ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

米国内で車を輸送する。

2023-06-10 18:35:51 | 生活
米国内で車を輸送するとは、米国内で車の輸送を外注することをいう。米国駐在員でも筆者のように州をまたいで転勤する人間は多くないだろう。筆者は思い出すだけでもこれまで5回程度の車の輸送を行ってきたが、ご存じのとおりここ米国では日本式のきめこまやかなサービスは期待できず、必ずといってよいほど楽しいイベントが発生する。今回はそれらの出来事を思い出しつつ書き記し、後世の人々の助けとしたい。日本ではジャニー喜多川氏の醜聞が表ざたになり始めている。


この思い出話の概要は以下の通りだ。参考にしてほしい。


①発注1
英語不得手な駐在員にとって、運送会社に直接電話で問い合わせ、ピックアップ元やドロップオフ先の説明、それに値段の交渉を行うのは大変に億劫だ。そこでグーグルで『車の運搬』と検索し、適当なウェブサイトへ入ると、すぐに見積フォームに案内される。フォームに運搬日程や住所の入力ができるので、『これなら簡単だ!』と必要項目を入力して送信した途端、大量のテキストが届き始め、電話がひっきりなしにかかりパニックに陥る。こちらとしては特定の運送屋へ連絡したつもりなのだが、どういうわけだか複数の連絡先から大量の問い合わせが届き始めるのだ。あくまで筆者の予想であるが、車の輸送に関しては①顧客情報収集屋、②手配ブローカー、③トラック会社(運転手)の3つの組織が絡んでいる。ウェブサイト先の相手は③に見えて実はただの①で、入力した情報が複数の②にわたり、②から大量の連絡があるというシステムのようだ。特に最近はメールやテキストもオートメーション化が進んでいるので、毎日同じ内容のテキストがやってきて、大変なストレスを感じる。とはいえ孤独な30代独身日本式サラリーマンにとっては、急に世界から必要とされてる感じを受け、楽しい時間でもある。




②発注2
ブローカーどもが提示してくる金額は、商談成立後にブローカーに支払う手配手数料と、運搬時に直接トラック運転手に支払う運送料の合計だ。けちな30代独身日本式サラリーマンは、大量にやってくるテキストメッセージの中から一番安い金額を提示するブローカーに連絡する。しかし中には商談がまとまりつつある頃になって急に、『運転手がその値段では無理だと言い始めた!』などと言ってくるブローカーがいる。こちらもその段になっては、他を当たるのが面倒臭いのでついつい承服してしまうという算段だ。この場合はブローカーではなく、トラック業者の質が悪い場合が多いと思われる。なぜならブローカーに支払う金額は変わらないからだ。運転手がブローカーに最初に安値を伝え、客が釣れたら金額を上げてくるのだ。ブローカーにとってもこのような運転手は厄介なはずなので、運転手とブローカーの関係が浅いことも予想される。であるからこういった場合はしっかりと断って他を当たる方がいい。筆者のように “ノーと言えない日本人” でいると、当たり前のように契約を守らず、理不尽を言い始め、いくら怒ってもカエルの面に小便のような態度の運転手とすったもんだをする羽目に合う。とはいえ普段はたいへん孤独な30代独身日本式サラリーマンは、そういうすったもんだも何だか生身のニンゲンとの触れ合いに感じ、終わってみればよい思い出になってしまう。ちなみに契約が済んでしまえばブローカーにとっては仕事は終わりなので、トラック業者の連絡先を教えられるだけで残りのフォローアップは一切なく消え去る。



③運転手
そのうちトラック業者から連絡があるが、安い業者の場合には大型トレーラーがそのまま宅までやってくるシステムなので、運転手はこちらが指定した日時などは気にもせず、『明日はどうだ? 明後日はどうだ?』とあちらのスケジュールの都合に合わせて連絡が入るのがうるさいし、深夜でも構わずやってくる。到着も同様にアップデートが少なく、こちらの都合を聞いて時間を調整してくれるようなサービスは期待できない。一人暮らしの30代独身日本式サラリーマンにとってはイライラばかりが募る。さらにこの国は世界中からの移民であふれている。長距離トラック運転手として働く人にネイティブ英語話者が少ないのは想像できるだろう。これが次によく起こるトラブルだ。経験上運転手には中東系と東欧系の人々が多い。特にウクライナやベラルーシといった東欧系の人々は優しい反面、英語が聞き取りづらく、相手もこっちの拙い英語をあまり聞き取らないために滑稽なコミュニケーション問題がしばしば発生する。相手は政治不安(など)のための移民の人々で、こちらのようなお気楽駐在員とは全く違う背景の人々なのは承知だが、『一体全体こんな外国で、何で通じにくい外国語で、お互い一生懸命しゃべり合っているのだろう』と思うと吹き出しそうになる。それでもコミュニケーションが成立したときには不思議な喜びが生まれ、幸せを感じるというものだ。やっとこさ引っ越し先で運転手のトレーラーを迎えると最終支払いになる。彼らは現金しか受け付けないにも関わらず、日曜や深夜にふいに現れるので、予め現金を手元に用意しておいた方がいい。



以上はあくまで安値で車を移動させる場合に起きるイベントであり、当然金を積めばこのようなイベントは期待できないので注意してほしい。車を10台以上載せたトレーラーが到着し、筆者の車が前方に載せてあると他の車を一度下ろさなくてはいけないように思えるが、運転手はガタガタゴトゴトとフレームを動かして器用に筆者の車だけを下ろしていく。彼らの仕事に少し憧れを憶える。好きな曲を聞きながら、景色を見ながら、全米中をひたすら走る。車内には人間関係のストレスはなく、好きなときに家族と好きなだけ会話をしながら走ればいい。ただただ自分が一日何マイル走るかだけが勝負。独身日本式サラリーマンはたいへんだ。走ったつもりでも方向が違ったり、むしろ歩いた方がよかったりもする。

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