猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

少女ファニーと運命の旅

2023-01-07 22:06:01 | 日記
2016年のフランス・ベルギー合作映画「少女ファニーと運命の旅」。

1943年、ナチスドイツの脅威がヨーロッパへ広がり、フランスも支配下
に置かれた。13歳のユダヤ人の少女ファニー(レオニー・スーショー)は、
幼い2人の妹とともに児童施設に匿われていたが、密告者の通報によって
別の施設に移った。しかし、その施設にもナチスの手が伸びてきたため、
更に別の施設に移ることになる。しかし、ドイツ兵の厳しい取り締まりの
ため、移動中に引率者とはぐれてしまう。見知らぬ駅に取り残された9人
の子供たちは、ファニーがリーダー役になってスイスの国境を目指すこと
になる。

ユダヤ人女性ファニー・ベン=アミの自伝を基に、ナチスドイツ支配下の
フランスからスイスへ、子供たちだけで旅を続けた実話を映画化。監督は
ジャック・ドワイヨンの娘ローラ・ドワイヨン。フランスとスイスの距離
感がよくわからないが、子供たちだけで旅をする、それも決死の逃避行と
いうのは過酷だったと思う。タイトルからして子供向けの映画なのかと思
ったが、しっかり大人向けだった。どうして小さい子供たちがそんな危険
で怖い思いをしなければならなかったのか、と考えると胸が痛む。
ユダヤ人の少女ファニーは幼い妹たちと共に、協力者たちが密かに運営す
る児童施設に匿われていた。その中で検閲を逃れて届く母からの手紙を楽
しみにしていた。しかし、密告者の通報によって子供たちは施設にいられ
なくなり、別の協力者の施設に移る。やがてその施設にもナチスの手が伸
びてきたため、更に別の協力者の施設に移ることになる。ファニーたちは
列車を使って移動していたが、ドイツ兵による厳しい取り締まりのせいで
引率者とはぐれてしまう。最年長の子供は17歳の少女だが、勝気でしっ
かりしている13歳のファニーがいつしかリーダーとなって、ひたすらス
イスの国境を目指す。
いろんな人がいる。協力者もいれば密告者もいる。見逃してくれるドイツ
兵もいる。いくつもの困難にぶつかりながらファニーたちが旅を続けてい
く様子はたくましいが痛ましくもある。ドイツ兵の取り調べを受けている
時に、ユダヤ人ではないふりをして「カトリックです」と答える少年がい
たが、辛かっただろうと思う。自分の信仰を言えないのだから。その少年
は皆で小屋に隠れている時に聖母マリアに祈りを捧げ、ファニーから「ユ
ダヤ人でしょ!」と非難されるが、「僕のしたいようにさせてくれ」と言
う。子供がここまでしなければならないなんて、とそのシーンは印象的だ
った。
特に残酷なシーンはないが、子供たちの大変さ、過酷さはよく伝わってき
た。ナチスドイツによるユダヤ人迫害を描いた映画は多いし、ずっと作ら
れ続けている。それだけナチスの罪は重いということだろう。私は昔から
このテーマについてとても興味があるので、こういう映画はつい観てしま
う。ついと言うのは変だが。子供たちがドイツ兵の銃撃をかわすシーンは
フィクションではないかと思うが、同じような目には遭ったのかもしれな
い。ラストは感動的だった。




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BLUE/ブルー

2023-01-03 22:16:47 | 日記
2021年の日本映画「BLUE/ブルー」。

ボクサーの瓜田信人(松山ケンイチ)は、誰よりもボクシングを愛しているが、
どれだけ努力を重ねても試合に勝てずにいた。一方、瓜田の誘いでボクシン
グを始めた後輩・小川一樹(東出昌大)は才能とセンスに恵まれ、日本チャン
ピオン目前だった。そして小川は瓜田の初恋の人・天野千佳(木村文乃)とも
交際していた。しかし小川は脳の病気が発覚し、医師にボクシングをやめる
よう言われる。千佳も引退するよう言うが、チャンピオンを目指す小川は聞
き入れない。そんなある日、女性にモテたいという理由で楢崎剛(柄本時生)
という男がジムに入会してくる。

ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるボクシングをテーマに描いた青春群
像劇。プロボクサーの瓜田は人一倍努力を重ねているが試合では負け続きで、
ジムの後輩たちからも軽んじられていた。一方、瓜田の勧めでボクシングを
始めた小川は天性の才能ですぐに瓜田を追い抜き、瓜田を介して知り合った
千佳とも付き合い、同棲していた。千佳は瓜田の幼なじみで初恋の人だった。
瓜田が今でも千佳を好きなことは観ている側にはすぐわかるのだが、千佳も
小川も気づいていないのが切ない。小川は日本チャンピオンに王手をかけて
おり、自分が欲しかったものを全て掴んだ小川を瓜田は羨むが、2人を応援
することしかできなかった。
そんな時小川はひどい頭痛がしたり、めまいがしたり、忘れっぽくなったり
という症状が続き、病院で診察を受けるが、脳の障害が発覚し、ボクシング
をやめるよう言われる。だが引退するように言う千佳の言葉には耳を貸さず、
「俺やめないから」と言い放つ。千佳は小川を説得して欲しいと瓜田にも頼
むが、「高みを掴もうとしているあいつを止められる訳がないよ」と言われ
る。
そんな時にゲームセンターで働く楢崎という男がジムを訪れる。楢崎は真剣
にボクシングをやる気はなく、女性にモテたいというのが動機で、「ボクシ
ングやってる風」でいいなどと言う。けれども楢崎は瓜田や小川たちのボク
シングにかける思いを目の当たりにして、次第にボクシングと本気で向き合
っていくようになる。この楢崎が変わっていく過程がいい。最初の頃は瓜田
に「全然勝てないのに何で続けてるんですか」などと毒づくが、瓜田はいつ
も何を言われても怒らない。瓜田のボクシングへの姿勢を見ているうちに楢
崎の心が変わっていくのは感動的。
物語とは特に関係ないが、小川が瓜田にスマホの画面を見せて話している時
に、ジムの会長(結構年を取っている)が何々?と覗き込むが、小川に「会長
はいいんすよ」と言われて「俺はいいって何だよ」とひがむシーンが私は好
きだ。何度かそのシーンがあるのだが、普通の青年たちの日常という感じで
気に入っている。小川の症状は悪化していき、警官に「君、変な薬やってな
い?」と聞かれたりする。それでもボクシングをやめない小川や、瓜田のあ
る思いに胸を打たれる。キャストの演技が皆とても良かった。ボクシングは
全然わからない私が観てもとてもおもしろかった。ラストシーンは切ない。




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