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たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

森林経営管理法(その8) <選ばれる林業経営者とは?>

2018-12-10 | 農林業のあり方

181210 森林経営管理法(その8) <選ばれる林業経営者とは?>

 

そろそろこの新法の話は一旦、終わりにして別の話に移ろうかと思ったのですが、今日も終日仕事に追われ、あまり考える気力もないので、簡潔にこの連載を続けて、今日で一時締めて、また政省令が出そろった段階で、今度は少し整理して書いてみようかと思います。まあ今回は少しでもこの新法に関心を抱いていただければと思いながら書いています。冗長で内容がないので、かえって関心を遠ざけたかもしれませんが、その場合はいつか捲土重来?をと思っています。

 

さて<森林経営管理制度(新たな森林管理システム)について>を見ていて、市町村の役割も大きいですが、林業経営者の役割こそ、この新法の盛衰を決めるかもしれないように思えるのです。むろん、森林所有者こそ重要なステークホルダーですが、知事、市町村、林業経営者がうまく連係しないと新法が有効に機能しないことは確かですが、経営管理実施権の主体である林業経営者が適切かつ効率的に経営管理を行わないと、市町村がいくら手綱さばきをうまくやっても経済的にも環境的もマイナスとなり、むろん森林所有者にもそっぽを向かれ、地球温暖化対策も含め公益機能が阻害されることになるでしょう。

 

さて、上記のウェブ情報12頁では<意欲と能力のある林業経営者の選定>と銘打って、その「意欲と能力」ある主体をどのような手続と基準で選ぶかを示しています。そこでは<経営管理実施権の設定手続き>と呼んでいます。

法文>では、知事がゾーン毎に公募し(361項)、応募者から一定要件に適合する者を絞り、その情報を整理・公表を行い(同条2項)、それを受け市町村がその中から選定することになっています(同条3項)。公募段階では民間事業者ですが、経営管理実施権の設定を受けると本法の林業経営者になります(374項)。

 

では本法が定める林業経営者になるに値する要件はというと、法362項に次の要件適合性を求めています。

一 経営管理を効率的かつ安定的に行う能力を有すると認められること。

二 経営管理を確実に行うに足りる経理的な基礎を有すると認められること。

 

これだけだと抽象的ですね。法文では361項、2項いずれも、省令で定めるという規定になっていますが、それが区域のことか、公募のことか(1項)、法定要件のことか、応募内容、整理・公表のことか、などなにを対象としているのか必ずしも分明ではありませんので、省令をみて検討することになるかと思います。

 

通常、省令では実体的な内容についてまで踏み込むことがなく、手続き的な事柄が対象となりますので、私見では、上記の法定要件はあまり内容が明確にされないかもしれないと危惧しています。

 

とはいえ、応募内容について一定の書類提出を求めることで、「効率的・安定的に行う能力」を確認することは可能かと思います。たとえば宅建業者のように決算書類の提出とか、従業員情報とか、業務実績とか、ある程度判断できるでしょうね。林業経営・作業に必要なさまざまな資格保有者の情報提供も当然、必要になるのでしょう。

 

市町村としては、知事から提供を受けた公表資料から、経営管理実施権を設定するのに適切な業者を選定すればいいので、「意欲と能力のある」の判断はある程度、知事の絞り込みでやってもらっているから、安心して?選べるともいえます。とはいえ、森林所有者の理解を得ないといけませんから、当該森林ゾーンに適した林業経営者といえるかの判断はやはり市町村の責任になると思われます。

 

ところで、上記2要件の1号については、ウェブ情報では「考慮事項」として、

    森林所有者及び林業従事者の所得向上につながる高い生産性や収益性を有するなど

    主伐後の再造林を実施するなど林業生産活動の継続性の確保

を掲げています。

 

①の所得向上とか、②の継続性確保とか、当然の内容とはいえそうですが、法文上はそこまで明記されていないので、省令の前触れとみるのでしょうか。いやいや当然のことを書いたまでというのでしょうか。

 

