乳がん患者のサロン2 - ノエル編

乳がん患者の皆様、このサロンでのびのびと雑談しましょう。くつろぎの場です。

在宅ケアにおける家族の困難

2010年10月03日 | 緩和ケア
介護問題は、時に殺人事件にまで発展することがありますね。人は追い詰められると、理性の垣根をあっという間に飛び越えてしまうことがあるようです。
原因が特定できれば、速やかに対策を立て、速やかに予防に努めたいところですが、、、介護問題って、自分が直面するまではなるべく見たくない、聞きたくないことでもあります。

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【遺族調査で終末期癌患者の在宅ケアにおける家族の困難感が浮き彫りに】

第15回日本緩和医療学会 2010年6月18日~19日 東京

 在宅終末期癌患者の家族は、患者の苦痛や病状、さらに介護の負担に強い困難感を抱いていることが、遺族を対象にした調査で明らかになった。大田原赤十字病院地域医療福祉連携課の石井容子氏らが、6月18日から19日に東京で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で報告した。同氏は、「患者の苦痛への対応や病状の進行について、医療者が家族介護者に十分説明することが重要」と述べた。

 石井氏によれば、一般市民の約50%が終末期の在宅療養や在宅での看取りを希望しているが、実際には癌患者の在宅での死亡割合は癌死全体の7.3%であるという。

 そこで、終末期癌患者と家族が安心して在宅療養に臨むため、家族介護者の困難感を明らかにすることを目的とした調査が行われた。対象は、在宅終末期癌患者の遺族で、在宅療養期間が5日以上、患者の死後6カ月から2年半、患者および遺族が20歳以上で、患者の病名を周知していることを適格基準とした。

 2009年7月から10月に調査が行われた。分析対象者は280人、遺族は女性が79.3%を占め、60歳以上が60.7%、患者の配偶者が56.4%、患者の子供が28.6%だった。一方、患者は男性が57.9%、平均年齢が72.8歳、在宅療養期間中央値は38日(5~3678日)、自宅での看取りが68.9%だった。

 「介護の負担」「往診医に関すること」「介護と仕事・趣味とのバランス」「患者の苦痛や病状」「訪問看護師に関すること」「在宅サービスの利用」「家族介護者の親族との関係」「葬儀に関すること」の8因子について、質問紙で尋ねた。

 調査の結果、「患者の苦痛や病状」に関する困難感が最も強く、「患者が日々弱っている姿を見るのがつらかった」と答えた遺族は90%、「患者が苦しむ姿を見るのがつらかった」が85%、「患者が症状で苦しんでいた時に、どうすることもできなかった」が67%だった。

 次に困難度が高かったのが「介護の負担」で、「目の前のことをこなすことに精一杯だった」が78%、「毎日が慌ただしかった」が77%、「患者のことが気がかりで、よく眠れていなかった」が75%、「患者中心の生活になり、介護以外のことを犠牲にすることが多かった」が69%だった。このため石井氏「医療・福祉関係者が家族介護者の介護負担を軽減するためのケアやサービスを提供する必要性がある」と指摘した。

 また、8因子を総合して困難感を評価した結果、家族介護者が在宅死を希望していない場合と家族介護者が男性の場合に、困難感が強いことが分かった。

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私の友達も、親や舅・姑の介護生活に入っている人が何人かいます。女性が介護をするのは、肉体的に大変です。あ、精神的にはもちろん大変なのはデフォですよ。

経験者の話を聞くと、寝付いてしまう“少し前” の状況下の介護が、肉体的には一番辛かったそうです。一日中、掃除しまくり、患者にかかりっきりになるとのこと。私も経験者なので、これはよ~~くわかります。

でも、癌は寝付く病気ではありません。介護者が一人いれば、比較的最期まで自宅で生活できる病気です、、、これ、家人の主治医が言った言葉なんですけど。また、癌で死ぬのもそんなに悪くないと考える癌の専門医も、時々ブログで見かけます。ですので私自身は、この言葉を救いにして生きているようなところがあります。

さて、がん患者を看取った私が、ひょえっと思ったのは、、、ヅラです。
私が住む地域では、カツラは棺に入れてはいけない。ですので、抗がん剤治療などで脱毛してしまった故人だと、棺に納める際、髪の毛をどうしようと悩みそうです。

