読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「崩れない男たち」を語る、「人間を読む旅」(城山三郎、佐高信著/岩波書店)

2007-11-24 03:44:27 | 本;エッセイ・評論
<目次>
第一章 それぞれの人生
第二章 愚直と蛮勇
第三章 風を運ぶ人
第四章 信念のひと
第五章 男の美学
第六章 男の気概
第七章 使命感と頑固さ
第八章 私の読書術

佐高信さんが城山三郎さんに関して人物評論家の伊藤肇さんの次ぎのコメントを紹介しています。

「一言でいうと、絶対に形の崩れない男なんですよ。作家というのはちょっと有名になると、銀流しみたいな恰好して得意がってね、崩れてしまう。早い話が崩れやすいんですよね。それがまったくない。あの人は、たえず正眼であり、青眼の構えですからね。そこが僕は好きなところなんです」

本書の初版は1999年。「城山三郎伝記文学選」の月報での対談に追加し、さらに読書ノート的なものを加えた構成になっています。

まず、城山三郎さん(1927-2007)が作家デビューした後に関わった作家、評論家たちが錚々たる顔ぶれで凄いです。生年順に記します。

小林秀雄(1902-1983)、中野重治(1902-1979)、永井龍雄(1904-1990)、井上靖(1907-1991)、平野謙(1907-1978)、本多秋五(1907-2001)、大岡昇平(1909-1988)、久野収(1910-1999)、武田泰淳(1912-1976)、吉田健一(1912-1977)、木下順二(1914-2006)、梅崎春生(1915-1965)、堀田善衛(1918-1998)、三島由紀夫(1925-1970)、伊藤肇(1926-1980)、奥野健男(1926-1997)、江藤淳(1932-1999)、石原慎太郎(1932-)

また、城山さんの著作の関連で登場する経済人たちの話題も随所に登場します。

「日本資本主義の父」渋沢栄一(1840-1931)、「花王創業者」長瀬富郎(1863-1911)、「川崎造船所初代社長」松方幸次郎((1866-1950)、「鈴木商店・大番頭」金子直吉(1866-1944)、「大原美術館創始者」大原孫三郎(1880-1943)、「三井物産総裁」、「第5代国鉄総裁」石田礼助(1886-1978)、「第2代経団連会長」石坂泰三(1886-1975)、初代日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)総裁、「影の財界総理」小林中(1899–1980)、「企業再建の神様」早川種三(1897-1993)、本田宗一郎(1906-1991)、井深大(1908-1997)等々。

本書のキーワードの一つに「ただの人」ということばがあります。「自分はタダの一個人の人間だという意識」を持つこと。特に、本田宗一郎さんと藤沢武夫さんが1983年に引退した後の話しで、その後1998年6月に51代目社長なる吉野浩行さんと本田さんの次のような場面が振るっています。

佐高:「後に任せてからのけじめについて言えば、本田さんは仕事がいちばんの趣味と城山さんに言ったというけれども、しかし、その仕事に自分が固執していては会社がおかしくなるということで、そこは非常に努力するわけですね」

城山:「彼はいろいろと言いたくて言いたくてしようがないんだよ。また実際に言うこともあると吉野さんも言っていました。アメリカでは車にセーフティバンドをつけるのが義務づけられた。それは、事故があったらぱっと自動的に作動するとはいうものの、効果に疑問が残った。恰好も悪いし、本田さんは『こんなもの、やめちゃえ。もしやめなければ、おまえなんかクビだ』とすごく怒ってしまったんだけれど、言ってから、『ああ、俺はそういうことを言える資格じゃないんだ』とつけ足したという」。

城山さんが読書の功徳ということに関して次のように述べています。
(城山三郎1927-2007)
「読書は両面あって、一つは、すごく読書する人間は、やっぱり伸びる力を持つということです。今は情報時代というけれど、ほとんどのビジネスマンは情報に流されているんです。彼はその情報の部品になっている。読書していると、逆に情報を部品として使いこなせるんです読書する人間は信頼できるということが一つ」。

「もう一つは、読書した人間は、今いったように楽に生きれる。つまり、出世するしないなんていうのは、人生のごく小さな問題だということです。読書をすることでいろんな生き方をしている人、いろんな人生というのを追体験できるわけですから、それによって慰められたり、もっと励まされたりする」。

城山さんについては、9/5付けの「『硫黄島に死す』(城山三郎著/新潮文庫)」で触れたので割愛します。佐高さんについては、「悲歌 古賀政男の人生とメロディ」(毎日新聞社 2005)他二、三冊くらいしか読んでいませんが、主義主張に共感しかねるところもありますが、佐高さんもぶれない人だと思います。

佐高信(まこと、1945年1月19日-)は経済評論家。週刊金曜日発行人・編集委員及び発行する会社(株式会社金曜日)の現在の代表取締役社長。山形県酒田市生まれ。山形県立酒田東高等学校卒業、慶應義塾大学法学部法律学科へ進学。岸井成格とは同級生になる」。

「学生時代は構造改革派系新左翼『フロント(社会主義同盟)』の活動家としても有名だった。また陸上選手としても活躍。大学卒業後、高校教員となるが女生徒とトラブルを起こし辞職、上京。総会屋系経済誌『現代ビジョン』編集部員を経て、編集長に。その後、評論家活動に入る。」

「日本企業に関する批判的な評論で知られ、『噂の眞相』(休刊に伴い、月刊『創(つくる)』に移行)に連載した『タレント文化人筆刀両断』は連載100回を超える。『佐高信の政経外科』をサンデー毎日に連載中。また週刊金曜日のコラム『風速計』も担当。経済小説や歴史小説にも造詣が深く、藤沢周平の熱心なファン。『金融腐蝕列島』(角川書店、1997年)など高杉良の著書の解説を多く手がける」。

「第44回衆議院議員総選挙直前の2005年9月4日放送「サンデープロジェクト」(テレビ朝日)に『社民党応援団』として出演するなど、社民党支持者として知られている。また、2007年3月まで、新社会党ウェブサイトにコラム『毒言毒語』を連載していた。土井たか子らと憲法行脚の会を結成、加藤紘一との対談集会を開くなど護憲行脚運動を行なっている。九条の会への参加は自身が嫌悪する日本共産党の関係者が加わっていることを理由に拒否しているが、共産党系ともいわれる全日本教職員組合主催の集会に参加するなど、近年は共産党への態度を若干軟化させている」。

「最近では『クリーンなタカ派よりはダーティでもハト派のほうが良い』と、加藤紘一や鈴木宗男らとの関係を深めて、田中角栄を『ダーティなハト』として相対的に評価している。なお『クリーンなハト』である田中秀征とは昔から親しい」。(ウィキペディア)


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