読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

愛と音楽と五つの国で紡がれた名作、「シルク」(2007年)

2009-04-14 21:29:58 | Weblog
~1860年代のフランス。蚕の疫病が発生したため、軍人のエルヴェ(マイケル・ピット)は美しい妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)を残して、日本へと旅立つ。幕末の日本に到着したエルヴェは蚕業者の原(役所広司)が連れていた、“絹”のように白い肌の少女(芦名星)と出会う。以来、エルヴェは少女が頭から離れなくなってしまう。(シネマトゥデイ)~

(日本・カナダ・フランス・イタリア・イギリス合作)
監督:フランソワ・ジラール
脚本:フランソワ・ジラール、マイケル・ゴーディング
音楽:坂本龍一
撮影:アレイン・ドスティ
出演:マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、アルフレッド・モリーナ、中谷美紀、役所広司、芦名星、國村隼、本郷奏多、ケネス・ウェルシュ、渡辺奈緒子

「海の上のピアニスト」の原作者、「レッド・バイオリン」の監督、そして坂本龍一さんの音楽。すばらしい三人のコラボレーションです。本作は、紀元前3000年頃の中国で生産が始まり、1909年にはその生糸生産量で清を上回って世界最高の産地となっていたという日本の「絹」を巡るファンタジー作品ですね。

フランソワ・ジラール監督は、「レッド・バイオリン」で4世紀にわたってイタリア(1681年)、オーストリア(1792年)、イギリス(1893年)、そして中国(1965年)とさまざまな国々を転々としてきた、あのストラディバリが師事したニコラ・アマティが製作したバイオリンを巡る人間模様を描き、本作でフランスから日本の間を貫くシルクロード上で行き交うカイコ(蚕)の卵に純愛を重ねて描き出しました。


昨日取り上げた「ブラインドネス」に先立って酒井園子さんがプロデュース陣の一角を占めたのが、本作。この「シルク」について酒井さんが応えたインタヴューがコチラ。

<『シルク』酒井園子プロデューサー 単独インタビュー>
http://www.hollywood-ch.com/report/interview_silk.html

原作者のアレッサンドロ・バリッコは、トリノに1958年1月25日生まれたイタリア人。小説家であり、監督であり、役者でもあるといいます。イタリアの三島由紀夫と言っていいでしょうか。原作は1996年に書かれています。彼の作品は以下の作品が翻訳されています。

「海の上のピアニスト」(1994)
~海の上で生まれ、一度も船を降りることのなかった天才ピアニストの伝説。彼が弾くのは、いまだかつて存在せず、ひとたび彼がピアノから離れると、もうどこにも存在しない音楽だった……。トルナトーレ監督により映画化。~

「シティ」;(1999)
~13歳の天才少年グールドがシャツィ・シェルという名の風変わりな女性に出会い、恋とは言えぬ淡い交流が始まる。2人のお話のほかにボクサーが主人公のラジオドラマと西部劇が同時進行し、やがて悲しい結末を迎える。イタリアのベストセラーとなった、都会をめぐるセンチメンタル・ジャーニー。~

「イリアス―トロイアで戦った英雄たちの物語」;(2004)
~ヨーロッパ文明最古にして最高の叙事詩、長大で難解であるがゆえに読まれることの少なかった古典を、ストーリーテリングの天才バリッコが小説の形で現代によみがえらせる。長大な作品から朗読用の短縮版を作ることを思いたち、一年の歳月をかけて完成させた。~

<イタリアに好奇心: アレッサンドロ・バリッコの講演(1)>
http://senese.cocolog-nifty.com/koukishin/2008/10/post-5a50.html

<イタリアに好奇心: アレッサンドロ・バリッコ講演会(2)>
http://senese.cocolog-nifty.com/koukishin/2008/10/post-b852.html

<Alessandro Baricco - Wikipedia>
http://en.wikipedia.org/wiki/Alessandro_Baricco

<e-hon 本/絹/アレッサンドロ・バリッコ/著 鈴木昭裕/訳>
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refISBN=4560071691


そして、フランソワ・ジラール。巨匠と呼ばれる彼ですが、まだ46歳であります。

フランソワ・ジラール(François Girard、1963年 - )は、「カナダの映画監督・脚本家。ケベック州ラク・サン・ジャン出身。1984年にゾーン・プロダクションを設立し、数々の短編映画やミュージックビデオを手掛ける。1989年に『Cargo(原題)』で劇場映画監督デビューを果たす。『ピーター・ガブリエルズ・シークレット・ワールド』でグラミー賞最優秀長編音楽映画賞を、『レッド・バイオリン』でジニー賞主要8部門と東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞」。

