WTOで日本・韓国が論戦 「日韓対立に巻き込まれたくない」との参加国も (NewsWeek 2019/07/25)~
日本と韓国は24日に開かれた世界貿易機関(WTO)の一般理事会で、半導体材料の対韓輸出規制についてそれぞれの立場を主張した。韓国は日本の動きをけん制するため、他の国・地域に理解を訴えた。
日本は今月4日、フッ化水素など半導体材料3品目の韓国への輸出について規制を強化した。さらに、貿易規制上の優遇措置対象である「ホワイト国」リストから韓国を外すための手続きに入った。
伊原純一・駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は理事会で、日本は多くの国と同様、定期的に輸出管理を見直していると主張。韓国が制度改善に取り組むという信頼に基づき2004年にホワイト国に指定したが、過去3年間は日本側が要求したにもかかわらず制度改善について全く協議が設けられなかったと説明。
「さらに、韓国向け輸出で不適切な事案があった」とした。
「韓国は日本の措置が自由貿易制度に反すると言うが、自由貿易とは武器に転用可能なモノや技術を管理・条件なしに取り引きするものではない」と反論した。日本が世界的なサプライチェーンを混乱させるとの韓国の主張については、日本の輸出管理見直しは安全保障に基づいているため、WTO規制は適用外であり、混乱を招く主張だと韓国をけん制した。
韓国の金勝鎬(キム・スンホ)新通商秩序戦略室長は理事会後記者団に「日本の輸出規制は貿易措置でも安全保障上の措置でもなく、外交上の対立で有利な立場を得るための戦略だ。つまり、元徴用工問題だ」と強調。
2国間協議に応じるよう外務省の山上信吾経済局長に提案したが、日本側は拒否したと批判。
「これは日本が自国の過去の行動に向き合う自信も勇気もないことを明確に示している」としたうえで、日本は世界経済に混乱をもたらし、WTOの存在意義を損ねる恐れがあると主張した。
伊原氏は、日本側は既に韓国側に5時間にわたり説明を行ったと指摘。
山上氏は、日本側はさらなる対話を拒んではいないが、正式な協議の要請は受けていないと述べた。
山上氏は、両国の輸出管理機関の間で対話が不足しているのは明らかだとし、そこから取り組むべきかもしれないと述べた。
韓国は国際社会を動員して日本の動きをけん制するために一般理事会にこの問題を持ち込んだが、会議では第三国による発言はなかった。
日韓以外の複数国の代表はロイターに、複雑な歴史が絡む2国の対立に巻き込まれたくはないと述べた。
「国民からの力強い信任が得られた」と豪語
参院選は投開票翌日の7月22日、全ての当選者が確定した。自民、公明の与党は改選定数124の過半数を上回る71議席を得た。これで非改選を含めた与党の議席は141となり、定数245の過半数も超えた。
今回の選挙は、年金問題や消費増税の是非、憲法改正に向けた議論の有無などを争点に、これまでの安倍政権の在り方や成果を問うものだった。
参院選の結果を受け、安倍晋三首相は7月22日の記者会見で「国民からの力強い信任が得られた」と豪語したが、果たしてそうだろうか。
6年前の圧勝65議席には全く届かない
安倍首相が総裁として率いる自民党は、今回改選で57議席を確保し、2016年参院選の56議席を1議席上回ったものの、圧勝した2013年の65議席には及ばなかった。しかも宮城、滋賀、大分など8つの選挙区では現職が落選している。
選挙結果から分かるのは、決して有権者は安倍政権を信任などしていない、ということである。国民は安倍首相に対し、「大丈夫なのか」と疑問符を付けたのである。そこを安倍首相は理解すべきである。
選挙の結果を謙虚に受け止め、まずは「安倍1強」から生まれる驕りや傲慢さを反省しない限り、国民の支持は得られないだろう。
長期政権ゆえの慢心や驕りに厳しい視線
ここで7月23日付の読売新聞の社説を見てみよう。
「与党は、改選定数の半数を超え、一定の信任を得た形だ。だが、個別の選挙区を見ると、自民党は必ずしも盤石とは言えない」
