日々の出来事

当院の出来事を紹介します

やはり専門家はすごい!

2009-06-06 17:36:19 | Weblog
昨晩、仲間内の勉強会に参加しました。
不定期ですが大学の専門医に来ていただき、皆で悩んでいるケースを検討してもらいます。
特に専門医や専門施設に紹介するべきなのか?の判断が難しいところです。
正直なところ、わかりにくい病態の動物たちも中にはいるのですね。
こちらの病院でしなくてはならないケースを東京あたりまで紹介しても無駄ですし、逆に紹介するべきケースを囲い込んでもいけまんよね。

先日吐きと下痢でいらした馴染みのレトリバー、血液検査で異常ありませんでしたが、エコー検査で肝臓の右側に低エコー病変(黒く写る)が確認されました。
小さい病変でも無視できない場合がありますので、CTの撮影をおこないました。
エコーで写った病変は外側右葉という部位に確かにありました。
切除するには難しい領域なので、専門医にCT写真を診ていただきました。
肝臓の病変に目が向いていましたが、専門医は胃に何かあると思われると指摘してきました。
確かに胃の壁が厚くなっており造影剤で増強されていました。
腫瘍とは言い切れないが、かなり疑わしいので先生の病院で胃の全層生検をしてください、とのご指示でした。

見逃しが生じなくてよかったわけですが、話が難しくなってしまいました。
飼い主さんとは詳細な打ち合わせが必要になりました。
でも何とか早く診断を確定して、治療に結びつけたいものです。
大きい犬ですので、ちょっと大変そうです。
開腹による胃の検査ほうは全然心配していませんが、問題は肝臓・・・。
左に比べて右側は手術の難易度が高いのです。

当院は最善の道を探すのがポリシーですから、一番適切な方法を考えています。
どうしてあげるのがベストなんだろう・・・?





病院前でおばあちゃんが・・・

2009-06-05 18:19:24 | Weblog
今日の午後の診療をしていましたら、患者さんから
「外でおばあちゃんが流血して倒れている!」と聞かされビックリしました。

看護師が飛び出して行ったところ、足がご不自由だったのか靴が脱げて国道脇の歩道で、
おばあちゃんが頭から流血して転倒していました。
すぐに看護師が対応して動物病院に案内し、救急車を手配しました。
かなりご年配の方で少し認知症があるような様子でしたが、ご家族がすぐにいらしてよかったです。
動物の外傷などに伴う流血には慣れていますが、人間の流血は見慣れていないので、
けっこう驚きました。

昔、研修医で東京にいた頃、仲間とクリスマスイブに飲み会をして、酔っぱらった友人が自転車で転倒、
頭がバッコリ切れてしまい、救急車を呼んだことを思い出しました。
そういう時って、出血が止まりにくいわけですね。
あの時はその場に救急救命士も一緒にいたため、応急処置に救急救命士と獣医師があたる状況で、
到着した救急車の隊員は、「あんたら何者?」、という感じでした・・・。

結局、休日の夜のため大学病院に連れて行かれ、骨折なしで縫合処置して入院となりました。
問題だったのは救急車での輸送中ですね。
怪我した友人は酔っぱらっているので、迷惑かけて申し訳ない、とかしきりに言うのですが、
救急車に同乗している私の手を握って離さない・・・。
クリスマスイブに、年上の男性に手を握られても・・・。
そういう忘れられない事件がありました。
20年も前の忘れがたい思い出です!

タップちゃんの看取り・・・

2009-06-04 00:00:11 | Weblog
先週から10日間入院していたタップちゃんを、一時退院後に再入院して看取らせていただきました・・・。
ラブラドール・レトリバーの15歳、かなりのおじいちゃん犬ではありましたが、
つい最近まで全く病気ひとつしない頑丈なワンちゃんだったそうです。

当院は初診でしたが、立てない状態の大型犬で口から出血しているとのことなので往診しました。
お家にうかがった時には脱水状態で立てない感じであり、口からの出血が認められ弱っていました。
すぐに持ち帰ってすぐに総合検査、左側顔面の腫大が悪性腫瘍があることはすぐに判明していました。
サンプルを専門家に確認してもらったところ、厄介な「メラノーマ」(悪性黒色腫)と判断されました。
細胞を顕微鏡で観察して、当初その形態からメラノーマだろうとは感じましたが、
通常よくある黒い顆粒が観察されなかったため、その場での判断は避けて専門家の判定を待ちました。
少々お時間はかかりましたが、無色素性のメラノーマと断定していただきました。

