ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

人からもらった文庫本の臭いを消す

2022-05-05 12:26:40 | 生活
 人からもらった文庫本の臭いを消すとは、筆者が知り合いから譲り受けた文庫本に対して行った消臭活動のことをいう。最近仕事がひと段落し、共に働いていた業者や下請けの人々とお別れすることになったので、さっそく餞別にに『うまい棒』を贈ってみた。実は筆者はうまい棒の全米ブームの火付け役になろうと適宜活動しているのだ。だが今回も受けがよくなく、また大量に余ってしまった。だから最近はいつも余ったうまい棒ばかり食べている。タコ焼き味はサクサクしていて美味しいし、牛タン味も美味い。コーンポタージュ味も美味い。30代独身日本式サラリーマンにはうまい棒がよく似合うようだ、鏡を見てそう思った。



この活動の記録は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。



①人から本をもらう
30代独身日本式駐在サラリーマンであるならば、帰任する同僚駐在員から家具や家電などを譲り受けるという出来事に遭遇することはままある。がっつり昭和世代の上役に、『これも取っておけ、これも高いやつだ』と勧められると、弱腰30代独身日本式サラリーマンは断り切れず、欲しいもの以外に大量の物品を受け取ってしまい、そのままグッド・ウィルに直行した思い出も一度や二度ではない。だが今回は珍しく文庫本をたくさん譲り受けたのだった。紙袋いっぱいにもらった本には、遠藤周作や川端康成、塩野七生などの作品に加えてスピリチュアル系とも呼べそうな本までいろいろ入っていた。




②人から本をもらうこと
『ニンゲンは見たいものしか見ない』というのは、あのカエサルの言葉だ。彼がこの言葉を残してからかれこれ2000年以上が経っているというのに、ニンゲンはこの問題を解決できず、ともすれば当時よりも悪化している可能性すらある。動画サイトや通販サイトを開けば『お前の好きなものはこれだ、お前と同じような人はこれも買っている』と教えてくれる。科学技術の進歩や価値観のアップデートとやらにより、伝統的宗教観や価値観を揺るがされた人々は不安になり、ネット界で簡単に見つかる同意見の人々の空間に安住し、対話を拒む傾向が顕著に見える。“人から本をもらう”とは、そんな目隠し状態の日々の中でのちょっとしたもらい事故であり、新鮮な気持ちになった。自分では買わない本、つまり自分の知らない世界が自分の部屋に在るのだ。


③本が臭う。
だがその本が臭いのだった。いや、臭いというと語弊がある、筆者の苦手とする香りだったのだ。それはおそらく元の持ち主の部屋で焚かれたお香かキャンドルの匂いが文庫本の紙にしっかり染みついたものだ。それがページをめくるたびにふんわりと鼻に押し寄せ、閉口し、読書が長続きしない。“どげんかせんといかん!”と思い、さっそく『本の消臭』とネット検索を試みたのだ。



④本の消臭活動
重曹や芳香剤を使う方法と共に挙げられていたのが、『新聞紙を挟む』であった。いちおう最後の手段的な扱いの方法であり、最も効果的とのことであったので、筆者はこれを採用してみることにした。2022年現在、新聞紙の入手もまた難しくなってきているのだが、筆者には秘策があった。行きつけの中華系スーパーマーケットのライオン・スーパーのレジ台の棚にはいつも新聞紙が山積みになっていることを思い出したのだ。買い出しついでにレジの中年女店員に『これは無料なのか』と聞けば、『これは無料である』と言うので難なく数部入手したのだ。それは“大紀元時報”という名の新聞社で、新興宗教の法輪功関係者が中心となって発行しているものらしい。反共・保守系の論陣を張るとのことだが、筆者には関係ない。これを文庫本の大きさにカットし丁寧に挟んでいく。





新聞紙の方法で本の臭いは劇的に減ったものの、まだうっすらとお香の香りがしていた。しかしそれが読んでいるうちにだんだんと臭いは薄まっていく。自分の手で触ることで自分のものへと変化していく、やはりとどめは“自分の臭い”なのだ。『臭くなくなる』とは『自分の臭いに近づく』ということのようだ。いつか譲ってくれた人に再会し、『いやぁ、この本をお返ししようと思って・・』と手渡せば、“う・・・これ本当に自分の本だろうか、30代独身日本式サラリーマン臭がきつい”と思われるのかも知れない。そう思いながらスピリチュアル本を読んでいる。

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