じゃ、僕の話をします。

『本気食聡咲』の記事は「居酒屋・和食」カテゴリーよりご覧下さい。/※各掲載店の閉店情報等は基本的に追記しておりません。

人情と風情と「蝦天分店」の天丼。

2020-12-02 | 居酒屋・和食
札幌中心部の路地に浮かぶ「天丼」の文字。



入り口からして、佇まいが渋い。


「蝦天分店」は、昭和38年創業の老舗の天ぷら屋さん。60年近い歴史です。

入り口はもちろん、店内も渋い。昭和で時を止めた様な空気感は、とても居心地が良い。

職人さんやスタッフさん達にも、皆さん「昭和」から「令和」まで三つの時代を駆け抜けて来た、力強いオーラを感じます。つまりは皆さん所謂、「人生の先輩方」です。

職人さん達は、分業がしっかりされてる模様。天ぷらを揚げる方、その揚げ上がりを見ながら、タイミングよく丼にご飯を入れ、味噌汁などをセッティングする方、天ぷら以外の料理を準備する方…

流れよく、阿吽の呼吸で作業が進んで行きます。

カウンターとテーブル席があり、カウンターの前には天ぷらを揚げる大きな鍋が。

こちらの天ぷら、揚げ方が独特。通常は、油の中で泳がせる様に浮かべて揚げますが、ここでは鍋を斜めにして、その鍋肌で揚げ焼きするかの様に揚げるんですね。

少ない油で揚げる、イタリアンのカツレツのような感じ。

そのせいか、食べても一般的な天ぷらよりも油が軽い印象。そして、鍋肌で揚げるから、天ぷらの片面が平らになってるんですね。この形状は他には無いかと。

そんな独特な揚げ方を目の前にしつつ、お通しで瓶ビールを。一杯目は女将さんがお酌して下さいましたよ。ありがたい。


ふと見ると、カウンターの上には北海道出身の漫画家、「おおば比呂司」先生のイラストが。


おおば先生は、こちらのお店の常連だったそうです。

この絵柄、昭和世代の道民ならお馴染みでは無いかと。僕も、色々な広告で目にしました。

そのおおば先生のイラストによるアニメで、「蝦天分店」のCMも作られたとの事で、その絵コンテ的な物がカウンターの上にありました。

ビールを傾けつつ、思わず見入ってしまいます。それにしても、懐かしい絵柄です。料理を待つ間も退屈せずに済みます。

やがてかき揚げが登場。

カラッとしてる…と言うか、ザクッとした食感。おつまみには丁度良いですね。素材の旨味も封じ込まれてます。

天つゆも軽めの味わい。ちょっと付けたり、たっぷり付けたりして、その食感と風味の違いを楽しんだりして。

そして真打ちが目の前に。


「蝦天分店」の真骨頂、特上天丼。

胡麻油と、甘辛いタレの香りが渾然一体となってふわりと立ち登ります。当然、食欲を掻き立てられる。

やはり、その「揚げ方」のせいか、一般的な天ぷらより「花」が少なめ。天ぷらを揚げる時に、衣を上から振り掛けて「花を咲かせる」なんてよく言いますよね。

食べても油が軽く感じるのは、その「花」が少なめなせいもあるんでしょうね。そして、見えづらいですが天ぷらの下は平ら。

こちらも「カリッ」とした食感。サクッとふんわりした天ぷらも好きですが、食べ応えとしては個人的にはこちらも好きですね。

ふと店内を見ると、いつの間にか数組のお客さんが。皆さん、一様に天丼を掻っ込んでいます。

僕も負けじと掻っ込む。合間には冷たいビールも流し込む。それにしても、天丼は食べると元気が出ますね。

天丼を食べつつメニューをよく見ると、「蝦カレー天丼」の文字。

……今、ご想像された通りです。

メニューの写真を見ると、丼の上に蝦天が載り、カレーがかかってました。

気になるけど…頼むには勇気のいるメニューですね。
σ(^_^;)

ところで「分店」と言うからには「本店」はどこだ、と思う方もいらっしゃるかと。

「本店」はススキノ交差点の近くにあったんですが、数年前に閉店してしまったんですね。

でも、「本店」とは営業的には分離していた様で、他にも数軒「蝦天」と名の付くお店が札幌市内にあるのですが、それらも同様らしく。

それぞれ独自に、札幌の古き良き天ぷら文化を今も支えてくださってるんですね。

天丼をしっかり平らげてお勘定をしていたら、女将さんから「いやぁ、良い食べっぷりと飲みっぷりでしたねー。」と。

思わぬお褒めの(?)言葉に恐縮。

女将さんはしばらく前、テレビでお見かけしていました。

こちらのお店、札幌大通の三越地下にも出店していらして、札幌がひと頃、コロナで多くのお店が通常営業を自粛して、テイクアウト主流になっていた時期だったと思うのですが、皆に元気になって欲しいと、期間限定で格安の天丼を提供なさってたんですね。その事がテレビでも伝えられていたんです。

やっぱり、天丼って「ハレの食べ物」と言うか、テンションが上がると言うか。元気出るんですよ。食べると。

女将さんも、そんなお気持ちからだったのでは無いかと。このコロナ禍でも、ご自身が出来ることをしっかりやりたい、と言ったお話をされていたと記憶しています。人情を感じましたね。

ちなみに。

「蝦天」味の南部せんべいがありまして。おおば先生繋がりで、岩手の南部せんべいメーカーとコラボした商品らしく。

レジにあったので、この時もつい買ってしまいました。食べると本当に甘辛い天丼の味が。

ご飯挟んだら、そのまんま天丼になるんじゃ無いか、ってくらいです。

札幌三越地下の、全国のお菓子を売っているコーナーにも置いてあります。南部せんべいだからか、何故か「東北地方」の棚にありますが(笑)。興味のある方は是非。

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