抗がん剤は強い薬ほど脱毛しやすいと同時に、ファーストラインから使用する場合が多い。我家の場合もそうで、最後は新薬の分子標的治療薬だったので、髪の毛は生えそろい事なきを得ました。地域によってこんな制約もあります。

また、「火葬代を出せなくて…」と、故人をミイラ化する家族もいるようですが、私の場合、役所に死亡届けを出したら、市から「お見舞金」をもらいました。で、その金額が、市の火葬費用と同額。うまくできてるなあと思いました。
送る側の人は、ちょっと注意してくださいね。


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なかのひと

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患者自身が望むスピリチュアルケア

2010年08月19日 | 緩和ケア
自分の真意を他人に伝えることは、話をすることも文章を書くことも、難しいですね。
ズバッと明快な言葉を思いつければよいのですが、、、ボキャ貧だしなあ。

また、今のこの状況ではこう思うけど、時間が経過したり、条件が一部入れ替わったりしたら、とたんに逆のことが真意となる場合があります。私の場合、真意といっても、常に一定ではありませんから(^^;)。

自分の経験では、終末期の家人の気持ちはコロコロ変わりました。最初はつじつまの合わない論理に翻弄されました。でも、普段の自分だって、常に明確な論理を持って生きているわけでもなく。
案外、日常ではグレーゾーンに生活していて、際立ったことがあれば白くなったり、黒くなったり…。

だから病気で不安定になった家人が、白だと言ったり黒だと言ったりするのは、単に気持ちの変化のスパンが短くなっただけなんじゃないかと、、、ふと、思ったことがありました。

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【患者自身が望むスピリチュアルケアとは】  2010. 6. 23

    第15回日本緩和医療学会 2010年6月18日~19日 東京

 終末期癌患者が抱える精神的苦悩の全てに共通する大切なこととして、「わかってもらえたと感じられること」を多くの患者が指摘した。成人癌患者を対象として行われたスピリチュアルケアに関するインタビュー調査から示された。6月18日、19日と東京都で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で、聖隷三方原病院緩和支持治療科の森田達也氏が発表した。

 緩和ケアにおいて、癌患者の精神的苦悩を和らげるスピリチュアルケアは重要である。しかし、日本人を対象として、患者自身はどのようなスピリチュアルケアを希望しているのかを明らかにした研究はほとんどない。

 森田氏らは、終末期癌患者から見て、(1)精神的苦悩を和らげること、(2)精神的苦悩を強めていること、(3)精神的苦悩を和らげるために希望すること、(4)精神的苦悩に対して自分で行っている工夫――についての対処方策を収集し分類することを目的として、インタビュー調査による多施設共同研究を行った。

 スピリチュアルケアの定義は定まっていないため、この研究では同グループで使用していた精神的苦悩の定義、概念的枠組みにしたがうこととし、スピリチュアルペイン(精神的苦悩)の定義は「自己の存在と意味の消失から生じる苦痛」とした。

 対象は、全国の緩和ケア病棟11施設に通院または入院している成人癌患者69人(うち66人が入院患者、平均生存期間63日)と、民間モニター会社に登録している癌患者で医師から残存・再発が説明されている20人の計89人。

 対象の平均年齢は67歳、女性が61%を占めた。信仰・宗教は79%の患者が持っていなかった。原発部位では肺・胃・大腸が各12%、乳腺の10%がこれに続いた。ECOG PSは4が34%で最も多く、3が25%でこれに次いだ。

 インタビューは60分の半構造化面接で、現在または過去のつらさや心配について質問した。「関係性に由来する苦悩」「身体的コントロール感の喪失」「将来に対するコントロール感の喪失」「負担」「役割・楽しみ・自分らしさの喪失」「重要なことが未完成であること」「希望のなさ」「死の不安」の8つの苦悩について言語化した患者に対し、気持を楽にしてくれた、または逆につらくした医師・看護師・家族の対応や、気持ちを和らげるための患者自身の工夫について質問した。

 内容分析を行い、2人の研究者が独立して意味単位を分類し、1人の緩和ケア医師が妥当性を検討した。その結果、全ての精神的苦悩に共通する5つの方策と、8つの苦悩に対して38の方策が抽出された。

