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神経膠芽腫(GBM)治療に血管新生阻害剤AZD2171とワクチンCDX-110

2007-04-27 | 脳腫瘍
血管新生阻害剤AZD2171
今回の有望な臨床結果は、血管新生阻害剤の価値は腫瘍に養分を供給する血管形成を停止させるだけでなく、血管を「正常化」させて標準治療の腫瘍への送達を向上させることが可能であるという理論の根拠が画像やバイオマーカーの分析によってさらに明確に示された。
この研究チームは、化学放射線療法による標準的治療施行後に再発した神経膠芽腫(GBM)患者31例を含む第II相臨床試験の最新データを示した。開発中の血管内皮成長因子(VEGF)受容体阻害剤であるAZD2171を毎日投与した場合、これまで経験した再発神経膠芽腫患者(ヒストリカルコントロール)と比較して無増悪生存期間が、111日 vs 63日と改善した。本薬剤投与による全生存期間はヒストリカルコントロールと比較して211日 vs 179日で、よりわずかであったが改善した。さらに、最初の16例中9例が部分奏効(造影画像上で50%以上の縮小と定義)を達成した。ーハーバードからのAACR報告。全文はNCIキャンサーブレティン4/17特集記事

新たな脳腫瘍(GBM)ワクチンCDX-110
1年生存するのは患者の約半数、2005年治療薬テモゾロミドによって単に2.5ヶ月生存期間が伸びたことにより現在の標準治療となっているGBMに、さらに期待できる治療が可能となるかもしれない。
デューク大学とMDアンダーソンで行われた研究で、年齢中央値52歳の23人の新規に診断されたGBM患者が、2週間に3回、その後毎月このワクチン注射を受けた。このワクチンは、脳腫瘍患者の約3分の1に起こるEGFRvIIIと呼ばれるEGFR(上皮増殖因子受容体)タンパク変異型のsmall silverである。これらの腫瘍はEGFRvIII陽性で、腫瘍も微小細胞以外は全て摘出された後行われた。これらの患者は放射線とテモゾロミド治療も受けていた。うち、半数の患者が30ヵ月以上後も生存していた。腫瘍が確認されなかった(tumor free)期間の平均は、ワクチン群とテモゾロミド群では12ヶ月Vs7ヶ月であった。そのうち3分の2が診断後2年後も生存していたのに対し、ワクチンなしの群のEGFRvIII陽性患者では5%であった。
このワクチン試験の特徴は、新規に診断された患者であったこと、手術によって主な腫瘍は摘出されていたこと、EGFRvIIIはEGFR変異型であり理想的な免疫ターゲットであったことがあげられる。現在複数の施設で試験中である。

過剰なEGF受容体は細胞分裂を異常に引き起こすが、GBMの3分の1はこのEGFR変異を有する。EGFR(Rは受容体)は細胞表面にあり、浮遊するEGFとの結合に反応し細胞内にシグナルを伝達して急速な細胞分裂を促す。GBMでは3分の1にこのEGFR変異(今回はEGFRvIII)が見つかっており、結果、その変異した受容体はEGFと結合できなくなるが、EGFRvIIIはシグナル伝達を決して止めることはなく、細胞を増殖させ続けることが1980年代に判明している。「まるで水の漏れた蛇口のようである。」とLudWig Instituteの研究者は言う。しかも、EGFRvIIIは正常細胞にも見られるため、免疫機能はそれらを攻撃しないように訓練されている。(略)
CDX-110と呼ばれるこのワクチンはランダム化第2相試験が3月開始される予定で、テモゾロミドとこのワクチンの併用は実に有望である。化学療法は分裂の速い細胞を殺傷するが、それには癌細胞のみでなく、免疫細胞も含まれる。しかし、免疫細胞は化学療法後、回復が非常に早いため、テモゾロミド治療開始後、免疫細胞値の回復した21日目に投与すれば免疫反応を十分強化できる。しかも、EGFRvIIIのシグナリングは腫瘍の化学療法に対する抵抗性も強化すると見られるため、ワクチン投与はいいタイミングである。また、ワクチンの成功は、免疫療法には血管脳関門は障害にならないことを示唆している。
脳腫瘍のほか、頭頸部癌の42%、肺扁平上皮癌の5%でEGFRvIIIが見られるほか、乳癌、大腸癌、前立腺腫瘍でもEGFR過剰が見られ、受容体変異の多様性が示唆され、ワクチンの有効である可能性がある。正常EGFRを標的とする薬剤エルロチニブ、ゲフィチニブ、セツキシマブ、パニツムマブはこれらの癌のほとんどの患者で有効でなかったことが証明されており、GBMにも無効であった。ワクチンによってEGFRvIIIを無力化することにより、それらの薬への感受性を上げることができるかもしれない。Taming a Mutinous Mutant:An Errant Receptor Becomes a Prime Targetより抜粋、参考:JNCI


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