診断はついたものの、すでに進行していて下顎や頬部の骨が破壊されていたため、
よい治療方法の選択が提案できず、飼い主さんご家族にはつらい思いをさせてしまっていたと感じました。
外科手術の適応時期は過ぎている、放射線治療を行うには東京まで犬を運ばなくてはならずかつ麻酔が必要、
抗がん剤は効く可能性が低く、他の代替医療は根拠に乏しい・・・。
非常に悪性度の高い腫瘍であるため、希望的なことが言えなくてご家族にはつらい思いをさせてしまいました。

毎日お見舞いに来てくださり経過をみてきましたが、予後(今後の経過)は不良というつらい状況の中、
いったんは自宅へ連れて帰ってあげよう、ということになりご協力させていただきました。
車でお運びした時のうれしそうな顔・・・忘れられない表情でした。
その後お亡くなりになるのですが、帰る時は悟っていたというか覚悟ができていたのか妙にいい子で、
この子は全部わかっているんだなあ、と感じました。

再入院して私と二人になった時に、「もう少し家族の方々と一緒にいたいだろうが、おまえこのまま行くとしんどいぞ・・・」
話しかけたらおとなしくなって、「わかってますよ」みたいな目で私をみてくれていました。
その後は、ご家族のお姉さんが付き添って看取りました。
皆に迷惑をかけず、本当にいい子で旅立っていきました。
看護師の菅野と小林も一緒でしたので、彼女たちが前週の入院担当であったこともあり、
涙の中でのお別れとなりました。
タップちゃん、私にお迎えがきたら天国で会おうな。 合掌

ダイヤモンドを5000個配ってどうするの?

2009-06-03 01:48:33 | Weblog
テレビで放映されていましたが、なんだかわけのわからないことやってましたね。
銀座で5000円相当のダイヤを5000個配るという、イベントに行列していました。
くれるんだからもらっとこう、という心理はわかる気もしますが・・・。
犬のピアスに使う、と言っていたおばさんの意見が印象的でした。

問題に感じたのは、販売側の「モーブッサンMAUBOUSSIN)のやり方。
不景気だし、知名度を上げようという意図なのでしょうかね?
「ブランドの認知度を高めて新規顧客を増やす」のが狙いなんだとか・・・。
でも結局は、ブランドの説明をしたり住所指名の記入のため、300人程度にしか渡せず、
整理券を渡して後日来てなんてやったもんだから、かえってクレームが生じてしまったようです。
モーブッサンって調べてみたら世界の五大宝飾店の一つなんですね。
無料配布のダイヤモンドに群がる方々が、このブランドの顧客に成り得るんでしょうかね?
話題作り・広告宣伝費にしては「品がない」気がしました。

動物病院の診療も似たところがありますね。
料金を異常に安くして、新規の患者さんを増やそうとする場合があります。
特に開業したてですよね。
でも、それではその後どうやって維持していくのでしょう?
看護師の待遇や新設備への投資、勉強のための費用はどこから捻出するのでしょう?
安い(安価な)動物病院ばかり探している飼い主さんは、動物医療のクオリティを考えているのでしょうか?
ダイヤを配る宝飾店と群がる群衆/てきとうな診療をする動物病院と安い診療を求める飼い主
どこか重なって見えてしまいしました。

本物を見つめて欲しい、特に医療はクオリティを考えていただきたいものです。
高品質で最安値はありえないのが医療です。
「高品質」な医療を「適正料金」で提供していきたい、と心底思います!

時間外診療のジレンマ

2009-06-02 01:37:29 | Weblog
先ほども、入院の見回りをして点滴のチェックを行いました。
夜間は時間ごとに獣医師や看護師が、人の医療と同じように入院患者を見回ります。
重症な子や急変しそうな子はモニタリング機器を着けて遠隔監視です。
アラームが鳴れば即対応せざるを得ません・・・。
携帯電話等、便利な時代ではありますが、かえって拘束されているのも事実ですね。
入院中や術後で経過を観察する必要がある子は、交代で見守っていくしかないわけです。
携帯電話が普及していない昔は、飼い主さんが自宅にいないと、数時間も連絡がつかない、
そういうことが普通にありました。

そんな毎日ですから、時間外の急患も診ることになります。
病院の診察券に書いてある番号の携帯電話は、獣医師が交代で持ち歩いています。
急患用の電話ですが、当院の患者さんに限ってお教えしています。


なるべく時間外も診てさしあげたいのですが、特に時間外の初診は難しいです。
たまたま来たような方だと、こちらとの信頼関係ができていないわけです。
重症でいらして置いて行って、入院中に急変してしまったりすることもありえます。
そして費用を支払わずに明日払いに来ますと言って、二度と来ない、こういうことは時々耳にします。
私も経験があります。
診てさしあげたい、でも次の日に差し支えるのもまた事実なんですね。
正直つらいところです。
真夜中に拝見すると費用もバカにできませんよ!
なるべく早めにご相談していただくことが、ベストなことかと思います。
余談ですが、たまに酔っぱらってかけて来る人がいます・・・。
ほんとにこればっかりは、どうしようもありませんね!