安倍政権を擁護してきた読売社説らしく、表現は「必ずしも盤石とは言えない」と抑え気味ではあるが、国民の強い信任を獲得したわけではないことを指摘している。沙鴎一歩の指摘と同じとみていいだろう。
読売社説は「慢心」と「驕り」の問題にも言及し、安倍政権に忠告する。
「32ある1人区のうち、岩手、秋田、新潟などで競り負けた。防衛省の不手際や副大臣の失言などが響いたとみられる。長期政権ゆえの慢心や驕りに有権者は厳しい視線を注いでいる」
見出しも「安倍内閣再始動 慢心を排し政策課題に臨め」である。
アベノミクスは富める者だけを富ませた
「安倍首相は記者会見し『令和の国づくりを進めていく』と強調した。自民党総裁の任期は残り2年余りだ。惰性に陥ることなく、政策で成果を出す必要がある」
「日本丸」の舵をとって大波を乗り越えていくのが、首相の役目である。政策で成果を上げるのは当然だ。安倍首相の強調する「令和の国づくり」とは、具体的に何を指すのか。聞こえのよい言葉だけが先走るようでは情けない。
読売社説は内政の舵とりをこう主張する。
「大切なのは、公約で掲げた『強い経済』を実感できる形にすることだ。景気は回復しているが、家計が潤い、消費が伸びる経済の好循環は生まれていない」
街中の大衆酒場は客の少なさに悲鳴を上げている。沙鴎一歩には強い経済などほど遠いと感じられる。アベノミクスは富める者だけを富ませた。いつになったら、富まざる人々が裕福になるのだろうか。その兆しはみえない。
憲法を改正すると、日本の国はどれだけ良くなるのか
さらに読売社説は「消費税率の引き上げで、社会保障の安定財源を確保し、将来不安を払拭することも肝要である」と指摘する。だが、消費税を引き上げれば、生活苦にあえぐ人々をさらに苦しめることになる。軽減税率など一時しのぎに過ぎない。読売社説は私たち国民に背を向け、安倍政権を後押ししようとしている。
読売社説は後半で「参院選で、与党と、日本維新の会などの改憲勢力は、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を維持できなかった」と憲法改正の議論について書く。
「首相は憲法に関し、『議論は行うべきだというのが国民の審判だ』と語り、野党に建設的な議論を呼びかけた。改正のスケジュールにはこだわらない考えを示した。与野党は衆参両院の憲法審査会を早期に再開すべきである」
読売社説は憲法改正の議論が進まないことに異を唱え、苛立つ。
安倍首相は参院選の結果を「国民からの力強い信任を得た」と強調し、秋の臨時国会で憲法改正論議を求めていく考えを示している。しかし、憲法9条への自衛隊の明記など、自民党の改憲案のように憲法を改正すると、日本の国はどれだけ良くなるのだろうか。
朝日は「与野党ともに敗北を喫した」と指摘する
7月24日付の朝日新聞の社説は「与野党ともに敗北を喫した。そう言われても仕方あるまい」と投票率の低さを指摘する。
「48.80%。今回の参院選の投票率は5割を切り、1995年の44.52%に次ぐ、戦後2番目の低さとなった」
「候補者すべての得票の合計を棄権が上回ったことになる。議会が民意を正当に反映しているか疑われかねない」
「戦後2番目の低さ」「得票の合計を棄権が上回る」というのは、国民が政治に期待していない表れなのか。それとも安倍政権を見限っているのだろうか。
安倍政権嫌いの朝日社説は「自民党は選挙区の改選数74のうち5割にあたる38議席を獲得した。しかし、棄権した人を含む有権者全体に対する絶対得票率は2割を切っている」と指摘し、こう主張する。
「安倍首相は『国民の皆さまからの力強い信任をいただいた』と胸を張るが、与党、野党の別なく、代議制民主主義の基盤を掘り崩す深刻な事態と受け止めるべきだ」
いまの国会は民意を反映しているとはいえない。民主主義の在り方が問われている。
低投票率には「民主党の失敗」が尾を引いている
朝日社説はさらにこう書いている。
