読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

500社もの起業、経営に係った男、「渋沢栄一『論語と算盤』が教える人生繁栄の道」(渡部昇一著)

2009-11-30 05:15:15 | Weblog
~歴史や古典から時事問題まで、幅広い知識教養をお持ちの渡部先生ならではの渋沢栄一「論語と算盤」。先生も今回かなり力が入っておられました。これまでにない渋沢哲学本として、面白い上に、ためになる。「論語と算盤」を両立できれば、現代を強く生き抜くことができると実感できます。~(担当編集者)

<目次>
第1章 『論語』が教える人生訓—処世と信条
第2章 一生の志を立てる—立志と学問
第3章 正しい判断力を身につける—常識と習慣
第4章 正しい富の使い方—仁義と富貴
第5章 本質を見る目を養う—理想と迷信
第6章 いかにして自分を磨くか—人格と修養
第7章 競争社会に欠かせない温かな絆—算盤と権利
第8章 モラルなき金儲けは必ず失敗する—実業と士道
第9章 今、必要とされる教育とは何か—教育と情誼
第10章 人生の喜びは成功の先にある—成敗と運命

渡部さんの著書は「知的生活の方法」(1976年)をはじめ歴史論、政治・社会評論を数多く読んできましたが、このブログではそのほとんどを取り上げていませんでした。「自虐史観」が横行する論壇の中にあって早くから日本、日本人について深い洞察による歴史観によって日本の正統性は何なのかを教えていただきました。

英語学者である渡部さん、「国家の品格」の著書である数学者の藤原正彦さんという日本史のご専門ではないお二人が日本の本来の姿について卓越した見識を示されていることがなんとも不思議な気がしますが、お二人のご専門の学問のベースに日本人としての本来の素養が深く根付いていることに学ぶところも多いですね。

さて、論語と渋沢栄一についてこれほど平易に書かれた本は稀です。ここでは各章の見出しを引用するだけで、本書のエキスは伝わります。

第1章 『論語』が教える人生訓—処世と信条
①「論語=道徳」と「算盤=経済」は必ず一致する
②「士魂商才」----武士的精神も商才も「論語」によって養える
③徳川家康の遺訓となった「論語」
④天道にそむいた行いは必ず罰せられる
⑤「論語」は実用的教訓として役立ててこそ輝く
⑥青年時代に争いを避ける必要がないが、時を待つ必要もある
⑦適材適所の人事に野心を込めてはならない
⑧成長を求めるなら競争を否定してはいけない
⑨自然的逆境に遭ったときは諦めて、運命に身を委ねよ
⑩一事をやり続けることによって花が開く
⑪成功の種は苦難のときにまかれ、失敗の種は得意のときにまかれる

第2章 一生の志を立てる—立志と学問
①対立する意見を排除する国民性は改善すべきである
②青年ばかりを大事にするな、老人も大事である
③立派な人になりたいなら、良心に恥じない日々を送れ
④日々工場を目指す覚悟が一角の人物をつくる
⑤運を拓く努力工夫の仕方を秀吉に学べ
⑥一生の志を立てるときは注意しなくてはいけない
⑦目先の出来事に振り回されず、深い真理を見つめよ
⑧国力を増すためには大きな目標を立てなくてはならない

第3章 正しい判断力を身につける—常識と習慣
①智・情・意のバランスを備えた人こそ有用な人となる
②必ずしも慎重・厳密であればいいわけではない
③成功への第一歩はよい習慣を身につけることにある
④目に見える行動を正しくすることが成功への道
⑤本当の智恵とは自らの分を知って行動することをいう
⑥日本人の精神の荒廃は教育勅語の廃止とともに始まった
⑦学んだことを社会で正しく役立てるところに学問の真価がある
⑧甘い誘いに乗って身を滅ぼさないための渋沢流危機回避法

第4章 正しい富の使い方—仁義と富貴
①仁義道徳と利殖はどちらも欠かすことのできないもの
②悪いのは富ではなく、間違った富の使い方である
③正しい方法で富を得ることが最も大事なこと
④集めたものを社会に善用する、これが正しいお金の使い道

