<
リクルートが退職者を「卒業生」と呼んで大切にする4つの理由
2017.2.22
https://news.careerconnection.jp/?p=31635
私が社会人になって最初に勤めたリクルートは、退職者のことを「卒業生」と呼び、辞めた後もよい関係性を保つ会社です。仕事上でも相互にメリットのある状態を作り出す文化があり、私もそのおかげで現役社員やOBOGから仕事や人を紹介してもらったり、陰に陽に様々な応援をしていただけたりして、起業後も今まで何とかやってきています。
私は今でもリクルートのことを感謝しており、大好きです。その一方で他社の中には、退職者を「落ちこぼれ」や「裏切り者」とみなす会社もあるようですが、なぜリクルートはこんな風に退職者を大事にしてくれるのでしょうか。(文:人材研究所代表・曽和利光)
退職者を積極的に再雇用するリクルート
退職者を大事にする姿勢は、たとえばこんなところに表れています。
・退職者の会合に現役社長などが出席する
・退職者の会合に会社が資金を提供する
・退職者を積極的に再雇用する(実は私も再雇用された経験があります)
退職者を大事にする文化は、個々のリクルート社員にとって極めて自然なことです。特段の「意図」や「目的」などはなく、それによって何か得してやろうとか、そういうことは考えていないでしょう。
だからといって、この文化は自然にたまたまできたわけではありません。リクルートは元々東大の心理学科の人たちが作った会社です。自らの経営方法を「心理学的経営」と呼んでいたように、様々なマネジメント手法を意図的に考案、導入していました。
ですから、この退職者を大事にする文化についても、きちんとした意図を持って醸成されてきたものだと思います。その目的とは何でしょうか。
現役社員に「社員を大事にする会社」と感じさせる効果も
退職者を大事にすると、職場に何が起こるのでしょうか。一つは、自分の行く末を退職者に重ねて見ることで、現役社員は自分を含む社員を大事にする会社だと感じるということです。
終身雇用が死語になりつつある現代では、現役社員たちは、それほど遠くない将来にこの会社の退職者となることが分かっています。社員を遇する資金には一定の限度があるわけですから、たとえば退職一時金やセカンドキャリア支援金の支給など退職者への厚遇は、会社に残る現役社員にとってマイナス影響を与えるはずです。
しかし、自分もいつか退職者になるとわかっていれば、退職者を遇することは未来の自分も遇せられるというイメージが湧きますので、比較的抵抗なく受け入れることができます。だから退職者の厚遇が、現役社員の会社への信頼感を向上させるわけです。
会社の「理想の状態」を保存し、外から支えてくれる
また、学校の卒業生でもそうでしょうが、自分の「母校」を愛するあまり、そのイメージを美化していくものです。言い換えれば、その会社の理想の状態を、きれいな形で保存しておいてくれる存在が退職者なのです。
現役社員は、日々生じる現実の様々な問題点やそこにある矛盾に実際に接していますので、所属している会社に対して理想を抱きにくい状態にあります。どうしても現在の姿が理想に勝ってしまう。時には「こんな会社はダメだ」と思うこともあるでしょう。
しかし、大事にされることで母校愛に満ちた卒業生は、
「もちろんいろいろなことがあるだろうが、この会社は絶対に大丈夫。一時的に問題が生じても、きっと底力を発揮して明るい未来を実現してくれる」
と激励してくれます。卒業生はお世話になった先輩であることも多いため、そういう人から受けた激励は現役社員を鼓舞することも多いことでしょう。
退職者が「伝道者」となって、会社の良さを広めてくれる
三つ目として、卒業生は社外の人にも良いことをしてくれます。退職者を大事にすれば、彼らはその会社のエバンジェリスト(伝道者)となって、外部の人々に会社の良さを広く伝えてくれるということです。
これもよくある話ですが、親は自分の子どもに自分と同じ学校に入って欲しいという思いを持つことがあります。愛する母校に、愛する子どもが入ってくれることがうれしいのです。
同じようなことが会社にも当てはまります。自分が良いと思う若者に対しては、自分が働いて良かったと思う自分の「母校」を勧めてくれることでしょう。私がリクルートで採用をしていた時も、応募者に「なぜ、うちを受けてくれたのか」と聞くと、
「とあるOB社員が、いい会社だったからぜひ受けてみなよと勧めてくれました」
と何度となく聞いたものです。
信頼できる「ビジネスリソース」を社外に確保できるメリットも
最後に、ビジネス上のメリットもあります。同じ釜の飯を食べた現役社員と退職者は、価値観を共有する人々なので信頼関係も築きやすい状態にあります。お互いがどんなことを考えているのか、仕事のスタンスはどうかなどについて、極めて低いコミュニケーションコストで分かり合うことができます。
そのため、赤の他人から始めた関係であれば当然交わすべき細々とした契約や、時には出資などによって縛らなければならないところが、卒業生の場合は、極端に言えば心理的契約のみで、何らのかの仕事を協働して進めることも可能です。
そのような存在は、なかなかイチから作ることはできません。卒業者ネットワークを大事にすることで、会社はいつでも簡単にアクセスできるビジネスリソースを得るわけです。
以上、退職者を大事にすると起こる現役社員にとってのメリットや職場への好影響について述べてみました、ご参考になりましたら幸いです。
>
リクルートが退職者を「卒業生」と呼んで大切にする4つの理由