「投票しても政治は変わらない。投票したい候補者や政党がない。そもそも、政治に関心がない……。棄権の理由はさまざまだろう。なかには、現状維持でいいので、わざわざ投票に行くまでもないと判断した人もいるかもしれない」
「まず問われるべきは、有権者を引きつけることができなかった政党、政治家の責任だ」
「政党と政治家の責任を問うべし」という主張には賛成である。そもそも自民・公明という与党に、野党が太刀打ちできないところに大きな問題がある。それが分かっているから投票に行かない有権者が多いのだろう。
もっと言えば、自民勢力を抑えて政権を握ったあの民主党の失敗が尾を引いていると思う。民主党政権が誕生したとき、沙鴎一歩はアメリカのような2大政党が政策を競い合うことを期待した。だが、その期待はあえなく崩れ去ってしまった。
与党に反対するだけでは、国民の支持は得られない
「『安倍1強』のもと、多様な民意に向き合おうとしない強引な政権運営が続いていることと無縁ではないだろう」
「強引な政権運営」という書き方は、安倍首相を嫌う朝日社説らしい。ただし、安倍政権を擁護してきた読売社説も「長期政権ゆえの慢心や驕りに有権者は厳しい視線を注いでいる」と戒めている。そのことを安倍首相はしっかりと心に留めるべきである。
「今回の参院選にあたっても、国会の論戦を回避し、『老後2千万円報告書』など不都合な現実にはふたをした。『安定か、混乱か』と、6年以上前の民主党政権をあげつらい、重要な政策課題について国民に問いかける姿勢は乏しかった」
選挙戦で重要な政策課題について訴えなかったから投票率が低くなった、というのが朝日社説の論理だろう。それもある。ただ、最大の問題は野党の力不足だろう。全国32の1人区すべてに統一候補を立てたが、明確な争点をアピールできなかった。朝日社説は「より多くの有権者を糾合するうねりは起こせなかった」と指摘している。
沙鴎一歩は実力のある2つの大きな政党が交互に政権を握って国を動かす。そんな2大政党による国家運営を望んでいる。そのためには、いまの野党では力不足だ。
遅くとも2021年秋までには必ず衆院選がある。与党に反対するだけでは、国民の支持は得られない。いまの野党は安倍政権を攻撃するだけでなく、次の選挙に備えて魅力的な政策を準備するべきだろう。
民主党という政党の誤りの第一歩は、自らの政党名を弊履(へいり=破れた履物)のごとく捨て去ったことだった。
参加を希望しながらも、安全保障政策などに問題があるとされ排除された政治家たちは「立憲民主党」を立ち上げ、希望の党に蝟集(いしゅう=群がること)した政治家たちも、「小池ブームが去った」と判断した後には複雑な手続きを経て「国民民主党」へと至る。
現時点では、立憲民主党と国民民主党との2つの政党の差異がどこにあるのか、私にはさっぱり見えてこない。
国民民主党は、立憲民主党よりも現実的な政策を主張しているようにも思えるが、参院選では「野党共闘」へとかじを切り、社民党、共産党とともに空疎な安倍晋三政権への批判を繰り返している。結局、立憲民主党であれ、国民民主党であれ、「元・民主党の政治家たちの集まりだ」というのが一般的な理解だろう。
「朝日新聞デジタル」によれば、安倍首相が立憲民主党の枝野幸男代表を「民主党の枝野さん」と言い間違え、その後、「毎回、党が変わるから覚えられない」といった冗談を演説に挿入し、聴衆の笑いを誘おうとしたという。その後、別の記事では、枝野氏の「日本の総理大臣でもあり、情けない」との批判の声も紹介している。
だが、情けないのは民主党と言い間違えられると激怒する野党の側だ。自分が民主党にいたことを指摘されるのが嫌なのだろうか。
そういえば、「民主党とは何か」「政治家の責任とは何か」を、久々に考え直す機会があった。
加戸守行(かと・もりゆき)前愛媛県知事(84)が先日、ある候補者の応援に駆け付け、魂の叫びとも呼ぶべき熱弁を振るった。知事時代に自然災害に備えてダムの改造工事を予定していた。だが、民主党政権が誕生すると「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、知事に何の相談もないままに工事が凍結されてしまった。