 全ての精神的苦悩に共通する方策として挙げられたのは、「病気以外のこともよく聞いてくれる」(58人)、「関心を持っていることが伝わる」(17人)、「気持ちを分かって一緒に考えてくれる」(36人)、「患者の意思が一番尊重される」(19人)、「ほがらかで親切である」(41人)の5つであった。

 そのうち「病気以外のこともよく聞いてくれる」についての患者の表現は、「ちゃんと答えていただけるということは、聞いていただいていると思うからうれしい」、「いすを持ってきて“今日はどうですか”と毎日のように来てくださる。決まった時間に決まって来てくださる」などであった。

 8つの苦悩に対する38の方策のうち、「負担」については、「医療者がなにげない日常生活の工夫をする」、「できることではなく存在や今の状態に価値があると考える」、「家族と気持を自然体で伝えあえる」などが方策としてあがった。

 そのうちの「医療者がなにげない日常生活の工夫をする」についての患者の表現は、「“どんどんナースコール押してよ”と言われると、言われたからといってどんどん押せるわけでもないけれど、うれしい」、「私が“ありがとう”って言わなくてはいけないけれど、看護師が“ケアをさせていただいて、ありがとうございました”と言っていく。涙が出るほどうれしかった」などであった。

 森田氏は、「分かってもらえたと感じられることが、全ての苦悩に共通する大切なこととして多くの患者が指摘した。いかにして人は精神的な苦痛やつらさをわかってもらえたと感じるのか、研究が必要」と述べた。

 さらに精神的苦悩の一部は、毎日の医療福祉従事者のなにげない態度や言葉がけの影響を強く受けていることが示唆された。森田氏は「ナースコールの例のように、スピリチュアルケアの前の段階のケアの工夫がいっそう研究・共有される必要がある」と話した。
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>全ての精神的苦悩に共通する方策として挙げられたのは、「病気以外のこともよく聞いてくれる」(58人)、「関心を持っていることが伝わる」(17人)、「気持ちを分かって一緒に考えてくれる」(36人)、「患者の意思が一番尊重される」(19人)、「ほがらかで親切である」(41人)の5つであった。

最初にこれを読んだ時、病気以外のことを聞くのが一番よい方策であったのが、ちょっと意外に思いました。
しかし、病人は常に病気のことを考え、病気に生きているわけではありません。

抗がん剤治療で体調がすぐれず、気が滅入った時期、何とか苦痛から逃れようと、楽しいことを思い出したり想像したりして、しのいでいました。
入院すると、大部屋ならば回りも皆、患者さん。共通項が「病気」だから、自然と自分の病気の話をしたりします。
でも、「患者」の身分になってしまうと、病気の話はもうたくさん、という気持ちにもなります。

それより、自分が健康だった頃のことを思い出し、それが本当の自分なんだって思いたいのが本音です。だって、病気になったのは、つい最近のことですから。

自分に関心を持ってもらうこと、これも難しいですね。他人の関心を引くため、大掛かりな犯罪を起こす輩もいるほどです。
私が同室で関心を持った人は、身のこなしの優雅な人でした。術後すぐって、体は痛いし、気持ちはひねくれるし。これで優雅に振る舞えと言われても。。。
他人に甘え、やたらナースコールして、あーだこーだ言う人に混じり、静かに術後を過ごす人は、格好いいと思います。

私はというと、、、荒川静香がオリンピックで金メダル獲得した時期だったので、病室ではスケートの絵ばっか描いていました。厳しい練習の成果が実った後の優勝に、とても感動したし、スポーツ大好きな自分に、速く戻りたかった。そんな自分の夢をこめて絵を描いていたのですが。。。

院長回診のご一行が病室を訪れた際、ドクターたちが私の絵を指差し、「あ、イナバウワーだっ」。
なんか、病室が盛り上がっちゃって。。。別の意味で目立ちました(^^;)。


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精神状態と緩和ケア

2010年08月15日 | 緩和ケア

始めに、戦争で犠牲になられた大くの方々に、謹んで哀悼の意を申し上げます。



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できるだけ苦しませないで逝かせてあげたいと思うのが、看取る側の心境ですよね。

