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マンモグラフィー検診の最新データ・・それでもあなたは勧めますか?(その1)

2009-07-21 | スクリーニング
 公的に行われたマンモグラフィー検診で見つかった3人に1人は過剰診断であり、同率の患者が必然的に不必要な治療を受けているという最新結果が、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデン、英国で行われた検診プログラムのメタ解析で得られ、BMJ誌7月9日オンライン版に掲載された。問題はもはや、過剰診断が起こるかどうかではなく、どのくらい頻繁に起こるかである。

過剰診断とは、ゆっくりしか進行しないため、患者は別の原因で死亡するまで症状が現れない癌、または休眠状態のままであるか自然消滅する癌のことである。前立腺癌においてもしばしば問題になるが、乳癌においてそのエビデンスは増加しており、今回の研究もそれを裏づけるものである。

 過剰診断が3件に1件というのは本当なのか?
これまでで最も有力なエビデンス(BMJ.2006;332:689-692)では、6件に1件とされている。過剰診断率がいずれであっても、医師は致死的な癌と無害の癌を見分けることができないため、その後の過剰治療が同率で発生することになる。

 警告
マンモグラフィー検診のメリットとリスクのバランスは昨年最も注目を浴びた。英国で、マンモグラフィー検診を無料で一般女性に提供するパンフレットに正しい情報が記載されていないことが専門家から批判を浴び、その後書き換えを余儀なくされた(※詳細はこちら)。その上、NYタイムズ他のメディアが2008年のノルウェーからの研究結果を一面で報じたー検診で見つかった浸潤性乳癌の20%は自然退縮する・・つまり"にせ癌"である。

【検診のバランスシート最新情報】=====
50歳から10年間毎年マンモグラフィーを受けた女性を1000人とした場合

  ・1人が乳癌による死亡を免れる
________

  ・2~10人が過剰診断され、不必要な治療を受ける
     ・10~15人が早期発見できるが、予後には影響しない
     ・100~500人が1回以上「偽陽性」の結果を受け、
      (その約半数が生検を受ける)  
======

最新研究の詳細
検診における過剰診断を評価するために、デンマークの研究者は各国の検診前後の乳癌発症率を比較した。もし、検診が有効で過剰診断を生じさせないならば、検診年齢における当初の癌増加は、検診終了後の年齢における発症率低下で相殺されるはずである、という考えに基づいている。過去の5つの観察研究ではマンモグラフィー検診は検診年齢の女性の乳癌発症率を増加させ、検診年齢を超えてもほとんど減少しないことが示された。つまり、マンモグラフィー検診は早期に前倒しして癌を発見するものではないことが示されている。
2009年7月14日 Medscape原文記事 


6 コメント

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はじめまして (てらだ)
2009-09-22 21:31:23
はじめまして。
術後2年半の乳がん体験者です。
不勉強でこちらのブログをつい最近知りました。長期にわたる地道な活動、頭の下がる思いです。
わたしは去年から、ピンクリボンチャリティの現状に疑問を感じて、ほそぼそとですが活動しています。先日、全国紙にデータに基づかない驚くような文章を見つけ、それについてブログで取り上げるなかで、トラックバックをかけさせてもらいました。これからもまたお邪魔しますので、よろしくお願いします。
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はじめまして ()
2009-09-22 23:07:19
コメント、ありがとうございます。

私も翻訳にかけまわっており、なかなかブログなど覗けずにいますので、教えていただいて嬉しいです。
驚くほど続々と検診が有害である可能性が示されはじめています。
行き過ぎたキャンペーン、検診の真のデータを知らせずに施行していくことは正しいことではないと確信します。私も国民的被害を懸念します。被曝の危険性もあります。共感いただけるかたがいらしてよかったです。
ブログ拝見しました。てらださんも、がんばってくださいね!
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Unknown (てらだ)
2009-10-05 16:42:01
希さん、こんにちは♪
今日、わたしのブログのほうに「コクラン共同計画」の情報を教えてくれた方がいました。わたしは不勉強で知らない団体だったのですが、希さんなら何かご存知かも?と思って再びおじゃましました。もしよろしかったら分かる範囲でどういう団体か教えていただけるでしょうか。
よろしくお願いします <(_ _)>
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こんにちは ()
2009-10-05 20:42:29
コクラン・ライブラリというのを耳にする以外は私も存じ上げないのです。お役に立てなくてすみません。でも、ちょっと検索したところ、一時期までは翻訳ボランティアが活動した経緯もあるようですね。現在はMINDSで少々訳されているとか・・
なにか重要なことがわかりましたか?また教えてください。

http://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/cochrane/index1.html

それから、乳癌検診記事、リファレンスサイトで全文アップしました。
http://www.cancerit.jp/

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いつも思うんだが、 (通りすがり)
2010-07-04 04:21:44
10から15人が早期診断されるが予後に影響しないとは、診断された人の予後?それとも対象集団の乳がん死亡率から?早期診断された乳がんが、誰がどの時点で予後に影響なしと決定できるのか?で、MMG検診を<否定的>に扱う。なんかこれはこれで臭いんだよね。MMG検診を礼賛するつもりも無いけど。淡々と事実だけを書きなよ。そして、デンマークや英国の今回の論文は一つの情報提供ではあるが、多くの拮抗する論文の一つに過ぎないと書くのが適切と思量するが。ま、まじめに怒ってもしかたないか。ためにするサイトだからな。
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むずかしいですね ()
2010-07-09 10:09:56
予後に影響しないというのはおそらくリードタイムバイアスのことで、早く見つけようが遅く見つけようが死亡する年齢は変らない、というものです。また、一番理解されにくい過剰診断の問題にも関連すると思います(早期発見のがんには悪さをしないものがある)。確かに今回の研究は臨床で実証明でなくパターン化して計算しているわけですが類似の研究でも高い不利益が出されており、利益(死亡率減少)の数値はどんどん減少しています。
これはコクラン関係のかなり信頼性が高いものですが、相反する論文の一つであり、かつこの後米国政府機関が推奨を変更したという大きな影響を与えたきっかけの一つでもあります。
コメント、ありがとうございました!
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