昨年の豪雨によって、5人の尊い命が失われてしまった。
「意見は誰が言ってもいいのです。ただ、政治判断・政治決定をするときの最高責任者は反省し、責任を負って、贖罪(しょくざい)をして、償いをしてから、再び政治の道を歩むべきである」
政治は結果責任である。政党名を変更すれば、過去の判断の過ちが曖昧になるわけではない。空疎な政権批判を繰り返す前に、民主党政権に所属していた政治家は自らの政治家としての責任に向き合うべきだろう。
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員等を経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)など。
韓国への輸出管理強化を“印象誘導”か 一部メディアの報道に疑問 (夕刊フジ 2019/07/25)~
久々の正論だね。
[ジュネーブ 24日 ロイター] - 日本政府の代表は24日に開かれた世界貿易機関(WTO)の一般理事会で、対韓輸出規制は安全保障に基づいており、WTOで取り上げられるのは適切ではないと述べた。
これに先立ち韓国側は、輸出手続きの優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する日本政府の方針に反論。
日本政府は、対韓輸出管理の見直しで、武器に転用可能な特定品目を韓国に輸出する場合、国内業者は許可を得ることが義務付けられるとした。
伊原純一・駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は「措置は安全保障のための輸出管理制度に基づくもので、WTOで取り上げられるのは適切でない」と述べた。
韓国は国際社会を動員して日本の動きをけん制しようとしたが、WTO関係筋によると、いずれの国も介入する姿勢を示さなかった。
伊原氏は、日本は多くの国同様、定期的に輸出管理を見直していると主張。
「韓国は日本の措置が自由貿易制度に反すると言うが、自由貿易とは武器に転用可能なモノや技術を管理・条件なしに取り引きするものではない」と反論した。日本が世界的なサプライチェーンを混乱させるとの韓国の主張については、日本の輸出管理見直しは安全保障に基づいているため、WTO規制は適用外であり、混乱を招く主張だと韓国をけん制した。
これに対し、韓国の金勝鎬(キム・スンホ)新通商秩序戦略室長は、日本側の高官に直接協議を求めたが、拒否されたと指摘。日本が外交上の報復のために貿易を利用していると非難した。
韓国に対する日本政府の輸出優遇措置の撤廃をめぐり、日韓双方がWTO(世界貿易機関)の会議でそれぞれの立場を訴えたが、主張は折り合わないままだった。
国際機関で繰り広げられた日韓の議論に対する各国の反応は薄く、世界に訴える韓国の狙いは達成できたとは言えない状況。
スイスのジュネーブで開かれたWTOの一般理事会では、韓国側が、日本の措置は「不当だ」と批判したのに対し、ジュネーブ駐在の伊原大使は、「WTOで議論するのは適切ではない」、「WTOのルールに違反しない」と反論した。
韓国メディアは、韓国当局者の話として、日本をWTOに提訴する準備を進めていると報じている。
一般理事会での議題化は、国際社会の支持取り付けを狙う韓国政府が要請したものだが、会議後、WTOの議長は「討論に加わった国はなかった」と明かした。
さらに、FNNの取材に応じた会議の出席者からも「WTOは国際貿易に関する場だ、つまり多国間だ。日韓の話は、二国間の話だ」、「互いに合意できる解決策を見つけるため、対話は日韓で続けられるべきだ」などと、160を超える国と地域が加盟する国際機関で扱うテーマなのか、疑問視する声が相次いだ。
韓国・ハイニックス営業益9割減 半導体需要振るわず (共同通信社 2019/07/25)~
韓国経済は、どう?
