富士田吉治―31「関寺小町」
次は古い小歌を拝借しての、小町の回想。
『待つ身なりゃこそ畳算(畳に簪を投げて、吉凶を占う)
忍ぶその夜のわざくれか(じっと待つ夜はじれったい)
実そうで御座んすえ
誰そやこの夜中に(誰かが、こんな夜中に)
鎖いたる門を叩くとも(閉ざした門を叩いても)
よも開けじ(決して開けない)
宵の約束なければ(約束のない男には)
手管も恋の習わせなり(恋には駆け引きが肝心なの)』
多くの男を袖にしてきた、小町全盛期の思い出だ。
しかし、すぐに我に返る。
『心付きて声変わり(はっと気づけば老婆の声)
怪しからず見ゆれば(これはしたり)
すごすごと関寺の庭に帰る有様は
山田の畦の案山子よの(ぼろを着た案山子のようだ)』
〓 〓 〓
tea breaku・海中百景
photo by 和尚
次は古い小歌を拝借しての、小町の回想。
『待つ身なりゃこそ畳算(畳に簪を投げて、吉凶を占う)
忍ぶその夜のわざくれか(じっと待つ夜はじれったい)
実そうで御座んすえ
誰そやこの夜中に(誰かが、こんな夜中に)
鎖いたる門を叩くとも(閉ざした門を叩いても)
よも開けじ(決して開けない)
宵の約束なければ(約束のない男には)
手管も恋の習わせなり(恋には駆け引きが肝心なの)』
多くの男を袖にしてきた、小町全盛期の思い出だ。
しかし、すぐに我に返る。
『心付きて声変わり(はっと気づけば老婆の声)
怪しからず見ゆれば(これはしたり)
すごすごと関寺の庭に帰る有様は
山田の畦の案山子よの(ぼろを着た案山子のようだ)』
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