今回は、フレキシブルウイングの最新鋭機をご紹介したので、固定翼の方も最新鋭機をご紹介いたします。
いわずと知れた、ドイツA.I.R社の最新鋭機です。
滑空比は24:1くらいあるのでしょうか?
昔の木製のピュアグライダーに近い性能を持ちながら、翼面荷重は低いので、沈下速度はそれよりも優れたものを持っています。
アルプスのエリアでの大会などでは、巡航速度が100キロを超えることも珍しくないそうです。
とんでもない性能を持っていますよね!
この機体の設計者は、フェリックスルウェール。
彼の存在は、固定翼機の進化を語る上では大変重要な人物です。
正直、彼の存在なくして、ここまで固定翼は進化しなかったでしょう。
過去、どんどん進化していくフレキシブルウイング機に、性能的に近づかれてしまった固定翼機でしたが、「多段の後退翼を持たせる」という新しい発想で、再びフレキシブルウイングよりも高い性能を持つことが出来ました。
グライダーの性能を上げるには、アスペクトレシオをあげる方法が有効です。
しかし、あまりアスペクトレシオをあげすぎてしまうと、翼が長くなるため、内翼の対気速度が落ちてしまい、部分的な失速「翼端失速」に入ってしまいます。
この翼端失速を防ぐ方法として、ATOS VRで用いられた多段の後退角が有効なのです。
これは航空力学の世界では「クレセント翼」という特別な言い方をしており、翼端失速に入りにくい特性を持っています。
私が知る限り、実際に飛んだ機体でクレセント翼を用いたのは、ATOSと鳥人間コンテストで過去頑張っていた糸谷氏の無尾翼機くらいだと思います。
このタイプの機体は、後退角の強くなった翼端部分で、下から上に回り込む気流が発生(翼端渦が前縁部分に発生したようなもの)し、気流の方向が上から下に偏向されるため、失速しにくくなると聞いたことがあります。
まあ難しい話はさておき、この新し翼型を持つことでATOS VRも一段と高性能になったことになります。
正直、ATOS VRは性能的に他のハンググライダーよりも抜きんでているため、まともに勝負できないというところが本音でしょう(笑)。