どこかに逃げてしまう、そんなふざけた話が実際にあるのです。


当院はショップさんやブリーダーさんと契約していません

2009-06-01 00:00:02 | Weblog
動物病院(獣医さん)の中には、ペットショップさんやブリーダー(繁殖家)さんと顧問契約しているところがあります。
それ自体は別に悪いことではありませんが、私の考えとしては一定の距離を置くべきものと思います。

飼い主となる方は、ショップさんやブリーダーさんと何かしらのきっかけがあって知り合うわけですね。
そしてそこから家族となる動物を購入する。
最近はインターネット経由で、遠方の業者と知り合う機会も珍しくなくなりました。
家に来て何事も無くそのまま育てば問題ないのですが、そうはうまくいかないこともあるのですね。
そんなこんなで動物病院(獣医師)の元にいらした場合、私は第三者の立場で客観的に話せなくてはならない、と考えています。

悪気はなくとも、動物は生き物であるため先天性の異常を持って生まれて来ていたり、病気になったりすることがあります。
病気や異常がある動物をわかっていて引き渡すことはないでしょうが、順調に育たないことはあり得ますよね。
その場合、飼い主さんと販売元、獣医さんの三者は微妙な関係になってしまうわけですよ。
どちらにつく、というような低レベルな話ではありません。
双方に対し、常に客観的な事実を説明できることが、獣医師としての最低限のモラルでありましょう。

ところが、そうは単純にいかないのが世の中(社会)というもの・・・。
最初のショップさんかブリーダーさんの言うことを、丸飲みで信じてしまうところに問題の根源があると感じます。
例えば食事の回数や種類。
小型犬の成長期なのに、食事は一日1回でいいと言われて信じきってしまう・・・。
あるいは成長ステージに関係なく、ずっとそこの(成分不明)オリジナル・フードを与え続けている・・・。
カルシウム剤が付いてくるのだけは、勘弁して欲しいです。
成長期に(特に大型犬種)カルシウムが過剰になると、本当に骨格が変形してしまいますよ!
成長期にはカルシウムがいるんだ、と言われると何となく納得してしまいがちですよね。
でもサイエンスである獣医学はそれを否定しています。
成長期のカルシウムの過剰給与は間違っているのです。
かなり以前から指摘されていることですから、知らないことは罪なのです。
カルシウム剤の瓶を持ってくるたびに説明するのですが、始めの「洗脳」を解くのは大変です。
さらにひどいとワクチンやフィラリアの予防はしなくていい、と言われていたりします。

組んでる獣医師から、ワクチンそのものや「証明書」・薬まで預かっているショップやブリーダーもいるようです。
そういえば以前、1頭の犬に同じ日のワクチン証明書を「2枚」もっていらした飼い主さんがいました!
ワクチン証明書の添付シールが、「カラーコピー」だったこともありました!
「てきとう」にやっているんでしょうが、2ヶ月の子犬に9種ワクチンを打っていたり(間違いです)と、無茶な実態があるようです。てきとう過ぎます。
薬もいいかげんな量で渡されていたりする・・・。有害な量(過剰投与)だったりする・・・。
獣医師と業者が「顧問契約」をする→ワクチンやフィラリア予防で紹介される→感じは悪くないから(安いから)続けて通う
→異常があっても指摘しない→異常が放置される→手遅れになる→異常があっても認めない
まあ、こんな流れが多いでしょうかね。

もちろん良心的でまじめな顧問契約獣医さんもいるし、良心的なショップ、誠実なブリーダーも存在します。
実情を知っていただいて、飼い主さんご家族が納得できて信じられる、動物の命を預けられる、
真剣に命について考えてくれる、そういう獣医さんを探して、出逢っていただきたいと思います。
でも世の中に悪徳医師がいるのと同様、悪徳業者、悪徳獣医師、悪徳飼い主がいるのも事実なんですね。
気をつけよう!一見良心的な専門家・・・。
私ですか?
ご判断にお任せしますが、自分の信念においてかなり頑固なことは間違いないでしょう。
私は自分の信じる、「信念に恥じない」獣医療を提供するまでです。
医療で手抜きは考えない、でも話を聞いてご家族の考えや諸事情を考慮する余裕は持っているつもりでいます。
第三者の冷静で客観的な立場で動物の命を守ること、そのためには特定のショップやブリーダーと顧問契約しない、
これは当院が守るべきモラルであると考えております。

あ、ちなみにショップさんやブリーダーさんが持って来たら診ますよ、獣医さんですから。
でもほとんど来ないですね・・・。手抜きしてくれないですから!
ちゃんと知ってるんですね!















このインターネットの時代ですから、動物もネット(通販)で遠方から送られてくることも珍しくありません。