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安価で古い薬の問題-抗うつ剤クロミプラミンの脳腫瘍への適応

2008-04-25 | 脳腫瘍
1960年代から臨床に使用されている抗うつ薬クロミプラミン(clomipramine)が脳腫瘍患者の命を永らえさせるにもかかわらず、企業が安価な薬に投資しないため、ポーツマス大学の研究者がその薬をウィルスに載せて開発しようとしている。

この背景には長いストーリーがある。
標準的治療を受けた悪性脳腫瘍の患者の生存は12カ月とされるが、クロミプラミン投与を受けた患者の一部では、良好なQOLのもと7年間も生存した。英国、米国、豪州、で治療を受けた300人の患者のうち多くが、現在まで4年間この薬を服用し続けているという症例エビデンスがある。そのうちの一人に元英国クリケット選手Alan Igglesdenもいる。

にもかかわらず、特許の切れた安価な薬であるクロミプラミンに対して臨床試験を行う費用を投じる製薬企業はないだろう。研究チームリーダーは語る。「この薬に関してはどうしようもないのです。特許も何年も前に切れ、企業が利益を得る見込みはない。NHS(英国政府機関)は、薬の申請には研究室実験、動物実験、毒性試験、臨床試験を要請しており、膨大な資金が必要です」
そこで、チームはこのDNAの一部をウィルスに積載して送達することを考えた。この方法は同じ作用原理でも、クロミプラミンを服用するより、もっと複雑で、さらに検証が必要となる。
この薬の適応拡大のためには、製薬企業は臨床試験を行ってデータ提出をすべきと規制当局は言う。医師個人が適応外で処方することは可能であるが、何か起こった場合の責任が伴う。・・・この続きはNY市新聞にて。原文記事

 クロミプラミン・・・三環系抗うつ剤で、血液脳関門を通過可能。DNAに傷害するのではなく、アポトーシスを誘導する。


2 コメント

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100年後の未来 (ku_md_phd)
2008-04-25 19:25:11
100年後の未来を考えてみる。
さすがにミッキーマウスの著作権も切れているだろう時代には、すべての有用な薬の特許が切れている。

それをわざわざ無視して、小難しい方法(遺伝子治療など)で投与するような時代になるのかもしれない。

知識の蓄積が本当に地球を救うのかどうかというGoogleの野望は正しいのかどうか、こういう事例を見るといささか懐疑的になります。
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表には出ないところで・・ ()
2008-04-27 20:28:01
世の中、そんなに良心的にできていない、体制はまだ「完成」にはほど遠いと感じさせられます。現在の適応だけであれば問題はないでしょうけれど。

こんな薬や事実がどれほどあるのでしょう。
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