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新たな血管新生ターゲットM-CSF

2009-05-05 | 癌の経路・因子
 癌治療のVEGFを標的とした血管新生阻害療法は、当初は奏効するが、残念ながら、薬剤を中止したとたん、腫瘍はリバウンドして血液供給を再開した。
日本の研究者らが見いだした方法はより有望な可能性がある。VEGFではないが、同様に腫瘍への血液供給をする因子であるM-CSF(マクロファージ・コロニー刺激因子)を標的とした薬剤を開発した。M-CSFをその薬剤投与でブロックすると、薬剤を中止したあとも腫瘍は抑制され続ける。その違いは、作用の相違からくる。抗M-CSF薬は癌の血管周辺の足場にダメージを与え、構造的支えを奪ってしまう。抗VEGF療法では、この足場に対しては無力で、無傷のまま残すため、薬剤が中止されれば腫瘍は元通りに作業を再開してしまう。また、VEGFは血管が有害、有益にかかわらず成長を止めるが、M-CSF阻害剤は有害な血管のみを阻害する。
研究者らは、この薬剤をマウスの骨腫瘍で試験した。M-CSF値は一般的に、骨腫瘍、乳癌、前立腺癌、で多く見られるため、これらの癌が最も反応するとみられる。(Journal of Experimental Medicine, published online April 28, 2009)ニュース記事


10 コメント

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これですな (ちゃしば)
2009-05-05 21:17:00
あとで、『お楽しみセット』と一緒に送るでありんすぅ

M-CSF inhibition selectively targets pathological angiogenesis and lymphangiogenesis.
J Exp Med. 2009 Apr 27. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19398755

M-CSF阻害は病的な血管新生とリンパ管新生を選択的に標的とする


癌やその他の血管新生疾患での抗血管新生治療は病的な血管新生とリンパ管新生に選択性があることが望まれる。単球系細胞の分化に必要なサイトカインであるマクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)は腫瘍内の高密度の血管網形成を促進するため、M-CSF阻害剤として治療できる可能性をもつ。しかしながら、血管とリンパ管の発達におけるM-CSFの生理学的な役割は、M-CSF阻害の抗血管新生効果の基本となる正確なメカニズムとともにいまだ解明されていない。さらにその他の血管新生疾患でのM-CSF阻害治療の可能性もまだ検討されていない。われわれはM-CSF欠乏が多くのLYVE-1(+)とLYVE1(-)マクロファージを減少させ、その結果血管とリンパ管の発達を障害することを示すために大理石骨病(op/op)マウスを用いた。虚血性網膜症ではM-CSFは病的血管新生に必要とされるが正常血管系の回復には必要ではない。マウス骨肉腫においては、M-CSF阻害は効果的に腫瘍血管新生とリンパ管新生を阻害し、細胞外基質を破壊した。VEGF阻害とは異なり、M-CSF阻害の中断は急速な血管再増殖を促進しなかった。M-CSFの継続した阻害は腫瘍外の健常血管系やリンパ系には影響を与えなかった。これらの結果からM-CSF標的治療は眼球血管新生疾患と癌の治療に理想的な戦略であると考えられる。
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お楽しみセット・・?ワクワク○(^^)○ ()
2009-05-06 00:07:01
ありがとうございます~

原文がありましたかー

この薬剤名が書かれていなかったので、知りたいところです。
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Unknown (ちゃしば)
2009-05-06 14:42:16
M-CSFよりはCSF 1で調べたほうが情報が多いようです。私の脳味噌がへろへろになってしまいましたので詳細はよくわかりません(^_^;)。ただ、『やっぱり』と思ったのは、正常の生命活動にも直結していて短絡的に癌の治療に応用して、よかったよかった・・ですむ話ではなさそうです。血管やリンパ管絡みはほんの一面に過ぎないようですね。
下記にfreeでよめる文献を示しましたので興味がある人はどうぞ。案外、炎症性乳癌あたりから臨床への突破口が出てきそうな感じを持ちました。
http://www.ebmonline.org/cgi/reprint/229/1/1
この文献の中の下記の図が分かりやすかった(ような気がする)っす。
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Unknown (ちゃしば)
2009-05-06 14:43:14
http://www.ebmonline.org/cgi/content/full/229/1/1/F2
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大変難解ですが・・ ()
2009-05-07 12:07:50
関連記事をありがとうございました。

GW明けで、というのか、頭脳を超えているのか、今読めませんがまた、参考にさせていただきます。

抄録訳も、関係あるでしょうか・・

http://www.cancerit.jp/xoops/modules/pubmed/index.php?page=article&storyid=465

血管新生阻害も、他の療法と同じく、癌は一筋縄ではいかない、ということを再確認させられます。
打開策があればいいですね。
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URL間違えた気が・・ ()
2009-05-07 12:20:49
します。すみません。