【緩和ケアが必要な患者の精神症状は見落とされやすい】 2010. 6. 21

    第15回日本緩和医療学会 2010年6月18日~19日 東京


病棟で緩和ケアが必要と判断され緩和ケアチーム(PCT)に依頼があった患者において、見落とされやすい症状は「認知機能障害」や「心のつらさ」などの精神症状や「呼吸苦」であることが、PCTと病棟チームの問題項目の検出の違いを比較した結果から示された。6月18日、19日と東京都で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で、慶應義塾大学病院緩和ケアチームの安達昌子氏が発表した。

 緩和ケアでは、患者の身体症状だけでなく精神症状も包括的に評価し、支援する必要がある。

 同院のPCTの活動は、病棟チームから依頼を受けて支援に当たるコンサルテーション業務が主体となっている。安達氏らは、より適切なコンサルテーションに役立てることを目的として、PCT依頼症例について、PCTと病棟チームが検出した問題項目を比較検討した。

 対象は、2008年1月~2009年12月にPCTに依頼があり、データの照合が可能であった178人。男性が57%を占めた。年齢は60~69歳が30%で最も多く、次いで50~59歳と70歳以上が各22%だった。癌種では消化器癌が42%で最も多く、PSは0~2が41%、3が35%、4は24%であった。

 PCT依頼時に使用されるM.D. Anderson Symptom Inventory(MDASI)に基づいた包括的アセスメントシートから、全9項目の設定項目について、PCTと病棟チームが共通して検出した項目と、PCTのみが検出した項目を比較した。

 両チームで共通して検出された問題で最も多かったのは「疼痛」で、「心のつらさ」「睡眠障害」が続いた。

 PCTのみが検出した問題で最も多かったのは「認知機能障害」で、PCTによる検出の割合は52%、次いで「心のつらさ」45%、「呼吸苦」27%で、精神症状と呼吸苦に関する見落としが病棟チーム側に多くみられた。

 これらの項目の有意な背景因子として、「認知機能障害」ではPS 0~2、PS 4、「心のつらさ」では血液がん、PS 0~2、PS 4、「呼吸苦」ではPS 0~2、70歳以上、が示された(p<0.05)。

 身体機能が安定している患者、または逆に身体機能がかなり低下している患者は、病棟では精神症状が認識されにくい傾向がみられた。考えられる要因として、身体機能が安定している患者では精神症状が表出されることが少ないこと、逆に身体機能が低下している患者では身体症状の緩和が中心となることが挙げられる。また、呼吸苦は患者の訴えがなければ認識されにくい症状である。

 一方、病棟チームのみで検出される割合が高く、PCTで検出される割合が低かったのは「食欲不振」「倦怠感」であった。このような症状の検出レベルを高く設定していたこと、病棟チームが積極的に介入しPCT依頼時には改善していた可能性などが関与したと考えられる。

 安達氏は、「精神症状や呼吸苦は病棟において見落とされやすい症状であり、スクリーニングの強化が必要。患者や病棟スタッフが利用しやすい症状スクリーニングの手法の確立が求められる」と考察した。
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病棟で精神症状が認識されにくいのは、

>身体機能が安定している患者では精神症状が表出されることが少ないこと、逆に身体機能が低下している患者では身体症状の緩和が中心となることが挙げられる。また、呼吸苦は患者の訴えがなければ認識されにくい症状である。

これって、看取る側も注意が必要ということになるかと思います。
末期癌の家人の緩和ケアを担当してくださった医師は、「痛みを取ることは可能だが、呼吸困難は取れない」と。
私は数字に神経質なので、例えば酸素の値が少ないと、急に息苦しく感じてしまうでしょう(苦笑)。

春先に風邪を引き、胸がゼロゼロ苦しくなりました。その時、肺転移ってこんな感じで苦しいのかなあと思ったら、、、急に呼吸ができなくなりました(やっぱり苦笑)。そのぐらい、心理的な作用でも息苦しさは辛いものです。

精神的に辛い時は、気をそらすことが必要ですね。抗がん剤治療の副作用で過呼吸に陥った時、好きな音楽をかけ、なぜか曲に合わせて踊る自分を想像してしのぎました。なるべく美しいもの、優雅な雰囲気、やさしい音…、気持ちを静める効果のあるものが必要に思います。
看取りの場合は、患者の好みを予め知っておく必要があると思います。


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まつたけ

2009年10月18日 | 緩和ケア
秋を運ぶまつたけ、もう食べましたか?

