「ムバラク大統領の独裁打倒」を掲げ
エジプトで大規模なデモが起こっている
既に騒乱状態と言っても過言ではない
普段は温厚なエジプト国民が
それもイスラム教徒の多い国で
国家の最高権力に対し公然と反旗を翻すのは
世界にとっても驚きの出来事だった
こうなって見ると、ムバラク大統領の
正しくはムハンマド・ホスニー・ムバーラクの
実に30年に渡る長期政権はあまりに異常で
独裁による役人の汚職や秘密警察らの
市民の監視が日常的になってきていた
国は国民のために存在するのではなく
権力者や特権階級のためのものに変わっていった
人々は抑圧され自由にものが言えなくなり
経済悪化で生活も苦しいものになっていく
国民から非難の声が上がるのは当然だった
それを察知できなかったのは
独裁者の独裁者たる所以だろう
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する」
この格言の正しさを、また証明したことになる
権力は市井の人々の暮らしを良くするために使われるもので
権力を預かる者の保身のために使われてはいけない
熱心なキリスト教徒のムバラク大統領も
就任当初は「神のしもべとして、人々のため」を誓ったはずだ
それが格言の通り「腐敗」し、権力の亡者となったのだ
彼の間違いは人生の師を持たなかったことだ
だから変節し堕落してしまったのだ
師を持つチャンスはあったのに残念なことだ
今回の反政府デモは、ツイッターやネットの
書き込みから始まったという
初めに声を上げたのは若者だった
いつの時代も、社会を変えるのは
若者の熱と力だ。頼もしい限り
それと共に、情報が瞬時に世界に伝わる
ネット社会の恐ろしさ、凄さも感じる
良い方にも悪いほうにも
どっちにも転ぶ両刃の剣だ
さて、無政府状態に乗じた略奪行為も起こっている
商店街や銀行を襲ったり、人類の宝ともいえる
エジプト文明を展示した博物館を壊する行為は
自らを辱める無知蒙昧の輩と言うしかない
誇り高きエジプト人にも、ハイエナにも似た
こういう唾棄すべき人間がいるのかと
ガッカリするのだが、気になる情報もある
武装した略奪者の中に「秘密警察」の
人間も多くいたというのだ
武装集団はバスで現れ、無線で連絡を取り合い
実に組織的に動いていたという
「強い政権が必要」という意識を広げるため
政府が秘密警察らを使い略奪をけしかけ
治安を悪化させている可能性もあるという
それが事実なら、独裁政権の最たる愚行
もはや末期症状というしかない
独裁が終わるのは時間の問題だ
今回は軍隊の動向が鍵を握っている
先日、その軍が「平和的な手段による
表現の自由はすべての人々の権利だ
偉大なる民衆に対して軍が武力を
行使することはない」との声明を出した
この声明で決定的になった
元・国際原子力機関(IAEA)の事務局長
エルバラダイ氏が言うように
「あと数日で事態は変わる」だろう
デモの先頭に立ち独裁打倒を訴えたエルバラダイ氏は
我が母校の創立者とも対談した知性の人だ
おそらく、現時点(2月1日)で行われている
大規模デモ「百万人の行進」の先頭に立っているはずだ
多くのエジプト国民と同じく
僕も彼に希望の光を見る
ともかくエルバラダイ氏の身の安全を願う
歴史を変えるのは未だ姿を現さない“神”ではなく
現実に生きている生身の人間なのだから