この点、<Q&A>15頁では、回答として

 ① 経営改善の意欲の有無

素材生産や造林・保育を実施するための実行体制の確保(関係事業者との連携も可)

伐採・造林に関する行動規範の策定(主伐後の再造林の確保)等を考慮する事項と考えており、都道府県が地域の実情に応じて判断すること

とより踏み込んだ内容になっています。

 

③も当然の内容でしょうけど、いずれも法文では明記されていないので、省令で補充するのでしょうか。

 

市町村が「公正な方法により選定」(363項)となっていますが、この公正な方法というのは具体的に基準なり指針を設けないでよいのでしょうか。おそらく通知で補充するのでしょうかね。このままだと、まさかとは思いますが、市町村が競争入札みたいなことをするかもしれませんが、それは本法の趣旨に添わないおそれがありますね。

 

そんなことをあれこれ考えながら、一時間が経過しました。

 

当分の間、この新法の話はこれで打ち止めとします。また明日。


森林経営管理法(その7) <森林所有者はどうなる?>

2018-12-09 | 農林業のあり方

181209 森林経営管理法(その7) <森林所有者はどうなる?>

 

なんの準備もせずにいつも書き出しますが、そのためいつも前置きを書きながらどう進めようかと思案するのです。今日もそうしようかと思いつつ、それ自体を考えるのもしんどい感じで(これは昨日の歩きの影響もあります)、即座に始めます。ということは何がでてくるか、私も分かりません。

 

7回目ですが、<本法>の狙いともいえる森林所有者に焦点を当てようかと思います。といってもすべての森林所有者を念頭に置いて作られたものでないことは明らかです。といいたいところですが、条文上は必ずしもはっきりしません。

 

そこで<Q&A資料>では<本法律は、森林所有者が自ら責務を果たして経営管理を行えない場合の措置を定めたものであり>と限定しています。そして<自伐林家などが自ら施業して適切に経営管理されている森林については、市町村が権利の設定を行う対象とはなりません。>と自伐林家などが適切な経営管理している森林を対象外としています。おそらく政省令か通知で明確にするのでしょうね。

 

しかもおそらく初めて森林所有者の責務として、3条1項で「森林所有者は、その権原に属する森林について、適時に伐採、造林及び保育を実施することにより、経営管理を行わなければならない。」と明記しました。

 

平成21年農地法改正で創設された2条の2の「農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。」を思い出させる規定です。

 

とはいえ、<Q&A資料>では<「林業経営に適した森林」>について、経営管理が適切に行われていない場合に経営管理権設定を含むその集積計画の作成を市町村に義務づけていますが、そもそも<「林業経営に適した森林」>という用語が法文になく、<Q&A資料>だけで定義づけるのもどうかと思います。少なくとも政省令で明確な基準を設けてはどうかと思うのです。実際は各地で異なるだけでなく、さらにいえば山ごと違う条件になるので、容易でないかもしれません。むろん民間事業者によっても異なりますね。となると、森林所有者だって、一体どんな森林でどんな責務を負うのかはっきりしないと不平を言うかもしれません。なんとなく循環論法みたいになってしまいました。

 

ただ、ここは大事なところですので、しっかり森林所有者同士、市町村や民間事業者などと意向調査を通じて明確にしていく作業が必要ではないかと思います。

 

森林のある山であれば、しっかり手入れをしている人と、そうでない人で、山の景観が大きく違います。むろん最近では入会利用がされてきた時代と異なり、兼業農家が増え、山に滅多に入らなかったり、他方で専業林家も大規模林地を持っているところ以外ごくわずかでしょう。

 

新法による意向調査を契機に、もう一度森、山への意識を見直してはどうかと思うのです。とりわけ元の里山であった森林であれば、まだ手入れをしてきた世代が残っているでしょうから、まだ新法の制度が生かされるチャンスがあると期待しています。

 

