読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「国家の正体」(日下公人著/KKベストセラーズ)

2006-01-08 05:02:24 | 本;ノンフィクション一般
第1部/わが国のかたち-その根幹、第1章/国家意識に目覚めた日本人、第2章/日本はすでに「普通の国」になった、対談;「司法取引」のすすめ(磯邉衛)
第2部/国境を越える日本精神、第3章/日本は国際秩序の提唱者となれる、第4章/日本人はもっと自信をもっていい、対談;「日本に生まれた幸せ」(曽野綾子)
第3部/丸裸の益荒男の日本へ、第5章/日本の文明・文化は「千五百枚重ね」である、第6章/国家の正体を知る、対談/未来から見た日本(塩川正十郎)

日下氏のいつもの歯切れよい「日本、日本人論」だ。冒頭で司馬遼太郎の国家意識に疑念を投げかけ、日本人を「ナショナリズムに目覚め」させてくれた「恩人」をアメリカのクリントン前大統領、中国の江沢民前国家主席、北朝鮮の金正日総書記、ロシアのプーチン大統領だと糾弾。痛快な指摘は以下に記すが、日本人を背後から押し出してくれる一冊。

・ アメリカ経済学・経営学のキーワードになった日本語;「KAIZEN」、「KEIRETSU」、今後なるであろうキーワード;「すり合わせ」、「根回し」、「生え抜き」。
・ アメリカのメガネで日本を見て「日本の会社は実力のわりに株が安過ぎる」というが、そう思った人は、黙って株を買えばよいのである。透明性だとか、説明責任だとか、公認会計士をしっかりつけろとか、時価評価とか、アメリカは日本政府に圧力をかけたが、それはナントカ・ファンドが自分でやるべき仕事である。
・ 日本語と日本文は一千年も一貫して続いているから、その気になれば、古い本がいくらでも読める。こんな国は世界中にない。イギリスの古い歴史研究はフランス語やラテン語でないとできない。英語で書かれた本はまずは宗教改革以後だからである。中国は簡体字にしたから古典を読める人がいないことは、国家のアイデンティティを確立するという意味では大失敗である。韓国も同じで、いまに両国は日本人が書いた日本語の歴史書で自国の歴史を学ぶようになるだろう。
・ 日本文明・文化の特徴は「約」だという富永仲基の説がある。約は節約の約。エッセンスだけを取って、後は飾りだと見破って捨てる、その飾りと本質を見抜く力が正解一らしい。だから和歌や俳句ができたのだろう。
・ これからはグローバル・スタンダードが復権する時代になるがと思われる。ヨーロッパはそれに気づいて、まずヨーロッパの内部を固めた。ヨーロッパの文明やヨーロッパの精神を思い起こし、その上に立つヨーロッパの経済をつくろうというのである。その第一歩がヨーロッパの通貨統合で、それができたことでヨーロッパはヨーロッパ・スタンダードに自信を持ち始めている。
・ ロシアもプーチンが内部固めに成功しつつある。西側の市場経済や民主主義よりもロシアはやはり昔に戻って政治は力の支配で経済は資源と武器の輸出になりつつある。
・ 中国も、タイもマレーシアも、ローカル・スタンダーをドを主張して実行しているところはすべて元気がよい。逆にグローバル。スタンダードに身を合わせて通貨をドルにしたアルゼンチンは破綻した。


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