私にとって、まつたけは悲しい思い出です。。。

昨年の今頃、私は毎週まつたけを買っていました。末期癌だった母が、昨年の夏ごろから抗がん剤の副作用で、徐々に食欲をなくしていました。

何とかおいしい料理をしようと、私は躍起になっていました。普通のトマトより味の濃いプチトマトに変え、一つ一つ皮をむいてあげたり(10個むくだけでもすんご~い時間がかかる)、高~いフルーツトマトにしたり(桃より高かった)。肉はモソモソして食べたくないというから、スープにしてエキスだけでも飲ませようとしたり・・・。

でも、あまり効果がでないし、「食べろ」は禁句だし。市販の高エネルギー食品って、母のような年代だと食べないんですよね。ゼリーやプリンなんかも、すぐ飽きてしまったし。
もう、あまり長くは生きられないのかも・・・なんて、ぼんやり考えていました。

で、まつたけです。
通勤途中にデパ地下に寄ったら、あら、いい香り。小さいのが一本2000円。
初物だから、縁起担ぎに買いました。決死の覚悟で3本。

自宅へ帰ったら、久しぶりの秋の香りに、母もちょっと元気に。
翌日、私がまつたけご飯の作り方を本で調べていたら、母が作ると言い出しました。お、積極的でいい感じです。子どもの頃、まつたけご飯をよく作ってくれたのですが、その頃のことでも思い出したのかなと思ったり。

我家は、鶏もも肉をダシにして、油揚げもちょっと入れます。醤油・塩・酒の分量は母の秘密です。水加減は熟練の技が必要です。まつたけから水分が出ますから、難しいんです。
炊飯すると、家中がいい香りになりますね。それだけで既に幸せ、炊けたらもっと幸せな気分です。

で、食べたら、おいしい!
3本も奮発した甲斐がありました。しいたけご飯とは全然違います(笑)。
またたくまに、私はごはんをお代わりです。すると、母も茶碗を差し出すではありませんか。うれしくなって、まつたけをメインによそってあげました。

母もたくさん食べられたことが自信になったみたいだし、私は久々に食欲を取り戻してくれたのがうれしくて、まだまだ大丈夫じゃないかと思ったり。。。

というわけで、なんだか毎週、まつたけを買うようになりました。私は精一杯仕事をして、毎週、「まつたけ残業」をしました。そうして残業代の分だけ、まつたけを買って帰りました。残業するのは辛いけれど、小さな幸せを噛みしめた時期でもあります。

今年は、まつたけの香りがとても悲しい。

まつたけから遠ざかろうとしても、香りが追ってくるんです。もう、まつたけご飯を食べたくなるようことはないのかな・・・。

母の納骨のため、妹たち夫婦がやってきました。今年生まれた姪っこを連れてです。夕飯のメニューは何にしようか、、、やっぱり、まつたけご飯にしました。妹は育児でてんてこまいだし、ご飯が大好きなんです。たっぷりと食べさせてあげたくなりました。

離乳食の始まった姪っこに振り回されながら、皆で食べるまつたけご飯。姪っこの機嫌取りで体力を使います。へとへとになって、皆、ご飯のお代わりです。赤ん坊がいると、しんみりとした気分はどこかに飛んでいってしまいます。赤ん坊って、生きるエネルギー全開なんですよね。

おそらく、一人で食べると悲しくなったことでしょう。でも、皆で食べるとおいしい。
今年もまた、私は小さな幸せを味わうことができました。
まつたけご飯が、悲しい思い出とならずに済んでよかったなあ。


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なかのひと

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癌末期の緩和ケア

2009年09月11日 | 緩和ケア
緩和ケアの公開講座に参加しました。
講師は、緩和ケアの専門医としてご高名なaruga先生です(ブログはこちらから)。一目、「生」で見たくて、猛スピードで安全運転して会場にかけつけますた。えへ。
で、私が興味を持った部分を紹介します。

1 痛みの伝わり方について

痛みの機序は大変複雑である。その一つに、痛みの信号が、刺激部分から神経を経て大脳に認知される際、脳の「気持ち」を司る部分のすぐそばを通る系がある。この部分は自律神経や情動による影響を受けやすい。