2017.2.22
https://news.careerconnection.jp/?p=31635
私が社会人になって最初に勤めたリクルートは、退職者のことを「卒業生」と呼び、辞めた後もよい関係性を保つ会社です。仕事上でも相互にメリットのある状態を作り出す文化があり、私もそのおかげで現役社員やOBOGから仕事や人を紹介してもらったり、陰に陽に様々な応援をしていただけたりして、起業後も今まで何とかやってきています。
私は今でもリクルートのことを感謝しており、大好きです。その一方で他社の中には、退職者を「落ちこぼれ」や「裏切り者」とみなす会社もあるようですが、なぜリクルートはこんな風に退職者を大事にしてくれるのでしょうか。(文:人材研究所代表・曽和利光)
退職者を積極的に再雇用するリクルート
退職者を大事にする姿勢は、たとえばこんなところに表れています。
・退職者の会合に現役社長などが出席する
・退職者の会合に会社が資金を提供する
・退職者を積極的に再雇用する(実は私も再雇用された経験があります)
退職者を大事にする文化は、個々のリクルート社員にとって極めて自然なことです。特段の「意図」や「目的」などはなく、それによって何か得してやろうとか、そういうことは考えていないでしょう。
だからといって、この文化は自然にたまたまできたわけではありません。リクルートは元々東大の心理学科の人たちが作った会社です。自らの経営方法を「心理学的経営」と呼んでいたように、様々なマネジメント手法を意図的に考案、導入していました。
ですから、この退職者を大事にする文化についても、きちんとした意図を持って醸成されてきたものだと思います。その目的とは何でしょうか。
現役社員に「社員を大事にする会社」と感じさせる効果も
退職者を大事にすると、職場に何が起こるのでしょうか。一つは、自分の行く末を退職者に重ねて見ることで、現役社員は自分を含む社員を大事にする会社だと感じるということです。
終身雇用が死語になりつつある現代では、現役社員たちは、それほど遠くない将来にこの会社の退職者となることが分かっています。社員を遇する資金には一定の限度があるわけですから、たとえば退職一時金やセカンドキャリア支援金の支給など退職者への厚遇は、会社に残る現役社員にとってマイナス影響を与えるはずです。
しかし、自分もいつか退職者になるとわかっていれば、退職者を遇することは未来の自分も遇せられるというイメージが湧きますので、比較的抵抗なく受け入れることができます。だから退職者の厚遇が、現役社員の会社への信頼感を向上させるわけです。
会社の「理想の状態」を保存し、外から支えてくれる
また、学校の卒業生でもそうでしょうが、自分の「母校」を愛するあまり、そのイメージを美化していくものです。言い換えれば、その会社の理想の状態を、きれいな形で保存しておいてくれる存在が退職者なのです。
現役社員は、日々生じる現実の様々な問題点やそこにある矛盾に実際に接していますので、所属している会社に対して理想を抱きにくい状態にあります。どうしても現在の姿が理想に勝ってしまう。時には「こんな会社はダメだ」と思うこともあるでしょう。
しかし、大事にされることで母校愛に満ちた卒業生は、
「もちろんいろいろなことがあるだろうが、この会社は絶対に大丈夫。一時的に問題が生じても、きっと底力を発揮して明るい未来を実現してくれる」
と激励してくれます。卒業生はお世話になった先輩であることも多いため、そういう人から受けた激励は現役社員を鼓舞することも多いことでしょう。
退職者が「伝道者」となって、会社の良さを広めてくれる
三つ目として、卒業生は社外の人にも良いことをしてくれます。退職者を大事にすれば、彼らはその会社のエバンジェリスト(伝道者)となって、外部の人々に会社の良さを広く伝えてくれるということです。
これもよくある話ですが、親は自分の子どもに自分と同じ学校に入って欲しいという思いを持つことがあります。愛する母校に、愛する子どもが入ってくれることがうれしいのです。
同じようなことが会社にも当てはまります。自分が良いと思う若者に対しては、自分が働いて良かったと思う自分の「母校」を勧めてくれることでしょう。私がリクルートで採用をしていた時も、応募者に「なぜ、うちを受けてくれたのか」と聞くと、
「とあるOB社員が、いい会社だったからぜひ受けてみなよと勧めてくれました」
と何度となく聞いたものです。
信頼できる「ビジネスリソース」を社外に確保できるメリットも
最後に、ビジネス上のメリットもあります。同じ釜の飯を食べた現役社員と退職者は、価値観を共有する人々なので信頼関係も築きやすい状態にあります。お互いがどんなことを考えているのか、仕事のスタンスはどうかなどについて、極めて低いコミュニケーションコストで分かり合うことができます。
そのため、赤の他人から始めた関係であれば当然交わすべき細々とした契約や、時には出資などによって縛らなければならないところが、卒業生の場合は、極端に言えば心理的契約のみで、何らのかの仕事を協働して進めることも可能です。
そのような存在は、なかなかイチから作ることはできません。卒業者ネットワークを大事にすることで、会社はいつでも簡単にアクセスできるビジネスリソースを得るわけです。
以上、退職者を大事にすると起こる現役社員にとってのメリットや職場への好影響について述べてみました、ご参考になりましたら幸いです。
>
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます