西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

33-春調娘七草

2009-08-26 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―32「春調娘七種」


吉治が次に作ったのは「春調娘七種」
(はるのしらべむすめななくさ・1767年・中村座初春狂言)。

昔は正月狂言は、”曾我物”と決まっていた
(理由については、2月5・6日の記事を参照のこと)。
五郎・十郎に、五郎の恋人、化粧坂の少将(遊女の名)が絡んで七種を打つ、
という内容の狂言。

正月7日に、七種をまな板の上でトントンと打ち叩く”七種叩き”
(なずな打ちとも)という行事がある。
いわゆる”七種粥”だが、
曾我兄弟の、敵を”討つ”という意を、”なずな打ち”の意にかぶせた趣向。

この曲は杵屋六三郎(2世)作曲とされているが、
鼓唄の多い内容、また、それまでの曲作りからみても、その後の曲から判断しても、
吉治との合作ではないかと推量する。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

テレビ撮り

2009-08-25 | 仕事関係
NHKテレビで荻江の「深川八景」を収録しました。

今回の「芸能花舞台」(毎週木曜日、14時~NHK教育チャンネル)
は、”大川をえがく”という趣向でしたので、
わざわざ深川の霊巌寺というお寺に出向いての、野外収録でした。

江戸深川資料館の隣にある浄土宗のお寺です。
庭を背景にして撮りたいという意向でしたが、
庭の向こうはすぐに通りですので、オートバイは通るわ、工事は始まるわ、
選挙カーは通るわ、おまけにヘリポ-トが近いとあって、
ヘリコプターの発着音はするわで、そのたびに収録中断。

せみの声、烏の声は「ま、いいか」という感じでしたが
なにを好き好んでここで録るの????
暑いさなか、10分の曲を録るのに2時間もかかってしまいました。


左は荻江友郁さん、右は私、荻江友利です。
収録中断中のスナップです。



9月10日(木)14時から放送になります。
烏の声が入っていますが、それも一興、是非ご覧下さい。


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tea breaku・海中百景
法然さんか、うちは弟子の親鸞さんじゃ。
 和尚

32-関寺小町

2009-08-24 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―31「関寺小町」


次は古い小歌を拝借しての、小町の回想。

『待つ身なりゃこそ畳算(畳に簪を投げて、吉凶を占う)
 忍ぶその夜のわざくれか(じっと待つ夜はじれったい)
 実そうで御座んすえ
 誰そやこの夜中に(誰かが、こんな夜中に)
 鎖いたる門を叩くとも(閉ざした門を叩いても)
 よも開けじ(決して開けない)
 宵の約束なければ(約束のない男には)
 手管も恋の習わせなり(恋には駆け引きが肝心なの)』

多くの男を袖にしてきた、小町全盛期の思い出だ。
しかし、すぐに我に返る。

『心付きて声変わり(はっと気づけば老婆の声)
 怪しからず見ゆれば(これはしたり)
 すごすごと関寺の庭に帰る有様は
 山田の畦の案山子よの(ぼろを着た案山子のようだ)』 


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

31-関寺小町

2009-08-23 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―30「関寺小町」

『洛中洛外 町々を
 只何となく立ちいでて
 花がらたべよ 人々よ(施しの銭を下されよ)
 物たべの 旅人(物を下され、旅人よ)
 ちっとたべの旅人と(ちょっとでいいから、下されよ)
 あなたへさらり(あっちで、さあさあ)
 こなたへさらり(こっちで、さあさあ)
 さらり さらり さらさらさっと』

そして小町のセリフが入る。

「のう旅人、何とたべぬか ホホホ、そんなら色の踊り唄」


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

30-関寺小町

2009-08-22 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―29「関寺小町」


まずはお得意の鼓唄で、小町の名乗り。

『白浪や 漂う水に鏡山(白浪から、白髪を連想させ、鏡山から鏡を引き出す)
 夢か現か定めなき(しみじみと顔をながめれば)
 思いがけなき九十九髪(なんと99才) 
 我が身うるさし 人目恥ずかし(あああいやだ、人に見はせたくないこの姿)』

『面影の 変わらで年の積もれかし(顔つきが変わらずに、年とれよ)
 たとえ命の限りあるとも
 誰は留めねど関寺の(誰かを留める関ではないのに)
 訪はれん身にし 木枯らしの(誰一人訪ねてこない)
 果ては落ち葉の夕日影(最期は落ち葉と消えてゆく)』


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