空売りして、利益が出そうだね。
【ソウル共同】韓国の半導体大手SKハイニックスが25日発表した2019年4~6月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比89%減の6376億ウォン(約580億円)となった。世界的に半導体の需要が振るわず、価格が下落したことが響いた。
売上高は38%減の6兆4522億ウォンだった。米中貿易摩擦が半導体市場を不安定化させたことも不振の要因に上げた。
日本の韓国向け半導体材料の輸出規制強化は7月に始まったため、今回の決算には影響していないとみられる。
会社員のカン・ユジンさん(28)は、夏休みの東京旅行のために予約した韓国・チェジュ航空のチケットをキャンセルしようかどうか悩んでいる。韓国で広まる日本製品の不買運動のためだ。
ネット上ではすでに、日本旅行の感想を記した投稿を非難するコメントが増えている。カンさんは「日本旅行をキャンセルしたとの投稿が多い。LCC(格安航空会社)の便を予約したのでキャンセル料を支払わなければいけないが、キャンセルするつもりだ」と打ち明ける。
広がる「ボイコットジャパン運動」
日本路線を拡大させることで成長してきた韓国のLCC業界に赤信号が灯った。
韓国LCCがいかに日本路線へ依存しているかをみてみよう。
業界トップのチェジュ航空は、国際線68路線のうち22路線(32.4%)が日本路線だ。ジンエアーは28路線中9(32.1%)、ティーウェイ航空は53路線中23(43.4%)、イースター航空は34路線中12(35.3%)、エアプサンは32路線中10(31.3%)、エアーソウルは17路線中11(64.7%)を日本路線が占める。
LCC業界全体の売り上げに日本路線が占める割合も高い。2019年第1四半期(1~3月)でみると、ティーウェイ航空は売上高の30.9%が日本路線だ。これは、大韓航空の11%、アシアナ航空の14%の2倍超だ。同期間中、チェジュ航空は25.6%、ジンエアー24.0%が日本路線からだった。航空業界関係者は「LCCは日本の主要都市はもちろん、地方の中小都市に路線を広げることで成長した。日本路線が落ち込めば、業績も悪くなる他はない」と言う。
反日感情の高まりが、確実に日本路線への搭乗客を減らしている。
これまで同区間の平均搭乗率は80%超が続いており、「ドル箱路線」とされてきた。特に団体旅行客のキャンセルが増えた。個人旅行には大きなキャンセルの動きは出ていないが、日本行きの航空券をキャンセルした証拠となる書類などをわざわざSNS(交流サイト)で公開する者も増え始めた。さらに、官公庁や公的機関などを中心に団体客が7~8月の旅行をキャンセルする動きが相次いでいる。
旅行代理店でも日本旅行が大きく減少
日本旅行への需要全体が縮小するとの見方も広がっている。韓国航空大学経営学部のホ・ヒヨン教授は「日本が輸出規制措置を発表する前に日本行きの航空券を予約した人は、旅行自体をそれほどキャンセルしないかもしれない。
航空業界だけではない。
LCC業界にとっては稼ぎ時となる今年第3四半期(7~9月)の業績悪化が、すでにささやかれ始めるなど業界は戦々恐々とし始めた。日韓関係の悪化が収益の足を強く引っ張るのではないかと見られているためだ。
2018年第3四半期には、チェジュ航空やジンエアー、ティーウェイ航空の各社は、日本で発生した地震や台風などの影響などで繁忙期の運航に支障が出て、営業利益が前年同期比6.5~54.3%の減益となった。日本製品不買運動が長期化すれば、今年の繁忙期の業績はさらに悪化しそうだ。
韓国CAPE投資証券のホン・ジュンギ研究員は「安全保障問題をめぐって、中国が韓国に対して経済的圧力をかけるなど韓国と中国の関係が悪化した2017年当時、訪中した韓国人数は前年比19%減少した。この前例から考えると、日韓関係の悪化がLCC各社の業績を悪化させる可能性も排除できない」と指摘する。
日本が輸出規制措置を発表する前となる今年第2四半期(4~6月)にはすでに、韓国LCC業界に業績悪化の陰が忍び寄っていた。韓国観光公社によれば、今年1~4月に日本を訪問した韓国人観光客は264万7400人と、前年同期比4.4%減少した。昨年は逆に5.6%増だったこととは対照的だ。
韓国LCC各社の株価も下落しており、訪日客数の減少が主な原因となっているのは間違いない。
チェジュ航空の株価は15%下落した
チェジュ航空の株価は今年6月28日に3万3150ウォン(終値、約3000円)だったが、7月上旬には2万8000ウォン(約2600円)と15.5%下落した。同期間、ジンエアーとティーウェイ航空の株価もそれぞれ17.5%、8.9%下落している。
このような状況に直面した韓国LCC各社は、中国に視線を向け始めた。2017年に前述した中韓関係が悪化した当時、中国路線を日本路線へと振り替えたこととまったく正反対な動きだ。
イースター航空やエアプサンなどは、中国路線の新規就航と増便にいち早く動き出した。今年5月、仁川・上海路線など6路線週27便の路線割り当てを受けたイースター航空は、7月12日から仁川・上海路線を週7便運航している。
エアプサンは7~10月に、すでに就航している釜山(釜山)・延吉(中国吉林省)線、釜山・張家界(同湖南省)線を増便させる方針だ。