痛みの刺激は、血中のある成分の分泌を促進する。その成分が「痛みのサイクル」を回す。痛みの刺激がなくなっても、サイクルは回ってしまう。従って、早い段階で痛みを取ることが必要。


自分の心が弱いから、不安になってしまうんだ、、、と、私は長らく思っていました。
癌患者の集まる掲示板などで、「とても不安だ」という書き込みは多くみられますよね。で、健康な人がそれを批判するような書き込みをして、全く患者の気持ちを想像できず、荒れてしまうのを見かけることがあります。

実際、痛み刺激が自律神経や情動を司る場所のすぐそばを通るんだから、本当に気分が悪くなって不安になるのは、あり得ることだったんだ・・・! と思ったら、私は大変スッキリしました。だから痛くない人には、この苦しみがわからんわけだわ、とも。


2 医療用麻薬とは - 麻薬による「依存」や「耐性」の疑問について

痛みのある人が痛みをとる目的で医療用麻薬を使用することと、痛みのない人が麻薬を使うこととは、動物実験により意味がちがうことがわかってきた。

痛みは、脳が“異常信号”を出している状態。痛みが続くと、脳がアンバランスになる。医療用麻薬でバランスを取り戻すと、脳は正常の状態に戻る。故に、薬の依存症にはならない。

痛みのない人は、脳のバランスが取れている状態。そこに麻薬を投与すると、バランスが崩れ、依存症に陥りやすくなる。


           


3 医療用麻薬の投与法

 痛みはとても複雑なので、複数の薬を少ない量から投与開始。

 i) 長く効くものと、早く効いて早く切れるものを組み合わせる。
ii) 副作用なく開始できたら、痛みがとまるところまで増量する。
iii) 眠気と痛みの出現で薬量を調整する。
  薬が少ないと痛みが出る、多いと眠気が出る。


「慢性的な痛みは、脳に非常事態として認識される」。
痛みがある場合、薬の依存や耐性は起きないと知り、大変安心しました。また、痛みのない普通の人が麻薬を打つ時と、脳内で全く異なる反応が起こっていることもわかりますね。

と、この点が明瞭になり、私は満足です。
また、aruga先生は「生活の支障を取り除き、心地良く、普通に生きるために痛み止めの薬は必要」と有用性を説明されました。
そうです、癌患者にとって「普通」に暮らせることが、幸福を味わえることにつながるのです。

会場まではちょっと遠かったけど、やはり「生」aruga先生にお会いできてよかったです。ブログの文面から、とても優しいくてホンワリしたイメージを持っていたのですが、本物の先生は、しっかりとしたおみ足(笑)で、力強かった(・▽・)!

ホスピスに入った際、たくましそうな医師に緩和ケアをしてもらったら、なんだか元気になっちゃいそうです。終末期こそ、私は生き生きとした医療スタッフを見て暮らしたいと思います。


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さて、私は春先に肺癌で母を亡くしました。その緩和ケアの先生は元々、肺癌の専門医。医療用麻薬を使用して、意識をできるだけ落としたケアを行いました。それでも最期は、呼吸困難でとても苦しそうでした。その時の光景が、何度もフラッシュバックすることがあり、気分は今一つでした。
自分も乳がんになってしまった以上、この光景はずっと、自分の脳裏に焼きついたままになってしまうのか…。

そんな沈んだ気持ちで過ごしていたところ、今回の公開講座のチラシを見つけました。以前より、aruga先生のブログを読んでいたので、遠くたって何だって、どーしても行きたくなりました。で、末期癌のケアについて先生にお尋ねしたところ、

「苦しかったかどうか、実際のところは患者さんにしかわからない」。

母の担当医も、緩和ケア医のブログでも、医師はみな同じことを言う。
「そうだよな、これは誰にもわからないことなんだ。私がいくら考えたって、やっぱりわかんないわ…」。
と、はたと気がついたのです。

講座から一週間が経ち、フラッシュバックはまだありません。人間はこうして、自分に都合の悪いことは、徐々に思い出さなくなってゆくものだ、、、と実感しています。

おそらく、納得のできる回答を得るまで、私はどこかに何かを探しに回ったと思います。ちょっと遠出をしたら、そこに答えがあった、という感じです。
力強そうな先生からパワーを頂いて、私は元気になりたかった、、、んだなあと、今になって思います。