乳癌にCSF-1が関連しているとは興味深いですね。
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Ki20227ですな(原文もfree) (ちゃしば)
2009-05-08 08:12:10
A c-fms tyrosine kinase inhibitor, Ki20227, suppresses osteoclast differentiation and osteolytic bone destruction in a bone metastasis model.
Mol Cancer Ther. 2006 Nov;5(11):2634-43.
Ohno H, Kubo K, Murooka H, Kobayashi Y, Nishitoba T, Shibuya M, Yoneda T, Isoe T.
Pharmaceutical Research Laboratories, Kirin Brewery Co., Ltd., 3 Miyahara, Takasaki, Gunma, 370-1295, Japan

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17121910

c-fmsチロシンキナーゼ阻害剤のKi20227は骨転移モデルで破骨細胞分化と溶骨性骨破壊を抑制する


今までの研究で骨転移病変では骨溶解の進行に破骨細胞が重要な役割を果たす。マクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)が破骨細胞分化に重要であることが示されてきた。今回の研究でM-CSF受容体(c-Fms)阻害剤が骨転移病変での破骨細胞に依存する骨溶解を抑制するかどうかを調べた。われわれはc-Fmsのリガンドに依存したリン酸化反応を阻害する小分子を開発し、この合成物が骨転移モデルにおける溶骨性骨破壊への影響を検討した。われわれは新しいc-fmsチロシンキナーゼ阻害剤であるキノリン-尿素誘導体であるKi20227(N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリル)オキシ]-2-メトキシフェニル}-N'-[1-(1,3-チアゾール-2-イル)エチル]尿素)を発見した。c-Fms, 血管内皮成長因子受容体-2(KDR), stem cell factor受容体(c-Kit), 血小板由来成長因子受容体βの阻害に対するKi20227のIC(50)はそれぞれ2, 12, 451, 217nmol/Lであった。Ki20227は試験したその他のfms様チロシンキナーゼ3、上皮成長因子受容体、 c-Src(c-srcプロトオンコジーン産物)などのキナーゼを阻害しなかった。Ki20227はin vitroでM-NFS-60細胞のM-CSFに依存した増殖を阻害するが、M-CSF非依存性のA375ヒトメラノーマ細胞の増殖は阻害しなかった。さらにマウス骨髄細胞を用いた破骨細胞様細胞形成試験でKi20227は酒石酸塩耐性の酸性ホスファターゼ陽性破骨細胞様細胞を用量依存性に阻害した。in vivo研究ではKi20227の経口投与はA375細胞心腔内注注入後のヌードマウスにおける転移腫瘍細胞による破骨細胞様細胞の蓄積と骨吸収を抑制した。さらにKi20227は卵巣摘除(ovx)ラットの骨表面での酸性ホスファターゼ陽性破骨細胞様細胞数を減少させた。これらの結果から、Ki20227は生体内でのM-CSFにより誘発された破骨細胞の蓄積による溶骨性骨破壊を阻害すると考えられる。よって、Ki20227は骨転移による溶骨性病変やその他の骨病変に対し有用な治療薬となる可能性がある。
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骨溶解ですか? ()
2009-05-08 19:04:51
微妙に違ってきて、よくわかりません。申し訳ありません。

この薬は、上記の乳癌細胞のと同じなのでしょうか。

骨転移には関連ありそうですが。
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間違いなさそうです。根拠は下記 (ちゃしば)
2009-05-08 22:43:40
ニュースの元ネタはこれですな。

http://jem.rupress.org/cgi/content/full/jem;jem.2065iti4v1

そして、これが解説している論文こそ、

http://jem.rupress.org/cgi/content/abstract/jem.20081605v1

すなわち、最初にPubMedの訳として示した論文です。これをみると、共同著者のなかにキリンの人が加わっています。そもそも、この論文に行き着いたのが「Ki20227 angiogenesis」というキーワードなんですが、そのgoogleの記述に、「27 Apr 2009 ... Pathological angiogenesis is a hallmark of cancer and various inflammatory .... Macrophages in retinas treated with Ki20227 and anti–c-fms ...」と、Ki20227が出てきます。

医学の世界でもよくある話ですが、目的とした効果よりは副次的な効果のほうが将来的に極めて有望なものとなることがあります。実際にモノになれば凄いことです(基礎段階どころか、第III相、下手をすれば実臨床に応用されてから思わぬ問題が出てくる薬剤も多々ありますから、期待=実臨床で劇的な・・と単純にはいかないと考えたほうがいいでしょう)。
でも、実際に期待されている効果が忍容可能な有害事象で実現できたなら・・・。
開発企業はGenentech社どころの話にとどまらないでしょうね。
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それですねー ()
2009-05-08 23:41:07
その論文です。薬剤名が書かれていなかったのですが、よく見つけましたね。全部読めないのがツライですが。

Kirinさんは、癌治療薬には噛んでますよね。隠れた強者と期待している1つです。(テトラチオモリブデイト類似薬もここが持ってました・・)

>医学の世界でもよくある話ですが、目的とした効果よりは副次的な効果のほうが将来的に極めて有望なものとなることがあります。

最近ようやくでてきてくれたデノスマブ、ア○ジェンは癌治療薬として有効であるのに長年出さなかったといいます・・初めは骨粗鬆症薬でした。

あぁ、また関係ない事書いてます~?
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