暫く前ですが。
東京に行く機会がありまして。
その頃はまだ、今のように諸々が大変な状況になる前でして。
むしろ、その「直前」と言うようなタイミング。
今思えば、よく行けたなと思いますけど。
そんな晩秋の東京。
その中心、銀座。
周りは当然、ビルが立ち並び、煌びやかな街並みが続く。
そんな街並みに、突然、時間が止まったかのように佇むお店が現れます。
「チョウシ屋」さんです。
創業は昭和2年という、お惣菜屋さん。
と言うか、お肉屋さんでもあるようです。
そして所謂、「お肉屋さんのポテトコロッケ」の元祖が、こちらのチョウシ屋さんらしく。
その響きだけでも自分はお腹が空くのですが(笑)、その元祖と言われるなら買わずには居られない訳で。
パッケージにも、しっかりその旨が書かれてますね。
そしてこの見た目。絶妙な揚げ上がり。
口にすればその味わいは、紛う事なき、昭和から連綿と続く清く正しい「コロッケ」。
少し厚めの衣は、ラードで揚げているからかサクサクで軽やか。お菓子のようです。
そして噛み締めて行くと、ホクホクしたジャガイモの食感と肉の旨みが溶け合う。
嗚呼、確かにコレこそがあの「肉屋のコロッケ」の源流か、と。
夕闇に包まれる銀座の路地で自販機の前に佇み、立ったままコロッケに齧り付きつつ、唸りました。
…そんな、銀座の街角で立ち尽くしてコロッケに夢中で齧り付くとか、周りから見たら怪しげだったかも知れませんが(笑)、確かにこのコロッケ、他とは違う味わい深さが。
そのシンプルさ故に、尚更、ここまで違うものかと思いました。
例えば、スーパーや地元のお肉屋さんでも当然、コロッケを売っていて、安くて美味しい訳ですが、それとはやっぱり違う。
「元祖」と聞いて食べたから、とも思いましたが、本当に違う。
ジャガイモの潰し方も、程よくゴロゴロしてるんですね。そして味付けは、一般的なものよりも微妙に若干強めの塩梅。つまり、ソース無しでも幾らでも食べられる。見事に絶妙な塩梅です。
鼻に抜ける香りも独特。スパイスが利いているのか、炒めた玉ねぎの香りなのか。
いずれにしても、食欲を加速させる香り。
これは本当に、目の前にこのコロッケが山積みにされた皿があったら、延々と食べ続けられますね。
ちなみに、お店の方とお話ししたら、この時に使っていたジャガイモは北海道の南富良野産で、玉ねぎも同じく北海道産だと。
自分も北海道から来た事を告げたら、何だか喜んで下さりまして。北海道産の農産物を使って頂いている事に、こちらからもお礼を申し上げました。
そして、「チョウシ屋」さんの名物はコロッケのみにあらず。
メンチカツやトンカツ、ハムカツもあって、それらはお願いすると目の前で揚げたてをサンドイッチにしてもらえるのです。
しかも、パンは食パンかコッペパンを選べる。
今回は、あのマツコ・デラックスさんも絶賛したと言う…
食パンで挟んだハムカツサンドを購入。「ハムカツ」もお肉屋さんならではのお惣菜ですよね。
このパッケージも渋いというか、色合いやデザインがクール。島津家の家紋(何やらお店とご縁があるとか)と思しき、丸に十字のマークがこれまたカッコいい。
裏にはこんな記載も。至る所に昭和の風情が。
パンは耳付き。むしろ耳を落としてはもったいない。味わい深さも増すってもんです。これまた清く正しい。
そして、この断面です。
ソースの染み込み具合がたまらないです。
購入後、暫くしてから食べたせいも有りますが、パンには揚げたてのハムカツから移った湯気が元であろう、程よいしっとり感が。絹のような舌触り。そもそも、食パン自体のポテンシャルが高い。
ザクッと噛むと、これまた唯一無二の味わい。
ハムの厚みもちょうど良く、噛み応えがあります。そして、やはりお店オリジナルの甘辛いソースが圧倒的に素晴らしい。
一般的なウスターソースの様なとんがった感じはなく、中濃ソースほど甘過ぎない。他には無いですね。
この断面の、ハムカツとパンの境目は、旨味の桃源郷状態です。
ハムカツ、パン、ソースと、シンプルな組み合わせだからこそ、そのバランスの良さが際立つ一品。
恐れ入りました。
ちなみにこちらのお店は、札幌ススキノのとあるイタリアンにいらっしゃる、とあるソムリエさんに教えて頂きまして。
「チョウシ屋」さんの店頭で、ボトルに詰められたオリジナルのソースも売られていたので、お土産でそれを買ってお渡ししたら、とても喜んで頂けました。
このハムカツサンドを自宅でも作れますからね。
とは言え、やはりお店で買ってすぐの味わいには敵わないんでしょうけど。
それにしてもこうしたお店に出会うと、やはり東京って凄いなぁ、と思ってしまいますね。
また訪れたいもんです。諸々落ち着いたら、ですが。