーテレグラフ
「この国をいつか所有しようと思っている人々が読む新聞」-ガーディアン
「この国はこのままじゃいかんと思っている人が読む新聞」-インディペンデント
「この国の経済を牛耳っている人々が読む新聞」-フィナンシャルタイムス
これらはみな、イギリスの新聞の中では日本で「高級紙」と訳される大判新聞
(ブロード・シート)です。あんまり誰も大声で定義しませんが、ブロードシ
ートを定期的に読む人は、それだけで少しクラスが上という感じがします。
しかし、この中の「タイムズ」は最近、高級感が薄れて大きさもタブロイド版
になってしまいました。もはや部数もデイリーテレグラフに及びません。
18世紀に創刊された超老舗新聞なのですが、ちょっと前にメディア王マードッ
クに買収されて以来、売れ筋路線を追及して脱落した感があります。
日本でタイムズ(THE TIMES)といえば、いまだにイギリスを代表する新聞
というイメージなのに、それも今は昔の話。
この国を代表する新聞は、もはや60部しかないタイムズではありません。
その数310部を誇る超ナンバーワンは、マードックの「ザ・サン」。
いわゆる「タブロイド(小型サイズ)」と呼ばれる、ゴシップ新聞です。
イギリスで多数派を占める庶民層にとっては、新聞といえばタブロイド。
英会話学校の面白い定義には、タブロイド版はデイリーメールしかなかったの
で、勝手に定義を奉るとすると:
「サン」=ひたすら売れ筋大衆路線をひた走る、「イギリス万歳」の超右派
日曜版「ニュースオブザワールド」と共に300万部売りまくる
「デイリーミラー」=サン的お気軽迎合にはちょっと抵抗を感じる大衆左派
サンの永遠のライバル
「デイリーメール」=「古きよきイギリスはどこへ」の保守的中流右派
以上が200部以上のビックスリー。ほかにあげるとすれば
「デイリーエクスプレス」=デイリーメールの二番煎じ版。
「イブニングスタンダード」=ロンドン限定の夕刊、地域紙みたいな感じ
「デイリースター」=サンの二番煎じ版
ちなみに、私がイギリスにいたときに愛読していた新聞は
「デイリーメール」=「古きよきイギリスはどこへ」の保守的中流右派
でした。これは英会話学校で聞いた面白い定義で言えば
「この国を所有していると思っている人々の奥さんが読む新聞」だそうで。
デイリーメールは特に女性向けと銘打っていないものの、サンみたいに女の人
のセクシーショットを売り物にしていないし、書き方も保守的。
後ろのほうの読み物記事も、さりげなく女性好みをちりばめる。
たとえば覚えている中では、イギリス出身のハリウッド女優ケイト・ウィンス
レット(タイタニックのディカプリオの相手役)の記事。
彼女の女優養成所時代の集合写真をでかでかと中央にすえ、「一番出世はハリウ
ッドの大スター。その彼女の同級生たちの進路はいかに」みたいなキャプショ
ンを張る。たいていは主婦に収まっていたりするわけですが。
「だからどーだっていうの」っていうくらい、くだらなーい記事なのですが(特
に男の人には)、女の人には、自分の同級生の噂話みたいな話題も絡めて茶のみ
話くらいにはなりそう、という具合。
こういう風に女性を隠れターゲットにしている路線は、ちょっとアエラに似て
います。(アエラは、30,40代女性を意識した記事が多いと思う)
前回のエッセイでは、イギリスのテレビのキャスターは、ご意見番みたいな日
本と違って、とことん中立を保つということを書きました。
しかし、逆に新聞の方ははっきりと右派と左派に別れ、なんでもありのはげし
い論戦を展開してます。
分かりやすいのは、イラク戦争を支持するかどうか。
右派の代表、サンは「がんばれ英国戦士」のキャンペーンを張る。
左派の代表、ミラーは「英国の恥辱」と英兵士の虐待疑惑を取り上げる。
ブロードシートの中では、リベラル左派のガーディアンとインディペンデント
