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小説『フォワイエ・ポウ』6章(第35回掲載)

2006-06-02 10:05:15 | 連載長編小説『フォワイエ・ポウ』
(添付画像):"Ann Lewis from Yahoo Info."

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* 長編小説『フォワイエ・ポウ』の過去掲載分、「全34回」、、(ご参照希望の方、こちらから入れます!)

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長編連載小説「フォワイエ・ポウ」6章
      
                    著:ジョージ青木

1(客のマナーと店の方針)-(4)

「カウンター?ボックス?どちらにおかけになりますか?」
いつものかたち通りの挨拶をしながらも、直ちに客の好みの席を選ばせるように誘導し、案内する。
「私たちも、カウンターにする?カウンターがいいよね?」
やや年上のリーダー格の女性は、連れの女性の了解を取るまでもなく、カウンター席に座り始める。
さっそく本田は、2人に飲み物の注文を聞いた。
リーダー格の女性は、バーボン。当然といえば当然だが、バーボンは銘柄指定で、ジャックダニエルを注文。もう1人は、ジントニックを注文した。
「わたしたち今日初めてお伺いします。私は、真理子。こちらは、知子。漢字は、しんりの「まり」、知るの「ともこ」・・・」
本田も直ちに、自己紹介する。
「本田です。まりこさん、ともこさん、宜しくお願いします」
本田に対して、真理子ひとりがしゃべっている。
「こちらこそ、宜しくお願いします。もっと早く来たいと思っていました。ウイークデーは仕事です。それで今日、初めて来ました。日曜日にお店開いているの、知らなかった」
「はい、お盆とお正月を外せば、年中空けていますからどうぞお越しください」
「先週の日曜日、お店のぞいたのですが、団体さんで満席だったから、のぞいただけで直ぐに帰っちゃった・・・」
「あ~ ごめんなさい。先週の日曜日は、たまたま予約がありまして、結婚式の披露宴の二次会がありまして・・・」
「そうなんだ、だからあんなに賑やかだったんだ・・・」
「そう、貸切状態でしてね、予約の20数人のお客様だけでした。な~に、こんな事は2月間で1回あるかどうか、めったに無い事でして、、、。いつも日曜日は、がら空きですよ。ですから、ご遠慮なくいらして下さい」
「毎週日曜日にカラオケの練習に来ますから、よろしくお願いします」
「カラオケの練習!」
本田好みのセリフである。
「何と、この店に来ていただく理由は『カラオケの練習』、この趣旨、いいですね。是非、是非、日曜日に思いっきりカラオケの練習やってください!」
女性客2名の来店と合わせ、入れ替わりに竹ちゃんが帰ろうとした。しかし本田が彼を引き止めた。
マスターの本田と女性客との会話が一通り落ち着いた段階で、真理子は竹ちゃんにも話しかけた。本田はすかさず竹ちゃんこと竹本を女性客達に紹介する。
遠慮がちな竹本に対し、真理子から声をかけた。
「竹本さん、おねがいします。店のドアの外まで、玉置浩二の歌きこえていましたよ。すてきな声ですね、ちょっとハスキーな声で」
「うわ~、はずかしいな」
彼は、確実に照れている。
真理子は、さらにたたみかけて来た。
「どうぞもう1曲、玉置さんの歌を聞かせてくださいよ」
「そう、もう1曲分、竹ちゃんのカラオケの予約が残ってますよ!」
一旦カラオケのコインボックスに百円玉を二枚入れてしまうと、誰かがカラオケを歌わなければならない。
「さあ、竹ちゃん! 歌った歌った。ここで引っ込んではいけないよ」
遠慮する竹本に対し、本田は巧みに気合をかけ、見事に彼をその気にさせる。
恥かしがりながらも、竹本は歌った。
今夜、彼の歌った歌の中でも、最も出来の良い歌になった。竹ちゃんは乗りに乗っていた。彼自身の流儀を発揮して彼独特の真心を込め、哀調のある玉置の歌を歌いきった。結果は、すばらしい出来栄えであった。それは熱唱というより、絶唱であった。
竹本の歌を聞きながら、
(ウム、竹ちゃんは大きくなった。成長した!今までの彼とは何かが違っている・・・)
と、本田は思った。
歌の巧い下手のうんちくを言うような本田ではなかった。初めて竹本と出会った当初の彼と、今夜の彼と単なる比較の問題である。竹本自身の僅かな成長ぶりに、本田は心から拍手を送った。
(細かい事はどうだっていい。竹ちゃん、この調子でがんばれよ、前に進んでくれ・・・)
竹ちゃんの熱演に続き、女性客の2人からもカラオケの歌が続出した。
真理子は、さすがに歌が上手だった。「フォワイエ・ポウを、カラオケの練習場にしたい」といった彼女は、プロ歌手以上の歌唱力を発揮した。
約20曲のカラオケが連続し、日曜日だというのに深夜過ぎても、連中は歌い終わらなかった。