急浮上した「有志連合」
政府は対応に苦慮するが
7月9日、米統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード海兵大将は記者団に対し、ペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡などの航海の安全確保のため「有志連合」結成を目指し関係諸国と調整中であることを表明した。11日には米国務次官補デビッド・スティルウェル空軍准将(予備役)が来日、外務省、防衛省などとイランや北朝鮮情勢につき意見交換を行った。
これに先立つ6月24日、トランプ米大統領はツイッターで「ホルムズ海峡を主たる原油輸入路としている日本、中国などが自国の船を自ら守るべきだ」と述べた。ダンフォード統参議長の「有志連合」結成論や、スティルウェル国務次官補の訪日は、トランプ大統領の意向を受けたものだと考えられる。日本政府は対応に苦慮しているが、「イラン包囲網」に参加する「大義」はあるのか。
米・イラン対立は
トランプ政権が引き起こした
現在起きているイラン核合意をめぐる米国とイランの対立は、ひとえにトランプ政権が引き起こしたものだ。米・露・英・仏・中・独の6ヵ国とEUはイランの穏健派政府との2年以上の交渉の結果、2015年7月「イラン核合意」に達した。この合意では、イランは少なくとも15年間は、原子炉の燃料用の3.67%以上の濃縮ウランやプルトニウムを製造せず、濃縮用の遠心分離機の大幅な削減をし、その見返りにイランに対する経済制裁は解除することを定めている。
国連安全保障理事会もそれを支持する決議をし、IAEA(国際原子力機関)は2016年1月、イランが合意を完全に履行したことを確認した。これで経済制裁は解除に向かい、話し合いによる解決の成功例となった。
ところがトランプ大統領は2018年5月、一方的にイラン核合意離脱を宣言、経済制裁をすべて再発動した。米国はイランと取引をする外国金融機関等の企業にも制裁を再導入するとしている。それまでの対話の努力をすべてひっくり返す米国の離脱にはイランはもちろん、他の合意署名国も怒り、英、仏、独が遺憾の意を共同で表明したのは当然だ。
このためイランは7月7日、核合意で上限とされたウラン濃縮3.67%を超えた4.5%濃縮を行うことを宣言したが、核兵器用の濃縮ウランはウラン235の比率が90%以上であり、4.5%は核兵器開発には程遠い。経済制裁が解除されないことへのイランの不満を示すジェスチャーにすぎない。
米国はこれを「核合意違反」と非難するが、自国は核合意離脱を宣言。経済制裁を再開し、合意をほごにしたのだから、まるで契約を破棄して商品の代価は支払わず、「納入しないのは契約違反」と騒ぐようなものだ。
「日本タンカー襲撃」でも
米国の主張は不自然
6月13日にホルムズ海峡の出口であるオマーン湾で日本の国革産業が運航するタンカー「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍、1万9000総トン)と、ノルウェー企業が運航していたタンカー「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍、6万3000総トン)が爆発物による攻撃を受けたこの事件につき、米国は「イランに責任がある」と主張、中東地域を担当する米中央軍は「攻撃は吸着水雷(Limpet Mine)によるものだ」との声明を出した。また「イランの革命防衛隊が不発だった水雷を日本のタンカーから回収し、証拠隠滅している状況を米軍が撮影した」とする“証拠写真”を公表した。だがこの主張には極めて不自然、矛盾した点がある。
吸着水雷は強力な磁石を付けた小型爆弾で、アクアラングを背負ったダイバーがボートや小型潜水艇で港に潜入、停泊中の敵艦船の水線(海面の線)下に取り付け、時限信管で爆発させる。
第2次世界大戦中の1943年9月、英軍特殊部隊の14人がカヌー3隻でシンガポールの港に潜入、吸着水雷で日本の貨物船7隻を沈没、または破損させた。1945年7月には英軍の超小型潜水艇でシンガポールに潜入したダイバーが重巡洋艦「高雄」の船底に吸着水雷を付け、大亀裂を生じさせた。人が抱えて泳げるような小型水雷でも、水中では爆発の圧力が周囲の水に抑えられ、船に向かって集中するから相当な威力を発揮する。
だが「コクカ・カレイジャス」の破孔は1回目の午前6時45分頃の爆発によるもので、右舷船尾の水線より少し上だった。その約3時間後に起きた2回目の爆発は、右舷中央部の水線よりはるかに高い位置に小さな穴を生じさせた。
泳いで船に接近するダイバーは、目標の船の水線下には比較的容易に吸着水雷を付けられるが、泳ぎながら水線より上に爆弾を持ち上げて付けるのはシンクロナイズドスイミングより難しいし、水線下に穴をあけないと効果は乏しい。
まして2回目の攻撃の破孔は、水面から手が届かないような高い舷側に生じている。何のために、どうやって水雷を高い場所に取り付けたか、極めて不自然な話だ。もしヘリコプターか無人機が搭載する小型のミサイルを誤射すれば、このような被害が生じる可能性がある。
つじつま合わない「証拠写真」
「反イラク感情」抱かせる狙い?
