猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

トム・アット・ザ・ファーム

2023-06-17 22:01:03 | 日記
2013年のカナダ・フランス合作映画「トム・アット・ザ・ファーム」。

モントリオールの広告代理店で働くトム(グザヴィエ・ドラン)は、交
通事故で死んだ恋人のギョームの葬儀に出席するために、ギョームの
実家である農場に向かう。そこには、ギョームの母親アガット(リズ・
ロワ)と、ギョームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)
が2人で暮らしていた。トムは到着してすぐ、ギョームが生前、母親
にはゲイの恋人である自分の存在を隠していたばかりか、サラ(エヴ
リーヌ・ブロシュ)というガールフレンドがいると嘘をついていたこ
とを知りショックを受ける。更にトムはフランシスから、ギョームの
単なる友人であると母親には嘘をつき続けることを強要される。

カナダの劇作家ミシェル・マルク・ブシャールによる戯曲をグザヴィ
エ・ドランが映画化したサイコ・サスペンスであり人間ドラマでもあ
る。トムはゲイの恋人のギョームが交通事故で死に、葬儀に参列する
ためにギョームの実家のあるケベックの田舎町を訪れる。実家はギョ
ームの母親と兄で農場を営んでいた。母親アガットはトムを歓迎する
が、彼女は「サラはどうして来てくれないのかしら」と不満を口にし、
トムには何のことかわからない。ギョームは自分がゲイであることを
母親に隠し、サラというガールフレンドがいると嘘をついていたのだ
った。トムは事情を知っているフランシスからただの友達だというこ
とにしろと強要される。
葬儀の時、トムはギョームの一家が町の人々から疎外されているよう
な何とも言えない雰囲気を感じる。トムはフランシスから弔辞を述べ
ろと言われるが、良い弔辞が思い浮かばなかったトムは弔辞の代わり
に音楽を流し、後でフランシスに殴られる。フランシスは高圧的で暴
力的な男だった。けれどもトムはフランシスにギョームの面影を感じ、
帰らずに農場へとどまる。アガットはトムにとても優しく接し、トム
は悩んだ末サラに来るように連絡する。ギョームの恋人としてやって
きたサラにアガットは喜び、4人は楽しい時間を過ごす。
肝心のギョームは全く登場せず、俳優もキャスティングされていない。
ギョームの一家に不審なものを感じたサラはトムに一緒に帰ろうと言
うが、トムは帰ろうとしない。トムがフランシスに対して嫌悪感を抱
きながらも帰ろうとしないのは何故なのか。ストックホルム症候群の
ようなものなのだろうか、と思った。トムはフランシスの匂いや声に
ギョームを重ね、どこか惹かれてもいる。それがトムを引き止めてい
るのかもしれない。
トムはバーに行った時、バーテンダーに「フランシスは出禁だ」と言
われる。理由を聞くが「酒の1杯じゃ教えられないな」と言われ、も
う1杯注文する。昔ある男がギョームをゲイじゃないかとからかった
時、フランシスが激昂してその男の口を耳元まで裂いたのだと聞かさ
れ、トムは驚く。男にはひどい傷痕が残ったのだという。フランシス
はサイコパスなのではないだろうか。あまりにも暴力的すぎる。そん
な話を聞かされても帰ろうとしないトムの心情はどういうものだった
のか、私にはよくわからなかった。
ラスト近くでトムがガソリンスタンドで働いている男の口から耳まで
ひどい傷痕があるのを見るシーンが印象的。あの男はフランシスに人
生を滅茶苦茶にされたのだ。おもしろかったのだが、私にはよくわか
らないところもあった。でもドランの脚本や演出は優れていると思っ
た。ドランらしい映画と言えるのかもしれない。ネットのレビューに
「ラストシーンでフランシスが着ているジャケットに『U.S.A.』と
書かれているところや、エンディング曲の歌詞にアメリカ批判を感じ
た」と書いている人がいたのだが、私にはそこまで感じ取れなかった。


良かったらこちらもどうぞ。グザヴィエ・ドラン監督作品です。
胸騒ぎの恋人
わたしはロランス
Mommy/マミー
たかが世界の終わり
ジョン・F・ドノヴァンの死と生
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コメント (4)
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