なかのひと

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セルフグリーフケア

2009年04月28日 | 緩和ケア
前回の「生前グリーフケア」に興味をお持ちの方がとても多かったので、もう少しグリーフケアについて私の体験談を書きましょう。

家族の一人が亡くなると遺族は大変悲しい。
まして、がんなどの闘病生活の末に訪れた死となると、その家族も患者と一緒に病気と闘い続けてきたわけで、心身ともに大変疲弊しています。ですから、グリーフケアはとても必要に思います。

私の場合、生前は緩和の先生に癒やされ、通夜には病院長が弔問に来て遺族を見舞い、病院関係者としてのケアはなかなか行き届いていたと満足感を持ちました。
しかし死者を前にすれば、やっぱり悲しい。

通夜が始まる頃、近隣の方が次々と弔問に訪れ、故人がどのように亡くなったか、私に説明を求めます。で、かいつまんでそれを話していると、、、やっぱり悲しくなって自然と泣けてきます。すると相手も故人の生前はあーだった、こーだった、、、と、涙です。涙顔を見ると、こっちも更に涙です。親族のような近しい関係者が相手だと、もーみんな一斉に涙です。で、やはり故人について私は涙で語ることになります。

これを20回ぐらい繰り返していたら、、、あの~、なんというか、、、その~、、、不謹慎かもしれないけど、、、悲しみに飽きるというか…(苦笑)。
なんだかとっても冷静になってきて、次の人にはもっとコンパクトに話そうとか、ここは泣き所だから、もっと感情を込めて言おうとか。。。
う~ん、、、辛い気分にも飽きちゃうんですよね(やっぱり苦笑)。

そして、自分の気持ちを親しい友人に電話でずーっと話していたら、3時間後にはスッキリしました。相手は超長電話で迷惑だったかもですが(^^;)。
で、その友達が別の友達に伝え、えー、何で言ってくれなかったのよ、と始まります。で、次の友達からも電話がかかり…。やっぱり私の話はコンパクトになってきます。友達にはそれぞれ、温かい励ましとランチおごりの約束をとりつけ、それを十人ぐらいに繰り返すと、悲しいというより最後のほうは事務連絡口調です(笑)。いやはや、持つべきものは友達です。。。

というわけで、悲しい時は思いっきり悲しむ。辛い気持ちを声に出したり涙したりすることって、案外大切だったなと思った次第です。まあこれは、その時その時を大切にするってことにも繋がるのでしょうけど。

それからももう一つ、とても大切に思ったことがあります。
がんで亡くなる場合、一般的には告知から時間がありますよね。その間、患者と一緒に病気や治療について学んだり、看護したりの充実した時間を過ごしますよね。

それと並行して私は、左リンクにある医師のブログや本などを読んでいました。がんだとどんなふうに亡くなるのか、亡くなるということはどういうことなのか、残された人はどんな気分になるものなのか、、、今から思えば、看取りのイメージトレーニングを無意識に行っていたような気もします。

病気での看取りは初体験という方は特に、刻一刻と変わる患者の状況に大きな不安を感じるかもしれません。そんな時に、死に向かう人はこういう状況になる、、、などの知識を入れておくと、多少は方向性がつかめて冷静になれるかもしれませんよ。がんはそういう準備期間を用意してくれる病気でもあります。

自分が乳がんになった時、自分と同じような体験者を探そうと、ネットを彷徨って探しだしたのがyukoさんです。なかなか自分の意とする人を見つけ出すのは難しいし、時間もかかるのですが、いつかは見つかるのがネットの長所です。ですから、同じ状況下にある人をネットで探すのも一つの手だと思います。

・・・と、ここまで書いてきましたが、この書き出す作業もセルフグリーフケアになると思います。

仕事で漫画を描く場合、描きあげるまでは、あーだこーだと悩んで色々考えが飛ぶ。更にまたぶち壊したり、再構築したり…、ぐちゃぐちゃした頭の中からなんとか考えをまとめて仕上げる、という作業をしています。(これでもね)