ところで、<Q&A資料>を見ていると、計画に同意した後、森林所有者が死亡したらどうなるのかといった質問がありますが、相続や売却により計画自体、影響を受けないこととなっています(14頁 Q2-14 )。他方で、経営管理権は市町村と森林所有者(承継した)、経営管理実施権は市町村と林業経営体の合意で取り消すことができるとしています。これはそもそもそれぞれの実質的な合意で成立している権利の設定ですから、当然かもしれません。それと権利の承継の関係が曖昧ですが、経営管理実施権となると林業経営体の利益を一方的に侵害することができないので、承継した権利者としても、受忍せざるを得ないでしょう。

 

肝心の所有者不明の問題と確知所有者不同意の問題に入る前に一時間となりました。これが新法の究極の狙いの一つ?といってよいと思うのですが、この手続自体は、経営管理が適切に行われていない森林という認定が合理的かつ適正になされていれば、さほどやっかいな問題にはなりにくくなっているように思えます。所有者不明の「探索」といった奇妙な用語はともかく、所有者が不明という調査自体は新法では簡易化されているので、市町村側に大きな負担はないと思います。しかし、不適切な経営管理森林をどのような基準・根拠で認定したかは、今後審査手続、さらに問題が紛糾すれば行政不服審査や行政訴訟で議論されることになりかねません。

 

憲法の財産権保障との関係でも、法文自体が必ずしも明確でないため、政省令で相当程度合理的な目安を示していないと、市町村の裁量に委ねるのでは問題とされる可能性があると思うのです。

 

ここは重要な問題ですので、こういった安直な話にしないで、また別の機会に考えてみたいと思います。

 

なお、災害対応のための緊急時の措置としては、「第五章 災害等防止措置命令等」が重要です。

 

42条1項で、「災害等防止措置命令」が発令され、さらに代執行まで規定(43条)されています。

 

それは、経営管理が適切に行われていない森林といった以上に明確にされています。

「伐採又は保育が実施されておらず、かつ、引き続き伐採又は保育が実施されないことが確実であると見込まれる森林」と荒廃したとか放置された森林という表現が当たりますね。

 

それは次のような災害の危険性がある場合です。

一 当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させること。

二 当該森林の現に有する水害の防止の機能に依存する地域において水害を発生させること。

三 当該森林の現に有する水源の涵養の機能に依存する地域において水の確保に著しい支障を及ぼすこと。

四 当該森林の周辺の地域において環境を著しく悪化させること。

 

これは<要間伐森林制度>をより条件を絞り込み、緊急措置など手続の迅速化を図ったものでしょうか。

 

ちょっと時間がオーバーしてしまいました。途中ですがおしまい。また明日。


森林経営管理法(その6) <Q&A資料から経営管理権実施権配分計画を読み解いてみる?>

2018-12-08 | 農林業のあり方

181208 森林経営管理法(その6) <QA資料から経営管理権実施権配分計画を読み解いてみる?>

 

農地制度について平成21年の法改正は平成の大改革とか言われていたと思います。森林についても似たような印象を持っています。たしかに一定の制度改革効果はあったと思いますが、耕作放棄地や森林の荒廃が減ったかと言われるとさほど顕著な変化を感じません。

 

しかし今回は違う、というような制度の概観を感じますが、どうでしょう。矢継ぎ早にいろんなところで「大改正」なり「新制度」が生まれていて、どうもトリガーのキーワードは適切な管理が行われていないというところで、あらゆる分野というか、少なくとも農林漁業の第一次産業分野では特徴付けられるように思えます。

 

漁業法改正も毎日社説<70年ぶりの漁業法改正 地元への目配りを十分に>などで、<漁場を「適切かつ有効に活用している」>かどうかが問われ、否となれば漁協の優先権を認めず、企業参入に門戸を開く方向が示されています。

 

農地についても<農地制度>で詳細が紹介されていますが、農地法や農業委員会法など関連法が平成27年改正で、さらに農地所有適格法人など第三者による利用促進にアクセルペダルが強力に押されてているようです。

 

