今村聖奈騎手の新人離れしたメンタル 勝利に浮かれず「次のレースは携わる人が変わるので」(スポーツ報知 2022/07/05)
CBC賞で重賞初騎乗初勝利を挙げた今村
本格的な夏競馬が始まった。
春シーズンを振り返れば、武豊騎手の日本ダービー6勝目&史上最年長V、タイトルホルダーのG1連勝など、話題が多数。
それらに負けない注目を浴び始めたのが、今村聖奈騎手=栗東・寺島良厩舎=の活躍だろう。
7月3日のCBC賞・G3でテイエムスパーダに騎乗し、重賞初騎乗初制覇の偉業を成し遂げた。
5日現在19勝。
従来の女性騎手の1年目の勝利記録(9勝)も大幅に塗り替えている。
デビュー前から何度も取材しているが、その度に感心する。
新人とは思えないほど、冷静で、堂々としているのだ。
トレセン内では、福永祐一騎手らに質問する光景をよく見かける。「本当に緊張しない性格」と自己分析するように、大先輩にも物おじしない。
「緊張してしまうと、自分の聞きたいことが聞けなくなる。最終的に『これを聞いておけばよかったな』ってなるより、しっかり気になるところは聞く」。
果たして、18歳で、ここまでの行動力を持てるだろうか。
この貪欲さは、間違いなく強みの一つだろう。
さらに驚くのが、切り替えの早さだ。
新人ならば、1勝で大喜びしてもおかしくない。
だが、今村は良い意味で余韻に浸らない。
「次のレースは携わる人が変わってくるので、自分だけ浮かれている状態ではいけない」と平常心を心がけている。
負けたときも同じ。
あえて時間を置いてからレース映像を見返すのもそのためだ。
「月曜、火曜はどうしても主観的。言い訳を探して、自分の中で腑に落とそうとする。絶対それだと伸びないと思う」
敗戦にも真正面から向き合う姿勢には、脱帽するばかりだ。
「日を置いてパッと見た時に『やっぱりここダメだよな、直そう、もう同じ失敗はしないようにしよう』って思う」。
デビューして約4か月で、既に勝負師のメンタルを身につけている。
今村より5歳上で、社会人としてもわずかに先輩の私。
自分の仕事ぶりを省みて、思わず「尊敬します…」と本音が出た。
しかし話を聞いていると、18歳らしい素顔も知ることができた。
オフの日は、家族ともあまり競馬の話はしないという。
「寝るか、自己投資」で、休みを満喫している。
髪を切りに行ったり、サロンで日焼け対策を行ったり、身だしなみにも気を遣う。
同期とカラオケやユニバーサル・スタジオ・ジャパンで思い切り羽を伸ばすのも、気分転換の一つだ。
スーパールーキーにも、一人の競馬ファンに過ぎない時代があった。
憧れは、武豊騎手。
コラムも欠かさず読んでいたほどだ。
もちろん、今でも特別な存在。
「ゲートや返し馬で横にいらっしゃると『豊さんいる! やっぱめっちゃかっこいいな…』って」。
レジェンドを語るときは、まるでファンに戻ったかのよう。きらきらと目を輝かせる姿が、印象的だ。
今後の目標を聞かれても、いつも「目の前に与えられたチャンスをものにするだけ」と謙虚な姿勢を貫く。
しかし先日、初めて具体的な未来像について聞くことができた。
「2歳馬でポンって結果を出して、次も乗って、重賞とか乗れたら…。またその馬との巡り合わせもあると思うので、狙ってます。自分で教えたことが競馬につながってくるから、愛着がわくと思いますしね」。
多くの一流ジョッキーのように、デビューから手綱を執る一頭とG1を勝つ。今村聖奈なら、それも夢ではないと感じる。