たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

自然災害とローン <「自然災害債務整理ガイドライン」>を読みながら

2018-10-01 | 災害と事前・事後

181001 自然災害とローン <「自然災害債務整理ガイドライン」>を読みながら

 

台風24号が和歌山に上陸した後、一気に日本を縦断して、たしか上陸前は時速25kmから40kmくらいまで次第に早くなっていたのが、上陸後はどんどんアクセルを踏み続けたかのように北海道に達したときは100km近くになっていたかと思います。

 

私も昨日は昼頃には紀伊半島上陸と思っていたのが、上陸は午後8時を過ぎていましたか。風速が25m以上となったのは9時過ぎていました。その後はそれなりに雨戸をならすほどの暴風でしたが、思ったほどではなく安堵しました。実際、今朝いろいろと聞いてみても当地周辺ではあまり被害がなかったようです。とはいえ日本列島を縦断しているので、各地に相当な被害を与えたようです。

 

それでも台風24号の被害は西日本豪雨や北海道地震、台風21号に比べると、それほどでもなかったようで安堵します。でも豪雨と地震は、たしか災害救助法の適用になったかと思いますが、被災地では甚大な被害を受けましたね。

 

復旧作業がはかどらず皆さん大変な状況で、台風の連続パンチを受け泣き面に蜂ですみませんね。同情いたします。被災地の皆さんの状況を見ながら、ブラックアウトや水道停止などになったらどう対応できるか、浸水や建物倒壊、家族や近しい人の死亡に直面したらどうしょうかとふと思うのです。自分が死亡すること自体は、それはいつ起きるかも分からないことなので、考えるまでもなく仕方ないことと思うのです。それ以外の事態のときは心構えができているか自問自答しても答えは簡単ではないです。

 

そんなとき偶然、<「自然災害債務整理ガイドライン」>というのが、何かを調べているとき目にとまりました。弁護士会でも災害対応のさまざまな準備をしていますが、具体的で実践的な措置となると行政が担うことが求められていますし、これまで問題が発生した後にそれに対応する措置が講じられてきたと思います。

 

被災したときはまず、命に別状がないかとか、怪我はないかとか、病気にならないかとかが一番の先決ですね。そして次は衣食住ですか、その後復旧。で落ち着いたときはたと気づかされるのは、ローンの問題でしょうか。たいていの人は住宅ローン、車ローン、クレジットなど、さまざまなローンを抱えているでしょう。でも甚大な被災地では、仕事場を失ったり、収入が激減したりすることも起こりますね。被災前の収入を維持することが困難でローンの支払いもできなくなる人もいるでしょう。

 

政府広報オンラインで発表されていたのがそのガイドラインでした。私自身、被災地での法律相談とか対応したことがなかったので、自分でも参考になるのかと思い、読むことにしたのです。

 

ローンの額が増えて約定通りの返済ができなくなれば、破産や個人再生が法律で用意されていますが、ブラックリストにのり信用を回復するのが容易ではないですね。いまクレジットカードを使えないとかローンを組めないというのは日常生活や仕事をする上でも厳しいですね。

 

それで東日本大震災を契機に、甚大な影響を及ぼした自然災害の場合に、ローン債務者に救済制度を用意したと言うことでしょう。

 

そこではまず、<1.大規模な自然災害でローンの返済が困難になったときは?>と条件付きで、ローン返済の特例措置を用意しています。

 

<このガイドラインを利用することによって、住宅ローン等を借りている被災者が、破産手続きなどの法的な倒産手続によらず、銀行などの金融機関との話し合いにより、ローンの減額や免除を受けることができます。>

 

利用できる対象は<平成27年(2015年)92日以降に「災害救助法」(※)が適用された自然災害の影響>を受けた人で、ローンの返済ができなくなったか、近い将来それが確実と見込まれる人です。事業者個人はいいのですが、法人は除外されています。

 

上記基本条件に加えて次の要件を満たすことが必要とされています。

<•災害が発生する以前に、対象債権者に対して負っている債務について期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと

•このガイドラインに基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

•債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること>このほか「など」もあるのでちょっと要注意ですね。

 

最初の要件は仕方ないかもしれません。次の要件は少し厳しすぎる感があり、これは金融機関との交渉事項でしょうから、厳密にやりすぎると救済される人が極めて限られることになりかねません。資産評価や収入評価の点で弾力的な運用を期待したいものです。

 

最期の要件も、被災当初は事業価値や将来性を見込むことは容易でなく、見方次第で簡単に再建可能性を消極的に見てしまいかねません。これこそ事業者の意欲や計画の合理性を丁寧に見てあげてもらいたいものです。

 

以上の要件を満たせば、ガイドラインを利用して債務整理(一部債務免除)ができます。

<「自然災害債務整理ガイドライン」により、債権者との合意に基づき債務整理を行うことで、こうしたデメリットを回避しつつ、裁判所の特定調停を利用して、債務免除を受けることが可能となります。>

 

この制度のメリットとデメリットがあげられています。

債務返済が困難になったときは、法的手続として、破産と個人再生がありますが、これらには先に挙げたように次のデメリットがあります。

<それらを行うと官報に債務者の名前が記載され、個人信用情報として登録されてしまうため、新たに借入れをしたり、クレジットカードをつくったりすることができなくなります。>

 

メリット1は、上記のデメリットがないので、新たな借入・クレジットカードの利用や新規会員にもなれます。

 

メリット2は<国の補助により弁護士等の「登録支援専門家」が無料で手続を支援します。>そうなんですね、弁護士などが登録支援専門家になって、無料で利用できるのです(知らなかった)。

 

メリット3は<財産の一部をローンの支払いに充てずに手元に残すことができます。>

<預貯金などの財産の一部を「自由財産」として残すことができます。>ただ、この自由財産自体は、法的手続でも一定額認められていますので、それが法的手続に比べてどのくらい認められるかによっては財産的なメリットは少ないかもしれません。被災者ですから、大目に見て欲しいものです。

 

<ガイドラインを利用した手続の流れは>まず借りている金融機関に<自然災害債務整理ガイドラインに基づく手続>の着手申し出をすれば、後は金融機関から同意が得られれば(これは基本的に上記の条件を満たせば同意するのが本来だと思います)、登録専門家に手続依頼でき、後はその支援を得てとなっていますが、専門家が債務整理の申し出や調停条項案の作成、提案等に加えて、簡裁に特定調停申し立てまでやってもらえるのだと思います。

 

着手申し出の際、同意を得ることが一つ大きなネックになるでしょうから、事前に弁護士など専門家のアドバイスを受ける方策も必要ではないかと思います。いま各地の弁護士会が災害時の弁護士の役割・対応策に取り組んでいる中には、こういったことも含まれているのでしょうね(私も名目上の委員ですが活動内容がフォローできていません)。

 

今日は私の勉強の時間でした。これでおしまい。また明日。


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