私自身、以前からこのブログで時折指摘してきたとおり、所有に責任(まあ責務が無難でしょうけど)が伴うという立場ですので、所有者であるかどうかに関心がないとか、自分の土地建物を適切に管理・利用していない場合社会的な責任が伴うべきではないかと考えています。漁業権についても先祖伝来の受け継いだ権利だからと行って、乱獲するのも問題ですが、放置するのも問題だと思っています。

 

とはいえ、その「適切かつ有効な活用」とか、「適切な経営管理」とかいった抽象的な基準をどのようにしてステークホルダーの意見を反映させながら、透明な手続で、公正さを保持することができるかが、むしろ重要ではないかと考えます。と同時に、このような試みは、過去例がないのですから、モニタリングをしっかり行い、政省令などで基準・手続を明確にしても、実際に問題があれば手直しすることにとりわけ配慮してもらいたいと思うのです。むろんこれまでの法改正でもそのような配慮が行われてきたからこそ、頻繁に改正もされてきたと思いますが、どうも上滑りしているような部分もあるのではと思う部分もあります。

 

また饒舌な前書きになってしまいました。いつものことなので容赦ください。

 

さて今日の本論ですが、<Q&A>を参考に、<経営管理権集積計画の作成事務>を受けた<経営管理実施権配分計画の作成事務>(同17頁)を取り扱います。この間に重要な<民間事業者の募集>がありますが、今回は飛ばします。

 

<経営管理実施権配分計画>の内容については、<森林経営管理制度(新たな森林管理システム)について11頁で、<経営管理権集積計画(経営管理実施権配分計画)の作成>と同一に扱い、その違いを明確にしていません。ただ、12頁の<森林所有者に支払う金額の算定方法の例>では、<林業経営者は、木材の販売収益から伐採等に要する経費を差し引いた額を森林所有者等に支払うこととする。>とあることから、主伐か間伐か、施行期間、経営採算性などはこの計画の核心になると思われます。

 

では法文はどうなっているかを確認しましょう。

 

「第四章 民間事業者への経営管理実施権の配分(第三十五条―第四十一条)」が相当します。他方で、「第二章 市町村への経営管理権の集積」で4条ないし32条で詳細に記載されています。

 

352項で、「経営管理実施権配分計画」に掲げる法定事項として次のものをあげています。

一 経営管理実施権の設定を受ける民間事業者の氏名又は名称及び住所

二 民間事業者が経営管理実施権の設定を受ける森林の所在、地番、地目及び面積

三 前号に規定する森林の森林所有者の氏名又は名称及び住所

四 民間事業者が設定を受ける経営管理実施権の始期及び存続期間

五 民間事業者が設定を受ける経営管理実施権に基づいて行われる経営管理の内容

六 第二号に規定する森林に係る経営管理権集積計画において定められた第四条第二項第五号に規定する金銭の額の算定方法並びに当該金銭の支払の時期、相手方及び方法

七 市町村に支払われるべき金銭がある場合(次号に規定する清算の場合を除く。)における当該金銭の額の算定方法及び当該金銭の支払の時期

八 第四号に規定する存続期間の満了時及び第四十一条第二項の規定により同項に規定する委託が解除されたものとみなされた時における清算の方法

九 その他農林水産省令で定める事項

 

この6号が上記に指摘した<森林所有者に支払う金額の算定方法の例>に当たるものかと思いますが、同号でも引用されています425号の記載とほぼ同じですので、その違いは条文の規定からはわかりにくいですね。

 

実際、これもやり方によるとは思いますが、条文の記載のように簡単に収益から経費を控除して配分といった簡易な例は希だと思われます。C級材だとあまり問題ないでしょうけど、実際は森林の中はいろんな意味で複雑でしょう。具体的な計算は所有者、伐採林、売価など個別に識別すると、相当複雑ですので、どのような工夫をするかは林業経営体の力量と森林所有者との協議によるのかもしれません。

 