<François Girard - Wikipedia>
http://en.wikipedia.org/wiki/Fran%C3%A7ois_Girard

<「レッド・バイオリン/The Red Violin」(1998年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/db970441b1c9880f8f923daaef595da3


軍人からカイコの卵の買い付け人になったエルヴェを演じたマイケル・ピット。「小説家を見つけたら」(2000)、「ヴィレッジ」(2004)などの作品への出演があります。

マイケル・ピット(Michael Pitt, 1981年4月10日 - )は、「アメリカ合衆国ニュージャージー州出身の俳優。ウエストオレンジで4人兄弟の末っ子として生まれる。俳優になるために16歳でニューヨークに出てきたが、その時は無一文であったという。バイク便の配達員として働きながら1999年にオフ・ブロードウェイの舞台にデビュー。2000年にはテレビシリーズ『ドーソンズ・クリーク』に出演。翌年、ヒットした舞台の映画化『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』に出演して知られるようになる。ミュージシャンでもあり、バンド「Pagoda」で2006年にデビューした」。

本作の中で最も重要な役エルヴェの妻エレーヌを演じたキーラ・ナイトレイ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのエリザベス・スワンがはまり役ですが、彼女については下記の作品で取り上げました。

<「ジャケット(原題:The Jacket)」(アメリカ/2005年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/5a7047614d6cd081029ef4b08ce8c0f6

<キーラ・ナイトレイ-Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4


実業家パルダビューを演じたのはアルフレッド・モリーナ。「マグノリア」(1999)、「ショコラ」(2000)、「フリーダ」(2002)、「死ぬまでにしたい10のこと」(2003)、「アイデンティティー」(2003)などの話題作に出演していますが、なんと言っても「スパイダーマン2 」(2004)でのドクター・オクトパス役が印象的です。

アルフレッド・モリーナ(Alfred Molina、1953年5月24日 - )は、「イギリス出身の俳優。ロンドンにて、ウェイターや運転手として働くスペイン人の父と、ホテル等で働くイタリア人の母の元に生まれ、ノッティング・ヒルで育つ。子供の頃から役者を志し、ギルドホール音楽演劇学校で学んだ。舞台出演も多いベテラン俳優で、デヴィッド・マメットやテネシー・ウィリアムズの舞台に出演した。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』 のサティポ役(『インディ・ジョーンズシリーズ』中最初に死ぬ人物役)でデビュー。アメリカ合衆国の市民権を取得。1985年に女優のJill Gascoineと結婚」。

<アルフレッド・モリーナ- Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8A

<「ギター弾きの恋」と「ショコラ」を繋ぐ「ジプシー・スウィング」の創始者>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/ac58715b9cec057f38f3297f2b56e0fd


そして日本人の俳優陣。まず、原十兵衛役を演じた役所広司さんについては、下記の記事で取り上げました。
<黒沢清監督・役所広司コンビが仕掛けるサスペンス・ホラー、「叫」(2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/e536a6c4377a4142a32dc64145cbf406

今を時めく名脇役、そして外国映画には欠かせない日本人俳優と言っても過言ではないのが、右門を演じた國村隼さん。下記の作品で取り上げました。

<社会と隔絶された組織の弊害を描く、「震度0」(2007年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/af750222311cd794993a6ac572e95c24

<國村隼- Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%8B%E6%9D%91%E9%9A%BC

抑制の利いた見事な英語でマダム・ブランシュを演じた中谷美紀さん。下記の作品で取り上げています。

<力強くも哀しきジャパニーズ・ドリーム、「力道山」(韓国、日本/2004年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/06b01524d86d76583574f10dceae9c67

<中谷美紀-Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%B0%B7%E7%BE%8E%E7%B4%80

日本人ではないと囁かれる「少女」を演じたのが、百数十名の中から選ばれたという芦名星さん。どこかで見たことのある女優さんだと思っていたら「ブラッディ・マンデイ」で南海かおる役を演じておられたんですね。

芦名 星(あしな せい、1983年11月22日 - )は、「日本の女優。本名、五十嵐 彩。福島県郡山市出身。ホリプロ所属。身長165cm。B:83 W:58 H:87 S:23.5cm、特技:料理・書道・クラリネット」。

<芦名星-Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%A6%E5%90%8D%E6%98%9F

最後は、本作の紹介記事にはほとんど取り上げられていない、芦名星さん演じる「少女」に代わってエルヴェの一夜妻となる女性を演じたのが渡辺奈緒子さんという女優さん。もっと注目されてもいいと思うのですが、芦名星さんに劣らない体当たりの演技でした。

渡辺奈緒子(わたなべ なおこ、1984年7月30日 - )は日本の女優。神奈川県出身。㈱モノポライズ所属。

<渡辺奈緒子 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E5%A5%88%E7%B7%92%E5%AD%90

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