は、舌鋒鋭くブレアのイラク戦争の責任を問う、という具合です。
どっちかというと右とか左とかいう程度の日本の新聞は、とてもこんなにはっ
きりと対立姿勢を打ち出さない。この点で、日本の新聞は、ちょっとカラーが
違うだけで、どれもほとんど違わない、中立路線なんですね。
マイルドで、読んでいて安心感があります。
逆にタブロイドを読んでいると、「おいおい、そんなのあり?」と目を丸くする
こともけっこうあります。
デイリーメールは保守派の右派ですが、ちょっと大げさに分かりやすく言うと
「イギリスがいちばん、イギリス人が一番」という身内びいきが激しい新聞。
サンはたまにしか読んだことがないのですが、右派の最右翼であるからして、
メールよりさらに過激な「イギリス一番」だとにらんでます。
たとえば、イギリス人が海外で罪を犯した場合の記事がもっともそのカラーが
出やすい。
つまり、イギリス人がなにか海外で犯罪を起こして、その国の法律で有罪に処
されると、犯罪者のイギリス人にとことん同情的な論調になるのです。
たとえば、サウジアラビアで働いていたイギリス人看護婦が同僚を殺害した事
件では、微妙なニュアンスで、
サウジアラビアの司法システムが本当に公平に裁いてくれているのか(イスラ
ム圏にはけっこう懐疑的)、無実の罪を着せられているのではないか、
というように受け取れなくもない感もありました。
サウジアラビア人からしたら失礼千万だと思う。
こういう点、イギリスのマスコミは「ちょっと傲慢」と思えなくもありません。
日本のマスコミはあまりこんな身内びいきの感覚はないような気もします。
どちらかというと、身内の日本人に厳しい。
イラク人質事件のときは、家族の態度が悪いと被害者の人質をバッシング。
さらに古くは、日本人大使館人質事件のとき、開放された人質の一人が、記者
会見で美味しそうにタバコを吸っていたことで態度が悪いとバッシング。
大学生二人が秘境の川下りの最中に撲殺されたときも、イラクで学生が過激派
に捕まって首を切られて殺されたときも
「そんなところにふらふら行くなんて、殺されても仕方ない」と冷たい。
「弱いものいじめ」の日本マスコミの真骨頂、という感じです。
最近あった例では、祖母と孫二人が親類に殺害された事件があります。
当初マスコミは、殺された少女たちの父親を、その風貌から犯人扱いしていま
した。
その母親の手記を読んだことがありますが、みのもんたがテレビで
「通報まで一時間もあったのが怪しいよねぇ」
などと無責任に発言してから、それまで同情的だった周囲の態度が一変し、
「人殺し」とまで名指しされるようになって、家族で死のうかとまで思いつめ
たそうです。
一人残った長男は、こんなひどいことが許されないように、将来弁護士になり
たいと言っているとか。
マスコミが、時折、まるで司法権力か何かのように、人を裁く。
第三の権力とはよく言ったものだと思います。
実はイギリスでも、同じような事件に出会いました。しかし、印象は正反対と言っていいほど違います。
「スティーブン・ローレンス事件」といえば、当時イギリス人なら知らない人
はいないくらい大きな事件なのですが、ちょうど私がデイリーメールを読み始
めたとき、このタブロイドはローレンス事件に対して、
「ペンの力で司法の代わりをする」、一大キャンペーンを張っていたのです。
スティーブン・ローレンスは、ジャマイカ移民の息子で、まじめな若い黒人の
青年でした。
彼が友人とバスに乗ろうと急いでいたとき、たまたま、本当にたまたま行きず
りあわせた札付きの不良たちに、植え込みの陰に引きずりこまれ、そのまま暴
行を受けて殺害されたのです。
友人の目撃証言もあったし、普通なら事件解決はそう難しくなかったはずです
が、結局、警察内にもあると思われる人種偏見が壁となって捜査はおざなりに
なり、数年後の裁判でも、証拠不十分で犯人たちは無罪放免。
あきらかな人種差別。