ところで、6号が引用する425号を読むと、利益配分は「販売収益から伐採等に要する経費を控除してなお利益がある場合」としていますので、さすがに林野庁もこの計画で必ず利益があるとまでは考えていないようです。そうありたいと思っているでしょうけど、経営管理というのは、市場動向や経費などの物価動向に大きく左右されるわけですから、利益がない、収支トントンとか、場合によっては赤字(それはないようにするでしょうけど)とかもありうるという、現状を踏まえた制度になっているようです

 

いずれにしても「経営管理権集積計画」も「経営管理実施権配分計画」も、市町村が作成主体です。ただ、計画について同意を必要とする相手が、前者は森林所有者(45項)、後者は選抜された民間事業者(353項、実質は林業経営者でしょうか)となっています。後者について森林所有者の同意を必要としないとしつつ、Q&Aでは<森林所有者に事前に情報提供することをお勧めします。>としています。当然ではないかと思うのですが、法文に明記されていないのはどうしてでしょう。また、森林所有者の中で配分利益が思ったより少ないとか言ったらどうするのでしょう。それは一部不同意の取扱になるのでしょうか。

 

なお、前者の計画は、厳密には所有権以外でも「地上権、質権、使用貸借による権利、賃借権又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者の全部の同意」を必要としています。

 

条文を読みながら書いていますので、一時間でもなかなか進みません。今日も中途ですがこの辺でおしまい。また明日。


森林経営管理法(その5) <Q&A資料から経営管理権集積計画を読み解いてみる?その2>

2018-12-07 | 農林業のあり方

181207 森林経営管理法(その5) <QA資料から経営管理権集積計画を読み解いてみる?その2>

 

昨日に引き続き、経営管理権集積計画なるものを考えてみようかと思います。<Q&A>でこの森林経営管理制度が少しずつ見えてくる感じですので、今日もこれを見ながら検討します。

 

Q&Aでは、最初に「林業経営が成り立つ森林」が取り上げられ、次に<経営管理が適切に行われていない森林>に対象が限定されるかと行った質問になっています。これは一体どういうことでしょう。

 

森林経営管理法>の条文(そろそろ条文解釈のさわりを少しずつ取り入れようかと思います)には、この<経営管理が適切に行われていない森林>という用語が一切ありません。ただ、2条3項で、「この法律において「経営管理」とは、森林(森林法第五条第一項の規定によりたてられた地域森林計画の対象とするものに限る。第五章を除き、以下同じ。)について自然的経済的社会的諸条件に応じた適切な経営又は管理を持続的に行うことをいう。」とありますから、本法では「経営管理」(しかもその定義自体に適切性を必須要件にしていますね。)をキーワードにしていることはよくわかります。

 

とはいえ、法文条では当該計画の対象を<経営管理が適切に行われていない森林>に限定する規定は明記されているとはいえません。

 

「経営管理権集積計画の作成」を定めた4条以下でも、そのような明確な定めはありません。4条1項で、「当該市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合」ということで権利主体である市町村への集積が必要かつ適当ということを定めているものの、<経営管理が適切に行われていない森林>という条件付けは法文からは明らかとはいえないと思います。

 

一体、国会ではどのような審議をしたのでしょうかね。議員に提供されるベーパーは要約されたものでしょうし、条文個々に当たる議員は多数の議案検討をかかえているので、よほどでない限り、レアではないかと思います。

 

新制度成立の背景は、経営管理が適切に行われていない森林が全国に多数あり放置できない状況ということではないかと思います。とはいえ「経営管理」という用語自体、それほど成熟した概念でなく、法文の規定もトートロジーのように見えますね。

 

今後政省令、あるいは通知でどの程度明確になるのか、期待したいです。そうでないと出発点がはっきりしないことになりますから。

 

またこの回答では、<本法律は、経営管理が行われていないことで公益的機能の維持等に支障が出る森林の経営管理を市町村に集積することを目指している>となっていますが、1条の目的規定ではそれほどこの点が明確とはいえません。

「この法律は、・・・林業経営の効率化及び森林の管理の適正化の一体的な促進を図り、もって林業の持続的発展及び森林の有する多面的機能の発揮に資することを目的とする。」とあるだけであって、はたしてそこまでいえるのかなと思うのです。いやいや、林野行政においては当然のことというのかもしれませんが、条文の文言だけからはそこまでいえるか少し疑問です。