第5章 本質を見る目を養う—理想と迷信
①信用がなければビジネスは成り立たない
②一流とは仕事を楽しむ境地に達した人をいう
③一つのものの中に変わるものと変わらないものがある
④自我を抑制するところにしか真の平和は訪れない
⑤自分のために一所懸命やれば、それが社会のためになる
⑥富国と強兵を両輪として進めなくては真の文明国とはいえない
⑦一時的な現象を憎むあまり根本まで否定するのは間違いである

第6章 いかにして自分を磨くか—人格と修養
①人の真価はどれだけ世の中に貢献したかで決まる
②いざというときの対処は平生の心がけで決まる
③生前のすべての行動、すべての思想が人物評価の材料となる
④修養は人の天性を伸ばし、明瞭な判断力を育てる
⑤人格の修養に必要なのは忠信孝悌の精神と智能啓発の工夫

第7章 競争社会に欠かせない温かな絆—算盤と権利
①西洋文化を取り入れる下地となった「論語」の啓蒙性
②人間の関係は法律や権利でのみ結びついているわけではない
③競争をするときは自分を高める工夫や智恵を大切にせよ
④成功する事業は社会全体に利益を与えるような性格を持つ

第8章 モラルなき金儲けは必ず失敗する—実業と士道
①商工業者は武士道の正義廉直の観念に学ばなくてはならない
②一方的な舶来品偏重は判断力の低下につながる
③ユダヤ化する世界の中で高まってきた日本人の契約観念
④道徳観念の欠けた功利学は社会に害をまき散らす

第9章 今、必要とされる教育とは何か—教育と情誼
①志を果たして親を喜ばせることが最高の親孝行である
②師弟の関係を強くする教育改革が求められている
③優れた女性教育が優れた人材を生み出す
④わかりやすく面白い話で心を磨く心学を活用せよ
⑤職のない時代に必要とされる“覚悟”と“志”

第10章 人生の喜びは成功の先にある—成敗と運命
①不幸になった人には忠恕の気持ちであたるべし
②目の前の成功失敗と真の成功失敗は同じものとはいえない
③順境も逆境も日々の心がけによってつくられる
④成功失敗は懸命に努力したあとに残る粕のようなもの

本書には「忠恕(ちゅうじょ)」という言葉が何度か出てきます。「自分の良心に忠実であることと、他人に対する思いやりが深いこと」の意味だそうですが、「恕」とは、訓読みで「ゆるす」であり、その意味は「他人の立場や心情を察すること。また、その気持ち。思いやり」。「怒」という字に似ていますが、こちらか「いかる、おこる」で反意語。一度は許しても、二度目はないぞということなのでしょうか。


<渋沢栄一 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%8B%E6%B2%A2%E6%A0%84%E4%B8%80



渡部 昇一:昭和5年山形県生まれ。30年上智大学文学部大学院修士課程修了。ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。Dr.phil.,Dr.phil.h.c.平成13年から上智大学名誉教授。幅広い評論活動を展開する。

<渡部昇一 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E9%83%A8%E6%98%87%E4%B8%80

<備忘録>
和魂漢才と士魂商才(P28)、漢学=孔子(P30)、禅譲放伐(P36)、ハイエクの「法」の考え方(P42)、西郷とカント(P43)、渋沢の傑出した偉さ(P45)、富国強兵の源流(P47)、渋沢とフロリヘラルド(P49)、中村敬宇と宇野哲人(P54)、成功の種(P73)、小さな仕事(P90)、大きな志(P93)、頼山陽「日本外史」(P100)、渋沢の沿革(P101)、明治維新~富国強兵、戦後~世界一の製品品質(P103)、中村敦「弟子」(P122)、教育勅語(P128)~元田永孚と井上毅~、儒学と朱子学(P138)、サブプライムローンの問題(P151)、趣味の極致(P152)、Might is right(P156)、ウェストファリア条約の意義(P157)、人の真価とバレンボイム(P171)、乃木家絶家(P178)、宗教と啓蒙(P188)、家督相続(P193)、富の平均分配のウソ(P194)、ポップ・フィロソフィー(P200)、朱子学の弊害(P214)、カレッジとは(P226)、心学(P228)


<私が二十歳の頃に読んでおきたかった本>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/0549919a78b15ca64488c15690dd0d9b


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