さらに2~30分が過ぎた。
「あ~今夜は楽しかった。マスターごめんなさい。でも、ちょっと歌いすぎた・・・」
「そんな事ない、だいじょうぶですよ。どうぞごゆっくりしてください」
「いいえ、今夜はこのあたりで、そろそろおひらきにします」
「・・・」
「マスター、ありがとうございました。私たちのお会計、お願いします」
真理子から声が出た。
手元の時計に視線を移せば、すでに店仕舞いしてもおかしくない時間になっている。
適度に酒を呑み進めながら思いっきりカラオケを歌い、時間を見計らって切り上げる。
飲み屋遊びを切り上げる呼吸も間合いも、いかにも場数を踏んで磨き上げられたもの。カウンターの中に立つ本田にとって、客である真理子の洗練された間合いは、お洒落と表現するにふさわしい粋なマナーであった。

<・続く・・>


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<添付画像>:「アン・ルイス」
アメリカ人と日本人のハーフとして生まれ、英語をFirst Languageとして、日本の中のアメリカという環境で育った。日本でいうところの小中学校の頃、いわゆるオールディーズポップスだけでなく、1960~'70年代にかけてのクリームやツェッペリン等をリアルタイムで聴いて育つ。その、自らが体験したROCKを、日本語で、日本のメロディーで表現するために、自らの音楽を「Kayo-Rock」と呼称し、現在のJ-POPのルーツとなった。 オールディーズポップスから学んだ、ポップでメロディアスなボーカル。 ハードロックから得たダイナミックでビート感あふれるハードなギターサウンド。 そして、女を歌う詩。これがアン・ルイスの音楽です。 最近では、ファッション、インテリア、アクセサリー、ペット・グッズと幅広い分野でデザイン&プロデュースで活躍中。 その才能をブイブイ言わせて発揮しています。 1956/6/5 神戸生まれ。
1971/2/25 シングル「白い週末」でデビュー。
おもな代表曲:グッド・バイ・マイ・ラブ、LINDA、恋のブギウギトレイン、 六本木心中、あゝ無情、WOMANなど(資料引用):"Ann Lewis from Yahoo Info."


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12 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
アップが早かったので読んで行きます。 (tono)
2006-06-02 10:37:02
アン・ルイスですか。

私はまた、ウタダヒカルの母親、藤圭子かと思いました。

藤圭子好きでしたね。聴かせる歌唱力がありました。

外れました。



竹ちゃん、成長したようですね。

人間、何か人より優れた所が有るんで、そこを見つけて褒めると変わりますよね。

たった一つでいいから自信が必要ですね。



・日曜の夜に女ふたり?

・お洒落?

・粋なマナー?

・常連客以上の立ち居振る舞い?

・ウイークデーは仕事?

・カラオケの練習??

・女性とは言え初対面で姓では無く名前を名乗る?



何者でしょうか?

ただのOLとは思えません。

本田さんも、何か得るところが有りそうな御仁です

返信する
やっぱり (刀舟)
2006-06-02 16:31:09
“自信”は大切ですね。

心からそう思います。

私も生徒に自信をつけさせるため、

問題が解けた時などの言葉の投げかけはつねに心がけています。

それにしても、

2人の女性と本田さん、

見事なタイミングで竹ちゃんを乗せましたね。

絶妙です。

こういった1つ1つの経験が、

竹ちゃんの自信につながり、

もっともっと成長することでしょう。

わかったようなことを書きましたが、

合ってるでしょうか?