「コクカ・カレイジャス」の航海速力は14.3ノット(時速26キロ)、航行中にダイバーが泳いで水雷を取り付けるのはまず不可能だ。サウジアラビアのジュベイル港に停泊中か、あるいは10日に出港したのちカタールのムサイード港に寄港した際に付けられた、ということになる。
複数の水雷を付けるならほぼ同時に爆発するようにするはずで、3時間もの差があるのもおかしい。「コクカ・カレイジャス」の乗組員は「砲弾のような物が飛来した」と報告している。1回目の爆発は突然だから思い違いが起きる可能性もあるが、それによる右舷後部の火災を消し、緊張しているはずだから、もし右舷にもう1個異様な物体が付いていれば気付くだろう。「砲弾のような物が飛来した」との乗組員の証言は無視できない。
イランの巡視艇が「コクカ・カレイジャス」に接舷し、革命防衛隊員が不発の水雷を回収している」とする米軍の“証拠写真”はつじつまが合わない。不発があったか否か、は事件後はじめて分かる。事件発生後にはタグボートが駆けつけてアラブ首長国連邦のカルバ港へ曳航し、米駆逐艦「ベインブリッジ」も来て同船の乗組員を一時収容、船内の安全確認を行ったのち乗組員は元の船に戻った。多くの人々の関心が攻撃を受けた船に集中する中、イラン革命防衛隊員が船に乗り込んで証拠隠滅をはかる、と言うのは変だ。まるで火災現場に消防車やパトカーが集まる中、放火犯が現れて証拠品を回収するような話だ。この写真は13日の夜に撮影されたようで、もしイランの巡視艇が来たのなら、米国あるいは他の反イラン勢力の犯行の証拠を探そうとしていたとも考えられる。
米国は「吸着水雷」の磁石の破片を同船から回収し「イラン軍のパレードに出ていた物と酷似している」とも発表した。だが弾道ミサイルや戦車などが行進して威容を誇示するパレードに、特殊部隊が密かに使う小型水雷のようにまったく見栄えのしない物を出すとは考えにくい。
ポンペオ米国務長官は6月13日の記者会見で「イラン政府は日本のタンカーを攻撃、乗組員の生命を危険にさらした。安倍首相がイラン訪問中に事件を起こして日本を侮辱した」と述べた。だが「コクカ・カレイジャス」はパナマ船籍でパナマ国旗を掲げ、船尾にも船籍港の「パナマ」が書かれている。
船の所有者は法的にはパナマ企業で、それが日本企業の子会社であることは攻撃する側には簡単には分からない。ポンペオ国務長官は、米国の対イラン強硬策への国際社会の批判が強い中、なんとか日本人に反イラン感情を抱かせ、イラン包囲網に参加させようとしている様子だ。
米国は「イランがホルムズ海峡の封鎖を目指している」と言うが、それをすればイランは自国の原油輸出を妨げ自分の首を絞める結果となる。一方、米国はシェール・オイルの産出で石油輸出国になったから、ホルムズ海峡の閉鎖で原油価格が上昇すれば、米国を利することになるのは明らかだ。イランが軽々とそのような愚行をするとは考えにくい。
米国の虫のいい構想
「自衛隊の派遣」否定は当然
ロイター通信によれば、ダンフォード大将が想定している「有志連合」では米軍は指揮統制や警戒監視、情報収集を行い、各国の商船はその国の艦艇が護衛するという。米海軍は護衛の艦艇を出さず、指揮だけするなら、安上がりにイラン包囲ができる虫の良い構想だ。
だが南シナ海の人工島問題で米海軍は中国海軍と張り合っているし、米中は「貿易戦争」のさなかだ。また中国はイラン核合意からの米国の離脱、制裁再開を批判しているから中国軍艦が米軍の指揮下に入ることはまずない。
イランは19世紀から北のロシア、南のインドを支配するイギリスの圧迫を受けたため、、日露戦争での日本の勝利を喜び、伝統的に親日だ。第2次世界大戦では中立を宣言したが、英軍とソ連軍は南北から侵攻し、イランは両国に占領された。皇帝は捕えられ島流しされて死亡した。