 

公益的機能の維持等ということと、経営管理が適切におこなわれることとは同じではないですね。実際、その対立・調整の場面が当然あるわけですから。Q2-1では「林業に適した森林」否かの判断について、現時点では抽象的な基準だけで、結局、<民間事業者が再委託を受けない森林は経営的に適さない森林であると判断することもできると考えています。>ということですから、民間ベースで採算がとれなければ、計画対象とならないことを前提にしているようです。すると、この場合の経営管理の適切さというのはあいまいな印象です。

 

このあたりは政省令段階でより明確になるのでしょうか。どの部分が政省令に委ねられるのかいまのところよく分かりませんが、<制度概要22頁では10月ないし12月時点では政省令に加えて通知ができあがっているスケジュールです。いまのところ報道には上がっていないようですし、むろん林野庁のウェブサイトも変わりありません。

 

別に首を長くして待っている分けではありませんが、でもできあがるのを期待したいところです。

 

ところで、計画対象の森林になるか否かという点で、<人工林のみではなく天然林や放置竹林、原野等も意向調査の対象となるのか。>という質問への回答は基本、人工林をメインにおいているようです。

 

<市町村の判断により、放置竹林や天然林で意向調査することは可能>としつつ、市町村の判断に委ねています。興味深いのは天然林を取り上げ、<現状のままでも適切な経営管理が行われるような手入れを必要としない>ものは除外してもよいとしている点です。この文脈からは、天然林も対象としつつ、<適切な経営管理が行われるような手入れを必要としない>ものは除いてよいともとれます。天然林だから修飾語のようなことは当然にはいえないわけですから、やはり市町村は対象とする必要があるのではと思うのです。そうあって欲しいという思いもありますが。

 

他方で、放置竹林は完全に市町村の判断に委ねる趣旨ですね。しかし放置森林こそ大変な問題を抱えていますし、公益的機能にも支障を来したりしていると考えますので、これを市町村の判断に委ねることでよいかは考えものです。法文はなにも限定していませんので、林野庁がこういった解釈をしてよいのか気になるところです。

 

ただ、放置森林まで当然に計画対象とすると、それこそ意向調査やその後全体の計画推進がより複雑になるかもしれません。現時点では、このような理解にも一応の合理性が認められるかもしれませんが、もう少し利害得失を含め議論して説明責任を果たしておいた方が望ましいと思うのです。

 

他方で、原野や草原などは、除外してもとくに問題は少ないでしょう。

 

そろそろ一時間になりそうです。読みながら書いていますので、中身を理解するのに時間がかかり、進みません。今日もこの程度で終わりとします。また明日。


柿と人と農 <甘熟富有柿 「夢」と「希」最高級柿選果 九度山>などを読みながら

2018-12-07 | 農林業のあり方

181207 柿と人と農 <甘熟富有柿 「夢」と「希」最高級柿選果 九度山>などを読みながら

 

冬は柿ですね。当地に来て、毎日のように一個食べることが自然な感じになりました。他のフルーツはあまり関心がないのですけど。夏のメロンもスイカも。ナシやミカン、イチゴなどなどその他多彩なフルーツ天国日本ですが、あまり興味をそそらないのです。出されると残してはいけないので食べる程度です。当地にやってきてそんな感覚になったように思います。なぜでしょう?私自身がわかりません。

 

さてそんなくだらない話は別にして、当地は柿王国です。ですので農家も先駆けを狙って、いろいろ工夫するようです。商品差別化、高級品質化は当然でしょうね。

 

今朝の毎日紙面では「最高級柿を初選果」との見出しで取り上げていました。ウェブ記事では<甘熟富有柿「夢」と「希」最高級柿選果 九度山・JA紀北かわかみ /和歌山>と少し要約版としてアップしています。

 