怠慢でいいかげんな警察の対応。
移民は出てけ、といわんばかりの視線。
泣き寝入りをするマイノリティ。
この国の社会問題の縮図のような事件でした。
しかし、「古きよき英国の良心」を自負するデイリーメールが、
「犯人たちを許すな。警察の怠慢を許すな」の一大キャンペーンを展開。
犯人たちは司法の裁きは受けなかったものの、
「こいつらが犯人だ」とでかでかと顔を載せられ非難され、社会的制裁を受けた形になりました。
このあまりに強引なやり方には当時も異論反論があったようですが、
ホンネを言えば、「すっきりした!」と思った人も少なくないはず。
もちろん、こんなやり方は上品なブロードシートにはマネできません。盗聴、
潜伏、捏造、なんでもありのあきれた手法や誤報が当然のタブロイドならでは。
しかし、この同じく「マスコミが人を裁く」という一点に関しては、弱いもの
いじめの日本のマスコミより、傲慢で鼻持ちならないイギリスのタブロイドの
ほうに、一票あげたいと感じます。
日本のマスコミは、いつもいつも、強大なペンの力を間違った方向に使います。
弱い方面へ。すでに大きな傷を負っている被害者の方へ。
繰り返しますが、私はこれが本当に大嫌いです。
こんな恥知らずなマスコミは、私がとりあえず見聞きした中では、実に嘆かわ
しいことに、日本だけです。
切に望む。
体質改善。
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のんさん、転載許可をありがとうございました。
海外生活を経験したことはありませんが、私は外国人と同居したり、知人に外国人がいますので、海外のマスコミと自国のと、どんな違いがあるのかとっても興味深いです。
(゜▽゜;アヒャーっと思ったのが、英国紙のタイムズ。
英語を勉強しようと思って、この新聞を一生懸命読みますた。理由は、英字新聞がこれしか学校の図書館になかったから(〒_〒)。
ウンウンと思ったのが、記者会見でおいしそうにタバコを吸った青木大使の話。
安全管理のまずさは確かに彼の責任重大だけど、解放されてほっとしたんだから気が抜けてこんな動作だってするでしょう。それを映像にするかしないかは、報道者の判断、もしくは意図ぢゃないの?
“「 申し訳ございませんでしたっ」って土下座しろよっ”って、裏の意味を感じましたねえ。
イラクの件で「自己責任」という言葉がブームになった時、私が思い出したのは、その前のイラクの邦人が大勢人質にされた事件のこと。友人の親戚がこの事件で人質になったんです。んで、彼の話。
当時、邦人も大勢人質になったけど、他国の駐在員もたくさん同様の目にあった。んで、脱出しよう言ったのは、日本人だけだったそうな。
米国人、英国人、独人、、、皆、不思議そうな顔をして日本人を見る。
「なぜ脱出? ここで待っていれば必ず国が助けに来るじゃん」
その時、彼は日本人だけが自国を信用していないんだなあと思ったそうです。日本人は自国に厳しいのか?(-"-;)
で、国内で「自己責任」の単語一色になった時、私も米国人に不思議な顔して尋ねられますた。
「そりゃ国の警告を無視した人は責任を負うのは当然だけど、国もどーしてもっと積極的に助けようとしないん?」
「アメリカみたいにね、戦闘機でズババッとやっちゃうお国柄じゃないのよ、日本は」って答えますた。
お国が変わると考えも変わるのは、国外へ行ったことのない人でも何となく想像することです。
日本でも海外レポートの映像は豊富ですね。「え、この国、こんなことしてるの?!」って驚くこともありますが、逆に日本のレポートも海外の人が見たら同じ感想を持つものもありますね、きっと。
のんさんのレポートを読んだら、気楽に英語を学ぶならサンを読めばよかったのねと思いますた。
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