日本は米国が1980年に革命後のイランと国交を断絶しても、イランとの友好関係を保ち、国交を続けてきた。イラン核合意についてもそれを支持する立場だ。
「コクカ・カレイジャス」の乗組員の報告を聞いている日本政府は、米国が「イランの犯行」と叫んでも同調せず、「誰が攻撃したのか分からない」(石井国土交通相)「予断をもって発言することは控えたい」(菅官房長官)など慎重で、中立的姿勢を示した。岩屋防衛相も6月14日「我が国の存立を脅かす恐れはない」と述べ、自衛隊の派遣を否定した。岩屋氏は7月16日にも「現時点では有志連合に参加する考えはない」と述べている。
米国が「日本の船は日本が守れ」と海上自衛隊派遣を要求しても、日本の船会社が海外に子会社を作り、外国船籍にしている「便宜置籍」の外航船は2411隻。日本船籍の外航船はわずか219隻だから、日本船籍の船だけを守ってもあまり意味がない。政府は便宜置籍船も合わせて「日本関係船舶」と称しているが、法的にはパナマやリベリアなど、他国の主権下にある船を海上自衛隊が護衛し、必要があれば武力行使をすることが自衛権の範囲と言えるか否かは疑問だ。
日本の船会社はパナマ等の海外子会社の株主にすぎない。外国企業への出資者の権益を守ることが自衛権行使に当たるのならば、諸外国に進出している日系企業の工場等を戦乱や暴動などの際に守るために自衛隊を派遣したり、逆に日本にある中国企業の工場を中国軍が守ることも自衛権の行使ということになりかねない。
米国を「核合意復帰」に
誘導するのが良策
仮に日本に食糧や石油などを運ぶ船が続々と撃沈され、日本国民の生存が脅かされるような事態になれば、海上自衛隊がどの国の船であろうが、日本に不可欠な物資を運ぶ商船を護衛し、通商路を確保するのは自衛の範囲だろう。だが今回の状況は岩屋防衛相も言う通り国家の存立に関わるような切迫した事態ではない。米国のオバマ政権が賛成して成立したイラン核合意に、米国が復帰さえすれば円満に解決する話だ。
自衛隊法82条(海上警備行動)は「海上の人命、財産の保護、治安維持のため自衛隊に海上で必要な行動をとることを命ずることができる」と定めている。だが武器使用は警察官職務執行法に準じて、正当防衛等の場合以外には人に危害を加えてはならない。
ソマリア沖での海賊退治に海上自衛隊を参加させた際、2009年に制定された海賊対処法(略称)は防護の対象を日本関係船舶に限らず、海賊行為の制止に武器使用も認めている。
だが海賊は「私的目的」で行動するものと定義され、軍艦、公船に対して適用されない。イラン革命防衛隊は正規軍とは別組織だが、同国政府に属するから海賊ではない。
もし日本が米国の要請に従い、ホルムズ海峡等に護衛艦、哨戒機、給油艦などを派遣するなら、新たな立法が必要だが、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱し、イランと取引する他の諸国の企業にも制裁を加えるとし、空母や爆撃機を派遣して威嚇するのに協力するための新法を制定するならば「横車協力法」と言わざるを得ない。今回は「有志連合」に加わる国は少ないだろう。自衛隊を米軍の指揮下に入れて、日本にとって「百害あって一利なし」の行動を取らせるよりは、他の諸国と連携して米国をイラン核合意への事実上の復帰に誘導するよう努める方が良策であるのは明らかだ。
(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)