で、描き上げてしまうとですね、、、もうそれは終わったこと。
私は描き上げた作品を再度読み返すことって、ほとんどしないんです。頭の中は既に、次の作品のことを考えている。
私にとって、書く・描くという作業は、気持ちにケリをつける作業でもあります。
皆さんも、自分なりのセルフグリーフケアを探してみて下さい。


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生前グリーフケア

2009年04月25日 | 緩和ケア
「がん哲学外来の話」を読み返し、思い出したことがあります。

私は末期がんの母を病院で看取ったのですが、彼女が意識混濁で臨終に向かう頃、緩和の先生がやってきて彼女の手をずっと握っていました。で、反対側で手を握る私は長い沈黙を破り、この本のことを話してみました。
その先生もお読みになったとのこと。でも、「特に何も得るものはなかった」とおっしゃり、あら、どうしてですか?などと、先生と話が盛り上がったのです。

その先生も主治医と同様、外科出身で同じがんの専門医ということを私は存じていたので、話が進むうちに、どうしてもお尋ねしたいことが胸の内に湧き上がりました。
それは、抗がん剤治療の順番、時期、投与期間などなど、、、主に治療に関することでした。あの時、あの薬を先に使っていたら、開始時期を早めた方がよかったのではないか、もっと母に我慢をさせて治療を続ければよかったのか・・・。

主治医には絶大な信頼を寄せていたものの、お尋ねできなかった小さな疑問が私の心の中で澱となって淀んでいました。10年近くも同じ先生と付き合っていると、こんなこともあるのです。病院との関係もこれで最後だと思うと、何だか全てを精算したい気分になったのでした。

するとその先生は、このタイプのがんには抗がん剤があまり効かない。乳がんのように薬の効きが良いわけでもないし、治療も確立していない。どの薬をどの順番で使ったとしても、結果は似通っている。薬のエビデンスは、実際はあまり有用ではない。このがんの生存率は個人差が大きく、エビデンス通りの人は稀なのだから、と。
「それよりあなたのお母さんは、どんな人ですか?」

と、質問返しされました^^;
あら、先生、それは「がん哲学外来の話」の著者も必ず聞く質問って書いてありましたよ、キャッキャッ(>▽<)というわけで、また盛り上がってしまいました。

なぜ先生がそんな質問をされたかというと、患者さんがこういう状況になると、「なぜ私がこんな目にあうんだ」と言うこと多い。しかしあなたのお母さんは全く言わない。そこに関心を持ったとのこと。

私はとっても嬉しくなりました。これこそ、私が最大限、努力をしてきたことなのですから。。。

このブログを共同で始めたyukoさんのアドバイスです。
「死を怖がらせないようにすること」。

末期がん患者の心に、希望を持たせることは本当に難しい。

しかし、やり遂げられるのは家族しかいません。Yukoさんのアドバイスに従い、私も相当のエネルギーを費やす数年間を送りました。
その点を専門家に評価されたことは、兄妹や親族に評価されることより、私にとって、ずっとずっとずぅ~っと嬉しいことなのです。

更に先生は、「このがんには抗がん剤の治療より、日々の過ごし方のほうが重要なんですよ。普段、病気のことは考えず、いやなことをかわして過ごす人のほうが、長期生存する印象があります」。

あら、先生、それも本に書いてありましたわよ( ´艸`)と、またまた盛り上がったのでした。

この本の著者は病理医でしたが、この緩和の先生は臨床医。直接がん患者さんと接しているわけで、ケア時の良いところも悪いところも、美しいところもそうでないところも、実際に直面している。話がリアルでシャープなんです。
結局、1時間近くも時間を頂戴してし(^^;)、私の質問の一つ一つを丁寧に答えてくださいました。

うちなる疑問が全て解決したら、、、1週間前から食欲が全くなくなり激やせしていたのですが、何だか急にお腹が空き、昼食に焼肉定食をもりもり食べる始末。私って、結構たくましい性格してるのねなんて、自分に笑っちゃいました。
で、よっしゃーっと拳を握って気合を入れ、再び病室に戻ったのであります。これって生前のグリーフケアかしらん?と思いながら。。。

参考:グリーフケア


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なかのひと

This blog “The salon of breast cancer women authored by Noe:l” is able to read in Japanese:-)