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YOMIURI ONLINEより転載
以前の記事「継続は力なり・・・もっと骨粗鬆症に注意を」も覗いてみて下さい。
http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/6e96e7e25c488252c7fbcec034aeacf6
加齢によって発生してくる厄介な状態に骨粗鬆症があります。
特に女性にとっては、閉経後の大きな問題として存在しています。
その指標としては「骨密度」=「骨量」を測定することが主流です。
しかし、2型糖尿病の患者では「骨密度」が増加しても骨折率が高いことが報告されています。
その原因として、「骨密度」以外の骨強度因子である「骨質」の劣化が指摘されています。
骨質研究会のメンバーで、コラーゲンの解析を専門とする東京慈恵会医科大学整形外科の
斎藤充講師によると、「骨質」劣化の起こる機序は次のようなものです。
まず、素材として骨の半分を占めているのはコラーゲンです。
これは鉄筋コンクリートの鉄筋に相当します。上の図を参照して下さい。
ここで「骨質」が良好であるか劣化しているかを規定する因子は、
コラーゲン自体の状態とコラーゲンの分子間に形成される架橋結合の状態なのです。
コラーゲンの分子間に形成される架橋は、
酵素反応を介して形成される善玉の生理的架橋と、
糖化や酸化により形成されるAGEsによる悪玉の架橋の2タイプに分類されます。
善玉の架橋は、健康な身体本来のものですから、
適度な弾力性を保ちながら骨を強くしています。
しかしAGEsによって形成された悪玉の架橋は、
弾力性に乏しく骨を陶器のように脆くしてしまいます。
糖尿病特有の環境は、健康な善玉の架橋を悪玉の架橋へと変化させ
「骨質」を劣化してしまいます。
「骨密度」が低下していなくても「骨質」が劣化していると、
骨が脆弱化してしまうということが明らかになってきたのです。
「量」だけではなく「質」がより一層重要だというわけです。
AGEsの生成を低減させることが「転ばぬ先の杖」として重要であることは、
このテーマに関連する次の2つのサマリーからも理解されると思います。
▲糖尿病と骨疾患:Seminar
糖尿病での骨折率上昇
~その骨密度非依存性~
近年の大規模臨床研究により1型および2型糖尿病のいずれにおいても骨折危険度が増加することが明らかとなった。1型糖尿病では骨密度の低下を背景にした骨折率増加と考えられるが,2型糖尿病では骨密度の低下を伴わない骨折率の増加,すなわち骨密度非依存性の骨折率増加が示され,糖尿病の病型により骨折を生じる病態が異なることが示唆される。2型糖尿病における骨密度非依存性骨折の増加には,転倒等の骨外因子に加え,骨質の劣化が寄与している可能性が考えられ,今後骨質に着目した研究の進歩が望まれる。
(山本昌弘・山口 徹・杉本利嗣 島根大学医学部内科学第一 1)(やまもと・まさひろ) 2)助教授(やまぐち・とおる) *3)教授(すぎもと・としつぐ))
▲糖尿病と骨疾患:Seminar
糖尿病での骨基質AGE化と骨減少症
1型糖尿病で認められる骨減少症の病因における糖化最終産物(AGEs)の役割について,ヒト由来の初代培養骨芽細胞,破骨細胞様細胞および副甲状腺細胞を用いた知見を示した。AGEsは骨芽細胞の骨形成能を抑制するのみならず,低カルシウム(Ca)刺激に対する副甲状腺細胞からの副甲状腺ホルモン(PTH)分泌を抑制し,この機序には,AGEsによる時間依存性の細胞内Ca濃度上昇効果が関与した。また,AGEsはヒト骨芽細胞からのインターロイキン-6(IL-6)産生を促進し,ヒト破骨細胞様細胞形成を促進した。以上の知見から,AGEsは,糖尿病における骨減少症の病因の一つであると考えられる。
(山本威久 箕面市立病院小児科・部長(やまもと・たけひさ))
当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
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