<目次>
序章 新人AV女優の誕生毎年6000人
第1章 AV女優の労働条件日当3万円~
第2章 AV女優の労働市場と志望理由倍率25倍
第3章 AV労働環境の変遷96年のカオス
第4章 労使トラブル損害請求1000万円
第5章 AV女優の退職引退後の付加価値は2倍
~社会が裸の仕事に対して以前より寛容になったといってもカラダを売っている現役時代は、楽に稼げることの代償として他人から信用されづらく、恋愛をしてもうまくいかず、成長した友達からは見離され、周囲からは転落したと蔑まれる、ということが起こりがちである。
非常に惨めで孤独な青春時代、人生といえる。さらに一般社会との感覚のズレや消せない裸の商品など、カラダを売って収入を得るということはさまざまなリスクが潜んでいる。他に生きる道があるならば、簡単に手をださないにこしたことはない。
本書はAV女優でもしようかな?と思っている女性や、娘を持つ親たちに読んでほしい。たとえアルバイト気分でも、職業は現実を知ってから選ぶべきである。~(おわりに)より
~AV女優は必ずAV専門のモデルプロダクションに所属することになる。AV専門のモデルプロダクションは2005年には200くらいあるとされていたが、現在は150程度に減っていると、大手メーカープロデュサーは語っている。「規模の違いはあるけど、一つのプロダクションに50人くらい所属がいるとして、AV女優の数は6000~8000人くらいじゃないかな。そのうち3分の2、4000~6000人くらいが毎年入れ替わっている。・・・~
音楽業界のデビュー歌手が毎年300~400人・グループと言われていますから、この数字は驚くべきものですね。本書によれば、以前はそのデビューに至る過程にはスカウトが主流だったものが、インターネットの普及によって自ら応募することが容易になったことがその根底にあるようです。
<不況の影響か、グループ化の加速か…デビュー歌手数をグラフ化してみる>
http://www.garbagenews.net/archives/1732070.html
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0406&f=column_0406_018.shtml
しかしながら、応募者たちは「本番」を行なうことは承知しているとは言え、その業界の実態を理解しないまま、業界への一歩を踏み出してしまう女性が少なくないことに、著者は次のように警鐘を鳴らします。
~AV女優は応募者が殺到するそんなに魅力のある職業なのか?いや、そんなことはない。決して高いとはいえない出演料は頭打ちで、競争は激しくどんどんと短命になり、ビデオと比べると、メディアはDVD、ブルーレイと大容量になり、メーカー間の競争が過激化する一方で、女優は使い捨てが当たり前、安定性と将来のない過酷な肉体労働となっている。~
このAV女優たちは、AV業界の中で「単体」「企画単体」「企画」というヒエラルキーに分類されるそうです。
・ 「単体」とは、AVアイドル、トップスターになりえる存在で、主役として一本のAV作品を作ることができ、名前や存在でヒットが見込める女優
・ 「企画単体」とはメーカーと本数や期間の契約をするわけではなく、○○デビューなどと大々的に売り出されることもないが、単体と同じく一本のAV作品で主役が張れる女優。
・ 「企画」とは、「企画単体」と同じく、ギャラは一日単位。無名であり、自分一人の女優力では販売が見込めない女優。
そして、この業界特有の「キャリア」の本質について次のように述べています。
~女性の裸やセックスは、経験がないほど、汚れがないほど価値が高く、AV女優は身を切り売りしながら延命するという一面がある。AV女優はプロの職業でありながら経験するほど価値が下がるという生鮮食品のような商品であり、数ある職業の中でも特殊な性格を持っている。~
そのAV女優たちの出演料は、「単体」で一本あたり100~200万、「企画単体」で一日あたり30から80万、「企画」で一日あたり15~25万。新人の場合、「単体」5%、「企画単体」20%、「企画」75%にカテゴライズ化されるそうです。本書ではさらに「企画単体」「企画」が9つに細分化されていることが詳述されています。
AV女優たちは、全てどこかのモデルプロダクションに登録されることになり、そのギャラは上述の出演料の30~40%が相場。本書の中では、「デビュー半年、メーカー契約が継続中の人気単体女優」、つまり、業界最高クラスのAV女優の月収が92万と試算されています。
冒頭に引用した大手メーカープロデュサーの「2005年には200くらいだったAV専門のモデルプロダクションは今では150くらい」というコメントの背景には業界としての頭打ちの現状とともに、同年に施行された「東京都迷惑防止条例改正条項」によって、AVのスカウト行為が制限されたことが大きいと考えられます。
4000~6000人くらいが毎年入れ替わっているというAV女優たち。その参入障壁は以前に比べれば低くなったとは言え、「そもそも本番シーンのあるAV自体が、賭博罪に抵触しているパチンコ店や売春防止法に抵触しているソープランドと同じく。厳密には合法的な存在ではない。それに関わる関係者や関係業者は法律的には灰色の存在である」と。
<参考>
・パチンコ業界 「21兆650億円」
・競馬市場 「3兆3,280億円」
・風俗産業 「5兆6,884億円」
・アダルトビデオ市場 「4000~5000億円」
http://matome.naver.jp/odai/2129920304031289601
AV女優が、かつてのポルノ女優が真の女優に上りつめた人が少なくないのに比べて、現在まで、2010年放映のNHK大河ドラマ『龍馬伝』第4話で遊女を演じるまでになった及川奈央さんだけであることは、AV女優自身が女優になることをもともと望んではいないだろうと思うに、自身の肉体の全てを投げ出し、それが後世に映像として残るというリスクに対して、ほとんどの女性が収入、キャリアの両面で寄与しない現実がありますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8A%E5%B7%9D%E5%A5%88%E5%A4%AE
私に娘はいませんが、年齢的に同世代の父親の娘さんが、この業界で職を得ているんですね。昔から職業に貴賎なし、といいますが、少なくとも苦しい生活の資金稼ぎのために入る世界ではないことは、本書を通じて改めて知らされましたよ。
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