カワベ・パークとは、米国アラスカ州スワードの町にある公園である。スワードはアラスカ鉄道コースタル・クラシック線の南端終点の港町で、氷河やホエールウォッチングなどのクルーズ船が出たりする観光拠点にもなっている。筆者もまたアンカレッジから観光鉄道でスワードへ向かった。退役軍人グループの慰安ツアーと思しきマッチョ風白人家族団体と同じ車両で、興奮の仕方(“クレイジー!”“オージーザス!”など)にやや温度差を感じつつも、圧倒的な景色を彼らと共に感動しつつ、4時間の鉄道の旅を楽しんだのだった。
この旅の記録は以下のとおりだ。参照にしてもらいたい。
①トレイルヘッド・ロッジングまで歩く。
スワードの町は縦に細長く、クルージングの発着場や箱の大きなホテル、それに高級感のあるシーフードレストランなどは主にこの鉄道駅周辺エリアにある。一方ダウンタウンは町の南端で、鉄道駅からは徒歩で20分ほど離れている。筆者の予約したトレイルヘッド・ロッジングはダウンタウンエリアにあるので、筆者は徒歩で住宅地を南下した。西側には氷河で削られた急峻な山の頂上が、ほぼ真上に見上げるかのような距離に迫って迫力がある。そして東側の入り江の海は湖のように凪いでいて、水は白く濁る。この濁りは“Glacial silt”と言い、氷河の動きによって岩石が削られた非常に小さな粒子なのだという。入り江の向こうにも急峻な山がにょきにょきしていて、それはそれは不思議な景色だ。
②トレイルヘッド・ロッジング
トレイルヘッド・ロッジングは、ダウンタウンの北外れにある静かな建屋で、同じ建屋にランドロマット(本ブログ参照のこと)が併設されているので便利である。フロントなどはなく、入り口のドアに部屋番号と宿泊客のファミリーネームが貼られてあって、“ロックは携帯の下4ケタ”と書かれてあるだけだ。部屋はこちんまりした可愛らしい家具が並んで、紅茶のtバッグのサービスもあって居心地がよい。2泊分の宿泊基地には最適で、気に入ってしまった。
③カワベ・パーク
荷物を降ろし、『さぁ酒を飲みに出よう』と勇んでダウンタウンへ向かうと、そこにカワベ・パークがあった。カワベ・パークは公園というよりは広場であり、あずま屋と公衆便所と、ベンチがあるばかりだ。だがここはダウンタウンと鉄道駅エリアとを結ぶシャトルバスの停留所になっているため、腰を掛けている人が多くいる。そこに誰も見ていないカワベ・パークの由来が書かれた立て看板があって、カワベ氏らしき日本人の写真が載っている。だが空腹とビール欲しさに立ち止まることが適わず、筆者は立て看板の写真だけとってダウンタウンへ向かった。
筆者はダウンタウンでヒラメとサーモンのフィッシュ&チップスを食べながら、アラスカビールをがぶがぶ飲みつつ、カワベ・パークについて調べてみた。それはハリー・カワベ(日本名カワベ・ソウタロウ)を記念して作られた公園らしい。ハリー・カワベ(日本名カワベ・ソウタロウ)は大阪近辺の小さな村で1890年に生まれ、16歳のときに渡米し丁稚から始めてスワードの町で財をなし、実業家として洗濯屋や銀行業や毛皮屋などで町の発展に貢献したのだという。太平洋戦争の折にはやはり強制的に収容所に送られたが、戦後には再び実業家としてシアトルで老人用アパートなどの運営で活躍したのだという。日本のウェブサイトを探っても彼の詳細は出てこない。カワベさんの生きざまに感動するとともに、またもやアメリカという国の懐の大きさを感じたのだった。ちなみにフィッシュ&チップスは別に美味ではなかった。