PS アンルイス…

   あまり聞いたことはありませんが、

   若いとき、無理して“六本木心中”を良く歌いました。
返信する
Unknown (TS@捻くれ者)
2006-06-02 19:46:17
竹ちゃん。

二人のお客さんの前で歌えて更に自信がついたでしょうね。



10数年前のカラオケはお金入れてましたね。

カラオケボックスでも100円玉入れてました。

スナックだと小さなおもちゃのお金がカラオケ券になって1,000円で買うことが多かったですね。

余るとキープしてるボトルに張って帰ってました。



アンルイス。

以前ストップ・エイズを呼びかけた時だと思いますがアルバム(CD)にコンドームがついてる物を持っております。



PS:明日、明後日と地元祭礼のためPC開けられないと思います。
返信する
tonoさん・・ (エセ男爵)
2006-06-02 21:17:08
藤圭子、歌はうまいし、いい女!

しかし、どうも彼女のフアンにはなりきれませんでした。

わたしは、

本当は「杏里」の画像を探したのですが、さきにアンルイスが出てきた。

素直な歌い方をするので好きです。

最近も活動をしていると聞き及びますが、すべからく20数年前の「記憶」のみ・・・



>竹ちゃんの成長・・

見届けます!

褒めてやります!

おまかせください・・・



さて、

>日曜の夜に女ふたり・・・

描ききります!

来週火曜日をお楽しみに!!

二輪オフロードレース観戦、羨ましいです!

でも、道中、

おきをつけて・・・
返信する
刀舟さん・・ (エセ男爵)
2006-06-02 21:25:07
コメントありがとうございます。

「自信の大切さ」!

過信はダメですが、自信は人間の成長に絶対に必要だと思います。

そのためには、

先輩が後ろから、「ポーン」と、方と背中を押してやること・・・

これが今の教師に「欠けている」のではありませんか?(これ、刀舟さんへの質問です)

そして、

>2人の女性と本田さん、

>見事なタイミングで竹ちゃんを乗せましたね。

>絶妙です。

・・・・!

2名の女性が「うまかった」のです。

こういうところで(女に)助けてもらえるのが「本田のパーソナリティー」か?

(そうありたいモノです!)



PS:

アンルイス= "Goodby my Love",,,,

ハワイアン調子の(上記)「この一曲!(絶品)」のみです・・・

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TSさん・・ (エセ男爵)
2006-06-02 21:31:04
コメントありがとうございます。

竹ちゃん、

この2人の女性との出会いで、大きく変わります。

(次回をお楽しみに・・・)

カラオケの歴史。

当時フォワイエ・ポウ(想定)で、200円。

大きな副収入?でした。

余ったら現金を「ボトル」にくっつけているお店もありました。

アンルイスのその後の活動、ほとんど知りません。

あまり細くもなくちょっと太目の足元が綺麗で、可愛い感じのハーフ全盛の時代。そんな時の(清純以外何物もない?)アンルイスの思い出、今尚まぶたに焼き付いています。



返信する
アンルイス (yuyu)
2006-06-02 22:14:56
私はアンルイスの歌は、あまり聴いた事はないですが…やっぱり男性に人気があったんでしょうね(^^ゞ

ぽちっ♪





返信する
Unknown (あすとろ)
2006-06-03 01:50:41
竹ちゃんこれから自信をつけていけそうですね。二人とのかかわりがさらにどう影響するのか楽しみです。

(・・||||rパンパンッ
返信する
yuyuさん・・ (エセ男爵)
2006-06-03 12:34:27
コメントありがとうございます。

ムム??

そうでもないと思います。

30代半ば以降の「それなりの女性」からは、絶大なる「女の評価する女性の魅力」をお持ちである。と、伺っております。

ならば、

yuyuさんは、もっとお若いジェネレーションに所属されているか。

と、思います。

それとも、

そのうちアンルイスは(このまま)消滅するか?

とにかく、

(私論)

数ある「アンルイス歌唱」の中、ベストワンは?

と、聞かれれば、

goodby my love,,,

上記、この一曲(左・右・上・下・なし!)に、尽きます。
返信する
あすとろさん・・ (エセ男爵)
2006-06-03 12:36:42
コメントありがとうございます。

世のオトコ、

誰しも「竹ちゃん的要素」を持っていると思います。

先輩、仲間、勇気つけてやって「もっと大きな人物」にしてやりたいものです。

小説で、彼を描いてみたいと思います。

是非、続けて応援してください。

宜しくお願いしいます。
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