先日のブログで紹介した九度山が舞台です。<九度山町特産の富有柿の最高級ブランド「甘熟(あまじゅく)富有柿」の今年の初選果が5日、町内の「JA紀北かわかみ マルい選果場」であった。>

 

さて初選果された高級ド品は、<初日に集荷された約1・5トンの中から厳選した最高品質の「夢」約20箱分、これに次ぐ「希(のぞみ)」約60箱分を詰めた。>とのこと。

 

では差別化のためにどのような工夫をしているかの一端は、<「夢」は木に実ったまま一つずつ袋を掛け、通常の柿より1週間~10日間長くおいて完熟させる。糖度18度以上で、大きい実は5Lサイズ(410~440グラム)ある。>大きさも極めてビッグです。

 

さらに選別はセンサー+プロが品質管理を行っているのです。<選別では、センサーを使って糖度や色付き具合を調べ、JA職員や甘熟富有柿部会の生産者らがさらに一つずつ見栄えの良しあしなどでより分けた。>

 

その結果、とても高額な品物として販売されるのです。<夢は大阪市内の市場、希は関東方面に出荷され、店頭では1箱(6~9個)7000~8000円で販売される。【松野和生】>

 

で、私がこの記事を取り上げたのは、<甘熟富有柿部会>の部会長であるNさんを知っているからで(紙面記事で掲載)、Nさんは地元に有名人が来たりすると説明したり柿畑を案内したりするそうです。

 

そのNさんの風貌がすごいです。私より若いのですが、まあ真っ黒焦げといっちゃ失礼ですが、これぞ百姓魂というか、炎熱の下でどれだけ苦労して丁寧に柿を育ててきたかが、その姿・顔・表情からすぐにうかがえるのです。Nさんのような柿農家がいる限り、九度山も当地の柿生産も期待できると思うのです。

 

そういえば1024日付け毎日記事<農と食・地域に根ざして/4 JA紀北かわかみ 宮崎卓郎組合長(62) 生柿の米豪輸出、本格化 /和歌山>では、今年から生柿の本格的な輸出を始めたそうです。

 

宮崎組合長が率先して、新たな市場を開拓して、当地の柿の魅力を海外の顧客層を掴もうとしているのでしょう。私は海外生活した狭い経験から、十分見込みがあると思うのです。北米はもちろん豪州の人たちもフルーツが好きですし、柿の本当の味を知るときっと飛びつくと期待しています。

 

宮崎組合長の話でしょうか、<私たちが手がける事業で皆さんにいま一番関心を持っていただいているのが、管内の主力産品である生柿の輸出でしょう。昨年は米国、今年は豪州と、どちらも国産柿として初の試みです。米国へは解禁に合わせて収穫期が遅めの富有柿0・8トンを輸出しましたが、現地到着が年明けになってクリスマス商戦には間に合いませんでした。今年は収穫の早い刀根早生柿を送り始めており、計10トン余りを見込んでいます。黄色っぽいカボチャで作るランタンのイメージを柿に重ね、10月末の「ハロウィーン」向けにアピールします。>

 

少しの間、宮崎組合長とある会でご一緒しましたが、業務多忙で別の方が参加するようになり、組合長はこういった新機軸を打ち出しているわけですから、多忙この上ないでしょうね。

 

当地の農業の将来については、AI化や新規担い手支援などいろんな方策に取り組んでいるようです。

<農業一般にいえることですが、課題となるのが農家の高齢化と生産用地の減少です。柿についても消毒や収穫作業の大きな負担を減らすため、機械による省力化や作業人員の確保策など検討を進めています。また生産用地を維持するため、休耕地を貸したい人と新たに栽培を希望する人をマッチングさせるなどの事業に取り組んでおり、昨年度は計95件(計18ヘクタール)の成約につなげました。これからもさまざまな困難を感じている生産者をJAがサポートしていきたいと考えています。【聞き手・松野和生】>

 

当地の農業についてもいつか、書いてみたいと思うのですが、いつになることやら。夕方、時間を見つけて、連載の森林経営管理法を続けます。